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国内無双編
夢占い
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旅をした。
何回も。
いや、何百?何千?
自分が何をして何をやってきたのかも覚えていない。
ただ、一つ覚えている事がある。
それは一度ブチ切れた記憶だ。
ローマン、カイアス。
実際には数百人ほどいる傑物を見送ってきた。
その内に、芽生えた物がある。
それは母性のようなものだ。
まぁ俺は男だから本来なら父性だが。
少し強く握れば死んでしまうような幼い子供たち。
ローマン。
あのガキが始まりだったのが運の尽きだ。
俺はそしてようやく⋯⋯昔の感覚を少し取り戻していた。
それは何か?
子供の豊かさだ。
想像してみてほしい。
それは何でもいいが、今、自分には生きていることですら限界な奴らがいる。
あ、当人と思って聞いてな?
あなたの隣に貧しい子がいます。
『飯一食分くらい分けてあげられませんか?』
こう言われたら別に大人だったら分け与えられるだろう。
しかしだ。
『この国から離れた所で貧しい地域があるので、募金してくださいませんか?』
こう言われたらどうだろう?
恐らく相当な金持ちでない限りこうは思わないか?
"今自分ですら余裕がねぇのになんでそんな遠い奴らのために募金なんてせねばならんのだ"
別に良い悪いなんて求めてない。
ただ現実的にそんな事を出来るのは一部であり、目の前にいない以上そう思うのは当然だと俺は思う。
もしそう思わなくても構わん。
器が広く、根が優しい人間なのだろう。
⋯⋯そしてところが。
これが前提条件が変わったらどうだろう?
あなたは既に全てが満足いっています。
有り余るほどの金があります。
隣の国の為に寄付していただけませんか?
俺ならこう答える。
"勿論"と。なんなら二つ返事で答える。
何が言いたいのか?
自分のスケールが変わると、その行動のスケールも当然変わるということだ。
当たり前?
だがその当たり前を理解できない人間もまた多いと思う。
そう。まぁ、俺はつまりだ。
"この世界では国全員を養える訳なのだからその普通の思考回路の限りではないということだ"
勿論最初は違った。
積み上げて、積み上げて。
師に天才とまで言わしめたこの力で。
極めてやると決めたあの日から、気付けばスケールが大きくなり、今では冷静にこの世界を俯瞰できるようになるまでの自身の城を築いたわけだ。
そしてあのクソガキのせいで、冷静に国の奴隷のガキ共を見て不思議とこう思った。
"俺は何故コレを傍観しているのだと"
きっと昔なら当たり前のように助けていたのに、今では当たり前だと受け流し、さも当然のように振る舞う。
自分は現地人と何ら変わらない反応を示していたのだ。
ガキがもし大人まで生きれたら僥倖。
大人でも冒険者や護衛、農民として生きれたのなら幸せ。
⋯⋯俺にはどうこうできるのに。
最近気づいたが、800歳頃の話だ。
ていうかそもそも、自分が何歳まで生きたのかも覚えてはいないが。
まぁ気付いたら大量の子供を抱えて施設を作り、孤児院のようなモノを創り育てていた。
今俺が見ているらしい夢の自分だが、そんな時の話だ。
ちなみに、"あんまり思い出したくもない時の話だが"。
*
「ケルビン様!」
「様はいらん。お前の雇い主ではない」
「じゃあ⋯⋯なんて呼べばいいの?」
ガキ共を一人前にするために作ったこの施設で、薄汚れたガキ共が俺を見上げている。
何をしているんだ?俺は。
俺もとうとうおかしくなったのか?
「風呂に入るぞ」
ただ誰も嬉しそうではない。
理由は察する。
奴隷どころか一般人でも中々入れない風呂に入れるということは、何かしら自分たちが最悪な目に遭うかもしれないと思うからだ。
なんて感知能力だ。
「うわー!温っかい!」
水遊びをしているのを小さい椅子に座って読書に耽りながら視界に入れる俺。
ローマンがガキの時を思い出す。
ーーケルビン何やってるの!?
「⋯⋯⋯⋯」
⋯⋯アイツはもういない。
何を思い出してるんだか。
「ケルビンありがとー!!」
「さっさと汚れを落とせ。
お前たちに知識を与え、お前達に一般人として生きるくらいの人の道くらいは教えなければならん」
「難しい事ばっかで分かんないー!!」
いきなり200人のガキを集めたらそりゃこうなるか。
はぁ。
そうして時間は経過していく。
毎日、毎日。
別に錬金術だけでどうにかしていくわけではない。
この施設では子供たちが自立できるようになるために当番制を設け、様々な事を自分たちでやっていく。
その中で必要程度の取捨選択。
自分たちがどれだけ使ってどれだけ必要なのかを考えさせる数学能力をそこで身につけさせる。
当たり前だが、この世界では文字も読めるのは碌にいない。
俺も師から教わったが、読めるのは貴族だけ。
簡単な文字だけなら読めないこともないだろうがな。
なので、覚えさせるにもしっかり掲示板の概念を用意し、全員が常日頃文字に触れる機会を増やす。
俺の使わなくなった図書館もここで生きる。
言語というのは人類の歴史を歩む事他ならない。
ガキ共の興味を刺激させて意欲的に。
当然──その中に戦争の歴史もあった訳で。
*
「ケルビン!」
「何だその顔は」
読書をしていると大声で叫ばれる。
確か名前は⋯⋯アルデだったか。
12歳の少年。この大陸では珍しい黒い髪に親譲りだという赤い瞳。
大人になったらさぞかっこいいだろう。
「俺、戦争に行きたい!!」
「良いわけないだろう」
剣術も多少教えているが、確かに数百人もいる中で俺が覚えているのだから間違いなく才能はある。
だが。
「12歳で戦場に行ってどうなる」
「俺、ケルビンみたいに誰かを助けられるようになりたいんだ!」
「許可出来ん。せめて後5年だ」
「5年も待てないよ!」
「5年位すぐだ。それに、剣術や生きることに精一杯なのにどうやって生き延びて帰ってくるんだ」
「ケルビンなら簡単にやってのける!
俺もケルビンから教わったから出来る!」
「考えろ。いつも言っていることだろう」
「むぼーでしょ?
でも、こうやってやってる内に助けられる人が減っちゃうよ!」
はぁ。頭が痛い。
そうだった。
ガキというのは言うことを聞かない種族だ。
ーーケルビンみたいにさ!
「ふっ」
「どうしたの?ケルビン」
「いや。なんでもない」
だが許可できるものではない。
「今お前は俺から与えられて生活をしているだろう?」
「うん!」
「そんな立場のやつがどうやって人を救う?
せめて自立できるようになってからやるべきだ。
それまではどんな理由があろうと許さん」
俯きがちだが、仕方ない。
こうでも言わんと。
*
そしてまた──
「ケルビン様!!!!!」
扉を蹴破って滑りながら地に伏したのは、定期的に取引している商人だ。
「なんだ」
ただ事じゃない。
今までこんな事はなかった。
「アルデの事ですが」
「あぁ。しばらく森で遊んでいるらしいな」
「ち、違います」
ピタッと。俺の動きが止まる。
「報告では近くの森で俺が指定した範囲で遊んでいると聞いているが?」
「わ、私と一緒に⋯⋯」
嫌な予感がした。
商人は俺の湧き上がった感情によって魔力圧に押しつぶされる。
「申し訳ありません!!!!」
「申せ⋯⋯さっさと。俺がキレる前に」
「ま、街を見たいといったのです!」
「それで?」
「それですぐ近くの街まで連れて行ったのです!
見張っていたのですが突然姿を消しまして!」
「それで?」
「どうやら辺境の出兵に出るのが目的だったそうで──」
⋯⋯
⋯⋯⋯⋯。
「それで?」
「後は、申し訳ありません。宿舎に」
商人は全身引き裂かれているが、放置して俺はそのままその指定された宿舎へと向かう。
「あー少年ですよね?」
「あぁ」
「親御さんで?」
ーーケルビンはパパだろ!
「⋯⋯⋯⋯あぁ」
出会ったのは6歳だが、後数年もすれ──
そこにあったのは。
「いやー遺族の皆様にお渡し出来るのは腕だけでしてね。
誠に申し訳ありません」
俺の顔はどんな顔だったか。
覚えてはいない。
「今なんと?」
「え?知らなかったのですか?
この辺りはアレイスター教が土地を管理しておりまして」
「だからなんだと言うのだ」
「一応教典の定めとして黒髪は地獄の象徴ということでこう⋯⋯分かりますよね?」
あの商人は嘘をついていた。
出兵とガキは喜んでいったのだろうが、実際の目的地はアレイスター教とか言うこの禁忌の地。
商人も行き先までは知らなかったのだろうが、罪の軽減のために嘘をついた。
それに話を聞いていれば出兵と偽り、入信するよう仕向け、無視すればかなりの被害に遭うとも主張している。
どいつだ?どいつが俺の子供を殺した?
知らんぞ。
これが全ての元凶。
俺が人生で一度ブチ切れた話だ。
*
「っ゛⋯⋯ぇ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ォ゛ォ゛あ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛」
殺した。大量に殺した。
この国にいる人間を大量に。
ヴァーリを使ったのはいつぶりだ。
「獅子王、人間の輝きを見せてみろ」
お前は高潔で、誰よりも正義とやらを主張していた。
「てめぇの薄っぺらい正義はどうだ?」
いや。
「敬意を表さないといけないか。
お前は一人一人回ってその神聖力で嘘をついているかを見抜き、悪事を働いた事のある人間を全て殺した狂人だ」
「ハ゛ァ゛⋯⋯ハ゛ァ゛⋯⋯ハ゛ァ゛ッッ!゛!゛」
「あの時、俺との口論で答えられなかったのが、こうして返ってくるとは」
ほら。答えろ。
「化物はここにいるぞ。
お前たちの教典に書かれた魔王が降臨したぞ!」
そうだ。お前達に教えてやる。
「魔王⋯⋯ か゛か゛っ゛て゛こ゛い゛ょ゛」
俺の魔法で常時身体が溶けるように霧を作っていたのだが。
止めてやるか。
見下ろすやつの身体は物凄い勢いで修復を始める。
「アレイスター神とやらがいたら聞きたい。
人類は対立しかしないが、それでもなお力を与えるのか?
それとも、私という異分子を消したいのか」
「⋯⋯魔王の分際で、誰に話しかけている」
「ふん。お前に聞いてない。
何時の時代も、人類は協力をすることは無かった。
何れも闘争し、勝ったのものが秩序を決めた。
その秩序の中で争いは起き、滅びた。
お前たちの考えは読めるぞ。
魔法という力を使い、協力し、人類の文明を昇華させたい。
しかし目の前の力を使い争っている人間を見て哀れんでいる。
だからあそこにいるような愚か者に力を与え、どうにか導こうとしている。
だが駄目だ。観測者共」
人間を分かってはいない。
「何れも人間は協力などできない。
分かるだろう?お前らも俺らと同じ形を彩ったもの同士なのだから」
「貴様!!!主を侮辱するつもりか!!」
「黙れ。
わかるだろう?
お前達に分かるように言ってやってるんだ。
お前たちは見たいんだろう?
自分たちと同じような力、考えを持って創り出した生物──人類。
それらが協力しているところを。
繁栄しているところを。
だが干渉できないのだろう?
だからお前らに問うてやる。
あそこにいる色男に力を与え、私を倒してみせろ。
そうしたら納得してやるよ」
神の奇跡って奴を。
*
「なんだ、なんで今それを思い出す?」
んー⋯⋯やけに頭痛が酷いな。
と、頭に浮かぶのは──
『主よあの悪魔を滅ぼす為に下賤※※※※⋯⋯』
"お前の小指を斬ったやつが祈っている"
なんとなく浮かんだ言葉だった。
「⋯⋯⋯⋯」
これは夢なのか?
なんだ?やけに鮮明に言葉が。
「お兄ぃ?どったの?」
「あぁ、南。今行く」
今年ももう終わるってのに。
なんて不吉な夢を見たんだ。
起き上がってリビングへと向かう。
「おぉ、湊翔。昼寝なんて珍しいじゃないか」
「最近頑張り過ぎなんじゃないの?」
「いや、大した事はないよ。
それよりほら、最新の家電買ってきたよ!」
「また新しいの買ってきて⋯⋯」
「母さん手荒れ凄いじゃん?ちょっとでも収まるようにほら!」
「もうっ!」
文化祭が終わったら今年はあっという間だった。
いつものように夏休みはバカンスに行って⋯⋯いや、ほとんど事業ばっかりだったな。
後半なんてほとんど記憶がない。
南には昴のライブに行かせたし、父には直筆サインが入ったやつも渡した。
母には家電やら最新の化粧品やらを渡したし、拳哉にはまだまだ遊び盛りのゲームだのなんだの買って渡す。
母がケチケチするので旅行は行けない。
なのでどうこうはしないがやれる事は出来る限りする。
「ママ見て!」
「南ー?
ママ分かんないわよー最新のアイドルなんて」
「何でわかんないの?」
「みんな同じ人に見えるのよ」
「同じじゃないよ!
お兄ぃは分かるよね?」
「あぁ、分かるわかる」
でも母よ。
その気持ちはめちゃくちゃ分かる。
俺にも歌って踊ってるアイドルが同じ顔に見える。
「ほら!お兄ぃは分かってくれるよ!」
と、気付けばカウントダウンのお時間。
「ハッピーニューイヤー!!!」
2015年。
もう結構経った気がする。
短いようで早いな。
家族は笑っているし、空気も普通だ。
ただ、ただ何か。
"あの悪魔を"
嫌な予感というのは拭いきれない。
「ほらお兄ぃ、食べよ!」
「あ、あぁ」
「なーにそーちゃん!考え事?」
「いや、大丈夫」
俺の人生経験だ。
大体マジで嫌なことがある時の人間の勘は、外れないということだ。
あとがき
ーー
作者は前話をいい感じにかけた!と喜んでいました(笑)
また何かやらかした模様。ごめんなさい
何回も。
いや、何百?何千?
自分が何をして何をやってきたのかも覚えていない。
ただ、一つ覚えている事がある。
それは一度ブチ切れた記憶だ。
ローマン、カイアス。
実際には数百人ほどいる傑物を見送ってきた。
その内に、芽生えた物がある。
それは母性のようなものだ。
まぁ俺は男だから本来なら父性だが。
少し強く握れば死んでしまうような幼い子供たち。
ローマン。
あのガキが始まりだったのが運の尽きだ。
俺はそしてようやく⋯⋯昔の感覚を少し取り戻していた。
それは何か?
子供の豊かさだ。
想像してみてほしい。
それは何でもいいが、今、自分には生きていることですら限界な奴らがいる。
あ、当人と思って聞いてな?
あなたの隣に貧しい子がいます。
『飯一食分くらい分けてあげられませんか?』
こう言われたら別に大人だったら分け与えられるだろう。
しかしだ。
『この国から離れた所で貧しい地域があるので、募金してくださいませんか?』
こう言われたらどうだろう?
恐らく相当な金持ちでない限りこうは思わないか?
"今自分ですら余裕がねぇのになんでそんな遠い奴らのために募金なんてせねばならんのだ"
別に良い悪いなんて求めてない。
ただ現実的にそんな事を出来るのは一部であり、目の前にいない以上そう思うのは当然だと俺は思う。
もしそう思わなくても構わん。
器が広く、根が優しい人間なのだろう。
⋯⋯そしてところが。
これが前提条件が変わったらどうだろう?
あなたは既に全てが満足いっています。
有り余るほどの金があります。
隣の国の為に寄付していただけませんか?
俺ならこう答える。
"勿論"と。なんなら二つ返事で答える。
何が言いたいのか?
自分のスケールが変わると、その行動のスケールも当然変わるということだ。
当たり前?
だがその当たり前を理解できない人間もまた多いと思う。
そう。まぁ、俺はつまりだ。
"この世界では国全員を養える訳なのだからその普通の思考回路の限りではないということだ"
勿論最初は違った。
積み上げて、積み上げて。
師に天才とまで言わしめたこの力で。
極めてやると決めたあの日から、気付けばスケールが大きくなり、今では冷静にこの世界を俯瞰できるようになるまでの自身の城を築いたわけだ。
そしてあのクソガキのせいで、冷静に国の奴隷のガキ共を見て不思議とこう思った。
"俺は何故コレを傍観しているのだと"
きっと昔なら当たり前のように助けていたのに、今では当たり前だと受け流し、さも当然のように振る舞う。
自分は現地人と何ら変わらない反応を示していたのだ。
ガキがもし大人まで生きれたら僥倖。
大人でも冒険者や護衛、農民として生きれたのなら幸せ。
⋯⋯俺にはどうこうできるのに。
最近気づいたが、800歳頃の話だ。
ていうかそもそも、自分が何歳まで生きたのかも覚えてはいないが。
まぁ気付いたら大量の子供を抱えて施設を作り、孤児院のようなモノを創り育てていた。
今俺が見ているらしい夢の自分だが、そんな時の話だ。
ちなみに、"あんまり思い出したくもない時の話だが"。
*
「ケルビン様!」
「様はいらん。お前の雇い主ではない」
「じゃあ⋯⋯なんて呼べばいいの?」
ガキ共を一人前にするために作ったこの施設で、薄汚れたガキ共が俺を見上げている。
何をしているんだ?俺は。
俺もとうとうおかしくなったのか?
「風呂に入るぞ」
ただ誰も嬉しそうではない。
理由は察する。
奴隷どころか一般人でも中々入れない風呂に入れるということは、何かしら自分たちが最悪な目に遭うかもしれないと思うからだ。
なんて感知能力だ。
「うわー!温っかい!」
水遊びをしているのを小さい椅子に座って読書に耽りながら視界に入れる俺。
ローマンがガキの時を思い出す。
ーーケルビン何やってるの!?
「⋯⋯⋯⋯」
⋯⋯アイツはもういない。
何を思い出してるんだか。
「ケルビンありがとー!!」
「さっさと汚れを落とせ。
お前たちに知識を与え、お前達に一般人として生きるくらいの人の道くらいは教えなければならん」
「難しい事ばっかで分かんないー!!」
いきなり200人のガキを集めたらそりゃこうなるか。
はぁ。
そうして時間は経過していく。
毎日、毎日。
別に錬金術だけでどうにかしていくわけではない。
この施設では子供たちが自立できるようになるために当番制を設け、様々な事を自分たちでやっていく。
その中で必要程度の取捨選択。
自分たちがどれだけ使ってどれだけ必要なのかを考えさせる数学能力をそこで身につけさせる。
当たり前だが、この世界では文字も読めるのは碌にいない。
俺も師から教わったが、読めるのは貴族だけ。
簡単な文字だけなら読めないこともないだろうがな。
なので、覚えさせるにもしっかり掲示板の概念を用意し、全員が常日頃文字に触れる機会を増やす。
俺の使わなくなった図書館もここで生きる。
言語というのは人類の歴史を歩む事他ならない。
ガキ共の興味を刺激させて意欲的に。
当然──その中に戦争の歴史もあった訳で。
*
「ケルビン!」
「何だその顔は」
読書をしていると大声で叫ばれる。
確か名前は⋯⋯アルデだったか。
12歳の少年。この大陸では珍しい黒い髪に親譲りだという赤い瞳。
大人になったらさぞかっこいいだろう。
「俺、戦争に行きたい!!」
「良いわけないだろう」
剣術も多少教えているが、確かに数百人もいる中で俺が覚えているのだから間違いなく才能はある。
だが。
「12歳で戦場に行ってどうなる」
「俺、ケルビンみたいに誰かを助けられるようになりたいんだ!」
「許可出来ん。せめて後5年だ」
「5年も待てないよ!」
「5年位すぐだ。それに、剣術や生きることに精一杯なのにどうやって生き延びて帰ってくるんだ」
「ケルビンなら簡単にやってのける!
俺もケルビンから教わったから出来る!」
「考えろ。いつも言っていることだろう」
「むぼーでしょ?
でも、こうやってやってる内に助けられる人が減っちゃうよ!」
はぁ。頭が痛い。
そうだった。
ガキというのは言うことを聞かない種族だ。
ーーケルビンみたいにさ!
「ふっ」
「どうしたの?ケルビン」
「いや。なんでもない」
だが許可できるものではない。
「今お前は俺から与えられて生活をしているだろう?」
「うん!」
「そんな立場のやつがどうやって人を救う?
せめて自立できるようになってからやるべきだ。
それまではどんな理由があろうと許さん」
俯きがちだが、仕方ない。
こうでも言わんと。
*
そしてまた──
「ケルビン様!!!!!」
扉を蹴破って滑りながら地に伏したのは、定期的に取引している商人だ。
「なんだ」
ただ事じゃない。
今までこんな事はなかった。
「アルデの事ですが」
「あぁ。しばらく森で遊んでいるらしいな」
「ち、違います」
ピタッと。俺の動きが止まる。
「報告では近くの森で俺が指定した範囲で遊んでいると聞いているが?」
「わ、私と一緒に⋯⋯」
嫌な予感がした。
商人は俺の湧き上がった感情によって魔力圧に押しつぶされる。
「申し訳ありません!!!!」
「申せ⋯⋯さっさと。俺がキレる前に」
「ま、街を見たいといったのです!」
「それで?」
「それですぐ近くの街まで連れて行ったのです!
見張っていたのですが突然姿を消しまして!」
「それで?」
「どうやら辺境の出兵に出るのが目的だったそうで──」
⋯⋯
⋯⋯⋯⋯。
「それで?」
「後は、申し訳ありません。宿舎に」
商人は全身引き裂かれているが、放置して俺はそのままその指定された宿舎へと向かう。
「あー少年ですよね?」
「あぁ」
「親御さんで?」
ーーケルビンはパパだろ!
「⋯⋯⋯⋯あぁ」
出会ったのは6歳だが、後数年もすれ──
そこにあったのは。
「いやー遺族の皆様にお渡し出来るのは腕だけでしてね。
誠に申し訳ありません」
俺の顔はどんな顔だったか。
覚えてはいない。
「今なんと?」
「え?知らなかったのですか?
この辺りはアレイスター教が土地を管理しておりまして」
「だからなんだと言うのだ」
「一応教典の定めとして黒髪は地獄の象徴ということでこう⋯⋯分かりますよね?」
あの商人は嘘をついていた。
出兵とガキは喜んでいったのだろうが、実際の目的地はアレイスター教とか言うこの禁忌の地。
商人も行き先までは知らなかったのだろうが、罪の軽減のために嘘をついた。
それに話を聞いていれば出兵と偽り、入信するよう仕向け、無視すればかなりの被害に遭うとも主張している。
どいつだ?どいつが俺の子供を殺した?
知らんぞ。
これが全ての元凶。
俺が人生で一度ブチ切れた話だ。
*
「っ゛⋯⋯ぇ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ォ゛ォ゛あ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛」
殺した。大量に殺した。
この国にいる人間を大量に。
ヴァーリを使ったのはいつぶりだ。
「獅子王、人間の輝きを見せてみろ」
お前は高潔で、誰よりも正義とやらを主張していた。
「てめぇの薄っぺらい正義はどうだ?」
いや。
「敬意を表さないといけないか。
お前は一人一人回ってその神聖力で嘘をついているかを見抜き、悪事を働いた事のある人間を全て殺した狂人だ」
「ハ゛ァ゛⋯⋯ハ゛ァ゛⋯⋯ハ゛ァ゛ッッ!゛!゛」
「あの時、俺との口論で答えられなかったのが、こうして返ってくるとは」
ほら。答えろ。
「化物はここにいるぞ。
お前たちの教典に書かれた魔王が降臨したぞ!」
そうだ。お前達に教えてやる。
「魔王⋯⋯ か゛か゛っ゛て゛こ゛い゛ょ゛」
俺の魔法で常時身体が溶けるように霧を作っていたのだが。
止めてやるか。
見下ろすやつの身体は物凄い勢いで修復を始める。
「アレイスター神とやらがいたら聞きたい。
人類は対立しかしないが、それでもなお力を与えるのか?
それとも、私という異分子を消したいのか」
「⋯⋯魔王の分際で、誰に話しかけている」
「ふん。お前に聞いてない。
何時の時代も、人類は協力をすることは無かった。
何れも闘争し、勝ったのものが秩序を決めた。
その秩序の中で争いは起き、滅びた。
お前たちの考えは読めるぞ。
魔法という力を使い、協力し、人類の文明を昇華させたい。
しかし目の前の力を使い争っている人間を見て哀れんでいる。
だからあそこにいるような愚か者に力を与え、どうにか導こうとしている。
だが駄目だ。観測者共」
人間を分かってはいない。
「何れも人間は協力などできない。
分かるだろう?お前らも俺らと同じ形を彩ったもの同士なのだから」
「貴様!!!主を侮辱するつもりか!!」
「黙れ。
わかるだろう?
お前達に分かるように言ってやってるんだ。
お前たちは見たいんだろう?
自分たちと同じような力、考えを持って創り出した生物──人類。
それらが協力しているところを。
繁栄しているところを。
だが干渉できないのだろう?
だからお前らに問うてやる。
あそこにいる色男に力を与え、私を倒してみせろ。
そうしたら納得してやるよ」
神の奇跡って奴を。
*
「なんだ、なんで今それを思い出す?」
んー⋯⋯やけに頭痛が酷いな。
と、頭に浮かぶのは──
『主よあの悪魔を滅ぼす為に下賤※※※※⋯⋯』
"お前の小指を斬ったやつが祈っている"
なんとなく浮かんだ言葉だった。
「⋯⋯⋯⋯」
これは夢なのか?
なんだ?やけに鮮明に言葉が。
「お兄ぃ?どったの?」
「あぁ、南。今行く」
今年ももう終わるってのに。
なんて不吉な夢を見たんだ。
起き上がってリビングへと向かう。
「おぉ、湊翔。昼寝なんて珍しいじゃないか」
「最近頑張り過ぎなんじゃないの?」
「いや、大した事はないよ。
それよりほら、最新の家電買ってきたよ!」
「また新しいの買ってきて⋯⋯」
「母さん手荒れ凄いじゃん?ちょっとでも収まるようにほら!」
「もうっ!」
文化祭が終わったら今年はあっという間だった。
いつものように夏休みはバカンスに行って⋯⋯いや、ほとんど事業ばっかりだったな。
後半なんてほとんど記憶がない。
南には昴のライブに行かせたし、父には直筆サインが入ったやつも渡した。
母には家電やら最新の化粧品やらを渡したし、拳哉にはまだまだ遊び盛りのゲームだのなんだの買って渡す。
母がケチケチするので旅行は行けない。
なのでどうこうはしないがやれる事は出来る限りする。
「ママ見て!」
「南ー?
ママ分かんないわよー最新のアイドルなんて」
「何でわかんないの?」
「みんな同じ人に見えるのよ」
「同じじゃないよ!
お兄ぃは分かるよね?」
「あぁ、分かるわかる」
でも母よ。
その気持ちはめちゃくちゃ分かる。
俺にも歌って踊ってるアイドルが同じ顔に見える。
「ほら!お兄ぃは分かってくれるよ!」
と、気付けばカウントダウンのお時間。
「ハッピーニューイヤー!!!」
2015年。
もう結構経った気がする。
短いようで早いな。
家族は笑っているし、空気も普通だ。
ただ、ただ何か。
"あの悪魔を"
嫌な予感というのは拭いきれない。
「ほらお兄ぃ、食べよ!」
「あ、あぁ」
「なーにそーちゃん!考え事?」
「いや、大丈夫」
俺の人生経験だ。
大体マジで嫌なことがある時の人間の勘は、外れないということだ。
あとがき
ーー
作者は前話をいい感じにかけた!と喜んでいました(笑)
また何かやらかした模様。ごめんなさい
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※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
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隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
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能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
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そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
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最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
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※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
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