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世界征服編
残したもの
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「なぁ⋯⋯石田⋯⋯」
「はい?どうしました?」
ソファで横になる俺。
寝返りを打つとすぐそばでカップ焼きそばを食いながらパソコンに向き合う石田がいる。
「一体今日で何徹目だ?」
「⋯⋯伊崎さん。
それは言わない約束でしょ!?」
ここは俺と石田の二人が仲良く屋根一つ下で過ごす一軒家。
元は最期に向けて臨時で二人で過ごす場所になっていたのだが、完全な機密情報を扱う場所な所へと様変わりした。
見ての通り、俺達は今にも死にそうだ。
体重も5キロは落ちた。
あ~ヤりてぇ⋯⋯。
なんて。
そんな事を言う体力すら残っていない。
というのも、あの日だ。
"審判の日"。
今では世界中の人間からそう言われる出来事。
その日からもう二ヶ月は過ぎ去ろうとしていた。
『あれから二ヶ月が過ぎ、秋風が吹いています。
世界中を襲った大災害──専門家たちの皆さんは口を揃えて大規模な記憶操作が行われていると』
「ふっ、馬鹿だな。
そんなんでどうにかなるレベルじゃねぇだろ」
「まぁ夢だとは思いたいですよ」
世界中では一種の催眠だったのではないか?
そんな事が噂されている。
しかし、世界同時多発的に行われた事でその説も意味をなさなくなって来ているが。
とまぁ二ヶ月で世界はより良い方向へと向かっている。
塔とやらの存在は秘匿されているが、誰も写真を撮っていないのが答えだろう。
まさに世の終焉だった出来事だ。
誰もそんなことを言うことすら憚れるモノだったのは事実だし。
「エリックたちからメールは?」
訊ねると超絶深い溜息混じり、石田を俺を見上げる。
「はぁ。コレですよ」
ノートパソコンには、大量のメール。
「主に感謝のメールです」
まぁざっくり言えば、俺のゼウスタワーの計画で作った試作機たちが大いに活躍したということ。
俺達日本は絶賛地獄だが、世界もそれは変わらない。
その中でエリックたちは無限の電力を良いことに様々な幅を利かせる事に成功したそうだ。
利権絡み、裏での取引。
様々な中でそもそも俺がいなかったらエリック自身も死んでいたそうで。
「あとは事務所、その他諸々⋯⋯連絡が途絶えないっす」
「だな。
もう数日は寝れなそうだな」
アレから世界はある意味平和になったとも言える。
それまで戦闘態勢だった政治も、すっかり自国のことで手一杯。
表向きでも裏向きでも、まずは自陣固めから。
だがその点、俺達日本はかなり先手を打てている。
「会食の話と縁談が来てますけど」
吸う手が止まる。
「⋯⋯俺に?」
「当たり前じゃないですか。
あなた今日本的には天皇一族と婚約しても驚かれないくらい宝なの自覚していませんか?」
「まぁーなんとなく?」
「自覚がないったらありゃしない」
俺は長生きしていた"らしい"が、向こうにいた"らしい"時期に色々ありすぎて感覚が麻痺してるようだ。
「まぁ⋯⋯ハーレム王になるのも一興⋯⋯か?」
打ち込む石田の手が止まる。
「え?どうしたんですか?」
別人と言いたげな見上げ方をする石田に口が萎む。
「いや?何がだ?」
「前だったら、ハーレムなんて飽きたって言って、遊んでるくらいがちょうどいいなんて言ってたじゃないですか。
──それがどういう風の吹き回しですか?」
「あー⋯⋯」
思い出せない。
なんかあった気がするんだけど⋯⋯なんかなぁ。
「まぁ、心境の変化ってやつだ」
「相変わらずおかしいこと言うんですから」
*
「やぁ!伊崎くん!」
それからすぐの事。
薄暗い料亭で相変わらずの豪快な笑い声と共に招待される。
中にはざっくり日本でも有数の大手の会長と秘書たち。
「伊崎くんのおかげで助かった。
今日は決起会という意味でも、伊崎くんの目指す過去の日本を取り戻すという意味でも、結束力を深めていこうではないか!」
グラスをちょこんと上げる諸星会長。
乾杯の音頭。
俺は全員とチリン、とグラスを合わせて飯を口に入れる。
「伊崎さん、お久しぶりですね」
「木村さん」
目の前に座り、俺にお酒を注いでくれるのは懐かしの木村さん。
相変わらず気が利く人だ。
「嫁と娘がお礼を言いたいと言っていたんですが、まぁ仕方ないということで」
事前に縁がある人間には、魔除けの結界と防犯グッズを手渡していた。
良かった。
無事だったのか。
「何事もなくてよかったですよ」
「⋯⋯伊崎さんも」
「ん?どういう事ですか?」
「声。元気になりましたね。
思い詰めていてそうだったので、良かったですよ」
一瞬詰まった。
「ははっ。
伊崎さんもまだ大人になる前なんだと思わされて新鮮な気持ちです」
「やめてくださいよ」
「私事ですが、事業の方のお金で様々なコネが広げられそうです。
このまま白波も無事軌道に乗るどころか、天辺まで行けると確信していますよ。
あ、あら」
木村さんが見上げる先には、押し退けながら座る諸星会長。
「ハハハッ!
元気になったようで何よりだ!」
「そりゃどうも」
「元気な人間が元気でないというのは地獄だからな!
まぁとはいえ、我々の建材もドンドン売れまくっているから大助かりだ!
またとない天機だろうな!」
諸星も白波も、水と建築に関わる。
国民からはさぞ好感度は上がっただろう。
どこもかしこも引っ張りだこに違いない。
「このまま世界も狙っていかないと」
「何を言う?」
「⋯⋯?」
「伊崎くんも共に進むのだぞ!
もう大人になる。
いよいよ逃げ場などなくなるぞ!
なぁ?」
諸星会長のその言葉で、視線が一気に集まる。
「うぇっ?」
「当たり前じゃないか、伊崎くん。
ウチとしても、伊崎くんが主導で我々を引っ張っていってくれないと」
「俺達もそう思ってるぞ!
今の奴らなんて歳だけとってばかりで何もしねぇんだ⋯⋯どうせならデカイ夢を掲げる若人に託したほうがまだマシだろうな!!」
何故かあちこちで援護がかかり、料亭はお祭り騒ぎに。
いや、待て待て!
俺、そんなつもりは⋯⋯!
「なに。
表に出れば、女も権力も手に入るぞ!
揉み消せれる」
そう言うことじゃねぇ!!
家でダラダラ爛れた日常を目指してだなぁ!
「よーし、決起会!
若者に合わせて今日は5次会までやるぞ!!」
おー!!と飲み屋みてぇに響き渡る。
やめろ。
俺が祀り上げられてどうすんだ!!
お前ら年寄りがやればいいだろう!?
「そうだ」
思いついたように。
諸星会長は嫌な豪快さが俺に向く。
やめろ。
なんだ?
「ここにいる全員の娘でももらえばいいんじゃないか?そしたらもう!
浮気などしなくても済むのではないか?」
「名案ですな!諸星会長の言う通りだ!」
⋯⋯へ?
「政略結婚でも何でもいい!
容姿、器量、能力、人望⋯⋯これだけ揃ってるのを法で縛るなんて勿体無い!!
裏で手を回そう!
そうすれば」
「いやぁァァァやめてくれぇぇぇぇ!!」
俺の叫び声も、爺共の笑い声と共にかき消されていく。
そのまま俺はゲロまみれの朝を迎えることになり、石田にキレられるまでがセットだ。
はぁ。
折角死に損なって生き残ったのに、あるのはこんな日常だとは⋯⋯なんて。
「──ふっ」
これが俺には必要だったのかもな。
いつかの自分も。
「はい?どうしました?」
ソファで横になる俺。
寝返りを打つとすぐそばでカップ焼きそばを食いながらパソコンに向き合う石田がいる。
「一体今日で何徹目だ?」
「⋯⋯伊崎さん。
それは言わない約束でしょ!?」
ここは俺と石田の二人が仲良く屋根一つ下で過ごす一軒家。
元は最期に向けて臨時で二人で過ごす場所になっていたのだが、完全な機密情報を扱う場所な所へと様変わりした。
見ての通り、俺達は今にも死にそうだ。
体重も5キロは落ちた。
あ~ヤりてぇ⋯⋯。
なんて。
そんな事を言う体力すら残っていない。
というのも、あの日だ。
"審判の日"。
今では世界中の人間からそう言われる出来事。
その日からもう二ヶ月は過ぎ去ろうとしていた。
『あれから二ヶ月が過ぎ、秋風が吹いています。
世界中を襲った大災害──専門家たちの皆さんは口を揃えて大規模な記憶操作が行われていると』
「ふっ、馬鹿だな。
そんなんでどうにかなるレベルじゃねぇだろ」
「まぁ夢だとは思いたいですよ」
世界中では一種の催眠だったのではないか?
そんな事が噂されている。
しかし、世界同時多発的に行われた事でその説も意味をなさなくなって来ているが。
とまぁ二ヶ月で世界はより良い方向へと向かっている。
塔とやらの存在は秘匿されているが、誰も写真を撮っていないのが答えだろう。
まさに世の終焉だった出来事だ。
誰もそんなことを言うことすら憚れるモノだったのは事実だし。
「エリックたちからメールは?」
訊ねると超絶深い溜息混じり、石田を俺を見上げる。
「はぁ。コレですよ」
ノートパソコンには、大量のメール。
「主に感謝のメールです」
まぁざっくり言えば、俺のゼウスタワーの計画で作った試作機たちが大いに活躍したということ。
俺達日本は絶賛地獄だが、世界もそれは変わらない。
その中でエリックたちは無限の電力を良いことに様々な幅を利かせる事に成功したそうだ。
利権絡み、裏での取引。
様々な中でそもそも俺がいなかったらエリック自身も死んでいたそうで。
「あとは事務所、その他諸々⋯⋯連絡が途絶えないっす」
「だな。
もう数日は寝れなそうだな」
アレから世界はある意味平和になったとも言える。
それまで戦闘態勢だった政治も、すっかり自国のことで手一杯。
表向きでも裏向きでも、まずは自陣固めから。
だがその点、俺達日本はかなり先手を打てている。
「会食の話と縁談が来てますけど」
吸う手が止まる。
「⋯⋯俺に?」
「当たり前じゃないですか。
あなた今日本的には天皇一族と婚約しても驚かれないくらい宝なの自覚していませんか?」
「まぁーなんとなく?」
「自覚がないったらありゃしない」
俺は長生きしていた"らしい"が、向こうにいた"らしい"時期に色々ありすぎて感覚が麻痺してるようだ。
「まぁ⋯⋯ハーレム王になるのも一興⋯⋯か?」
打ち込む石田の手が止まる。
「え?どうしたんですか?」
別人と言いたげな見上げ方をする石田に口が萎む。
「いや?何がだ?」
「前だったら、ハーレムなんて飽きたって言って、遊んでるくらいがちょうどいいなんて言ってたじゃないですか。
──それがどういう風の吹き回しですか?」
「あー⋯⋯」
思い出せない。
なんかあった気がするんだけど⋯⋯なんかなぁ。
「まぁ、心境の変化ってやつだ」
「相変わらずおかしいこと言うんですから」
*
「やぁ!伊崎くん!」
それからすぐの事。
薄暗い料亭で相変わらずの豪快な笑い声と共に招待される。
中にはざっくり日本でも有数の大手の会長と秘書たち。
「伊崎くんのおかげで助かった。
今日は決起会という意味でも、伊崎くんの目指す過去の日本を取り戻すという意味でも、結束力を深めていこうではないか!」
グラスをちょこんと上げる諸星会長。
乾杯の音頭。
俺は全員とチリン、とグラスを合わせて飯を口に入れる。
「伊崎さん、お久しぶりですね」
「木村さん」
目の前に座り、俺にお酒を注いでくれるのは懐かしの木村さん。
相変わらず気が利く人だ。
「嫁と娘がお礼を言いたいと言っていたんですが、まぁ仕方ないということで」
事前に縁がある人間には、魔除けの結界と防犯グッズを手渡していた。
良かった。
無事だったのか。
「何事もなくてよかったですよ」
「⋯⋯伊崎さんも」
「ん?どういう事ですか?」
「声。元気になりましたね。
思い詰めていてそうだったので、良かったですよ」
一瞬詰まった。
「ははっ。
伊崎さんもまだ大人になる前なんだと思わされて新鮮な気持ちです」
「やめてくださいよ」
「私事ですが、事業の方のお金で様々なコネが広げられそうです。
このまま白波も無事軌道に乗るどころか、天辺まで行けると確信していますよ。
あ、あら」
木村さんが見上げる先には、押し退けながら座る諸星会長。
「ハハハッ!
元気になったようで何よりだ!」
「そりゃどうも」
「元気な人間が元気でないというのは地獄だからな!
まぁとはいえ、我々の建材もドンドン売れまくっているから大助かりだ!
またとない天機だろうな!」
諸星も白波も、水と建築に関わる。
国民からはさぞ好感度は上がっただろう。
どこもかしこも引っ張りだこに違いない。
「このまま世界も狙っていかないと」
「何を言う?」
「⋯⋯?」
「伊崎くんも共に進むのだぞ!
もう大人になる。
いよいよ逃げ場などなくなるぞ!
なぁ?」
諸星会長のその言葉で、視線が一気に集まる。
「うぇっ?」
「当たり前じゃないか、伊崎くん。
ウチとしても、伊崎くんが主導で我々を引っ張っていってくれないと」
「俺達もそう思ってるぞ!
今の奴らなんて歳だけとってばかりで何もしねぇんだ⋯⋯どうせならデカイ夢を掲げる若人に託したほうがまだマシだろうな!!」
何故かあちこちで援護がかかり、料亭はお祭り騒ぎに。
いや、待て待て!
俺、そんなつもりは⋯⋯!
「なに。
表に出れば、女も権力も手に入るぞ!
揉み消せれる」
そう言うことじゃねぇ!!
家でダラダラ爛れた日常を目指してだなぁ!
「よーし、決起会!
若者に合わせて今日は5次会までやるぞ!!」
おー!!と飲み屋みてぇに響き渡る。
やめろ。
俺が祀り上げられてどうすんだ!!
お前ら年寄りがやればいいだろう!?
「そうだ」
思いついたように。
諸星会長は嫌な豪快さが俺に向く。
やめろ。
なんだ?
「ここにいる全員の娘でももらえばいいんじゃないか?そしたらもう!
浮気などしなくても済むのではないか?」
「名案ですな!諸星会長の言う通りだ!」
⋯⋯へ?
「政略結婚でも何でもいい!
容姿、器量、能力、人望⋯⋯これだけ揃ってるのを法で縛るなんて勿体無い!!
裏で手を回そう!
そうすれば」
「いやぁァァァやめてくれぇぇぇぇ!!」
俺の叫び声も、爺共の笑い声と共にかき消されていく。
そのまま俺はゲロまみれの朝を迎えることになり、石田にキレられるまでがセットだ。
はぁ。
折角死に損なって生き残ったのに、あるのはこんな日常だとは⋯⋯なんて。
「──ふっ」
これが俺には必要だったのかもな。
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