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世界征服編
秦<3>
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「まさかとは言わないが、それも秘密か?」
「それについてはまだ言えません」
懐遠の問いに静音が一切表情を変えずに答える。
「忘星眼を知らないとは言わせないぜ?
吉伸、静音」
苦虫を噛み潰すしかない。
瞳を閉じて俯く他ない。
そう。忘星眼。
この異能は瞳術とも呼べるが、本当の内容は広く知られていない。
だが、
"どんな事も現実に何でも実現させる"。
⋯⋯という能力だと普遍的に界隈で知られている。
これは今までのアイツを見ている人間であれば即座に理解できるが。
"突然真っさらな人間に霊力を発現させる"
"霊力を人に与える"
"他人の容姿を望むものに変える"
"嘘がつけなくなる"
"常人離れした解析能力"
"未来を読む能力"
"過去を視る能力"
"突然未発見な物質や法式を見つけ出す"
⋯⋯これらの実績を聞いた上だと、何でも出来ると言われているのも無理ない。
事実、実績として大成功しているからだ。
しかし。
読んで字の如く。
奴の異能は致命的な欠点を抱えている。
実現させるという現象や事象というべきか?結果はその通りではあるが、実際は──それに伴う何かを失う。
例えば俺に言っていたのは"記憶"だ。
アイツは身の回りの護衛の名前をその生涯覚えることができなかった。
読んで字の如く。
忘却するのはそれこそ起こせる異常と同じく感情も忘却対象に入る。
後に俺は、アイツの変な性格や行動の意味が分かったとき、嫉妬や僻みなんかの感情はそれこそピタリと止んだ。
"アイツはアイツなりに、地獄に住んでいるのだと"。
常に羨望の眼差しで見られ、自分を利用しようとする奴らしかおず、自分を媒介としてか見られないという気持ちを味わないといけないのは自分も似たような気持ちが分かるから。
だから。あの時。
ーーよし。俺唯一の友よ。
「忘星眼の使用をさせないという約束を交わせるなら構わない。
それに──」
「自分が何を言ってるのかわかってるのか?吉伸」
⋯⋯あぁ。そうさ。
見返りもなしにただこれから頼む事を承諾させないといけないんだから。
「"アレイスターが動き出したらしい"」
「「「⋯⋯?」」」
「誰の情報だ?」
「懐遠。それは言えない。
だが、確かな伝手だ」
「待って。ならここに来たのは」
婉清の目が見開く。
「もしアレイスターが動き出したら、子供たちを⋯⋯湊翔を頼む。
そう言いに来たんだ」
アイツの子だ。
湊翔は普通じゃない。
そう。
コイツらには言えない。
まだ眼も、顔も、能力も、全て違くて、封印もされている状態だなんて。
ーーよし!見ろよ!俺の子供だ!
産まれた時を見た。
この世に爆誕した後の息子は、親二人の良いとこ取りをしたような美しく神々しさすら感じる程だった。
産声もなく、ただじっと俺達を見つめるその眼は、まさに比喩でも何でもなく、まるで最高裁で判決を宣告されるではないか?と錯覚したものだ。
まさに、世が世なら、半神半人と比喩されてもおかしくない。
髪も親ほどではないが、真っ赤な髪に下部は白かった。
当時、アレイスターは知っている。
自分達を追い詰めた男二人を。
その片割れが、髪の赤いやつだと。
ーー今から俺様の息子の力の全てを封印する。
"よし、後は頼む"
「そんな一方的な頼みを聞けって?吉伸」
空間が歪む。
ガタガタと震度2くらいか?
「こう言いたい訳ではない。
だが、あえて言うなら。
⋯⋯俺達は運命共同体だろう?
秦派はそれを分かっているから止めようとしているんだろ?」
「⋯⋯⋯⋯」
押し黙る。
「そうだろう?
華国の現在、あんなに民度が崩れ、好き勝手行動する人間がいるのも、あんなにも野蛮に見えてしまうのも、全部アレイスターのせいではないか。
道教もアレイスターの思想に染められ、現在のような結果に結びついた」
「吉伸言うな」
「西洋はもう落ちている。
だが、俺の息子は⋯⋯いや、アイツの息子は、本物だからな。
きっとどうにかすると信じている。
だが、今、アレイスターが動き出せば、運命は守ってくれない。
華国という巨大な心臓部を失えば──俺達の国で陥落する。
お前らの力が無くなれば最後⋯⋯世界は文字通りアレイスターに支配される。
アレイスターの末路は知っているだろう?
俺達アジア人の特徴を持った人間は漏れなく排除される。
壁画や文献、俺達がガキの時から見ていたものと同じ景色になるかもしれない。
確かに俺が言ってるのは無茶だ。
嘘を吐くつもりは毛頭ない。
だが、短期的に見れば、文字通り最後だ。
湊翔を華国の人間にすることは構わないし、俺達の身柄もどうなろうと構わない。
ただ、息子は自由にしてやりたい」
『父さん!』
封印されているのにも関わらず、湊翔は身体も大きくなって、男としても成熟し、兄妹にも優しく、過剰なくらい大きくなっている。
その光景を見るたびに、俺はアイツと姿が重なる。
どんなに地獄でも、何故かその地獄で嗤っている──アイツに。
「情報によれば、顕現するのにそう時間は掛からないらしい。
今だ。今しかないんだ。
残党が動き出している内に、お前たちに任せるしか他ない。
何かあった時は湊翔を頼む」
俺は袖をめくり、彫られている紋様を見せる。
「それは」
「アイツの紋様だ。
このルールは彫られている内だけだ。
残党の居場所はアイツが教えてくれた。
後は俺が──一時的にだが、力を戻す事が出来れば」
「待ってよ吉伸さん!?
話が違うじゃない!」
瞳を潤ませる静音。
「そう凄むな。
誠意を見せる必要がある。
ただこの封印、解けば湊翔にも俺達の因果にも、全ての影響が元に戻ってしまう。
静音。
母親として、俺の妻として、長く迷惑を掛けてしまった。
辛かっただろう?」
因果はすぐにでも襲ってくる。
全ての行動に制限がつくおかげで、この10数年──まともな人生すらも送る事ができなかった。
湊翔を守る為、成長しきった湊翔に託す為に、アイツと交わした封印を解く日がこんなにも早まるなんて。
予定では2022年か、26年を予定してたんだがな。
その頃には、あいつも大人だ。
受け入れがたいかもしれないが、きっと。
ハハッ。早まり過ぎか。
「吉伸、死ぬつもりか?」
「⋯⋯俺に出来るのは、あの化物に一矢報いる事だけだ。
覇旬のように上手くは出来ないが、一撃だけでも入れてくるさ」
「それになんの意味がある?」
「だから言っただろう?懐遠。
誠意だと。
嘘を吐き続けたお前たちにも。
そして、今後守ってもらう為に必要な情報と自分の行動を清算する時が来たんだと。
湊翔は今大きくなっているから、問題はないだろうが、妹と弟も面倒を頼む。
これは願望だ」
⋯⋯湊翔。
約束された子であり、俺の息子よ。
後は──
「っ、お?」
背後から、肩に手を置かれる。
見上げると、そこには。
「⋯⋯⋯⋯」
光も届かない深淵。
そこから染まりきった暗黒の瞳が二つ。
自然と自分の身体が動かず、心臓がこれでもかという鼓動を打っている。
恐怖、畏怖、根源的な本能。
それらが囁かれているような覇気に当てられていて、覗いていた人間が自分の息子だと気づくのに数秒かかった。
「まさか、父さんが華国と仲が良いとは思ってなかったよ。
オイ──お前ら、俺の父さんと母さんになんで殺気を向けてるんだクソッタレ共が、全員ベッド行きだ」
「⋯⋯ッ!?」
この場に降りかかる重圧。
額がテーブルにぶつかりそうだ!
湊翔?一体何が?
しかも、この話し方──アイツに似てるような。
「おいおい吉伸。
俺達が守る必要もなさそうだけど?」
「そうね?
何この大量の気の量。
やっぱり──血は争えないのね?」
まずい。臨戦態勢だ。
「湊翔?とりあえず落ち──」
「父さんは大丈夫。
"""今度"""は俺が死んでも守る」
⋯⋯っ。
何が湊翔をここまで変えたのはわからない。
しかしそこにあったのは、平和を享受していた息子とは、遥かに正反対の地獄を据えた眼光だった。
「それについてはまだ言えません」
懐遠の問いに静音が一切表情を変えずに答える。
「忘星眼を知らないとは言わせないぜ?
吉伸、静音」
苦虫を噛み潰すしかない。
瞳を閉じて俯く他ない。
そう。忘星眼。
この異能は瞳術とも呼べるが、本当の内容は広く知られていない。
だが、
"どんな事も現実に何でも実現させる"。
⋯⋯という能力だと普遍的に界隈で知られている。
これは今までのアイツを見ている人間であれば即座に理解できるが。
"突然真っさらな人間に霊力を発現させる"
"霊力を人に与える"
"他人の容姿を望むものに変える"
"嘘がつけなくなる"
"常人離れした解析能力"
"未来を読む能力"
"過去を視る能力"
"突然未発見な物質や法式を見つけ出す"
⋯⋯これらの実績を聞いた上だと、何でも出来ると言われているのも無理ない。
事実、実績として大成功しているからだ。
しかし。
読んで字の如く。
奴の異能は致命的な欠点を抱えている。
実現させるという現象や事象というべきか?結果はその通りではあるが、実際は──それに伴う何かを失う。
例えば俺に言っていたのは"記憶"だ。
アイツは身の回りの護衛の名前をその生涯覚えることができなかった。
読んで字の如く。
忘却するのはそれこそ起こせる異常と同じく感情も忘却対象に入る。
後に俺は、アイツの変な性格や行動の意味が分かったとき、嫉妬や僻みなんかの感情はそれこそピタリと止んだ。
"アイツはアイツなりに、地獄に住んでいるのだと"。
常に羨望の眼差しで見られ、自分を利用しようとする奴らしかおず、自分を媒介としてか見られないという気持ちを味わないといけないのは自分も似たような気持ちが分かるから。
だから。あの時。
ーーよし。俺唯一の友よ。
「忘星眼の使用をさせないという約束を交わせるなら構わない。
それに──」
「自分が何を言ってるのかわかってるのか?吉伸」
⋯⋯あぁ。そうさ。
見返りもなしにただこれから頼む事を承諾させないといけないんだから。
「"アレイスターが動き出したらしい"」
「「「⋯⋯?」」」
「誰の情報だ?」
「懐遠。それは言えない。
だが、確かな伝手だ」
「待って。ならここに来たのは」
婉清の目が見開く。
「もしアレイスターが動き出したら、子供たちを⋯⋯湊翔を頼む。
そう言いに来たんだ」
アイツの子だ。
湊翔は普通じゃない。
そう。
コイツらには言えない。
まだ眼も、顔も、能力も、全て違くて、封印もされている状態だなんて。
ーーよし!見ろよ!俺の子供だ!
産まれた時を見た。
この世に爆誕した後の息子は、親二人の良いとこ取りをしたような美しく神々しさすら感じる程だった。
産声もなく、ただじっと俺達を見つめるその眼は、まさに比喩でも何でもなく、まるで最高裁で判決を宣告されるではないか?と錯覚したものだ。
まさに、世が世なら、半神半人と比喩されてもおかしくない。
髪も親ほどではないが、真っ赤な髪に下部は白かった。
当時、アレイスターは知っている。
自分達を追い詰めた男二人を。
その片割れが、髪の赤いやつだと。
ーー今から俺様の息子の力の全てを封印する。
"よし、後は頼む"
「そんな一方的な頼みを聞けって?吉伸」
空間が歪む。
ガタガタと震度2くらいか?
「こう言いたい訳ではない。
だが、あえて言うなら。
⋯⋯俺達は運命共同体だろう?
秦派はそれを分かっているから止めようとしているんだろ?」
「⋯⋯⋯⋯」
押し黙る。
「そうだろう?
華国の現在、あんなに民度が崩れ、好き勝手行動する人間がいるのも、あんなにも野蛮に見えてしまうのも、全部アレイスターのせいではないか。
道教もアレイスターの思想に染められ、現在のような結果に結びついた」
「吉伸言うな」
「西洋はもう落ちている。
だが、俺の息子は⋯⋯いや、アイツの息子は、本物だからな。
きっとどうにかすると信じている。
だが、今、アレイスターが動き出せば、運命は守ってくれない。
華国という巨大な心臓部を失えば──俺達の国で陥落する。
お前らの力が無くなれば最後⋯⋯世界は文字通りアレイスターに支配される。
アレイスターの末路は知っているだろう?
俺達アジア人の特徴を持った人間は漏れなく排除される。
壁画や文献、俺達がガキの時から見ていたものと同じ景色になるかもしれない。
確かに俺が言ってるのは無茶だ。
嘘を吐くつもりは毛頭ない。
だが、短期的に見れば、文字通り最後だ。
湊翔を華国の人間にすることは構わないし、俺達の身柄もどうなろうと構わない。
ただ、息子は自由にしてやりたい」
『父さん!』
封印されているのにも関わらず、湊翔は身体も大きくなって、男としても成熟し、兄妹にも優しく、過剰なくらい大きくなっている。
その光景を見るたびに、俺はアイツと姿が重なる。
どんなに地獄でも、何故かその地獄で嗤っている──アイツに。
「情報によれば、顕現するのにそう時間は掛からないらしい。
今だ。今しかないんだ。
残党が動き出している内に、お前たちに任せるしか他ない。
何かあった時は湊翔を頼む」
俺は袖をめくり、彫られている紋様を見せる。
「それは」
「アイツの紋様だ。
このルールは彫られている内だけだ。
残党の居場所はアイツが教えてくれた。
後は俺が──一時的にだが、力を戻す事が出来れば」
「待ってよ吉伸さん!?
話が違うじゃない!」
瞳を潤ませる静音。
「そう凄むな。
誠意を見せる必要がある。
ただこの封印、解けば湊翔にも俺達の因果にも、全ての影響が元に戻ってしまう。
静音。
母親として、俺の妻として、長く迷惑を掛けてしまった。
辛かっただろう?」
因果はすぐにでも襲ってくる。
全ての行動に制限がつくおかげで、この10数年──まともな人生すらも送る事ができなかった。
湊翔を守る為、成長しきった湊翔に託す為に、アイツと交わした封印を解く日がこんなにも早まるなんて。
予定では2022年か、26年を予定してたんだがな。
その頃には、あいつも大人だ。
受け入れがたいかもしれないが、きっと。
ハハッ。早まり過ぎか。
「吉伸、死ぬつもりか?」
「⋯⋯俺に出来るのは、あの化物に一矢報いる事だけだ。
覇旬のように上手くは出来ないが、一撃だけでも入れてくるさ」
「それになんの意味がある?」
「だから言っただろう?懐遠。
誠意だと。
嘘を吐き続けたお前たちにも。
そして、今後守ってもらう為に必要な情報と自分の行動を清算する時が来たんだと。
湊翔は今大きくなっているから、問題はないだろうが、妹と弟も面倒を頼む。
これは願望だ」
⋯⋯湊翔。
約束された子であり、俺の息子よ。
後は──
「っ、お?」
背後から、肩に手を置かれる。
見上げると、そこには。
「⋯⋯⋯⋯」
光も届かない深淵。
そこから染まりきった暗黒の瞳が二つ。
自然と自分の身体が動かず、心臓がこれでもかという鼓動を打っている。
恐怖、畏怖、根源的な本能。
それらが囁かれているような覇気に当てられていて、覗いていた人間が自分の息子だと気づくのに数秒かかった。
「まさか、父さんが華国と仲が良いとは思ってなかったよ。
オイ──お前ら、俺の父さんと母さんになんで殺気を向けてるんだクソッタレ共が、全員ベッド行きだ」
「⋯⋯ッ!?」
この場に降りかかる重圧。
額がテーブルにぶつかりそうだ!
湊翔?一体何が?
しかも、この話し方──アイツに似てるような。
「おいおい吉伸。
俺達が守る必要もなさそうだけど?」
「そうね?
何この大量の気の量。
やっぱり──血は争えないのね?」
まずい。臨戦態勢だ。
「湊翔?とりあえず落ち──」
「父さんは大丈夫。
"""今度"""は俺が死んでも守る」
⋯⋯っ。
何が湊翔をここまで変えたのはわからない。
しかしそこにあったのは、平和を享受していた息子とは、遥かに正反対の地獄を据えた眼光だった。
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