【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

秦<4>

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 「オイ」

 おいおい何だコイツ。
 
 懐遠の目に映るのは、人の姿ではない。
 暗黒に漏れ出す殺気という渦中である。

 このビルを覆い尽くす最悪の重圧。

 華国でこれまで敵無しだった懐遠。
 しかし目の前の正体不明、その化物がこちらへと視線が向かってくる。

 「⋯⋯ッ!?」

 鼓膜に響いてくるのは微弱な黒い火花。
 そして誘われるかのような死を呼ぶ魔笛。

 「今、どいつだ?
 どいつが俺の父と母に殺気を向けた?」

 懐遠だけではない。
 婉清、詩蔓も例外なく椅子から飛び退き一斉に各々武器を取り出して構えていた。

 アイツの身体に纏わりついているオーラはなんだ?
 死の気?

 それとも、俺達が生み出している幻か?

 ドロドロとしていて、身体をの外骨格に鬣のような黒い波打つオーラ。

 だが、その奔流があまりに濃い。濃すぎる。

 懐遠の目には映る。

 「ギャァァァァ!!!」

 ある者はその波動に耐え切れず錯乱し。
 ある者は気絶し。

 「⋯⋯あぁ⋯⋯※※※※※※※※」

 恐怖で腰が抜け、祈りながら漏らすみっともない成人の姿。

 だが、懐遠は責めることはない。

 なぜなら自分も、恐怖と漏れ出す殺気と言うにはあまりに優し過ぎる──具現してしまうほどの絶望的な波が今も尚、波紋のように伝播しているのだから。

 




 
 ──時は少し遡り。

 「リビ、お前仕事サボったな?」

 「ごめんなさい」

 俺は転移ですぐさま華国に入場。
 リビの追跡機能で位置はすぐに特定できていたが、どうやら会話の内容は覚えていないらしい。

 「うっ⋯⋯ぁぁぁっ」

 何だこのビル?
 やたらとエネルギーが集中している。

 「と、コイツは邪魔だな」

 髪を掴んで引きずってきたが、そろそろ要らん。

 振り返ると俺が気絶させた数十人の山。

 「急ぐぞ」

 両親は今まで華国なんてワードすら出したことがない。 
 何かあるはずだ。
 
 「あれ?エレベーターじゃあいけないみたい」

 クソッ、面倒だな。

 「下がれ」

 身体強化した一撃で壁を蹴ってぶち壊す。

 「わぁ、凄い音」

 しかし問題はない。
 消音の結界がこの一帯には敷かれている。

 何があってもいいようにな。
 壊した先には、円卓会議らしきことが行われており。

 「湊翔を──頼む」

 父が前腕部を見せつけ、謎の刻印を見て何か言おうとしている。

 待て、待て待て。
 何が起きている?

 父は普通の人間じゃないのか?
 ⋯⋯まずい、全く状況が分からない。

 だが、一つ言えることは。

 「ご、ご主じ⋯⋯ンッ」

 "この座っている奴らが俺の""大事な家族""に殺気を向けているということだけだ"

 ブチ殺すぞ糞共が。
 俺が何百年護りたくて帰ってきたと思ってるんだクソが。

 もう夢にこべりついて離れないくらい執念に執念を重ねたこの現実を壊そうもんがいるなら⋯⋯一族諸共全員死刑だ。

 「オイ」

 
 ーー湊翔、俺はお前が幸せになってくれれば、なんだっていいんだからな。たまに顔を出してくれれば

 ーー嫌な時は、みんなでご飯を食べれば解決よ!


 「父さん、母さん」
 
 「そ、湊翔⋯⋯なのか?」

 「⋯⋯⋯⋯そー⋯⋯ちゃん?」

 「何やってるの?ここで」

 「き、貴様⋯⋯ここを何処だとおも──」

 「黙れ」

 視線を動かして不可視の魔力槍で壁に勢い良く突き刺して磔にする。

 邪魔だ。

 「あ、アイツは凄腕のやつなのに、あんな宙ぶらりんになって⋯⋯!!

 お、お前!このクソ」

 雑魚が何か言ってるな。
 指を上げて魔力槍を用意したその時──

 「お前ら出しゃばるな!!!!」

 目の前で武器を構える幹部らしき人間が一喝する。
 
 何だコイツ?
 誰だ?

 「悪かった。
 落ち着く事はできるか?少年」

 魔力で作った遠隔操作出来る腕。
 それを使って離れているコイツの首を掴み、壁に押し付ける。

 「グゥッ⋯⋯!!!」

 「懐遠!!」

 壁に埋まり吐血しているのをチラ見して、視線は回るテーブルにあるお茶。

 ゆったりと座り、視線を変えずにカップを持ち俺は言い放つ。

 「俺は落ち着いている。これ以上なくな。

 逆だ。
 お前らが勝手に好き勝手暴れ散らかしているだけだ。

 お前らが落ち着け」
  
 「冗談キツイぜ吉伸の子供。
 こんな芸当見せつけといて──落ち着けだって?」

 ん、この茶美味いな。
 家に帰ったら量産しよう。

 「それがどうした?
 こんな事もできない奴が少なくとも父さんと母さんに殺気を向けていい理由にはならない。

 お前たちは今すぐ頭を垂れ、謝罪をするべきだ。

 死んだそこら辺にいるやつはただの見せしめで、他意はない。

 お前たちが悪いのだから仕方あるまい」
 
 うん。茶菓子も美味い。
 もっと早く来れば良かったな。

 ──ん?
 数人の気配。

 「【座れ】」

 「「「「あぁッ!!」」」」

 「隠れても無駄だ。
 俺には最初から見えている。
 何をしても無駄だ」

 天井に隠れていた奴らだったか。
 勿論魔力の槍で足を穿き、行動不能にさせる。
 
 「視線すら合わせねぇつもりか?
 ⋯⋯伊崎湊翔」

 「何を言う」

 「っ!!!」
 
 掴む魔力の腕を操作して、俺の目線より下にあるテーブルの少し下ら辺までコイツを持ってくる。

 「⋯⋯ってめぇ」

 「ほら、これで目が合った。
 俺が見ている目線より下でしか目が合うことはない。
 
 ──これが格の違いというものだ。
 華国人よ」
 
 「俺ら、お前の両親に頼まれてんだよ。
 お前を守って欲しいってな」

 ⋯⋯ほう?
 またそれは意外な事だが。

 「それで?
 俺が謝罪でもすると思ったか?」

 「なんだと?」

 「俺はこの世で一番の我儘野郎だぞ?
 自分に都合の良い解釈しかしない生き物なんだ。

 ほら、日本に有名なキャラクターのセリフがあるだろう?

 俺のモノは俺の物。
 お前の物は俺のモノって」

 「⋯⋯クソが。
 おい吉伸。
 お前とんでもねぇ化物を育てたようだな?」

 あ、そうだ。親がここに居るんだった。
 つい癖で。

 ゆっくり振り向くと、両親の顔は死んでいる。

 あ、終わった。

 「湊翔、これはどういう事だ?」

 ポタポタ磔の奴から滴る血。
 周りは地獄絵図。

 ──良い息子は何処へ?

 「あー⋯⋯そうだね。 
 まぁ色々あるというか⋯⋯なんというか」
 
 「とにかく、それは後だ。
 湊翔、懐遠を離してやれ」

 「⋯⋯ん?あぁ」

 離してやるとドサッと鈍い音が響き渡る。

 「湊翔」

 俺の手を、父は優しく覆う。

 「ありがとう」

 「⋯⋯っ」

 「だがな?
 湊翔のせいで数人の家族もまた失い、泣いてしまう家族もいるんだ。

 薄々普通ではないとは思っていたが、暴力では何も解決しない」

 ⋯⋯全く綺麗事を。だが。

 「うん」

 「だが、そこのアホ面を選んだ事は俺の息子として正当に評価すべき事でもある」

 「⋯⋯え?」

 俺の頭はハテナが増える。
 
 ⋯⋯??????































 「良くやった!!
 アイツ、俺が何も出来ないと思って調子に乗ってたんだ!

 俺の息子として良くやった!!!」

 「え、えーと⋯⋯」

 「次からはやり過ぎない程度に見せつけてやれ!

 頼むぞ!」

 「あ、あなた⋯⋯」

 「へ?」

 父と母って⋯⋯こんな人だったか?
 なんか、俺もそうだが、親二人ももしかして⋯⋯様子がおかしい人間だったり?

 ま、まぁいいのか?
 ん、んん。
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