【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

星の民

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 あまりにも。

 「馬上からすまんな!」

 あまりにもイケメンで、俺は泣きそうだぞ!

 そう言ってるであろう石田の泣きっ面を横目で見ている銀譲は察して、笑いを必死に堪えている。

 「えー⋯⋯と⋯⋯その、初代国王とか⋯⋯なんだか言ってましたけど⋯⋯その⋯⋯」

 懐遠の頭の中は完全にパニック。
 
 それもそうだ。

 ありえないほどの兵隊が修羅の覇気を垂れ流しで今か今かと目の前の男の言葉を待ち構えているからだ。

 おい倅ぇ!?
 まじでお前なにもんなんだよ!!

 馬に乗ったバカイケメン。
 しかもなんか馬の方は翼生えてるし?
 ⋯⋯なんか光ってるし。

 さっきもそうだったが、なんだろう。
 
 こう見えても懐遠は良い所の出。
 沢山の金と権力、そして女。

 経験値で言えばとてつもないものだ。
 だが、ローマンにしろこの目の前にいるライハルトにしても。


 ⋯⋯なんか"本物"って感じがするんだよなぁ。


 「星王様」

 「ん?ヴァルカン」
 
 黒い馬に乗ったこれまたイケメン。
 ライハルトの隣にやってきては、何か耳打ちをしている。

 「ほう?」

 首を傾げ、四人を見下ろす。

 「我が盟友とは詳しい内容をあまり話していないのだがな。

 もしや我らは大陸違いの場所に転移でもしたのか?

 ここには魔力がない」

 「魔力?
 地球には魔力というものはありませんが」

 「ほう?盟友の子孫かと思ったんだがなぁ」

 「子孫?」

 「ん?
 我はこの通り──」

 両手を広げるライハルトの全身から、とてつもない強力雷電と共に空色の魔力が放出される。

 先程の馬と同じく、雷道と、落雷が入り混じったモノだ。

 思わず四人は今まで一番というほどに顔が強張っている。

 「かつて建国し、我らが大陸をかけ巡った盟友。

 少々我にとっては知らぬ名ではあるが、伊崎という男とは師であり、友であり、家族であり、国としては盟友である。

 あの男であれば大陸の一つや二つ、いや十大陸をもはや創って自分の子孫でも残したのかと思ったのだ!

 ガッハハハハハハ!!!」

 思わず四人の内心は同じだった。

 "確かにやりそうだ。アレは"

 「だが話を聞くに、どうやら子孫ではなさそうだな。

 事情は素知らぬが、護ってほしいと頼られたのでな。

 かつて大陸を駆け回った我が星の民を引き連れたのだ」

 輝くマントを靡かせ、ライハルトは後方にいる自軍の民に振りかえる。

 すると、轟く軍勢の一喝。

 「我らがラギア!!!!
 星の民!!!!」

 「ガッハハ!
 イイじゃないか我が同胞よ」

 こんな中、草薙は冷静に恐怖しながら軍勢を眺めていた。

 全員があの長髪には及ばずだが、ほぼ全員が強力な魔力とやらがある。

 つまり、本当に力ではなく、あくまでもこの男に付いていこうという気持ちだけでいるという事なのか。

 すげぇな。
 それだけこの男に魅力があるということだろうが。
 
 力で従わせるのは俺だって出来る。
 簡単だ。最も早くて確実。

 だが。

 横目の草薙に映る光景。
 一人一人が兵であり、民であり、王を崇拝している。
 
 これがただの一人で生み出せるなんて⋯⋯常人じゃねぇ。

 ──イカれてやがる。

 この時草薙は人生で初めて一人を除いて──鳥肌と恐怖を感じたというのはここだけの秘密。

 「さて、この結界も簡易的なモノだ。
 長くは持つまい」

 ライハルトは振り返り、眼力は自身の軍勢を射抜く。

 「今日、我らは蘇った」

 拳を握り締める。

 「かつて我がラギアの国を建国しようと抜かしたあの日を覚えているか?」

 軍勢の兵士達は"覚えているさ"と鼻で笑う様にライハルトへ目線を送り返している。

 「その昔、私が幼少の頃、一人の錬金術師と出会う機会があった。

 我は平民以下の存在。
 道草や雑草に近い存在であった。

 願っていれば、雑草は姿を変えられるのだろうか?

 成長する事ができるのだろうか?

 産まれてから星を見上げ4歳になる頃から思い続けていた。

 しかし、我には不自然なほどに王になる為に産まれてきたのだと信じて疑わなかったのだ。

 大言壮語にも程がある。
 誰もがそう思うだろう。

 言うだけなら良いものよ。
 錬金術師は言った。

 "面白い。
 王になったらどうしたい?"

 我は迷わなかった。
 何故ならずっと私には星という明確な覇道という自分でも説明できない何かに動かされ続けたのだから。

 平民以下の存在だ。
 どうせ死ぬなら我が覇道を見せてやると。

 だからこう言い返してやった。
 
 "この世に生きとし生けるもの全てが、星の下では平等である。

 同胞を集め、その世界を広げ、そうして星の民を作る"

 錬金術師はゲラゲラと笑っていたよ。
 だが、我には分かる。

 笑ってはいても、馬鹿にしてはいなかった。
 私は自然とわかる。

 何故なら周りは笑わないが見下されているのが分かるからだ。

 最初は小さかった。
 が、しかし、我の覇道を理解できる者たちが増え、そして遂には⋯⋯星の同士として平野を駆けた。

 建国の際、我が覇道は段階を経て次に行こうと決心したのがあの日だ」

 恐ろしいほど静寂。
 ライハルトは一人一人の同胞へと目を向けながら、獰猛に笑い、続ける。

 「我は作り上げたとき、喋ったことがある。
 人間の時代は5つに分類されると。

 これを私の覇道では始星拡黒滅タスクーリ
 言わずもながらだ。

 なぜこれを話したのか?
 実に簡単だ。
 我々が勘違いしないように、だ。

 タスクーリの一つの時代。
 それは狂った者たちによる根っこを育てる時代だ。

 常人離れした精神力、思想、強さ、欲深さ。
 どれも全ての祖にして我らが持つ普遍的で大事な欲求である。

 一つは全てを切り拓く強靭な精神力を持った狂人から始まる。

 二つは土壌を作る人間。
 三つは成長させる人間。
 四つは効率的に成長・拡散させる人間。

 そして最後に、我らの集大成の五つ目の子孫が現れるであろう。

 これら全てを持って、人間という世界の時代を指す。

 我らは間違いなく一つ目の時代の人間だ。
 平野を駆け、戦い、我らの星の下で世界を、我が星の覇道を同じくする同胞と共にある為に。

 そんな生前、皆も知っている通り、私はすんなり王位を明け渡した。
 
 時代によって求められる王は違う。
 必要な人間が違うのだ。

 新しい思想、発想、優れた能力。
 私のような狂人を⋯⋯時代が、世界が、求めてきた時代は終わった。

 新たな時代を描く者が現れたその時、人間は進化するのだ。

 古い人間は淘汰されるべきであり、それが常である。

 大きな時代の変わり目に価値観を、世界も変わらねばなるまい。

 新しい人間は古い人間に敬意を持つべきであり、古い人間は新しい人間の発想に心躍らせ、星に還るべきなのである」

 ライハルトはここまで言い切るとフンッと豪快に鼻で笑う。

 「きっと我ら星の意思を受け継ぐものは現れる。

 だからこそ、我らはあの時星に還った」

 だが──と。
 ライハルトは手を広げ、一喝する。

 「我ら星の民に、助けてほしいと──我らが盟友が!同胞が!

 先人である我らに求めている!

 我らが出来ることはただ一つ!!!」

 ライハルトは背後に見える大群である結界外の魔物たちへと剣を抜く。

 星剣──星に舞う常世ディスガイアトライアレスが蒼い刀身が輝く。

 「切り開いてきたその強靭な精神力と、不敗神話を築き上げてきた我らの底力を見せることのみ!!!!」

 四人はもはや言葉には出さないが、内心震えながら呆然とその光景を眺め続ける。

 「星の民よ!!同胞よ!!
 死を恐れるな!!!

 我らは元は一つ。
 死ねば星に還る!
 見よ!!」

 ライハルトは剣を天へと突き上げる。

 「場所は変われど星は我らを見ていてくださる。

 我が覇道は今も尚不滅!!!!

 故に──我らが死を恐れる理由など何処にもありはしない!!!」

 兵士達の眼光を見れば言わずもながら分かる。

 「我ら星の民は今一度、命を賭けてあの魔物たちへと進軍する!」



































 「オォォォォォ!!!!!!!」

 鼓膜が破けそうな程重い軍勢からの咆哮。
 
 「ラギア!!ラギア!!」

 旗を掲げ、進軍の言葉を待つ軍勢の熱狂的なコール。

 ライハルトは四人に視線を下ろす。

 「どうだ、盟友の仲間よ。
 これが、我らが星の民であるラギアだ」

 その眼光、その風貌。
 どれをとってもまさに英雄王。

 四人が言葉もなく熱い何かが込み上げ、口を結んでいるのが分かる。

 す、すげぇ⋯⋯。
 昔の人が崇拝するのが分かる。

 石田はあまりにも大きいその男に伊崎以来の熱を持ちだしている。

 これが⋯⋯伊崎さんの友で、星の王。

 「我も王であるが、伊崎も⋯⋯ケルビンも王であろう?」

 見下ろすライハルト。
 あまりの迫力に気圧され、一瞬動揺する石田だが。

 だが見上げ──揺るぎない瞳で答える。

 「⋯⋯はい!!」

 「今は小さき王よ」

 視線は銀譲へ。

 「⋯⋯⋯⋯」

 「今すぐ王になる必要などない。
 必ず王になる時が来るのだ。

 星を見よ、常に輝いているが、それは夜空が見えるときのみであろう?

 しかし太陽が登ってはその輝きは消え去ってしまう。

 だが忘れるな。

 星は大きくなることもあれば小さくもなってしまう。

 輝く時もあれば沈む時もある。

 それが自然の理であり、そういう風に星は言っておる」

 「⋯⋯⋯⋯あぁ!」

 銀譲は遅れ気味に頷くと、ライハルトは小刻みに頷いて続ける。

 「それでよい。
 人の生とはそのようなものだと、星が言っておる。

 努々忘れるでないぞ」
 
 「貴重な助言⋯⋯感謝する」

 「フンッ」

 愛馬であるオジマアウラスティの頭を撫でる。

 「我が家族よ。
 あと一度だけ、共に駆けてくれないか」

 返事は、猛々しい咆哮。
 
 ギュオオオオ!!
 先ほどとは違い、穏やかで、心地の良い魔力の開放。
 
 「ありがとう」

 星剣を握り締め、ライハルトは叫ぶ。

 「我らは死に、次の青く、未熟で、若い星へと我らの志を託す!!!

 

 征くぞ────






























 星よ、共に進軍するスヘイアダオロス!!!!」
 
 「オォォォォォ!!!!!」

 翼をはためかせ、ライハルトも天馬も魔力を全開放。

 前脚を大きく上げ勢い良く結界を破り、ライハルトは笑ってそのまま大群へと星となって向かっていった。

 地鳴りは止まらず、終わったのは、それから30分以上経ったからの事だった。
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