【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

観光

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 「⋯⋯本当に大丈夫ですか?」

 通訳の心配そうな顔。

 「なに、俺が問題児みたいな言い方しやがって」

 そうだろう?と、まぁ言いたげな通訳の心情を感じた俺は若干理解できないが、まぁそれはそれで良いだろう。

 もう俺はそもそも一般人ではないのだから、逆に仕方ないというものだろ?

 人生でもう負ける事はないと思っていたが、当初の目標は完全に失敗だ。

 認めよう。
 この私が完璧に敗北したのは数百年ぶりだ。

 「自分、付いていかなくて本当に大丈夫ですか?」

 真っ青なこいつの顔も理解できる。
 今じゃほぼ俺はこいつありきで生活をしていたからな。

 貴族が突然普通校に入学するようなものか。

 「問題ない。
 とりあえず、連絡が仮につかなくなった場合、一ヶ月程で探してくれ」

 「不穏すぎますって。 
 誰か付けましょうよ」

 「そうしたいのは山々だがな」

 どうやらかなりセキュリティが厳しいのか、潜入するのに一苦労しそうだ。

 「とりあえず、久しぶりの底辺っぽい感じで行ってくるわ」

 手に持つデカイルイヴォンバッグを肩に掛け、俺は踵を返してテクテク歩いてお別れだ。

 「⋯⋯あ、煙草忘れた」

 「はぁぁ、伊崎さん!!」

 ヒュウ、とジャストなタイミングで俺の出した掌に乗る煙草の箱。

 ──たく俺はいつも締まらねぇな。






 
 「とりあえず着いたか」

 ゴールデンゲートにあるスーパーに到着。

 正直、俺的に能力で飯や飲み物にはあまり困るタイプではないが、まぁここで買っとく必要はあるだろう。

 錬金術は見ただけで作り直したり同じものを作れるからこうして散策したりするのも理由が割とあるって事だ。

 飲み物コーナー、食料コーナーを見ると、日本とは物価もそうだが飲み物のデカさが違いすぎて面白くなってく。

 「あら、アジアの方がいるなんて珍しいわね」

 「これから旅行に行くんだ」

 「いいわね、どこに行くの?」

 「海岸線を辿って、遥か向こうさ」

 「ドライブかい?
 あっちには何もないけどねぇ」

 「えぇ。
 ここのパンは美味しいね、これ2つ貰っても?」

 「なーに言ってるの。
 私がしっかり作ってるんだから当たり前じゃない?」

 「笑顔がお似合いで」

 「もうっ!」

 スーパー並びにある個人店でパンを一気に買い込み、外に出る。

 結構袋いっぱいだな。
 さて、とりあえず亜空間に入れるのはいいが⋯⋯お、いたいた。
 
 「予約空いてる?」

 「空いてるさ、目的地は?」
 
 「スタンプビーチの方だな」

 「オイオイ、正気か?
 相当金なら──」

 ドガンと、俺は鞄を開けて運転手に見せる。

 「何悪いことしたんだ?
 まぁ金をさえ貰えれば俺は構わねぇが」

 「これから色々用事があるんでね」

 唸るエンジン音と共に、俺は頬杖つきながら窓の外を眺める。
 
 





 「結構綺麗だろ?」

 「あぁ。さすがだな」

 橋の上を走る車から眺める景色は、正直絶景だ。

 霧と海、そしてそれに溶け込む都市部。
 どれをとっても美しい。

 日本にもこういう場所はあるのだろうが、今の所見たことがない。

 「というより兄ちゃん、なんでこんな遠くまで行くんだ?」

 「悪魔儀式って聞いたことある?」

 まぁ馬鹿な方がいいだろう。

 「悪魔ぁ?なんでそんなオカルトな事を?
 エクソシストに任せりゃいいだろ?」

 と、ミラー越しに何やら彼は俺見るなり察したように笑う。

 「なるほどな。
 その鞄にある札束で武器でも調達するってわけか」
 
 「こりゃ一応前金だよ」

 「ハハッ、結構儲かるんだな?
 10万ドルなんかじゃないもんな?100万ドル?」

 「いや?500万ドル」

 「ごっ⋯⋯!?」

 「アメリカ人らしいな、リアクションが」

 「馬鹿言うなよ。
 そんなの人種関係なく驚くだろ」

 苦笑いすると車がガタッと一瞬揺れる。
 
 「おいおい殺すなよ?
 チップは弾むんだからな」

 「そりゃしっかりとお客様を運ばねぇとな」

 そして、今度は断崖と粒子の細かい砂が俺の心を優雅にしてくれる。

 カモメなのかなんなのか、開けてるウインドウから鳴き声が入って運転手と笑いながら酒を飲む。

 「I BELIEVE~!!」

 入り込む風を浴びるが、少しさっきよりも冷たい。

 本格的に海岸線に入ったからか。
 海と空、雲がこっちを見て寒いだろと語りかけているみたいだ。

 海も色が濃くなってて、ちょっと怖さを演出してくる。

 「そうだ兄ちゃん、今度俺も日本に行きてぇんだけどよ、どっかいいとこねぇのか?」

 「ん~どこだろうな。
 ベタなのは東京と京都かなぁ。
 飯メインがいいんだったら大阪か北海道がいい」

 「マジか、嫁に言っとくぜ」

 

 しばらく眺めていると、今度は湿度がドンドン高くなっていく。

 「おぉ、人っ子一人いねぇな」

 「そりゃそうだろう?
 こんな所地元の奴らしかいねぇぜ?
 まぁ悪魔払いに来るなんて名分なかったからわざわざこんなところに来ねぇだろ?」

 「まぁな」

 ずーっと一本道だ。
 道幅は狭くなっていってガードレールの先は断崖。 

 霧が濃くて、運転手も大変そうだ。

 ガードレールの先は太平洋で、群青色の結晶を見ていると錯覚するような華麗な景色だった。

 途中まですれ違っていた車も人っ気がどんどん減っていき、自然豊か。

 しかし何処かざわつく。
 そんな心情だ。

 自然はキレイだし、右側に映る覆い茂る森や芝生も良い。

 だが、なんかがおかしい。

 「兄ちゃん、ちょっと止まってもいいか?」
  
 「マイク、どうした?」

 低く唸りながら止まる車。

 「まぁ人も居ねぇだろうし停めてても大丈夫だろ?

 ションベンか?」

 「いや、なんかここらへんに入ったらちょっと酔ってなー。

 長年運転手をやってるんだが、こんな事あんまりなくて自分でも言おうか迷ったんだが、ちょっとこれマズそうだなと思ってな。

 悪いな!」

 「全然。
 むしろ景色を眺めれるから問題ねぇよ」

 「ありがとよ兄弟」

 軽く互いにグータッチを交わして俺も降りて、煙草をつけてトランクに寄りかかる。

 今丘へ登っている最中で、恐らく酔っているのはここは地形的に上下するからだろう。

 別に何かがあるわけじゃないだろう、とは思いつつ、スマホに移行した資料を眺めて時間潰した。

 





 「悪いな」

 「大丈夫だって。行けそうか?」

 車はそのまま、北上していく。
 申し訳ないと思ったのか、マイクがドンドン加速していきながらカーブを進むのは中々堪えたが、すると一つの小さなガソリンスタンドに到着した。

 「補給しよう。
 何かあったら面倒だしな」
  
 もう二時間。
 すでに結構消費しているだろうし。

 俺も降りて周りを見渡すのだが。

 「なんか、死んでるな」

 看板も細かくヒビが入ってて、風のせいでホコリがパラパラと落ちていくのが見える。

 「お客様」

 「うおっ!」
 
 背後から声が聞こえる。
 そうだ、感知を使うのを忘れてた。

 振り返ると俺は思わず"愛想笑い"を見せる。

 「こんにちは、どうしました?」

 「いえいえ。
 ちょっと自販機があったので、あまり寄らないところでしたので買ってみようかなと」
  
 後頭部をかきながらそう返してみると。

 「そうでしたか。是非是非。
 この辺に"お客様"が来るなんてのは早々ありませんからねぇ」

 後ろで手を組み、執事のような背筋の伸びた中年男。

 気のせいか?
 "なんか臭う"

 「何か趣味とかはあったりされます?」

 「どうしてでしょう?」

 中年男は俺を見て、首を傾げる。
 機械的に。

 「いえ。
 釣りとかをしているような匂いと言いますか」
 
 「あぁ⋯⋯釣りはよくしますね」

 「そうですか」

 「兄ちゃんー行くぞー!」

 二人でマイクをチラ見し、俺は会釈して踵を返す。

 「はぁ、なんだかなぁ」

 「なんだ?あの小綺麗なオッサン」

 扉を締めながら訊ねると、ミラー越しにマイクも訝しむように口を尖らせながら言う。

 「ん?」
  
 「なんだか気味悪ぃな。
 なんかボロボロだしよぉ、なのに店員はあんな執事みたいな恰好してうろちょろしてるなんて⋯⋯変じゃないか」

 悪魔儀式。
 なんだかマジっぽいな。
 ──血の匂いがした。

 「悪魔祓い、もしかしたらかなり大掛かりになりそうだな」

 「おいおい、なんか鳥肌立ってきたぞ。
 俺ここで引き返そうかな」

 「止めてくれよ。
 ここで帰られたら俺の前金大変だぞ」

 「ハッ、確かにな。

 ただ、もうすぐ夜だ。
 日が暮れる前には俺も帰りてぇから飛ばすぞ?
 
 もう景色観光は良いだろう?」

 「機転を利かせてくれてたようだな。
 すまん」

 「良いってことよ」

 





 そうして嘘のように飛ばしまくるマイクの運転を見続けたった30分。

 目的地である田舎町の入り口に到着。

 「おい、てか今気付いたけどよ?
 荷物少なくねぇか」

 確かに。
 鞄一つでこんな田舎町に来るなんておかしいわな。

 「まぁな。
 ただ、変に準備しても怪しいかなと思ってよ」

 もう外は暗い。
 マイクは慌ててヘッドライトを点けている。

 「長旅ありがとうな」

 「⋯⋯オイ」

 肩を抱き寄せられ、俺は下からマイクを見上げる。

 「どうした?」
  
 「本当に大丈夫か?」

 囁くよりももっと小さい吐息混じりの声で俺を見て心配しているのがわかる。

 「何が?」

 「いやよ?
 俺も運転しながら言えなかったんだけどよ。

 明らかにやべぇだろここ」

 そう。
 途中までは違和感くらいで済んでいた景色だったのだが、明らかにこの場所は死んでいる。

 死んでいるという言葉に相応しい景色だ。

 草木は不自然に半分枯れていて、しかも人っ子一人いない。

 人工的に造られた木造の住宅だが、それもどこか軋むような雰囲気のあるコンドミニアムが並び、金持ちの別荘にしては様子がおかしい。

 そんな場所に見るからに若いアジアの悪魔祓いとされるやつがいるのが心配なんだろうと、俯瞰して見た俺は思う。

 「もう暗いから俺は帰るが、一応これ持っとけ」
  
 その場で急いで何かを書いてビリっと破いた紙の切れ端。
 
 「隠せよ。
 この行動も見られてるかもしれん」

 何せ静かで、物音一つしないのだが、確かに目線というか、何かに見られているような感覚はある。

 慌てて俺のポケット切れ端を入れると腰を軽く叩いて車へと乗り込む。

 「ちょっと俺は寒気がするからここでな」

 「ありがとよ、ここまで」

 ウインドウ越しにグータッチを決め込み、バックして帰路に帰るマイクを見送る。

 「さーて」

 肩に鞄を掛けて、俺は棒立ちのまま思う。

 「宿⋯⋯あるのか?」

 とにかく見つけるしかないな。

 暗闇の一つ手前。
 人っ気ゼロのこの街で。
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