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国内無双編
奇将と鬼将
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「伊崎さん、こんな正月からスーツなんて珍しいじゃないですか」
珍しいな。
この少年はこんなかしこまった服装なんてしないはずだけど。
「今日言わなかったか?」
「あ、なんかありましたっけ?」
「林田議員から会いたいと言われてね」
携帯でその林田とかいう議員を調べる。
あ、あった。
「え?この人、伊崎さんと合います?」
調べればかなり過激な人間だ。
破天荒な言動で注目を集め、強烈なリーダーとして東京で闘ったが大成しなかった政治家。
まぁ、でも合っているのか?
「会いたいと俺が言われたんだ。
それに、割と俺と意見が似ている人間だ。
敬意くらいはある」
その時、思わず口からくわえていた煙草が落ちた。
「おいおい!
めちゃくちゃタバコ落ちてるって!」
「え?あ、あぁ!」
拾いながら俺は思う。
この人に、敬意なんて感情があった⋯⋯だって!?
「伊崎さん、失礼」
「お、おい!」
うん。熱はないようだ。
え?
⋯⋯⋯⋯え?
ええっ?
*
あれよあれよという間に到着した料亭。
かなり警備も多い場所だが、このエロガキと共に慣れた所作で挨拶をしながら入っていく。
「林田さんはこちらです」
「おう、案内ご苦労」
おいエロガキ。
今の人、マジで?って顔してたね?
まぁ確かに俺でも真正面で向き合ったときは覇気があったから気持ちはわかるけど。
なんなら初めてあった時なんて軽くちびっ⋯⋯くそ!
扉の先には、もう老人とも呼べる男が居た。
しかし、初めて会うが何か闘志のようなものがそこにはある。
まだまだこの国を捨てたものではないと言いたいほどの。
詳しくないし、この人の事は顔でしか知らない。
けど、政治家としては稀有なくらい迫力がある。
思わずツバを飲み込みそうだ。
もう少し若かったらどれくらいの男だったんだろうか。
「座りなさい。
あぁ、伊崎湊翔くんと、側近と表の顔を担当している石田龍司くんだね?」
「さすが早いな」
「当たり前さ。
私もただ老いぼれて死にに行く程愚かではない」
「座るよ」
「あぁ。君も掛けなさい」
「あ、ありがとうございます」
うへー。こっわ。
やっぱこのエロガキ、胆力が違い過ぎるわ。
狂ってる?まぁ最初からヤバかったし。
って、とりあえず話を聞かないと。
「酒くらい飲めるだろう?」
「いいんですか?もう老人にはドクターストップでもかかりそうなものですが」
「ほう?私には敬語を使ってくれるのか?」
「⋯⋯個人的に尊敬しています」
「ほっ。意外と律儀じゃないか。
聞いていた情報と少し違うもんだから驚いたよ」
「同じ言葉にはなりますが、個人的にはあなたがこの国の最後の国境だと思っていましたから」
林田議員の顔色が綺麗に皺が広がっていく。
あんな笑ってるの初めて見たかも。
「やはり呼んでよかった。呑めるか?」
無言で伊崎さんはそのまま一回で飲み切る。
「大企業の会長達が君の名前を出していてね。
一度地獄に行く前に拝みたいと思っていたんだ、侍魂に火を点けた未来の将軍を」
「俺は直接関わろうなんて思ってませんよ」
「何を言う。聡いだろう?
無理に決まってるのは承知していると思うが」
「分かっていても俺は女とイチャイチャしているだけで十分ですよ」
「⋯⋯眼はそう言ってないが?」
や、やべぇ。
二人とも威圧感があり過ぎる。
心臓バクバクするのが止まらないんだけど!
助けて!
護衛だけど逃げ出したい!
「祖国を盛り上げたい。非常に熱い言葉だ。
私も君のような若い侍がまだ残っている事に感嘆の意を表したい」
「その件については俺も素直に頂きます」
「ふっ、良い若者だ。
思わず嬉しくなってしまうな。
そんな聡く将来を見据える投資家でもある伊崎くんに一つ聞きたい」
ゆっくりとグラスを置いた林田議員は。
「今の日本をどう思う?」
「随分抽象的ですね」
「だが聡い君になら、何が言いたいかを理解してくれると思ってる」
⋯⋯やべぇ。何もわからん!
何が言いたいんだ!?この爺さん!
「予想外でしたが──」
え?わかんの!?
やっぱこのエロガキ、頭いいのかよ!
「水道法改正の件ですか」
「さすが早いな」
何言ってるんだ?この二人は。
「予想外と言ったね?」
「俺の知っている話ではまだ先になると思っていたことなので」
「なるほど。
既に華国から話はあった。
在日している一部の人間の利権の為に動き出している。
君なら私の心中察してくれると思ってもいいかな?
どうだ」
「やはりもう侵食されているのですね」
何が?華国が!?どういうことだ?
「あぁ。
だからもう一度訊ねよう⋯⋯今の日本をどう思う」
すると伊崎さんは俺の方を向く。
「一本」
「あ、あぁ」
素早くライターでつける。
「ふぅ⋯⋯そうですね」
「実は私はね、今回この意見を君の口から聞いてみるために呼んだんだ」
「そうですか。
なら、しっかり答えないと」
10秒、30秒、1分。
煙草の煙が立ち上る。
「個人的ですが」
「ほう」
「政治、元は人の上に立つ人間は白い人間ではやっていけないというのが意見です」
「それは?」
「我々が全員人間だからです」
「感情があり、各々別の思考がある」
「はい。
俺はその中でも人間にある欲望は絶対に切っても切り離せないモノだと考えます」
「何歳になっても消えぬモノだな」
「ええ。
例えるなら、真っ白な人間の導きは光り輝く太陽」
「しかし影は大きく、闇も深い」
「その通り。
更に面白いことを言えば、輝いている人間はそのことに気付かない。
そして、近い人間はいたかもしれませんが、恐らく人間でそこまでの境地に至れた人間は一人としていないと思います」
「続けなさい」
「この理論と同じくして黒い方は地獄そのものです。
なので俺は清濁併せ呑む存在⋯⋯これをリーダーと呼びます」
「具体的には?」
「政治家、もっと言えば党や関連する人間たちをまとめるには綺麗事ではまとまる訳がない。
至極当然。
口からは綺麗な言葉を吐くかもしれませんが、事実そんな事はない」
「⋯⋯⋯⋯」
「だから彼らの要望も少なからず聞かなければならない。
しかし国民はその役職についたのだからやれと言う。
自分たちは金、社会的な地位を得る為に競争し、不正をする人間、ゴマをする人間、媚を売るために性別を使う人間がゴマンといるのに⋯⋯です」
「まるで見てきたかのような物言いだな。
まぁ運営もしているのだから知っていて当然だな」
「えぇ。ですが──」
伊崎さんは余裕たっぷり煙草を吸い、吐きながら悲しそうに語る。
「今の人間たちはその併せ呑む事のその境界線⋯⋯それがまるで無くなってしまったのが問題だと思います」
俺は今何を見ているんだろうか。
まるで、二人の老人が今の国を哀れんでるようにすら見える。
この人、まだ17歳だぞ?
なんで、なんでそんな顔ができるんだ?
俺がその歳の時、何をやっていたのか。
殴り合ってた。
エロガキではあるけど、学ぶべきところが本当に多い。
この人は。
まぁ、クズだけど。
少し間をおいて、林田議員は笑って小刻みに頷きながらお茶を一口飲んだ。
「名だたる大企業の会長達が認めるのが良くわかった。
なるほど、噂以上の人間だ」
「あなたにそう言ってもらえるとは嬉しい限りです」
「なーに。
もうすぐ倒れるような老人の言葉に意味はない」
「俺はあなたの言葉で印象に残っている言葉があります」
「君のような若者に残せた言葉があったかな?」
「今日世界が滅びるとしても、私は未来の為に土を耕す」
「あはは。
もう10年以上も前の言葉ではないか」
「まさに言葉通りです。
今、その耕すという行為も許されなくなってきます」
「あぁ。だが、もう力はない」
「⋯⋯本当にそうでしょうか?」
スッと伊崎さんは机の上に変な豪華な小瓶を置いた。
「これは?」
「殺人なんてするつもりはありません。
もし、まだこの国の為に立ち上がりたいと思ったら、是非飲むことをおすすめします。
──今日の自分の回答が腹落ちしたのなら」
やべ、立ち上がらないと。
「大丈夫か?石田」
「あ、は、はい!」
「少なくとも自分は、まだ諦めたつもりはありません」
先に行く伊崎さんに動揺しながら、慌てて一礼して俺も出ていく。
「石田」
「は、はい!」
「緊張し過ぎだ。
うんこ行きたいんだろう?行ってこい」
なんでバレた⋯⋯。
恥ずかしくなったが、俺はトイレに行って伊崎さんを30分近く待たせるという地獄を味わう事になったのである。
珍しいな。
この少年はこんなかしこまった服装なんてしないはずだけど。
「今日言わなかったか?」
「あ、なんかありましたっけ?」
「林田議員から会いたいと言われてね」
携帯でその林田とかいう議員を調べる。
あ、あった。
「え?この人、伊崎さんと合います?」
調べればかなり過激な人間だ。
破天荒な言動で注目を集め、強烈なリーダーとして東京で闘ったが大成しなかった政治家。
まぁ、でも合っているのか?
「会いたいと俺が言われたんだ。
それに、割と俺と意見が似ている人間だ。
敬意くらいはある」
その時、思わず口からくわえていた煙草が落ちた。
「おいおい!
めちゃくちゃタバコ落ちてるって!」
「え?あ、あぁ!」
拾いながら俺は思う。
この人に、敬意なんて感情があった⋯⋯だって!?
「伊崎さん、失礼」
「お、おい!」
うん。熱はないようだ。
え?
⋯⋯⋯⋯え?
ええっ?
*
あれよあれよという間に到着した料亭。
かなり警備も多い場所だが、このエロガキと共に慣れた所作で挨拶をしながら入っていく。
「林田さんはこちらです」
「おう、案内ご苦労」
おいエロガキ。
今の人、マジで?って顔してたね?
まぁ確かに俺でも真正面で向き合ったときは覇気があったから気持ちはわかるけど。
なんなら初めてあった時なんて軽くちびっ⋯⋯くそ!
扉の先には、もう老人とも呼べる男が居た。
しかし、初めて会うが何か闘志のようなものがそこにはある。
まだまだこの国を捨てたものではないと言いたいほどの。
詳しくないし、この人の事は顔でしか知らない。
けど、政治家としては稀有なくらい迫力がある。
思わずツバを飲み込みそうだ。
もう少し若かったらどれくらいの男だったんだろうか。
「座りなさい。
あぁ、伊崎湊翔くんと、側近と表の顔を担当している石田龍司くんだね?」
「さすが早いな」
「当たり前さ。
私もただ老いぼれて死にに行く程愚かではない」
「座るよ」
「あぁ。君も掛けなさい」
「あ、ありがとうございます」
うへー。こっわ。
やっぱこのエロガキ、胆力が違い過ぎるわ。
狂ってる?まぁ最初からヤバかったし。
って、とりあえず話を聞かないと。
「酒くらい飲めるだろう?」
「いいんですか?もう老人にはドクターストップでもかかりそうなものですが」
「ほう?私には敬語を使ってくれるのか?」
「⋯⋯個人的に尊敬しています」
「ほっ。意外と律儀じゃないか。
聞いていた情報と少し違うもんだから驚いたよ」
「同じ言葉にはなりますが、個人的にはあなたがこの国の最後の国境だと思っていましたから」
林田議員の顔色が綺麗に皺が広がっていく。
あんな笑ってるの初めて見たかも。
「やはり呼んでよかった。呑めるか?」
無言で伊崎さんはそのまま一回で飲み切る。
「大企業の会長達が君の名前を出していてね。
一度地獄に行く前に拝みたいと思っていたんだ、侍魂に火を点けた未来の将軍を」
「俺は直接関わろうなんて思ってませんよ」
「何を言う。聡いだろう?
無理に決まってるのは承知していると思うが」
「分かっていても俺は女とイチャイチャしているだけで十分ですよ」
「⋯⋯眼はそう言ってないが?」
や、やべぇ。
二人とも威圧感があり過ぎる。
心臓バクバクするのが止まらないんだけど!
助けて!
護衛だけど逃げ出したい!
「祖国を盛り上げたい。非常に熱い言葉だ。
私も君のような若い侍がまだ残っている事に感嘆の意を表したい」
「その件については俺も素直に頂きます」
「ふっ、良い若者だ。
思わず嬉しくなってしまうな。
そんな聡く将来を見据える投資家でもある伊崎くんに一つ聞きたい」
ゆっくりとグラスを置いた林田議員は。
「今の日本をどう思う?」
「随分抽象的ですね」
「だが聡い君になら、何が言いたいかを理解してくれると思ってる」
⋯⋯やべぇ。何もわからん!
何が言いたいんだ!?この爺さん!
「予想外でしたが──」
え?わかんの!?
やっぱこのエロガキ、頭いいのかよ!
「水道法改正の件ですか」
「さすが早いな」
何言ってるんだ?この二人は。
「予想外と言ったね?」
「俺の知っている話ではまだ先になると思っていたことなので」
「なるほど。
既に華国から話はあった。
在日している一部の人間の利権の為に動き出している。
君なら私の心中察してくれると思ってもいいかな?
どうだ」
「やはりもう侵食されているのですね」
何が?華国が!?どういうことだ?
「あぁ。
だからもう一度訊ねよう⋯⋯今の日本をどう思う」
すると伊崎さんは俺の方を向く。
「一本」
「あ、あぁ」
素早くライターでつける。
「ふぅ⋯⋯そうですね」
「実は私はね、今回この意見を君の口から聞いてみるために呼んだんだ」
「そうですか。
なら、しっかり答えないと」
10秒、30秒、1分。
煙草の煙が立ち上る。
「個人的ですが」
「ほう」
「政治、元は人の上に立つ人間は白い人間ではやっていけないというのが意見です」
「それは?」
「我々が全員人間だからです」
「感情があり、各々別の思考がある」
「はい。
俺はその中でも人間にある欲望は絶対に切っても切り離せないモノだと考えます」
「何歳になっても消えぬモノだな」
「ええ。
例えるなら、真っ白な人間の導きは光り輝く太陽」
「しかし影は大きく、闇も深い」
「その通り。
更に面白いことを言えば、輝いている人間はそのことに気付かない。
そして、近い人間はいたかもしれませんが、恐らく人間でそこまでの境地に至れた人間は一人としていないと思います」
「続けなさい」
「この理論と同じくして黒い方は地獄そのものです。
なので俺は清濁併せ呑む存在⋯⋯これをリーダーと呼びます」
「具体的には?」
「政治家、もっと言えば党や関連する人間たちをまとめるには綺麗事ではまとまる訳がない。
至極当然。
口からは綺麗な言葉を吐くかもしれませんが、事実そんな事はない」
「⋯⋯⋯⋯」
「だから彼らの要望も少なからず聞かなければならない。
しかし国民はその役職についたのだからやれと言う。
自分たちは金、社会的な地位を得る為に競争し、不正をする人間、ゴマをする人間、媚を売るために性別を使う人間がゴマンといるのに⋯⋯です」
「まるで見てきたかのような物言いだな。
まぁ運営もしているのだから知っていて当然だな」
「えぇ。ですが──」
伊崎さんは余裕たっぷり煙草を吸い、吐きながら悲しそうに語る。
「今の人間たちはその併せ呑む事のその境界線⋯⋯それがまるで無くなってしまったのが問題だと思います」
俺は今何を見ているんだろうか。
まるで、二人の老人が今の国を哀れんでるようにすら見える。
この人、まだ17歳だぞ?
なんで、なんでそんな顔ができるんだ?
俺がその歳の時、何をやっていたのか。
殴り合ってた。
エロガキではあるけど、学ぶべきところが本当に多い。
この人は。
まぁ、クズだけど。
少し間をおいて、林田議員は笑って小刻みに頷きながらお茶を一口飲んだ。
「名だたる大企業の会長達が認めるのが良くわかった。
なるほど、噂以上の人間だ」
「あなたにそう言ってもらえるとは嬉しい限りです」
「なーに。
もうすぐ倒れるような老人の言葉に意味はない」
「俺はあなたの言葉で印象に残っている言葉があります」
「君のような若者に残せた言葉があったかな?」
「今日世界が滅びるとしても、私は未来の為に土を耕す」
「あはは。
もう10年以上も前の言葉ではないか」
「まさに言葉通りです。
今、その耕すという行為も許されなくなってきます」
「あぁ。だが、もう力はない」
「⋯⋯本当にそうでしょうか?」
スッと伊崎さんは机の上に変な豪華な小瓶を置いた。
「これは?」
「殺人なんてするつもりはありません。
もし、まだこの国の為に立ち上がりたいと思ったら、是非飲むことをおすすめします。
──今日の自分の回答が腹落ちしたのなら」
やべ、立ち上がらないと。
「大丈夫か?石田」
「あ、は、はい!」
「少なくとも自分は、まだ諦めたつもりはありません」
先に行く伊崎さんに動揺しながら、慌てて一礼して俺も出ていく。
「石田」
「は、はい!」
「緊張し過ぎだ。
うんこ行きたいんだろう?行ってこい」
なんでバレた⋯⋯。
恥ずかしくなったが、俺はトイレに行って伊崎さんを30分近く待たせるという地獄を味わう事になったのである。
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