【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

閑話:燃やす事が人生

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 「おーい渡瀬ー、聞いてるかぁ?」

 「おい、馬鹿⋯⋯呼ばれてるぞ」

 背中に感じた感覚を頼りに爆速で立ち上がる。

 「はい!
 俺は今日も元気です!!」

 「はぁ?渡瀬⋯⋯」

 な、なんだ?
 溜息つかれることは俺してないぞ!

 「お前今まで寝てたやろ」

 鳥谷うるさい。
 後ろで囁くな。

 「もういい。座れ」

 それから、鐘が鳴って昼ご飯。
 
 廊下に出て食堂へと向かう。
 窓の外には光り輝く太陽。

 そんで、退屈な俺の顔が反射で見える。

 残り少ない学生生活。
 一応進路はほぼ大学に行くことは決まったけど⋯⋯まさかコネで入れるとは思わなかったな。

 ざっきーのおかげなんだが、そんなアイツは今、海外に行った。


 ーーおい、よし!キャバクラ行こうぜ!!

 ーーおいよし!!女優から連絡来たわ!
 飯行こうぜ!


 「⋯⋯俺も恵まれてんな」

 アイツは何故か最初から俺のことを知っているみたいだったけど、俺は知らない。

 だが、まぁ時間なんてあったのか?なんて言うくらいには友情は完成されている。

 一緒に住んでるし、妹も世話になってるし。

 妹は若干女出してるのを見るに、アイツは分かりやすい女は好きだが、所謂女らしい女の詰め方には気付かないってタイプなのはもうわかりきってる。

 妹に言ってやるか?
 いや。やめとくか。

 普段の行いを見るに、もう後戻りできないだろうな。
 
 「あら美智くん!
 ご飯オマケしておいたよ!」

 「あ、あざす!!
 おばちゃんもいつも輝いて見えます!」

 「何言うてんの!もう!」

 「これ食券」

 受け取りながらおばちゃんが、少しさみしそうな顔をして俺を見つめてくる。

 「もう大学は決まったのかい?」

 「はい。東大です」

 「あら!流石だわ!
 うちの息子もそれくらい能力があったら⋯⋯なんてね!」

 「何言ってるんですか。
 勉強はあくまで指標に過ぎませんよ?
 俺みたいなのが後で地獄を見る目に遭うこともあるかもしれませんよー?がおー!!」

 「その調子なら、どこ行っても出世出来るだろうし、馴染めるでしょうねぇ。

 私も美智くんみたいな息子が欲しかったわぁ」

 「⋯⋯⋯⋯」

 
 ーー金がどうにでもなるなら⋯⋯子供を
 ーーこれで借金が⋯⋯!


 「案外、そうでもないかもですよ」

 「え?」



 ふぅ。
 やっぱり飯はとんかつに限るな。

 「フムフム⋯⋯うめぇ」

 やっぱりキャベツ行ってとんかつ齧って⋯⋯ソース余りに食うキャベツがウメェんだよな?これが。

 「ん?通知だ」

 [整理された件について]

 「今いいや」

 俺はざっきーと違って、学生の時は学生なの!

 スマホをしまってお外をおかずに食べる。

 ッたく。
 ざっきーは大学行かねぇみたいだし、退屈だな。

 ⋯⋯んー大学こそアイツに合うと思ったんだけどなぁ。

 それに在学中にバイトもやってみたかったけど、まぁ有り難いことに金に困ることもなくなっちまったよ。

 「⋯⋯⋯⋯」

 





 「渡瀬さん、そこをなんとか!」

 「でもなぁ。
 プレゼンは良いんだけど、つまんないんですよねぇ」

 「つ、つまらない?」

 「んー、だって、やりたい事と言うよりも、清水さんが儲けたいから事業をやりたいっていう風にしか聞こえないんですよね。

 ──実際、多分そうですよね?」

 「い、いえっ!自分としては⋯⋯」

 「投資して欲しいから言いたくなる気持ちもわかるし、ここから!と言うのは分かります。

 しかし貴方からは魂の燈火を感じません」

 「⋯⋯ど、どうすれば」

 「清水さん。
 何故、貴方はこの事業がしたいのでしょうか?

 なぜ、これでなくてはいけないんでしょうか?

 正直な答えを求めます」

 放課後。
 俺は基本的にM&Aや事業再生、あとはシンプルに金融らしく投資やファンドなどのそれっぽい事もこなしている。

 基本的に言えば、石田さんはざっきーの財布、運用は俺。

 ⋯⋯そんなところかな。

 けど、一応共有はしているから把握はしているけど。

 「私はこれから日本の⋯⋯」

 「そうではありません」

 俺はプレゼン書類を静かにスッとテーブルに置いて言う。

 「清水さん、腹を割りましょうよ。 
 人生はあなたの為にあるんです。
 あなたのやりたいことはなんですか?
 
 これは本当にあなたがやりたい事なのでしょうか?」

 そう言うとだんまりだ。
 なんでかなぁ。

 なんでみんな、だんまりなのだろうか。

 「これは持論なんですがね」

 人に説教なんて。
 ましてや年上の人間にこんな事を言うなんて。

 自分も偉くなったもんだなぁと、最近常に思う。

 「人の上に立つ、何かを創る。

 これらを成す人間は情熱が必要なんです」

 「情熱⋯⋯」

 「漫画家が書きたいストーリーを迷うでしょうか?

 小説家が書くネタがないなどと言うでしょうか?

 ゼロではありませんが、ある程度固まっている中で迷うのではないでしょうか?

 業界に長年いる方もいます。
 ですがそういう人の中の大半がいわゆる成功していない人間なんです。

 しかし一方で、即成功する人間もいます。
 この差はなんでしょうか?

 長ったらしい言葉かもしれませんが。

 何が言いたいかというと──そうです。
 今お話したのは今、このまま進んだ場合のあなたの未来です。
 
 何かを成す人間というのは、最初に湧き上がった魂の震え、これが全てなんです。

 技術がーとか、こういう時にこういうやり方がー。

 ⋯⋯関係ありません。
 所詮副産物に過ぎません。

 何かを成す者というのは、最初から泥まみれにある時すら何かに魅入られるような言葉にならない感情を持っているものです。

 それの最も最たるものがエロです。
 異様に僕ら男を震え上がらせるのは、創作者のこれでなくてはいけないという魂なのですよ。

 つまりあとから燃え上がるものではないんです。

 特に創作や何かの上に立つ人間という人種というのは。

 自分も何人もみてきましたが、そういう人間であればあるほど、常人とは意識の差があるものです」

 「は、はい」

 「清水さんの並べる言葉は、何もない人間がどうにか普通より稼ぎたい人が一時凌ぎで書き上げた事業計画書に思えます。

 自分はそういう人間に投資をしたい訳ではないんです。

 それくらいだったら俺は億万長者になる為に必要な知識を学ぶ為に1000万貸してくださいと言われた方がまだマシです。

 事業というのは短距離かマラソンか。
 またはどちらも含まれます。

 そのメリットもないですし、あなたはとにかく動こうとしか思っていない」

 今の彼に通じるかなぁ。
 と、俺は思いながらもしっかり述べる。

 案の定、24歳の彼は泣きベソをかきながらスタスタこの事務所から消えていく。

 「少し言い過ぎでは?」

 隣で見ていた秘書である松井さんが扉が締まるとボソッと呟く。

 「俺はね、松井さん。
 将来ビッグになるつもりでいたんだ」

 「ビッグに?」

 「ええ。
 俺自身が、魂を燃やして、みんなにもこの感覚を共有したいんだ。

 人生をかけて何かを燃やす。
 なんでもいい。

 自分の中で最もエロいと思う女を描くでもいい。

 男でもいい。

 俺達人間には知性がある。
 言語がある。

 燃やして、燃やして──その情熱で温暖化が深刻になるレベルで燃やしたいんだよ。

 "魂"をね。
 それなのに、来る人間来る人間が、みんな目先の金儲け。

 あとはこれくらい稼げるんだから投資してくれるよね?なんて思った人間しか来ない。

 こんなにつまらない事をするために始めたい訳じゃないんだけどね」

 松井さんは軽い溜息をついて椅子に座り直す。
 どうやら通じなかったらしい。

 「あ、そうそう」

 「はい?」

 「ワコワコ生放送とかウーツーブとかって見る?」

 「あーはい」

 「機材ビジネスとかってどうなの?」

 「何かあったんですか?」

 「いやね、大学生くらいの男の子が、俺はウーツーブで投稿している人っていう自己紹介とともに、機材を買うお金がないけど、いずれビッグになるから投資してくれないか?ってさっき道端で言われたんだよね」

 「そうなんですか」

 「ちょっと調べたら機材⋯⋯結構するんだね。
 びっくりしちゃった。

 テレビ業界が凄く見えるね」

 「私は良いと思いますけど」

 おぉ、好感触。

 「おぉマジ?どうして?」

 「私は視聴者ではありますけど、個人的には結構面白いので。

 渡瀬社長はどう考えているんですか?
 ⋯⋯なんて聞かなくても良さそうですね」

 話しながら呆れられている。

 「そりゃ勿論──魂を燃やしている人間の眼差しにはいくらでも掛けたいと思うからね!」

 俺は昔から、人を見る目があると思う。
 なんとなくこの人、嘘をついているなーとか、マジだなーとか。

 だからこそ、そういう人間がビッグになると同時に、俺もビッグにさせてもらおうとね。

 「社長らしくて好きです」

 書き物をしながらボソッと呟く。
 いつもは冷たい松井さんが⋯⋯!

 「え?俺の事好きなの!?」

 「社長の"考え"⋯⋯です。
 誰が子供に⋯⋯いえ、でも将来的にはありかもしれませんね」

 「うわ、打算かよー」

 「社長も私の胸ばっかり見ているので打算では?」

 ⋯⋯ありゃバレてる。

 「俺は打算じゃないね!
 おっぱいは夢と希望が詰まってるんだから!」

 「あ~隠さなくなった」
  
 と、機密書類を取り出し、石田さんに送る用の書類を作成するのだが。

 「はぁ、俺の親友はとんでもない」

 「伊崎湊翔様⋯⋯でしたよね?
 社長の親友の」

 「そう。伝説だよ」

 一部だけだが、松井さんに軽く見せる。
 書類をじっと見つめ、次に視線が上がると、黙ってエスプレッソマシンの所まで行き、俺に淹れたてを渡す。

 「分かりやす」

 「親友さんの電話番号を貰えないかなーと」

 「嫌だね!
 親友は⋯⋯そんな軽いお──」

 「⋯⋯お?」

 『おっぱい!!!
 人生に必要なのは⋯⋯おっぱいやぁ!!!』

 『あら可愛いー!』

 『じゃあ、私達が癒やしてあげないとー!』

 「⋯⋯軽くて打算的なのかもしれない」

 「にしても凄いですね。
 18歳なのですよね?」

 「あぁ。
 ビットコインも12年後半から入れてるから今じゃ60倍の120億」

 そして手元にある資料であるこの個人資産の方は見える限りだと5000億。

 グループ総資産の合計が──31兆。

 「化物かよ。
 国家予算じゃねぇか」

 「任せてください。
 下の方は全力で対処します」

 「俺の方で止まっといたほうが身の為だ」

 「やっぱり危ないこともしているんですかね?」

 「あぁ。
 会長とも仲がいいみたいだし、色々筋的なものもあるだろう。

 ただパワーバランスは上っぽかったからまたアレかもだけどな」

 するとインターホンから客がやってくる。

 「あっ、先程はしつこく失礼しました」

 「いえいえ。
 井上さん⋯⋯でしたよね?
 自分の事を知ってるとは知らずに失礼な態度で申し訳ありませんでした」

 「何を言いますか!
 渡瀬金融の名前を知らないなんて!」

 「ウーツーブでの機材のお話でしたよね?
 座ってください。
 是非、未来のお話でも」

 「⋯⋯っ!お願いします!」

 もっとみんなが、魂を燃やせられるように。
 俺はもっと人の夢に寄り添えるような国にしていきたいんだ、ざっきー。

 ⋯⋯お前はビッグだが、俺はみんなもビッグにしてぇんだ。

 そんで自慢しながら酒飲むのが、この俺っていう人生に仕上げたい。

 退屈な人生をイイもんにするのは、自分次第だし、落ちんのも自分次第っつーわけよ。

 「では、契約のお話から」

 ロマン溢れる人生で生きていきたい。
 現実を見ている人生なんて⋯⋯おもろくないだろ?

 魂、燃やそうぜ!みんな!!
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