177 / 247
世界征服編
観光
しおりを挟む
「⋯⋯本当に大丈夫ですか?」
通訳の心配そうな顔。
「なに、俺が問題児みたいな言い方しやがって」
そうだろう?と、まぁ言いたげな通訳の心情を感じた俺は若干理解できないが、まぁそれはそれで良いだろう。
もう俺はそもそも一般人ではないのだから、逆に仕方ないというものだろ?
人生でもう負ける事はないと思っていたが、当初の目標は完全に失敗だ。
認めよう。
この私が完璧に敗北したのは数百年ぶりだ。
「自分、付いていかなくて本当に大丈夫ですか?」
真っ青なこいつの顔も理解できる。
今じゃほぼ俺はこいつありきで生活をしていたからな。
貴族が突然普通校に入学するようなものか。
「問題ない。
とりあえず、連絡が仮につかなくなった場合、一ヶ月程で探してくれ」
「不穏すぎますって。
誰か付けましょうよ」
「そうしたいのは山々だがな」
どうやらかなりセキュリティが厳しいのか、潜入するのに一苦労しそうだ。
「とりあえず、久しぶりの底辺っぽい感じで行ってくるわ」
手に持つデカイルイヴォンバッグを肩に掛け、俺は踵を返してテクテク歩いてお別れだ。
「⋯⋯あ、煙草忘れた」
「はぁぁ、伊崎さん!!」
ヒュウ、とジャストなタイミングで俺の出した掌に乗る煙草の箱。
──たく俺はいつも締まらねぇな。
*
「とりあえず着いたか」
ゴールデンゲートにあるスーパーに到着。
正直、俺的に能力で飯や飲み物にはあまり困るタイプではないが、まぁここで買っとく必要はあるだろう。
錬金術は見ただけで作り直したり同じものを作れるからこうして散策したりするのも理由が割とあるって事だ。
飲み物コーナー、食料コーナーを見ると、日本とは物価もそうだが飲み物のデカさが違いすぎて面白くなってく。
「あら、アジアの方がいるなんて珍しいわね」
「これから旅行に行くんだ」
「いいわね、どこに行くの?」
「海岸線を辿って、遥か向こうさ」
「ドライブかい?
あっちには何もないけどねぇ」
「えぇ。
ここのパンは美味しいね、これ2つ貰っても?」
「なーに言ってるの。
私がしっかり作ってるんだから当たり前じゃない?」
「笑顔がお似合いで」
「もうっ!」
スーパー並びにある個人店でパンを一気に買い込み、外に出る。
結構袋いっぱいだな。
さて、とりあえず亜空間に入れるのはいいが⋯⋯お、いたいた。
「予約空いてる?」
「空いてるさ、目的地は?」
「スタンプビーチの方だな」
「オイオイ、正気か?
相当金なら──」
ドガンと、俺は鞄を開けて運転手に見せる。
「何悪いことしたんだ?
まぁ金をさえ貰えれば俺は構わねぇが」
「これから色々用事があるんでね」
唸るエンジン音と共に、俺は頬杖つきながら窓の外を眺める。
*
「結構綺麗だろ?」
「あぁ。さすがだな」
橋の上を走る車から眺める景色は、正直絶景だ。
霧と海、そしてそれに溶け込む都市部。
どれをとっても美しい。
日本にもこういう場所はあるのだろうが、今の所見たことがない。
「というより兄ちゃん、なんでこんな遠くまで行くんだ?」
「悪魔儀式って聞いたことある?」
まぁ馬鹿な方がいいだろう。
「悪魔ぁ?なんでそんなオカルトな事を?
エクソシストに任せりゃいいだろ?」
と、ミラー越しに何やら彼は俺見るなり察したように笑う。
「なるほどな。
その鞄にある札束で武器でも調達するってわけか」
「こりゃ一応前金だよ」
「ハハッ、結構儲かるんだな?
10万ドルなんかじゃないもんな?100万ドル?」
「いや?500万ドル」
「ごっ⋯⋯!?」
「アメリカ人らしいな、リアクションが」
「馬鹿言うなよ。
そんなの人種関係なく驚くだろ」
苦笑いすると車がガタッと一瞬揺れる。
「おいおい殺すなよ?
チップは弾むんだからな」
「そりゃしっかりとお客様を運ばねぇとな」
そして、今度は断崖と粒子の細かい砂が俺の心を優雅にしてくれる。
カモメなのかなんなのか、開けてるウインドウから鳴き声が入って運転手と笑いながら酒を飲む。
「I BELIEVE~!!」
入り込む風を浴びるが、少しさっきよりも冷たい。
本格的に海岸線に入ったからか。
海と空、雲がこっちを見て寒いだろと語りかけているみたいだ。
海も色が濃くなってて、ちょっと怖さを演出してくる。
「そうだ兄ちゃん、今度俺も日本に行きてぇんだけどよ、どっかいいとこねぇのか?」
「ん~どこだろうな。
ベタなのは東京と京都かなぁ。
飯メインがいいんだったら大阪か北海道がいい」
「マジか、嫁に言っとくぜ」
しばらく眺めていると、今度は湿度がドンドン高くなっていく。
「おぉ、人っ子一人いねぇな」
「そりゃそうだろう?
こんな所地元の奴らしかいねぇぜ?
まぁ悪魔払いに来るなんて名分なかったからわざわざこんなところに来ねぇだろ?」
「まぁな」
ずーっと一本道だ。
道幅は狭くなっていってガードレールの先は断崖。
霧が濃くて、運転手も大変そうだ。
ガードレールの先は太平洋で、群青色の結晶を見ていると錯覚するような華麗な景色だった。
途中まですれ違っていた車も人っ気がどんどん減っていき、自然豊か。
しかし何処かざわつく。
そんな心情だ。
自然はキレイだし、右側に映る覆い茂る森や芝生も良い。
だが、なんかがおかしい。
「兄ちゃん、ちょっと止まってもいいか?」
「マイク、どうした?」
低く唸りながら止まる車。
「まぁ人も居ねぇだろうし停めてても大丈夫だろ?
ションベンか?」
「いや、なんかここらへんに入ったらちょっと酔ってなー。
長年運転手をやってるんだが、こんな事あんまりなくて自分でも言おうか迷ったんだが、ちょっとこれマズそうだなと思ってな。
悪いな!」
「全然。
むしろ景色を眺めれるから問題ねぇよ」
「ありがとよ兄弟」
軽く互いにグータッチを交わして俺も降りて、煙草をつけてトランクに寄りかかる。
今丘へ登っている最中で、恐らく酔っているのはここは地形的に上下するからだろう。
別に何かがあるわけじゃないだろう、とは思いつつ、スマホに移行した資料を眺めて時間潰した。
*
「悪いな」
「大丈夫だって。行けそうか?」
車はそのまま、北上していく。
申し訳ないと思ったのか、マイクがドンドン加速していきながらカーブを進むのは中々堪えたが、すると一つの小さなガソリンスタンドに到着した。
「補給しよう。
何かあったら面倒だしな」
もう二時間。
すでに結構消費しているだろうし。
俺も降りて周りを見渡すのだが。
「なんか、死んでるな」
看板も細かくヒビが入ってて、風のせいでホコリがパラパラと落ちていくのが見える。
「お客様」
「うおっ!」
背後から声が聞こえる。
そうだ、感知を使うのを忘れてた。
振り返ると俺は思わず"愛想笑い"を見せる。
「こんにちは、どうしました?」
「いえいえ。
ちょっと自販機があったので、あまり寄らないところでしたので買ってみようかなと」
後頭部をかきながらそう返してみると。
「そうでしたか。是非是非。
この辺に"お客様"が来るなんてのは早々ありませんからねぇ」
後ろで手を組み、執事のような背筋の伸びた中年男。
気のせいか?
"なんか臭う"
「何か趣味とかはあったりされます?」
「どうしてでしょう?」
中年男は俺を見て、首を傾げる。
機械的に。
「いえ。
釣りとかをしているような匂いと言いますか」
「あぁ⋯⋯釣りはよくしますね」
「そうですか」
「兄ちゃんー行くぞー!」
二人でマイクをチラ見し、俺は会釈して踵を返す。
「はぁ、なんだかなぁ」
「なんだ?あの小綺麗なオッサン」
扉を締めながら訊ねると、ミラー越しにマイクも訝しむように口を尖らせながら言う。
「ん?」
「なんだか気味悪ぃな。
なんかボロボロだしよぉ、なのに店員はあんな執事みたいな恰好してうろちょろしてるなんて⋯⋯変じゃないか」
悪魔儀式。
なんだかマジっぽいな。
──血の匂いがした。
「悪魔祓い、もしかしたらかなり大掛かりになりそうだな」
「おいおい、なんか鳥肌立ってきたぞ。
俺ここで引き返そうかな」
「止めてくれよ。
ここで帰られたら俺の前金大変だぞ」
「ハッ、確かにな。
ただ、もうすぐ夜だ。
日が暮れる前には俺も帰りてぇから飛ばすぞ?
もう景色観光は良いだろう?」
「機転を利かせてくれてたようだな。
すまん」
「良いってことよ」
*
そうして嘘のように飛ばしまくるマイクの運転を見続けたった30分。
目的地である田舎町の入り口に到着。
「おい、てか今気付いたけどよ?
荷物少なくねぇか」
確かに。
鞄一つでこんな田舎町に来るなんておかしいわな。
「まぁな。
ただ、変に準備しても怪しいかなと思ってよ」
もう外は暗い。
マイクは慌ててヘッドライトを点けている。
「長旅ありがとうな」
「⋯⋯オイ」
肩を抱き寄せられ、俺は下からマイクを見上げる。
「どうした?」
「本当に大丈夫か?」
囁くよりももっと小さい吐息混じりの声で俺を見て心配しているのがわかる。
「何が?」
「いやよ?
俺も運転しながら言えなかったんだけどよ。
明らかにやべぇだろここ」
そう。
途中までは違和感くらいで済んでいた景色だったのだが、明らかにこの場所は死んでいる。
死んでいるという言葉に相応しい景色だ。
草木は不自然に半分枯れていて、しかも人っ子一人いない。
人工的に造られた木造の住宅だが、それもどこか軋むような雰囲気のあるコンドミニアムが並び、金持ちの別荘にしては様子がおかしい。
そんな場所に見るからに若いアジアの悪魔祓いとされるやつがいるのが心配なんだろうと、俯瞰して見た俺は思う。
「もう暗いから俺は帰るが、一応これ持っとけ」
その場で急いで何かを書いてビリっと破いた紙の切れ端。
「隠せよ。
この行動も見られてるかもしれん」
何せ静かで、物音一つしないのだが、確かに目線というか、何かに見られているような感覚はある。
慌てて俺のポケット切れ端を入れると腰を軽く叩いて車へと乗り込む。
「ちょっと俺は寒気がするからここでな」
「ありがとよ、ここまで」
ウインドウ越しにグータッチを決め込み、バックして帰路に帰るマイクを見送る。
「さーて」
肩に鞄を掛けて、俺は棒立ちのまま思う。
「宿⋯⋯あるのか?」
とにかく見つけるしかないな。
暗闇の一つ手前。
人っ気ゼロのこの街で。
通訳の心配そうな顔。
「なに、俺が問題児みたいな言い方しやがって」
そうだろう?と、まぁ言いたげな通訳の心情を感じた俺は若干理解できないが、まぁそれはそれで良いだろう。
もう俺はそもそも一般人ではないのだから、逆に仕方ないというものだろ?
人生でもう負ける事はないと思っていたが、当初の目標は完全に失敗だ。
認めよう。
この私が完璧に敗北したのは数百年ぶりだ。
「自分、付いていかなくて本当に大丈夫ですか?」
真っ青なこいつの顔も理解できる。
今じゃほぼ俺はこいつありきで生活をしていたからな。
貴族が突然普通校に入学するようなものか。
「問題ない。
とりあえず、連絡が仮につかなくなった場合、一ヶ月程で探してくれ」
「不穏すぎますって。
誰か付けましょうよ」
「そうしたいのは山々だがな」
どうやらかなりセキュリティが厳しいのか、潜入するのに一苦労しそうだ。
「とりあえず、久しぶりの底辺っぽい感じで行ってくるわ」
手に持つデカイルイヴォンバッグを肩に掛け、俺は踵を返してテクテク歩いてお別れだ。
「⋯⋯あ、煙草忘れた」
「はぁぁ、伊崎さん!!」
ヒュウ、とジャストなタイミングで俺の出した掌に乗る煙草の箱。
──たく俺はいつも締まらねぇな。
*
「とりあえず着いたか」
ゴールデンゲートにあるスーパーに到着。
正直、俺的に能力で飯や飲み物にはあまり困るタイプではないが、まぁここで買っとく必要はあるだろう。
錬金術は見ただけで作り直したり同じものを作れるからこうして散策したりするのも理由が割とあるって事だ。
飲み物コーナー、食料コーナーを見ると、日本とは物価もそうだが飲み物のデカさが違いすぎて面白くなってく。
「あら、アジアの方がいるなんて珍しいわね」
「これから旅行に行くんだ」
「いいわね、どこに行くの?」
「海岸線を辿って、遥か向こうさ」
「ドライブかい?
あっちには何もないけどねぇ」
「えぇ。
ここのパンは美味しいね、これ2つ貰っても?」
「なーに言ってるの。
私がしっかり作ってるんだから当たり前じゃない?」
「笑顔がお似合いで」
「もうっ!」
スーパー並びにある個人店でパンを一気に買い込み、外に出る。
結構袋いっぱいだな。
さて、とりあえず亜空間に入れるのはいいが⋯⋯お、いたいた。
「予約空いてる?」
「空いてるさ、目的地は?」
「スタンプビーチの方だな」
「オイオイ、正気か?
相当金なら──」
ドガンと、俺は鞄を開けて運転手に見せる。
「何悪いことしたんだ?
まぁ金をさえ貰えれば俺は構わねぇが」
「これから色々用事があるんでね」
唸るエンジン音と共に、俺は頬杖つきながら窓の外を眺める。
*
「結構綺麗だろ?」
「あぁ。さすがだな」
橋の上を走る車から眺める景色は、正直絶景だ。
霧と海、そしてそれに溶け込む都市部。
どれをとっても美しい。
日本にもこういう場所はあるのだろうが、今の所見たことがない。
「というより兄ちゃん、なんでこんな遠くまで行くんだ?」
「悪魔儀式って聞いたことある?」
まぁ馬鹿な方がいいだろう。
「悪魔ぁ?なんでそんなオカルトな事を?
エクソシストに任せりゃいいだろ?」
と、ミラー越しに何やら彼は俺見るなり察したように笑う。
「なるほどな。
その鞄にある札束で武器でも調達するってわけか」
「こりゃ一応前金だよ」
「ハハッ、結構儲かるんだな?
10万ドルなんかじゃないもんな?100万ドル?」
「いや?500万ドル」
「ごっ⋯⋯!?」
「アメリカ人らしいな、リアクションが」
「馬鹿言うなよ。
そんなの人種関係なく驚くだろ」
苦笑いすると車がガタッと一瞬揺れる。
「おいおい殺すなよ?
チップは弾むんだからな」
「そりゃしっかりとお客様を運ばねぇとな」
そして、今度は断崖と粒子の細かい砂が俺の心を優雅にしてくれる。
カモメなのかなんなのか、開けてるウインドウから鳴き声が入って運転手と笑いながら酒を飲む。
「I BELIEVE~!!」
入り込む風を浴びるが、少しさっきよりも冷たい。
本格的に海岸線に入ったからか。
海と空、雲がこっちを見て寒いだろと語りかけているみたいだ。
海も色が濃くなってて、ちょっと怖さを演出してくる。
「そうだ兄ちゃん、今度俺も日本に行きてぇんだけどよ、どっかいいとこねぇのか?」
「ん~どこだろうな。
ベタなのは東京と京都かなぁ。
飯メインがいいんだったら大阪か北海道がいい」
「マジか、嫁に言っとくぜ」
しばらく眺めていると、今度は湿度がドンドン高くなっていく。
「おぉ、人っ子一人いねぇな」
「そりゃそうだろう?
こんな所地元の奴らしかいねぇぜ?
まぁ悪魔払いに来るなんて名分なかったからわざわざこんなところに来ねぇだろ?」
「まぁな」
ずーっと一本道だ。
道幅は狭くなっていってガードレールの先は断崖。
霧が濃くて、運転手も大変そうだ。
ガードレールの先は太平洋で、群青色の結晶を見ていると錯覚するような華麗な景色だった。
途中まですれ違っていた車も人っ気がどんどん減っていき、自然豊か。
しかし何処かざわつく。
そんな心情だ。
自然はキレイだし、右側に映る覆い茂る森や芝生も良い。
だが、なんかがおかしい。
「兄ちゃん、ちょっと止まってもいいか?」
「マイク、どうした?」
低く唸りながら止まる車。
「まぁ人も居ねぇだろうし停めてても大丈夫だろ?
ションベンか?」
「いや、なんかここらへんに入ったらちょっと酔ってなー。
長年運転手をやってるんだが、こんな事あんまりなくて自分でも言おうか迷ったんだが、ちょっとこれマズそうだなと思ってな。
悪いな!」
「全然。
むしろ景色を眺めれるから問題ねぇよ」
「ありがとよ兄弟」
軽く互いにグータッチを交わして俺も降りて、煙草をつけてトランクに寄りかかる。
今丘へ登っている最中で、恐らく酔っているのはここは地形的に上下するからだろう。
別に何かがあるわけじゃないだろう、とは思いつつ、スマホに移行した資料を眺めて時間潰した。
*
「悪いな」
「大丈夫だって。行けそうか?」
車はそのまま、北上していく。
申し訳ないと思ったのか、マイクがドンドン加速していきながらカーブを進むのは中々堪えたが、すると一つの小さなガソリンスタンドに到着した。
「補給しよう。
何かあったら面倒だしな」
もう二時間。
すでに結構消費しているだろうし。
俺も降りて周りを見渡すのだが。
「なんか、死んでるな」
看板も細かくヒビが入ってて、風のせいでホコリがパラパラと落ちていくのが見える。
「お客様」
「うおっ!」
背後から声が聞こえる。
そうだ、感知を使うのを忘れてた。
振り返ると俺は思わず"愛想笑い"を見せる。
「こんにちは、どうしました?」
「いえいえ。
ちょっと自販機があったので、あまり寄らないところでしたので買ってみようかなと」
後頭部をかきながらそう返してみると。
「そうでしたか。是非是非。
この辺に"お客様"が来るなんてのは早々ありませんからねぇ」
後ろで手を組み、執事のような背筋の伸びた中年男。
気のせいか?
"なんか臭う"
「何か趣味とかはあったりされます?」
「どうしてでしょう?」
中年男は俺を見て、首を傾げる。
機械的に。
「いえ。
釣りとかをしているような匂いと言いますか」
「あぁ⋯⋯釣りはよくしますね」
「そうですか」
「兄ちゃんー行くぞー!」
二人でマイクをチラ見し、俺は会釈して踵を返す。
「はぁ、なんだかなぁ」
「なんだ?あの小綺麗なオッサン」
扉を締めながら訊ねると、ミラー越しにマイクも訝しむように口を尖らせながら言う。
「ん?」
「なんだか気味悪ぃな。
なんかボロボロだしよぉ、なのに店員はあんな執事みたいな恰好してうろちょろしてるなんて⋯⋯変じゃないか」
悪魔儀式。
なんだかマジっぽいな。
──血の匂いがした。
「悪魔祓い、もしかしたらかなり大掛かりになりそうだな」
「おいおい、なんか鳥肌立ってきたぞ。
俺ここで引き返そうかな」
「止めてくれよ。
ここで帰られたら俺の前金大変だぞ」
「ハッ、確かにな。
ただ、もうすぐ夜だ。
日が暮れる前には俺も帰りてぇから飛ばすぞ?
もう景色観光は良いだろう?」
「機転を利かせてくれてたようだな。
すまん」
「良いってことよ」
*
そうして嘘のように飛ばしまくるマイクの運転を見続けたった30分。
目的地である田舎町の入り口に到着。
「おい、てか今気付いたけどよ?
荷物少なくねぇか」
確かに。
鞄一つでこんな田舎町に来るなんておかしいわな。
「まぁな。
ただ、変に準備しても怪しいかなと思ってよ」
もう外は暗い。
マイクは慌ててヘッドライトを点けている。
「長旅ありがとうな」
「⋯⋯オイ」
肩を抱き寄せられ、俺は下からマイクを見上げる。
「どうした?」
「本当に大丈夫か?」
囁くよりももっと小さい吐息混じりの声で俺を見て心配しているのがわかる。
「何が?」
「いやよ?
俺も運転しながら言えなかったんだけどよ。
明らかにやべぇだろここ」
そう。
途中までは違和感くらいで済んでいた景色だったのだが、明らかにこの場所は死んでいる。
死んでいるという言葉に相応しい景色だ。
草木は不自然に半分枯れていて、しかも人っ子一人いない。
人工的に造られた木造の住宅だが、それもどこか軋むような雰囲気のあるコンドミニアムが並び、金持ちの別荘にしては様子がおかしい。
そんな場所に見るからに若いアジアの悪魔祓いとされるやつがいるのが心配なんだろうと、俯瞰して見た俺は思う。
「もう暗いから俺は帰るが、一応これ持っとけ」
その場で急いで何かを書いてビリっと破いた紙の切れ端。
「隠せよ。
この行動も見られてるかもしれん」
何せ静かで、物音一つしないのだが、確かに目線というか、何かに見られているような感覚はある。
慌てて俺のポケット切れ端を入れると腰を軽く叩いて車へと乗り込む。
「ちょっと俺は寒気がするからここでな」
「ありがとよ、ここまで」
ウインドウ越しにグータッチを決め込み、バックして帰路に帰るマイクを見送る。
「さーて」
肩に鞄を掛けて、俺は棒立ちのまま思う。
「宿⋯⋯あるのか?」
とにかく見つけるしかないな。
暗闇の一つ手前。
人っ気ゼロのこの街で。
60
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜
あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。
その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!?
チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる