【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

閑話:会長、キレる

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 諸星本社、会長室。
 そこでは地獄の祭典が開かれていた。

 「伊崎くんは何処にいる!?」

 「落ち着いてください会長!」

 「平野、お前は聞いてたか?」

 人でも殺せそうな鋭い眼光に平野は視線をそらす。

 そう。
 伊崎は秘書たちには内々の知らせは届けていたのだ。

 平野は仰け反りながら怒号を受け入れる。

 ──事故る前に。
 
 ドガン!と机を何度も叩きつけ、諸星会長は立ち上がり、今にも出掛けようとする。

 「会長」

 平野は止める。
 会長の性格は平野が一番理解しているから。

 この状態であれば、間違いなく海外へ飛び、伊崎の元へと行くだろうと分かっているからだ。

 だが──。
 諸星会長はこれでもかというほど覇気を出し、振り向きざま。

 「お前と私の仲だろう!?
 なぜ言わなかった!!!!」

 修羅だ。
 現代に海外を駆け回った鬼に戻っている。

 平野は昔のことを思い出しながら、引き攣りながら⋯⋯頭を下げる。

 「申し訳ありません。
 伊崎くんからこれでもかというほど口止めを」

 「そんなものはあってないようなものだ!!
 伊崎くんの側近ではない!!!
 お前は私の側近だ!!

 だからお前に何かあれば私が幾度も掛け合っただろう!!

 この案件がどれだけ私達の支えになっているのか。

 お前は理解しているのか!!!!」

 確かに。
 現在、諸星グループの収益は出会った当初よりも株価は上がり続け、グローバル化へと向かっている。

 新素材の検証も上手く行き、宇宙方面にも手が届きそうな段階へと届きそうな立ち位置なのだ。

 伊崎さーん。助けてください!!
 私の首が取れまーす!!!

 平野も理解している。
 現在、廃材となる部分も伊崎が悪魔の取引だと言って再利用資材として提供してくれていることも。

 そのおかげで、赤字はほとんど消え、懐も株価も、地位も、世界的にもほぼ伊崎の力でなし得ているに近いことを。

 白波より恩恵を受けているのはこの諸星であることは平野の調査で判明している。

 「今から海外行く!!
 さっさとフライトの準備をしろ!!」

 「無理です!伊崎さんがどこにいるのかも判明していないのですよ!?」

 「いいからやれ!!
 どうせエリックのところだろう!?
 プロジェクトゼウス⋯⋯神話のような事実が起こりうるに決まってる!!

 電力が有限から無限だぞ!?
 その意味が分からないなんぞ経営を辞めろ!!」

 ヒー!と、平野はお手上げ。

 その時。

 「父さん⋯⋯え?」

 入ってきたのはポカンとした様子の礼二。

 「ちょちょ!父さん!!」

 平野のスーツがしわくちゃになっているのを見た礼二はただ事じゃないと間に入って止める。

 が、すぐにそれは会長によって振り払われる。

 「黙れ!!今から海外に行く!」

 「ちょ!どういうことだよ!」

 「礼二様、ここは私がどうにかしますので⋯⋯」

 「いや、どう考えてもおかしいです!」

 平野は正論だと思いながらも会長は制御不能。

 そして何も知らない礼二にこの話は出来ないと頭の中では冷静になりながらもどうしたらいいか分からなくなっていた。

 「礼二!
 お前はこの半年で利益を取って来てないぞ!
 さっさといかんか!!」

 「父さん!」

 「黙らんか!!」

 ここ最近、諸星会長が猛獣のように戻ってからと言うもの、ここまで荒れることはなかった為か、礼二もそのすさまじいオーラに圧倒されている。

 「私が倒れた時は利益利益言ってたのは口だけか!?

 私よりも出せていないのによく呑気に喋ってられるな!!」
 
 会長、それは言わないお約束では!?

 平野は最近低迷している礼二の状態を知っている為、尚のこと胃が痛い。

 「⋯⋯っ」

 「さっさと出ていけ!!」

 





 「白波の小僧、お前はどう見る?」

 それから一時間もしない内に、諸星と白波会長を含めた大勢のトップが集められた。

 「伊崎くんが取り込まれるという懸念についてですか?」

 水を一口飲み、白波会長は落ち着いた返答を返す。

 「あぁ。
 くそっ、うちの平野が知っていたようだが、堅く口止めされていたとかなんとかで出遅れた!」

 後ろで並ぶ側近たちは皆知っていた。
 全員が重苦しい顔で俯いている。

 「海外に飛んだところで、我々が受け入れをしてくれるかは怪しいのでは?」

 「そこは日本式の粘り強さで」

 「まずいでしょう?」

 「そんな事を言ってる場合ではない。
 向こうはある意味──彼と気が合いそうな国柄だ」

 そう。
 既に伊崎の性豪ぶりは日本で知らない重役はいない。

 週に何回と数えられるのを超えた頻度でクラブのVVIPルームに出向き、女優やらモデルの女の子と呑んでヤりまくっているのを知っているからだ。

 それはクレジットカードや従業員情報で言質すら取れるほどだ。

 18歳までの間に、ポイントカードで高級車が何台買えるか分かったものではない。

 「それは知っています。
 私ですら冷や汗をかいたほどですから」

 白波会長がそう言うと、隣で聞いていた松前も気まずそうに反応する。

 「娘もお手つきされてから様子が変だ。
 毎日のようにクラブに行ってはSPから変わったと。 

 あんな尾淑やかに育った娘が、絶叫をあげて⋯⋯。

 露出もこれ程変わるかというほどだ。
 父親としては穏やかじゃない。
 ハーレムくらいは⋯⋯なんて思っていたが、あの性豪は常人じゃない。
 
 我々全員が家族になりそうな勢いだぞ」

 一瞬空気は重くなるが、それよりも自分たちの利益が危ぶまれる事に全員が真剣な眼差しで顔を伏せる。

 「これで伊崎くんが向こうに移住を視野に入れたないように、どうにかするぞ」

 「諸星さん、石田くんの電話は」

 「避けられている。
 彼の性格上、利益があるなら⋯⋯なんて思ったが、やはり伊崎くんが止めているだろう」

 「これではどうしようもないですね」

 「あぁ」

 この場にいた全員、嵐が通り過ぎるとその静けさに恐ろしいと感じるようになったのはいつぶりだろうか、なんて思う会長たちであった。
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