【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

この世ならざる者

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 「伊崎さん⋯⋯!」

 あんたはいつから漫画の主人公になったってんだよ⋯⋯!

 「星みたいだな」

 そう。
 宇宙色みたいな、グラデーションっぽい塊が登っていく。

 いや。違うか。
 
 ーー石田。
 お前はお前のやりたいように生きろ。
 俺が言ったからなんてつまらんことは言うな。

 お前の魂が燃えるような人生を歩めるように、俺が開けておいてやるから。

 「頼むぞー!!
 俺のモテモテライフの為にー!!!」

 「「「⋯⋯え?」」」

 そうだ。
 アンタはそんな俯くタイプじゃねぇだろうが!

 「こんな所で遊んでる場合じゃないっすよ!!

 早くクラブ行きましょうー!!!」

 「駄目だ、石田が壊れちまった」

 「ちょ!アニキも!!
 今伊崎さんに命運が掛ってるんですよ!?」

 「そりゃそうだわな」

 懐遠も加勢し。

 「いけー!倅ぇぇぇ!!
 覇旬の息子だろー!!」

 「大将ぉぉぉ!!
 世界を頼むぞ!!」

 釣られて銀譲も大声で叫ぶ。

 「⋯⋯⋯⋯」

 ーー俺は傲慢なんだ。
 円の中にいる奴らは⋯⋯何がなんでも護るって決めてんだ。

 「⋯⋯勝てよ」

 煙草の細煙を吐きながら穏やかに笑う草薙。

 その瞬間、黒と銀河の鍔迫り合い。

 ゴォンン⋯⋯!
 
 「「「「⋯⋯ッ!!」」」」

 空と紫が混じったような波紋。
 それが衝突と同時に一定間隔で地球全体に広がり、見上げている地上に衝撃波がやってくる。

 津波のように東京全てを揺らし、全ての瓦礫をふっ飛ばす勢いだ。

 「これが⋯⋯化物同士の衝突か!」
 
 マジで倅はすげぇな!
 この重圧と緊張の中でよく戦ってるぜ。

 「前が⋯⋯!!」

 「オイ!何かに掴まれ!!
 風圧で吹っ飛ぶぞ!!」

 まさに王道を征く。
 天が黒と宇宙色に見事に真っ二つ。

 割れている。

 雷が鳴り響き、世界に終焉と希望をもたらさんとする賛美歌を聞かせようとしていた。








 「オイオイ」

 懐遠が立ち上がる。
 
 「こりゃ⋯⋯神話か?」

 東京だったそこは、まるで更地のように真っさらになり掛けている。

 あの衝撃波だけで?
 まじで人外なんて生易しい。

 「⋯⋯っ、じゃねぇ!」

 倅は!?
 
 「っ!!」

 見上げる懐遠の先には、空中に意識を失って落ちて来ている伊崎の姿。

 「天璽功!!」

 足に氣を溜め、蹴り上がる。

 「倅!!!」

 高速で落ちてくる重い身体を、懐遠はギリギリ受け止める。

 「ぐっ⋯⋯!!」

 心肺は?
 止まってる?

 「まずい。
 ほぼ動いてねぇ!」

 周囲を見回しながら叫ぶ。

 「おい!誰か!!
 回復ポーションはねぇか!?」

 懐遠の声に、次々と倒れている人間が起き上がる。

 「倅の心肺が止まってる!!!!」

 「「「⋯⋯!?」」」

 三人が急いで起き上がり、伊崎の容態を確認する。

 「腕折れてる⋯⋯」

 「顔面もかなり損傷してるな」

 「良くやったじゃねぇか。
 それでこそ男だ」

 それを聞いた石田が俯きながら言う。

 「⋯⋯死んだら、死んだら意味ないっすよ」

 「男は死に場所を探すのが本能だからな」

 淡々としている草薙に横目で睨みつける石田。

 「今そんな場合じゃねぇ!
 秘書!ポーションは?」

 「もう在庫はありません!」

 「俺達も使い切ってる⋯⋯死体からポーションの痕跡を探せ!時間がねぇ!!」

 懐遠は必死の形相で叫ぶ。

 「もう二度と⋯⋯英雄を死なせる訳にはいかねぇ!!!  

 凡は走れ!!!」
 
 なんでもいい。
 心肺が動くような。

 「そっちはあったか!?」

 「ないです!」

 「草薙!」

 「ない」

 「⋯⋯ちっ!」

 「俺があの時飲まなければ⋯⋯」

 「いやそれは飲まなかったらここまで辿り着けなかったすから!」

 すると。
 向こうから誰かが走ってくる。

 「止まれ!!」

 懐遠の張り上げた声に、三人が警戒を最大限上げる。

 「悪い悪い!そんなつもりはない!」

 そこには、十数人の見たことないような服装の人間たち。

 「ピンピンしてるな?
 誰だ、お前らは」

 懐遠の言葉に小さく草薙がハッとすると、一気に構えだす。

 そしてそれを見て石田がヤバさに気付く。

 「待て!待て待て!!」

 「何モンだてめぇら⋯⋯現代でそんな昔見てぇな格好してるやつなんざいねぇぞ。

 塔の奴らだな?」

 「塔!?」

 草薙の言葉に石田がファイティングポーズにしている拳の力が加わる。

 「うぇっ?塔を知ってるやつがいんのか?
 クラス1の世界だろ?」
 「馬鹿!何最悪なこと言ってるのよ!」

 「やるなら受けて立つぞ?
 生憎、まだ体力はあるんでな」

 おぉ、あの草薙がやる気だ⋯⋯。

 石田は気付いている。
 あの草薙が最大限警戒している相手だと。

 「待てって!俺達は敵じゃない!!」

 リーダーらしき翠色の髪をした男が必死に手を振っている。

 「ならなんだ?味方でもないだろ?」

 「俺達は──」
 「いいのかよ?
 宣言したら塔の奴らに見つかるぞ?」

 【黄金の主:何だあいつら?
 よく見たら、あのバッジ⋯⋯撲滅隊か】

 「うえっ!?見つかってる!!」
 「なら仕方ない」

 男は手を差し伸べ、自己紹介する。

 「俺はエリマ。
 塔20層、次元撲滅隊九番隊隊長で⋯⋯その⋯⋯言ってもわからないよな?」

 「草薙狂仁。
 塔の事は概要だけしか知らねぇが」

 二人は握手を交わす。

 【性格激悪魔女:概要でも知ってるの?
 珍しいわね。どうやって知ったのかしら?
 感知も認知もできない世界なはずだけれどね】

 【1000コイン投げられました】

 「その次元撲滅ってのは?」 

 「この世界は魔力がない。
 だが、稀に別の次元に存在している超越した生物が次元を超えて行くことがあるんだ。

 例えば、この世界ではありえない力を持っている者とか」

 目でそう訴えられるのだが、四人は何も答えられなかった。

 ⋯⋯ある一人のせいで。

 「それで?」

 「あぁ。
 本来なら駄目な行為だが、それを悪用して自分たちの箱庭にしている奴らを俺達は許さない。

 それを塔では逸脱行為とされている。
 如何なる理由であろうと、介入して本来あるクラスから勝手に上昇させることは許されない。

 それを俺達は日々撲滅する為に活動している」

 「てことはつまり⋯⋯宇宙人?」

 石田の問いにエリマは少し悩む素振りを見せながら答える。

 「まぁそっちの概念だとそうなるかな?
 俺達からすると全然解釈は違うけど」

 「えー!やっぱり宇宙人っていたんだ!」

 【魔導人形が好き:
 何この人間、めっちゃ可愛いんだが】

 【悪魔界のモブ:
 この世界の文明ってこんなに低いのか。
 そりゃ悪用されるわな】

 「あぁ。
 例えば、この世界に本来ならありえないはずの悪魔が居たら?龍がいたら?

 それだけで全てが終わる。
 力関係の秤がどうしようもならない。

 でも超越してる場合、俺達でも中々捕捉できないからこうして活動しながら情報を得ているわけだ。

 ここは端にあり過ぎて何も情報がなかったんだけどな」

 と、エリマはハッとする。

 「そうだ!そこの男の子!」

 駆け寄り、何かを伊崎に飲ませる。

 「これは?」

 「これは治癒の薬だ。
 飲めば治るぞ!」

 「まじかよ!助かった!!
 それなら早く言ってくれよー!」

 バシバシ叩く懐遠に、エリマは苦笑い。

 「てことは」

 立ち上がり、向こうで黒いモヤがかかっているアレクサンドルを発見するエリマ。

 「こいつか」

 膝をつく。

 ったく。介入がもう少し遅かったらと思うと⋯⋯。

 「ケイ!鑑定!」
 「鑑定!」
 

 【アレクサンドル・オジディンデウス・リアハイル・アレイスター】

 [年齢]?歳

 [勢力情報]なし

 [スキル]なし

 
 ん?どういう事だ? 

 エリマとケイは思わず見合わせる。

 「この人、スキルないよ?」

 「だが、明らかに逸脱した力を持っていた。
 どういう事だ」

 いや。

 エリマはボスの言葉を思い出す。

 「もしかしたら」

 「⋯⋯ん?」

 「もし魂の縛りを作って契約していたとしたら?」

 「⋯⋯っ、正気?」
 
 無言で頷くエリマ。

 「あぁ。
 あくまで鑑定は基礎情報だ。
 深部の情報までは見れないのはあれだが、もしかしたら⋯⋯」

 その時。
 
 「⋯⋯ッ!!!!」
 
 最大限の警告アラートであるエリマのスキルがオートで発動し、頭の中で音を鳴らす。

 このスキルのアラートレベルの段階は5段階。
 そう。彼な頭に浮かんだのは。

 """10"""
































 「全員!!!!
 上を絶対に見るなぁぁぁ!!!!」

 突如発狂するように叫ぶエリマの声に、四人と撲滅隊は動揺する。

 しかし撲滅隊はすぐに地面に伏せる。
 エリマの先見の明にはよく助けられているからだ。

 ──だが、四人は遅かった。

 アイツら⋯⋯だい⋯⋯っ!?

 エリマが微かに見上げると、四人は立ち尽くしている。

 ──遅かったか!

 「リーダー!なんですか!?」

 「まずい!
 原生の奴らが俺の指示を聞くのが遅れた!!」

 「なぁ、草薙」

 「なんだ?」

 「なんで空が暗いんだ?」

 「わからねぇ。
 しかも、なんで赤いのかって思ってところなんだが⋯⋯」

 四人の耳には既に、ゴゴゴコゴゴゴという脳に響く低音。

 「早く下を見ろ!!くそっ!」

 なんで⋯⋯なんで!!

 


























 こんな所に外なる神々アウターゴッドがいんだよ!!

 そう。暗い空。
 赤い。赤い。

 赤い夜。
 地球がかつてこんな空を浮かべたことがあったのだろうか。

 ⋯⋯⋯⋯え?

 違うのだ。
 真っ先に気づいてしまったのは、石田で。

 「あっ⋯⋯」

 石田はアレクサンドルの比ではない震えが足裏から太もも、そして胸、そのまま喉を通り過ぎて頭へと進んでいく。

 「おい!ケイ!
 さっさと精神スキルをかけてやれ!!

 アイツら死ぬぞ!!」

 ⋯⋯あ、あれ?
 赤い月がなんで"動いてる"?

 「ケイ!!!急げ!!!」

 もしかしてこれは、暗いのではなくて。































 顔?
 てことは、あれって⋯⋯⋯⋯目?

 思考が止まる。
 ソレと目が合う。
 
 そう。それは狂気。
 
 「あ、あぁ⋯⋯」

 ソレと遭遇してはいけない。

 「ワァァァァアアア!!!!!!」

 「ケイ!!」

 「スキル使用に時間がかかんだよ!!
 花の楽園ネチュラバインド!!」

 四人の身体が強制的に地面に伏せられ、翠色の光が四人の精神を癒やす。

 「馬鹿!原生人め!」

 「違う⋯⋯違う⋯⋯」

 「ケイ!」

 「あれは⋯⋯違う」

 クソッ!
 異界の神格じゃなくて⋯⋯外なる神々なんて貧乏くじもいいところだぜ!

 「おい、外なる神々ってなんだ?」

 「ん?お前は平気なのか?狂仁」

 「ギリギリな」

 「お、おう⋯⋯」

 てかすげぇな。
 この二人は半分意識がねぇし、一人は発狂してる。

 なのにコイツは至って普通だ。

 「外なる神々はクラス表記がない存在のことを指す」

 「クラス?
 確か、この表示は俺達の星をクラス1だと言っていたが」

 「あぁ。1から10までが基本。
 10は⋯⋯そうだな。

 お前らからすれば⋯⋯あくまで指標だが、2と遭遇して生き残れる確率はゼロって意味だ」

 「つまりマイナスどころかミクロくらいの奴が惑星の前にいる気分だな」

 「下手したら相手は宇宙そのものだ」

 「なんだそれ。
 インフレヤバすぎだろ」

 「インフレなんて言うな。
 外なる神々はそもそも塔でも50もいない存在なんだからな」

 「んで?」

 「こんな時に煙草を吸うとは、度胸があるんだかないんだか」

 「俺が知りたいのは、その化物の中の化物がいたとしてだ。

 俺達はどうするべきなんだって話をしたい」

 「⋯⋯今回は俺も想定外の自体になってる。
 正直な言えば、俺はクラス4だ。
 お前らより明確に強いが、アレと比べれば塵だ」

 「なるほど理解した。
 お前らとしては予定の超越者と違うパターンを引いたわけだな?」

 「そういう事になる」

 理解が早いな。 
 コイツ、そもそもどこで塔のことを聞いたんだ?

 「■■■■■■■■■■■■■」

 「全員!奴の言葉を聞くな!
 発狂するぞ!!」

 「発狂ってのは?」

 『まぁハッキリ言うと』

 『ん?なんだこれは?』

 『念話だよ。知らねぇか?
 あ、そうか。
 てかお前らクラス1だって事忘れてたわ』

 おいおいまじかよ。
 テレパシーを直に体験するとはな。

 『話を戻すぞ?
 外なる神々を含め、クラス10辺りに存在する奴らは神格ってのを持ってる』

 『ほう?』

 『神格ってのはざっくり言うと、特性で"神性"ってのを持ってるやつの事を言う。

 それをクラス10の奴らは持ってる。
 ⋯⋯が、外なる神々は例外だ』

 『というと?』

 『早い話、クラス10の奴らは少なくとも塔を登ってきた奴らがなる数字だ』

 『なるほど。
 つまり、正真正銘──最初から持って生まれた個体ってことか』

 『そういう事になる。
 神格はまさに凡人からすれば隣に化物がいるようにな。

 いわば、宇宙を歩く異形⋯⋯そんなところかな。

 俺達は塔を登るべく日々奮闘しているが、コイツらは産まれた時から異常で、支配者だ』

 『理解出来た。
 が、尚の事分からねぇ』

 『ん?発狂するあいつらのことか?』

 二人の視線は、それはまるで断末魔の叫び声のように。
  
 生き残った陰陽師の人間や、秦派の人間たちの目から血を噴き出す異常現象。

 『あぁ』

 『外なる神々、並び10に至った奴らは神格を持ってるといったが、それは常人の人間を超えた枠組みになる。

 つまり認識が化物と変わらなくなるって事だ。

 本能が拒否するってのに近い。
 それにしかも、外なる神々はそれぞれ存在しているだけで特性が勝手に発動するに加え、権能まで自動だから厄介だ。

 恐らくこの権能は外なる神々のアシュガンダ。
 精神系統の外なる神々だ。

 空が黒かったと思うが、おそらく顔だ。
 アイツは自分の顔が嫌いなおかげで、黒いものが嫌いなんだ。

 そんでやつの目には全てを狂乱に包む眼を持ってる。

 おそらく理由はこれで解決だな』

 ⋯⋯おい、伊崎のガキ。
 どうすんだ?

 お前なしにこれをどうするも後も、やばいんじゃねぇのか?

 それはまるで、嵐を過ぎ去るように。
 エリマと、草薙は身を伏せてジッとしているのだった。
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