【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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国内無双編

閑話:渦祷

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 「■■」

 そこはまるで、宮殿のような空間だ。
 黄金の壁、黄金のインテリア。

 しかし大きな黒曜の扉。
 通り抜ける男女二人が黒い軍服のようなものを羽織り、跪く。

 長すぎる丈が床に広がる。

 「⋯⋯⋯⋯」

 黒い絨毯。
 質感が違う。

 ──"地獄だ"。

 まるでその道が穢れているかのような。
 
 その先だ。
 数段の階段の先。

 そこに鎮座するは王座に座る一人の男である。

 あまりに美しい顔。
 草薙と系統は似ているが、全く違う。

 鋭く、パーツは黄金比。
 指摘する者がいるのであればお前が死ね。

 そう言わんばかりの圧力があるのだ。

 仮に神々しさを草薙とするならば、悪魔的⋯⋯いや。

 ""魔性""というべきか。

 しかし不思議だ。
 ""神々しさ""も兼ね備えている。

 その男は瞳を開けず。

 ただ、地面に刺さっている一振りである剣の柄を両手で掴み、真正面を向いている。

 さながら剣の柄をテーブル代わりに両肘を付いているようだ。

 その堕天したような男は、気配を感じて瞳をゆっくりと開いた。

 「⋯⋯卿ら、何用だ」

 たった一言。
 その一言で二人の身体にとてつもない重圧を与える。

 見えない。感じない。

 しかし何かが二人の頭を地に押し付け、殺すと言わんばかりに見下されている。

 「拝謁の機会をお与え下さり感謝致します」

 「良かろう。面を上げ、話せ」

 片割れの男である者は静かに口から血を吐きながら報告する。

 「日本で、異様な力場を発見致しました」

 「何」
 
 口を開いたその時。
 二人のすぐ後ろの壁が一瞬で砕かれた。

 破片が落ちるところしか見えない。
 肉眼など関係ない。

 生きている世界が違う。
 魂が違う。
 格が違う。

 そう言われているような眼である。

 反応できない。 
 二人は震えるしかない。

 だが、二人は歓喜している。
 ありえないこの世の超越した力を目にしても。

 地面に漏れ出ている自身の垂れ流し続ける尿など気にもしていない。

 感動している。
 魔性に見惚れている。

 あぁ、これが神なのだと。

 瞳がそう物語っている。

 崇めるように。
 縋るように。
 ただ、二人は王座を見上げ、祈っている。

 「「■■」」

 「⋯⋯対象の確保は」

 「裁きを」

 「価値もないリベリオン

 「っ?」

 「下がれ」

 淀み無く孕む低い声で呟くと二人の男女は即座にこの場から消える。

 「⋯⋯⋯⋯」

 男は静寂の中でまた瞳を閉じる。
 無音だ。

 ただ、ただ時間が過ぎていく。

 どれくらい経ったのだろう。
 男は剣を抜き、王座から立ち上がる。

 それはどれほど美しいのだろう。

 ヒュッと。

 軽くそよ風が吹くと何かが割れる。
 あまりの美しさに全て忘れてしまいそうだ。

 その剣技に。
 軌道に。
 身体に。
 これほど美しい人間を見たことがあるだろうか。
 
 周囲に刻まれたのは深さ目視1メートルほどの剣痕。

 それを上から見ると、謎の文字にすら見える。

 すると王座に身体を向け片膝をついては剣を地に刺した。

 「ヴィシュヌアレイスター。
 (あぁアレイスター神よ)

 ヘンラマティニッシュヘンダミランダ
 (この穢われしきこの魂をお赦しください)」

 男は祈る。

 祈る。

 祈る。

 男は憂うように昔を思い出している。
 それは、それは。






























 「っ゛ぐ゛ぁ゛ァ゛ァ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛っ゛あ゛あ゛ァ゛ァ゛あ゛あ゛ぉ゛ぉ゛!!!!!!」

 10秒も続く咆哮。

 それは人間の叫びではない。
 人間と獣の境界線を走る化物の呻く咆哮。



 ⋯⋯全て殺した。

 男も。女も。

 老人も。子供も。

 悪は総て斬った。

 後は──

 「ハ゛ァ゛⋯⋯ハ゛ァ゛⋯⋯ハ゛ァ゛ッッ!゛!゛」
 
 男に意識はない。
 男の歩いている痕跡を見れば分かる。

 男の片脚は膝から先が無く、片腕はない。

 「ハ゛ァ゛ァ゛ッ゛⋯⋯ハ゛ァ゛⋯⋯!」

 ただ⋯⋯腕も、足も、斬れている部分から黄金の光が彼を治そうとしている。

 それはボンドをベチャベチャにくっつけたような──ソレが同じ人間か本当に怪しい光景。

 だが、また壊れようともしている。
 矛盾だ。

 傍から見てる分には不快で済むが、当人は違う。

 無くなり、戻る。

 痛みは常時続いているのだ。
 足元には水滴と大量の血肉が彼の何キロも歩いてきてた道のりを示すかのように。

 「っ゛⋯⋯ぇ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ォ゛ォ゛あ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛」

 呻く。ナニカが呻く。
 人間の形をしたガタガタのナニカ。

 喉は焼け、脳はショートし。
 美しい黄金のかき上げてた短髪だけが彼を彼たらしめている。

 美しいであろう彼の顔は歪だ。
 その視線の先。

 男の目的。
 
 血の海。
 そこに山積みにされている礼服を着た死体の山々。

 その上に、ポツリと誰かが片膝を立てて煙管を優雅に吸っている。

 「ん?」

 呻く男には映る。
 
 黒く肩まで伸びる髪。
 自分と同じく容姿の良いであろう男。

 紅い瞳。
 黒いロングコート。

 意識のない男はそれを見ると更に呻く。

 「ぇ゛ァ゛⋯゛⋯゛!゛
 ぇ゛あ゛あ゛ア゛ッ゛!゛
 ぁ゛ぁ゛あ゛ぅ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛」

 その雄叫び?
 呪い?
 長い叫びは世界を呪う。

 死ねと。
 殺すぞと。

 その瞳は執念が宿っている。
 死んでも殺す。

 殺してやる。
 お前だけは殺してやると。

 だが反対に。
 煙管を優雅に吸う男は呻く男を見下ろすと顔を左右非対称にこれでもかと歪め。



























 「ア゛レ゛イ゛ス゛ター!゛!゛
 お゛前゛の゛敵゛は゛こ゛こ゛だ゛ぞ゛!゛!゛!゛

 ここだここだここだここだここだァァァァ゛ァ゛は゛っ゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ァ」

 興奮のせいか魔力で周りにそびえ立つすべての建物が吹き飛ぶ。

 その衝撃波で立つこともままならない呻く男は、片手で持つ剣を地面に突き立て、身体全体で呼吸を整える。

 「ハ゛ァ゛⋯⋯⋯⋯ハ゛ァ゛⋯⋯⋯⋯ハ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!」

 「獅子王──そして称号騎士王を冠するアレイスターを守護する剣よ。

 私にその人間の輝きを見せてみろ」

 口元を歪め、男は嗤う。

 「見せてくれぇぇぇ!!
 お前が言う化物はここだぞ?

 何が足らない?
 お前はこの国のすべての人間を斬り殺した大量殺人鬼だぞ!?

 なぁ!!
 正義なんてまやかしだろォ!?
 教典にそんなこと書いてあったのか!?

 規律を正す為、下々の行いに裁きォ!?

 みんな一度は悪いことをするさ!!
 まさか親まで殺すとは思わなかったぞ!!!!

 最っっっっ高だ!!!!

 あとは地獄の力か?
 明日の為か?
 何でもいいからかかってこい!!

 ほら!!魔王はここにいるぞ!!
 聖なる仇はこ゛こ゛だ゛っ゛て゛!゛!゛!゛」

 意識のない男は願う。
 どうか。

 どうか。

 ⋯⋯どうか。

 ──どうか。

 





 「あの悪魔を滅ぼす為ならば、どんな犠牲をも払います。

 どうか⋯⋯我が下賤なカラダにチカラを。
 神よ。我が主よ。この祈りを聞き届けてください」

 『あの悪魔を滅ぼす為ならば、どんな犠牲をも払います。

 どうか⋯⋯我が下賤なカラダにチカラを。
 神よ。我が主よ。この祈りを聞き届けてください』
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