【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

国興

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 「行っちゃったっすね」

 全員でローマンの後ろ姿を見上げる中、石田がポカーンとした顔で呟く。

 「なんだよあのバケモン、この世に居ていい存在じゃないだろ」

 懐遠の言葉に全員が周囲を見回す。

 あれだけ高かったビルは無くなり、今ではくっきり抉った魔力の波形の跡が残っているだけ。

 「てかおいおい!」

 「今度はなん──」

 懐遠が大声をあげるのをうざがって振り向いたのだが、石田の言葉はそこで詰まる。

 「ヴゥゥ⋯⋯」

 少しの先の方で、4人を見つけた狼の群れ。
 涎を垂らし、完全に腹が減っているのが目に見えてわかる。
 
 オイオイまじかよ。
 狼?

 懐遠は肩で草薙を叩く。

 「ん?」

 「なんだよあれ、知ってるか?
 狼って日本で式神とかあったろ?」

 「知らん。
 少なくともあんな形ではない」

 完全に毛を逆立て、唸り声を上げている狼。

 「アニキ!
 あれめちゃくちゃこっち見てません?」

 「あぁ、というか初めて生で狼を見た気がする」
 
 「お気楽二人組!
 今そんな場合か!
 狼ってどんくらいの速度出んだっけ?」

 「はぁ、60キロだ」

 即答する草薙の隣で感心した様子の銀譲。

 「草薙、お前頭良かったのか!?
 俺達はヤクザだぞ!?」

 「真壁銀譲⋯⋯勉強は出来て当たり前だろ」

 恥ずかそうに眉間を摘みながら煙草を口に持っていく草薙。

 「なっ!
 アニキを馬鹿にしないでくださいよ!
 ちょっと雑学があるからって言い過ぎっすよ!」

 「一応これでも大学出てるっつーの。
 家金持ちだし」

 「うわっ! 
 こんな時に金持ち自慢とか!
 どうせ私立の訳わからん大学でしょ?」























 「⋯⋯早稲田」

 「は?」

 一瞬思わず全員がシーンとなって視線は草薙へと集まる。

 その光景を見た狼も狼で、訳わからんと言った様子で止まっている。

 「おいおい⋯⋯はァァァ!?」

 「⋯⋯だから言いたくなかったんだよ」

 「学部は?」

 「社学」

 石田が調べている。
 結果が出ると、思わず草薙を見上げる。

 「へ、偏差値⋯⋯68????」

 「へぇ、現役なのか?」

 「あぁ」

 懐遠の疑問に答える草薙だが、その顔は今まで見せたことのないくらい恥らいを感じるものだ。

 「う、嘘だ!!」

 「嘘じゃねぇ!!
 ちゃんと試験勉強したわ!!バカタレ!」

 「あ、あの性欲お化けが⋯⋯試験勉強?」

 石田と銀譲は目が合うと緊張感の全くない顔でほわほわしている。

 「てかバカ!!」

 懐遠の一言で全員の空気が戻る。

 「とりあえず、時速60キロだ。
 つまり車が追ってくるのと変わらん」

 「⋯⋯それ、無理じゃないっすか?」

 「だから俺はさっきからそれを言ってるんだろうが!」

 「懐遠だっけか?」

 髪をかきながら草薙は訊ねる。

 「どうした?」

 「異能力だったよな?
 お前のやつは使えないのか?」
  
 俺の神門式アレは人に見せるものじゃない。

 塔の奴らに何があるかわからんしな。

 「いやよ?草薙、お前も異能は?」
  
 「感知くらいならな」

 「なら分かるだろ?
 あの狼⋯⋯明らかに普通じゃない」

 指摘された言葉を草薙は煙草を吸いながら考える。

 普通の狼は既にガウガウ言ってやってくるだけだが、確かに⋯⋯全体的にこの世界の狼ではない。

 経験値なのかなんなのか⋯⋯。

 「それに、懐遠」

 草薙は親指で別の方向を指す。

 「なんかゲームみたいな敵もいるぞ」

 「え?」

 まさかな?と。
 懐遠はその方向を見て絶望する。

 「俺の武功は確かに強いが、消費が高級車と変わらん」

 「なるほどな」

 参ったな。
 このチャラ男なら隠れ蓑になってもらえると思ったんだが。

 草薙は何もない虚空を見上げる。

 塔ならまだ可能性があったんだが⋯⋯。
 ウインドウに動きはないようだし、アテにはするべきではなさそうだな。

 右腕に燃える白い炎を流し込む。

 確かに。
 俺達は既に囲まれている。

 変な生き物がうろちょろしているし、既に状況は最悪だ。

 「石田!ジタバタするな!」

 「アニキ!
 俺伊崎さんから何ももらってないんですよ!!

 あんなに親しくしてもらってたのに!!

 なんでー!!伊崎さーん!!!」

 「お前さっきからどうしたんだ?」

 じたばたする石田を抑える銀譲。

 「怖くて何もかもどうでも良くなってしまいました!!」

 二人のくだりを横目で見ていた草薙。

 世界的にどういう状況なのかはさておき。

 世界でもおそらくこいつくらいだろう。
 こんな状態で騒げるのは。
 周りにうろちょろ魔物がいる場所だぞ?

 よく出来るな。
 ──だからこそか?

 伊崎のクソガキ。

 煙草の煙を吐きながら冷静に俯瞰する草薙。

 今の話を聞くに、コイツは一般人なのにも関わらず何も貰っていないと公言していた。

 ーー俺は自分の円の中の人間を死んでも守る人間だからな

 草薙の頭の中でカチリと一つずつ結論へと向かっていく。

 護衛にですら俺を付けるくらいの過保護っぷり。

 それはつまり、"必要がない"からあげなかった?

 そうとしか考えられん。

 "師匠の部下かな?"

 頭によぎる少し前のやり取り。

 "他の英雄に任せるとしようかな"

 「⋯⋯⋯⋯」

 あのガキの中ではパズルが最初からハマっている。
 
 その時。

 草薙の超感覚に近いモノが一つの音を感知する。

 金属の音?

 「アニキ!
 俺達ファンタジーの世界にぽつんとさせられちゃってるんですって!」

 「オイ」

 石田と銀譲は草薙の一言で静まる。

 「なんか音しねぇか?」

 それは王道で現代の彼らには耳馴染みのない音。

 ガシャンガシャン、と。
 鎧を着た兵隊の歩行音だ。

 「どんどんデカくなってるような」
 
 「本当だ」

 ダン、ダン、ダンダン!

 一切のズレのない心地の良い歩行音。
 もはや、地鳴りにまで音は肥大していく。

 しかし。

 「あ、なんか影が!」

 石田の指差す先。
 かなり遠くだ。

 普通ではありえないのだが、かなり向こうの道路の方から、デカイ影がこちらへと向かってきているのが見える。

 「あれ、敵じゃねぇよな?」

 草薙の疑問は最も。
 隣で聞いている懐遠も頷いている。

 よくよく見ていると、影はやがて詳細な姿を見せる。

 「──オイオイ」

 詳細が分かった草薙と懐遠。
 
 「「え?」」

 分かったとしても理解できない石田と銀譲。

 そして次の瞬間──落雷のような声が響き渡る。

 「全軍──目標地点到着ッッッ!!!!
 魔物を殲滅せよ!!!!」
 
 あまりに聞こえの良い一喝。

 四人は言葉を失う。
 
 空は火の玉が飛び交い、近くにいた魔物を全て謎の攻撃によって死にゆく。

 氷の雨が降り、岩の礫が魔物たちの腹を貫き、穿つ。

 一体どれくらいいるんだ?
 
 草薙の呟きは当たり前の事だ。
 目の前には、まさに一万どころか視界を埋め尽くす量の兵士達が行進しているからだ。

 「なんだあれ?旗?」

 赤をメインカラーとした旗の中央には獅子のデザイン。

 その周りには煌煌と輝く星々の印。

 全員はあまりの威圧感とその迫力に思わず堅く口を噤む。

 馬兵、歩兵、魔導師。
 それぞれ後の戦争の戦い方を作った祖にして戦場の神。

 「この時代に──馬?」

 大量の馬兵がこの現代の東京を駆け巡る。
 その中、脇から全力疾走する一人の蒼い長髪にインナーカラーに白が混ざった男が目を引く。

 一人だけ乗っている馬が違う。
 翼が生えているのだ。

 ジジジと。
 雷筋が火花を散らし前足を上げ、四人の前へと跳ねると、神秘的で、幻想的な咆哮がこの現代の東京を揺らす。

 「「「「⋯⋯⋯⋯っ」」」」

 翼の生えた馬から広がる綺麗な空色の波紋。
 
 「──キ、キゥ」

 魔物たちはその雷鳴?いや──雷龍とも呼べる咆哮に思わず後退の一足を踏んでいる。

 「止まれぇぇ!!!!同胞よ!!!」

 その一声で、総勢十万以上のラギア軍が四人の前に到着する。

 地平線の先まで埋め尽くす旗を掲げる歩兵と馬兵、そして魔導師。
 
 あまりの迫力に石田は気絶寸前。
 
 「また美少年かよ」

 輝く長髪。
 また一人、物語の人物が四人の前に姿を表す。

 パカラと音を立て、静止する男。

 「我が盟友の子孫よ」

 そう、あの拳の怪物と同じくして、大陸の覇者。

 時代を作ったと言えば凄いの一言であろう。

 しかし、目の前には一人の人間が国を興したのだ。

 「我の名前は、」

 この人間もまた、選ばれた英雄の一人。
 
 ──英雄の中の英雄。
 
 "功績は数知れず"
 "不敗神話の祖"
 "戦術を作った男"
 "人々が心酔した男"

 ""数多くの名言を残し、ケルビンに名言製造機とまで言わしめた伝説"































 ──"""英雄王"""。

 「ラギア国初代国王──ライツサーライト・ラギア・ライハルトである」

 なんか名前からしてヤバそうな人が目の前にいんだけど!?
 
 「ふんッ、我が友の情報は当たっていたようだな」

 驚き過ぎて、四人は完全に思考停止状態。

 「結界を!」

 ライハルトの一声で、目の前に結界が構築されていく。

 「大丈夫か?」

 「え、えぇ」

 あの懐遠が下手に握手を求める。

 「盟友の子孫よ、安心したまえ。
 我々がきたからには傷一つ付けることはないだろう!
 
 ガハッハハハハハ!!!」

 王の祖が今、まさしくこの世に蘇ったのだった。
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