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世界征服編
The StarLight
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火の海の東京。
そこではなんとも不可思議な出来事が起こっていた。
「な、何が起こってるんですか?」
鈍い音が等間隔で響く。
その光景を見つめる石田は呆然として銀譲を見つめる。
「黙って見ていよう。
俺達はアレに介入するべきではない」
話している間にも、鈍い音は勢いと回数を増していく。
「おいおい、日本人は呑気なもんだ。
俺達の国なら、とっくのとうに介入して、制圧まで終わらせているだろうさ」
だが懐遠は内心理解している。
こいつらがここまで言うのもわかる。
あんな光景、誰でも入りたくねぇってんだ。
そこには、二人の化物だった者が、爆心地の中心で大量の血を流しながら見るに堪えない殴り合い。
「んっ⋯⋯ァッ!」
「オイオイ!!!
お得意の神聖力で回復したらどうだ!?
ええ!?」
そう息巻くケルビンの顔面に一発叩き込まれる。
「ゴッ⋯⋯!!」
「貴様こそ!!
得意の魔力はどこへ行った!?」
「ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯ハァ」
脱力した状態で両手をぶらつかせ、ケルビンは嗤いながら煽って、煽りまくる。
「えぇ?
なんだよ、てめぇ⋯⋯意外と素手もいけんじゃねぇか」
「貴様こそ⋯⋯魔法だけかと思ってたが⋯⋯」
「ふッ!
てめぇの仮面が取れたら黄金が返ってきただけかよ!
俺の時間返せよ」
「うぐッ⋯⋯!!」
鳩尾に入り、悶えるアレクサンドル。
だが。
「ガハッ!」
「聞いて呆れる。
やはり貴様は実戦経験が乏しい。
最強だと例外には弱いみたいだな!」
そこには、先程まで東京を火の海に変えることの出来る化物たちの姿。
「てめぇはなんでまだ戦う!?」
それが今や。
「貴様の存在を消すためだ!!!」
ただの子供の喧嘩だ。
「ッラァァァ!!!」
様々なことを理解している、ただの子供だ。
「ごッ!!!」
バキッ!!
ケルビンは視線を一瞬落とす。
くっ、折れたか。
「万物の王が聞いて呆れる!!
左腕が使い物にならなくなったではないか!」
バキッ──!!!
なに!?
「オメェも仲間だぞ」
両者飛び退く。
「ハァ⋯⋯バァ⋯⋯バァ」
「バァ⋯⋯ ハァ゛ァ゛ア゛」
世界最強と言われ続けた⋯⋯二人の。
世界で最も醜い戦い。
「ヴァァァァァァ!!」
「らァァァァァァァ!!!」
本人たちから見れば、当時と何ら変わらない。
ただそれが、規模が呆れる程にまで小さくなっただけだ。
ドォォン!!
「ふンッ!」
アレクサンドルの一撃。
それは顔面にめり込み、そのままの勢いで地面に叩きつけた。
背を向けるが。
「結局⋯⋯」
「⋯⋯っ」
「てめぇも、俺も。
運命に遊ばれた馬鹿同士って訳だ」
夜空を眺めるケルビン。
「⋯⋯黙れ」
「そうだろ?」
「⋯⋯黙れ!!」
ゆっくり。
ゆらゆらと。
起き上がる。
「結局てめぇは──自分が特別で、神だと信じて疑わなかった視点から帰ってこれてねぇだけだよ」
その言葉が聞こえた直後。
歯が砕ける音がアレクサンドルの方から聞こえてくる。
「貴様⋯⋯ァ!」
「ほら見ろよ!!!」
両手を広げる。
「魔力も、神聖力も!!
何もなければ俺たちはただの人だ!
神の代行者を自称し、自分が特別でなければならないという歪んだ認知のせいで始まった物語だろ!?」
走り出し、殴り合う。
「そうだろォ!」
「ぐァッ!?」
攻防の中の一瞬の隙。
ケルビンの一撃がアレクサンドルを地面に薙ぎ倒す。
掻き上げ、嗤いながら言う。
「てめぇは⋯⋯てめぇが思ってる以上に人間なんだよ。
俺が何千万人殺したとしてよ?
平行世界の人類を含めたら、お前何百億人殺したことになるんだ?
そんくれぇの精神状態じゃなきゃ、とても罪の意識で生きていけねぇわな」
「黙ァァァァまァァァレェェェェ!!!」
アレクサンドル渾身の一撃。
その一撃を、敢えてそのままガードすることなく両手を広げながら受けて、地面に伏す。
「ようこそ!!!!!
アレクサンドル!!!!
この底辺が人間様の世界だ!!」
「⋯⋯っ、貴様」
「やっとこっちに来たな!
醜くて、高潔でもなく、ただ自分本意に生きる⋯⋯それが人間の本質であり、事実だ!!
男は男の、女は女の道がある!!
世は複雑にしたがるが、答えは単純!
知性と感情が混同しているから世は残酷になっているだけだ!
その中で生きる我々もまた醜い人間の一人であり、観測者なのだ!!!」
「⋯⋯⋯⋯」
「昔誰かが言っていた。
世界は残酷だと。
闇しかないのだと。
しかし、戦争し、その跡地で華を添えるからこそ、人はまた輝くのであり、また火を灯すことにもなるのだと」
「⋯⋯⋯⋯」
「そうやって争いは何気ない小さな灯火が生み、我々のような入力によって得た叡智を出力出来てしまうバグが生まれた時、世界は転換を迎える」
「⋯⋯⋯⋯」
「そして分不相応な力と精神性を握った人間こそ、争いの火種を生み、混沌と化す!
それが人間だ!!
男は女とヤることしか考えず、女はどれだけ自分が良い環境で良い男を所有し、良い家に住み、どれだけ良い物に囲まれているかでしか胸を張ることが出来ない愚かな生き物なのだ!!
それをどれだけ隠して生きているかだけに過ぎない!!」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯そしてそれは。
いつの時代も変わらず、不変なる事実である」
「⋯⋯⋯⋯」
勝ち誇ったように笑うケルビンは起き上がる。
「さて、獅子王と言われ、神の代行者」
「⋯⋯⋯⋯」
「最期だ。
貴様のその力と、私の魔力。
正真正銘──本気の一撃で決めよう。
嫌だろ?
残った体力で足蹴を喰らって死ぬのは」
「⋯⋯よかろう」
地面には衝撃波が広がる。
空にはアレクサンドル。
地面には、威風堂々立ち尽くすケルビンの背中。
「「⋯⋯⋯⋯」」
二人の理外の存在。
その戦いが終わろうとしていた。
「ふぅ⋯⋯ふぅ⋯⋯はは」
視界には地面一色。
息をするのですらギリギリ。
自分の太ももに手を置かなきゃいけないくらい瀕死。
視界も朧気。
『愚かな錬金術師よ』
「ハァ⋯⋯ハァ」
自分の背中の方から、誰かが俺を嘲笑うように囁いてくる。
『お前の人生はお前の為に作られたものではない』
「⋯⋯ハァ⋯⋯ハァ」
中腰のまま振り返る。
だが、そこには誰もいない。
『目を覚ませ』
「⋯⋯っ?」
正面にも居ない。
誰だ?誰が俺に囁いているんだ?
『最も愚かで最も偉大な大賢者であり錬金術師よ。
目を覚ませ。
お前には見えているだろう?
お前の言う願いは──今、世界を脅かしている』
「ハァ⋯⋯⋯⋯ハァ」
それは、自分なのか?
幻聴なのか。
ハッキリと。
自分の頭の中に響き渡る。
『お前の夢は今──』
『世界の悲願となったのだ』
笑いが込み上げて来る。
「ははははははははは」
『もう一度言う。
この人生はもう──お前のものだけではなくなった。
人々の願いになり、人類の悲願となったのだ』
「ハハハハハッ」
『お前を止めるものは⋯⋯もう、ない』
「何が可笑しい」
絶望の中。
俺は笑う。
浮かべるのは、自分の手紙。
"人の生は立ち上がることを前提に成り立っているのだから"
「⋯⋯⋯⋯」
"貴様の存在には明確な理由がある。
だが、それはいずれ分かる"
「⋯⋯⋯⋯」
"ここに来れたということは、その時が近付いている"
「⋯⋯⋯⋯」
"前進することを。
恐れるな。
拒むな。
向き合え。
その時になったらきっと私の言っている意味が分かるはずだ。
そしたら、思わず笑ってしまうだろうから"
「──さて」
"だが最後には立ち上がれ"
つくづく思う。
「すぅ⋯⋯ふぅ⋯⋯」
人の生とは、非常に愉快だと。
絶望の中。
これだけ笑える自分にも。
そして笑えるほど今、後悔も何もない。
止めるものはない。
「「⋯⋯ッ!」」
俺とアレクサンドル、同時に飛び出す。
走って、蹴り上がる。
「っ!」
残り少ない魔力。
それを右手に通わせる。
「少し足りないか」
勢い良く、空を駆け抜ける。
折れた左腕は今にも飛んでいきそうだが、突き進む。
こんな瀕死の自分を見たのはいつぶりだろうか。
そして、自分の右手には煌めくこれまで見てきた自身の魔力。
『ケルビン!』
「⋯⋯ッ!」
思わず視線が移る。
⋯⋯自分の右手の魔力が増えているのだ。
なんだ?
自分の右手には、知らない人間の手が添えられている。
『ケルビン!』
『ケルビーン!!』
増えていく魔力。
増えていく人の手。
誰だ?
誰だっけ?
『ケルビン』
『ケルビン』
『友よ!』
『ケルビン』
『あなた』
『師よ!』
魔力が、増えていく。
自分の知らない魔力。
『そーちゃん!』
『湊翔!』
『お兄ぃ!』
『お兄ちゃん!』
『湊翔お兄ちゃん!』
『伊崎さん!』
『大将!』
『伊崎くん!』
『そーくん!』
添える手がどんどん増えて行き、やがてそれは星となって──巨大な一つの銀河になる。
「⋯⋯⋯⋯」
自分の右手には、これまでの自分の積み上げたモノが乗っかっている。
──そんな気がする。
【驚異的な速度で存在強度が上昇しています】
【特性[神性]を獲得】
【貴方はクラス1の惑星の中で"二人"目の偉業を達成しました】
【塔があなたの存在を明確に認知しました】
【ようこそ、塔の世界へ】
【塔は様々な生命体を受け入れている全宇宙の⋯⋯】
「黙れ」
今そんなことはどうでもいい。
俺は、今──この瞬間に生きてる。
誰だか知らねぇが、今お前らの話なんて聞いてねぇ。
右手の拳。
そこには銀河が詰まっている。
これまでの全て。
誰かの魂。
誰かの希望。
誰かの絶望。
誰かの幸せや。
誰かの悲しみ。
誰かの怒り。
誰かの記憶。
誰かの生きた証が。
「っ!!!」
見上げる。
そこには、黒曜に輝くアレクサンドル。
恐れるな。
深く吸う。
駆け抜けているとなんでか、昔を思い出す。
ーーそーちゃんは将来どうしたいの?
「⋯⋯⋯⋯」
"僕は、将来パパとママとみんな一緒にこの家でご飯食べること"
ーーあら、パパ、聞いた?
なんて可愛い息子なの?
ーーあぁ。湊翔。
そんなことを言うなんて、親としてはこれ以上ない言葉だ。
「⋯⋯⋯⋯」
さて。
もしかしたら、これが、自分の中で最後の全力になるかもしれないんだ
最初で最後の──全力。
「ハァァァ⋯⋯」
"ねぇお母さん!
僕、テストで100点取ったよ!"
ーーあら、さすがね!
将来は優秀になっちゃうわぁ!
「ァァァァ⋯⋯」
ーー学校でイジメられているって本当?
"うんうん!イジメられてない!
みんな仲良くしてくれてるよ"
「ァァァァァ⋯⋯」
ーーねぇお兄ぃ。私達、どうなるの?
"頑張るしかないか。
積み上げていけば、いつか叶う"
「ァァァァァァ⋯⋯」
ーー南、あとはお兄ちゃんに任せろ。
ここまでありがとう。
「ァ゛ァ゛ァ゛!゛!゛!゛」
その姿は、徐々に姿を変え、幼少期から少年、青年、今までの歴史が重なっていく。
「ハァァァァ⋯⋯」
ーー聖嗣様!
「ァァァァァ⋯⋯」
ーー間違いを犯さないの
「ァァァァァァ⋯⋯」
ーーお前はどうしたいんだ?
「ァァァァァァァ!!!!」
「黒衝撃!!!!」
迫る黒い炎の前に、ケルビンの耳元で、誰かが囁く。
──至れ。
「⋯⋯っ!?」
銀河を纏った拳。
──征け。
これまでの礼だ。
突然、浮かぶ技。
目の前のこれがなんだか分からなかったのだが、突然だ。
迫る黒陽に──俺は征く。
「創──」
「創世の一撃ッッッッ!!!!」
そこではなんとも不可思議な出来事が起こっていた。
「な、何が起こってるんですか?」
鈍い音が等間隔で響く。
その光景を見つめる石田は呆然として銀譲を見つめる。
「黙って見ていよう。
俺達はアレに介入するべきではない」
話している間にも、鈍い音は勢いと回数を増していく。
「おいおい、日本人は呑気なもんだ。
俺達の国なら、とっくのとうに介入して、制圧まで終わらせているだろうさ」
だが懐遠は内心理解している。
こいつらがここまで言うのもわかる。
あんな光景、誰でも入りたくねぇってんだ。
そこには、二人の化物だった者が、爆心地の中心で大量の血を流しながら見るに堪えない殴り合い。
「んっ⋯⋯ァッ!」
「オイオイ!!!
お得意の神聖力で回復したらどうだ!?
ええ!?」
そう息巻くケルビンの顔面に一発叩き込まれる。
「ゴッ⋯⋯!!」
「貴様こそ!!
得意の魔力はどこへ行った!?」
「ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯ハァ」
脱力した状態で両手をぶらつかせ、ケルビンは嗤いながら煽って、煽りまくる。
「えぇ?
なんだよ、てめぇ⋯⋯意外と素手もいけんじゃねぇか」
「貴様こそ⋯⋯魔法だけかと思ってたが⋯⋯」
「ふッ!
てめぇの仮面が取れたら黄金が返ってきただけかよ!
俺の時間返せよ」
「うぐッ⋯⋯!!」
鳩尾に入り、悶えるアレクサンドル。
だが。
「ガハッ!」
「聞いて呆れる。
やはり貴様は実戦経験が乏しい。
最強だと例外には弱いみたいだな!」
そこには、先程まで東京を火の海に変えることの出来る化物たちの姿。
「てめぇはなんでまだ戦う!?」
それが今や。
「貴様の存在を消すためだ!!!」
ただの子供の喧嘩だ。
「ッラァァァ!!!」
様々なことを理解している、ただの子供だ。
「ごッ!!!」
バキッ!!
ケルビンは視線を一瞬落とす。
くっ、折れたか。
「万物の王が聞いて呆れる!!
左腕が使い物にならなくなったではないか!」
バキッ──!!!
なに!?
「オメェも仲間だぞ」
両者飛び退く。
「ハァ⋯⋯バァ⋯⋯バァ」
「バァ⋯⋯ ハァ゛ァ゛ア゛」
世界最強と言われ続けた⋯⋯二人の。
世界で最も醜い戦い。
「ヴァァァァァァ!!」
「らァァァァァァァ!!!」
本人たちから見れば、当時と何ら変わらない。
ただそれが、規模が呆れる程にまで小さくなっただけだ。
ドォォン!!
「ふンッ!」
アレクサンドルの一撃。
それは顔面にめり込み、そのままの勢いで地面に叩きつけた。
背を向けるが。
「結局⋯⋯」
「⋯⋯っ」
「てめぇも、俺も。
運命に遊ばれた馬鹿同士って訳だ」
夜空を眺めるケルビン。
「⋯⋯黙れ」
「そうだろ?」
「⋯⋯黙れ!!」
ゆっくり。
ゆらゆらと。
起き上がる。
「結局てめぇは──自分が特別で、神だと信じて疑わなかった視点から帰ってこれてねぇだけだよ」
その言葉が聞こえた直後。
歯が砕ける音がアレクサンドルの方から聞こえてくる。
「貴様⋯⋯ァ!」
「ほら見ろよ!!!」
両手を広げる。
「魔力も、神聖力も!!
何もなければ俺たちはただの人だ!
神の代行者を自称し、自分が特別でなければならないという歪んだ認知のせいで始まった物語だろ!?」
走り出し、殴り合う。
「そうだろォ!」
「ぐァッ!?」
攻防の中の一瞬の隙。
ケルビンの一撃がアレクサンドルを地面に薙ぎ倒す。
掻き上げ、嗤いながら言う。
「てめぇは⋯⋯てめぇが思ってる以上に人間なんだよ。
俺が何千万人殺したとしてよ?
平行世界の人類を含めたら、お前何百億人殺したことになるんだ?
そんくれぇの精神状態じゃなきゃ、とても罪の意識で生きていけねぇわな」
「黙ァァァァまァァァレェェェェ!!!」
アレクサンドル渾身の一撃。
その一撃を、敢えてそのままガードすることなく両手を広げながら受けて、地面に伏す。
「ようこそ!!!!!
アレクサンドル!!!!
この底辺が人間様の世界だ!!」
「⋯⋯っ、貴様」
「やっとこっちに来たな!
醜くて、高潔でもなく、ただ自分本意に生きる⋯⋯それが人間の本質であり、事実だ!!
男は男の、女は女の道がある!!
世は複雑にしたがるが、答えは単純!
知性と感情が混同しているから世は残酷になっているだけだ!
その中で生きる我々もまた醜い人間の一人であり、観測者なのだ!!!」
「⋯⋯⋯⋯」
「昔誰かが言っていた。
世界は残酷だと。
闇しかないのだと。
しかし、戦争し、その跡地で華を添えるからこそ、人はまた輝くのであり、また火を灯すことにもなるのだと」
「⋯⋯⋯⋯」
「そうやって争いは何気ない小さな灯火が生み、我々のような入力によって得た叡智を出力出来てしまうバグが生まれた時、世界は転換を迎える」
「⋯⋯⋯⋯」
「そして分不相応な力と精神性を握った人間こそ、争いの火種を生み、混沌と化す!
それが人間だ!!
男は女とヤることしか考えず、女はどれだけ自分が良い環境で良い男を所有し、良い家に住み、どれだけ良い物に囲まれているかでしか胸を張ることが出来ない愚かな生き物なのだ!!
それをどれだけ隠して生きているかだけに過ぎない!!」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯そしてそれは。
いつの時代も変わらず、不変なる事実である」
「⋯⋯⋯⋯」
勝ち誇ったように笑うケルビンは起き上がる。
「さて、獅子王と言われ、神の代行者」
「⋯⋯⋯⋯」
「最期だ。
貴様のその力と、私の魔力。
正真正銘──本気の一撃で決めよう。
嫌だろ?
残った体力で足蹴を喰らって死ぬのは」
「⋯⋯よかろう」
地面には衝撃波が広がる。
空にはアレクサンドル。
地面には、威風堂々立ち尽くすケルビンの背中。
「「⋯⋯⋯⋯」」
二人の理外の存在。
その戦いが終わろうとしていた。
「ふぅ⋯⋯ふぅ⋯⋯はは」
視界には地面一色。
息をするのですらギリギリ。
自分の太ももに手を置かなきゃいけないくらい瀕死。
視界も朧気。
『愚かな錬金術師よ』
「ハァ⋯⋯ハァ」
自分の背中の方から、誰かが俺を嘲笑うように囁いてくる。
『お前の人生はお前の為に作られたものではない』
「⋯⋯ハァ⋯⋯ハァ」
中腰のまま振り返る。
だが、そこには誰もいない。
『目を覚ませ』
「⋯⋯っ?」
正面にも居ない。
誰だ?誰が俺に囁いているんだ?
『最も愚かで最も偉大な大賢者であり錬金術師よ。
目を覚ませ。
お前には見えているだろう?
お前の言う願いは──今、世界を脅かしている』
「ハァ⋯⋯⋯⋯ハァ」
それは、自分なのか?
幻聴なのか。
ハッキリと。
自分の頭の中に響き渡る。
『お前の夢は今──』
『世界の悲願となったのだ』
笑いが込み上げて来る。
「ははははははははは」
『もう一度言う。
この人生はもう──お前のものだけではなくなった。
人々の願いになり、人類の悲願となったのだ』
「ハハハハハッ」
『お前を止めるものは⋯⋯もう、ない』
「何が可笑しい」
絶望の中。
俺は笑う。
浮かべるのは、自分の手紙。
"人の生は立ち上がることを前提に成り立っているのだから"
「⋯⋯⋯⋯」
"貴様の存在には明確な理由がある。
だが、それはいずれ分かる"
「⋯⋯⋯⋯」
"ここに来れたということは、その時が近付いている"
「⋯⋯⋯⋯」
"前進することを。
恐れるな。
拒むな。
向き合え。
その時になったらきっと私の言っている意味が分かるはずだ。
そしたら、思わず笑ってしまうだろうから"
「──さて」
"だが最後には立ち上がれ"
つくづく思う。
「すぅ⋯⋯ふぅ⋯⋯」
人の生とは、非常に愉快だと。
絶望の中。
これだけ笑える自分にも。
そして笑えるほど今、後悔も何もない。
止めるものはない。
「「⋯⋯ッ!」」
俺とアレクサンドル、同時に飛び出す。
走って、蹴り上がる。
「っ!」
残り少ない魔力。
それを右手に通わせる。
「少し足りないか」
勢い良く、空を駆け抜ける。
折れた左腕は今にも飛んでいきそうだが、突き進む。
こんな瀕死の自分を見たのはいつぶりだろうか。
そして、自分の右手には煌めくこれまで見てきた自身の魔力。
『ケルビン!』
「⋯⋯ッ!」
思わず視線が移る。
⋯⋯自分の右手の魔力が増えているのだ。
なんだ?
自分の右手には、知らない人間の手が添えられている。
『ケルビン!』
『ケルビーン!!』
増えていく魔力。
増えていく人の手。
誰だ?
誰だっけ?
『ケルビン』
『ケルビン』
『友よ!』
『ケルビン』
『あなた』
『師よ!』
魔力が、増えていく。
自分の知らない魔力。
『そーちゃん!』
『湊翔!』
『お兄ぃ!』
『お兄ちゃん!』
『湊翔お兄ちゃん!』
『伊崎さん!』
『大将!』
『伊崎くん!』
『そーくん!』
添える手がどんどん増えて行き、やがてそれは星となって──巨大な一つの銀河になる。
「⋯⋯⋯⋯」
自分の右手には、これまでの自分の積み上げたモノが乗っかっている。
──そんな気がする。
【驚異的な速度で存在強度が上昇しています】
【特性[神性]を獲得】
【貴方はクラス1の惑星の中で"二人"目の偉業を達成しました】
【塔があなたの存在を明確に認知しました】
【ようこそ、塔の世界へ】
【塔は様々な生命体を受け入れている全宇宙の⋯⋯】
「黙れ」
今そんなことはどうでもいい。
俺は、今──この瞬間に生きてる。
誰だか知らねぇが、今お前らの話なんて聞いてねぇ。
右手の拳。
そこには銀河が詰まっている。
これまでの全て。
誰かの魂。
誰かの希望。
誰かの絶望。
誰かの幸せや。
誰かの悲しみ。
誰かの怒り。
誰かの記憶。
誰かの生きた証が。
「っ!!!」
見上げる。
そこには、黒曜に輝くアレクサンドル。
恐れるな。
深く吸う。
駆け抜けているとなんでか、昔を思い出す。
ーーそーちゃんは将来どうしたいの?
「⋯⋯⋯⋯」
"僕は、将来パパとママとみんな一緒にこの家でご飯食べること"
ーーあら、パパ、聞いた?
なんて可愛い息子なの?
ーーあぁ。湊翔。
そんなことを言うなんて、親としてはこれ以上ない言葉だ。
「⋯⋯⋯⋯」
さて。
もしかしたら、これが、自分の中で最後の全力になるかもしれないんだ
最初で最後の──全力。
「ハァァァ⋯⋯」
"ねぇお母さん!
僕、テストで100点取ったよ!"
ーーあら、さすがね!
将来は優秀になっちゃうわぁ!
「ァァァァ⋯⋯」
ーー学校でイジメられているって本当?
"うんうん!イジメられてない!
みんな仲良くしてくれてるよ"
「ァァァァァ⋯⋯」
ーーねぇお兄ぃ。私達、どうなるの?
"頑張るしかないか。
積み上げていけば、いつか叶う"
「ァァァァァァ⋯⋯」
ーー南、あとはお兄ちゃんに任せろ。
ここまでありがとう。
「ァ゛ァ゛ァ゛!゛!゛!゛」
その姿は、徐々に姿を変え、幼少期から少年、青年、今までの歴史が重なっていく。
「ハァァァァ⋯⋯」
ーー聖嗣様!
「ァァァァァ⋯⋯」
ーー間違いを犯さないの
「ァァァァァァ⋯⋯」
ーーお前はどうしたいんだ?
「ァァァァァァァ!!!!」
「黒衝撃!!!!」
迫る黒い炎の前に、ケルビンの耳元で、誰かが囁く。
──至れ。
「⋯⋯っ!?」
銀河を纏った拳。
──征け。
これまでの礼だ。
突然、浮かぶ技。
目の前のこれがなんだか分からなかったのだが、突然だ。
迫る黒陽に──俺は征く。
「創──」
「創世の一撃ッッッッ!!!!」
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身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
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※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
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