【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

EX閑話:秀才と化物。「化物」

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 1976年6月13日。
 地球の歴史上最も化物な男──神功覇旬、爆誕!!

 「我が家最後の男児だぞ!」
 
 どうやら俺様の家はなんか凄いらしい。

 「若様、御召物が⋯⋯!」
 「若様、お食事がまだでございます!!」

 家は本で見るような古い日本の屋敷って感じだ。
 
 「若様!」

 自我ってやつが生まれたのは通常よりも早かったのは記憶にある。

 産まれてすぐ。
 何故か自分というものがあって、俺様という一人称というものが最初からあった。

 特別それに違和感を覚えた記憶すらない。
 歩くのも、言語を喋るのも、特別自分の中で難しかった記憶はなかった。

 なんか最初から全て出来る。
 さすがなんて言われていたが、俺様個人としては全く普通の事だが、周囲の人間はそうは思わないらしい。

 「若様!?」

 「ん?なんだ?」

 誰だっけ?この女。

 「覇旬様が!」

 両親が俺様の書いた術式を見て、唖然としている。

 「まだ⋯⋯術を習っていないのに、なぜこんな事が分かるんだ?

 覇旬、なんでこれを書いたんだ?」

 「分かんない。
 なんかてきとー」

 両親は顔を見合わせ、化物を見るような目で子供である俺様の機嫌を伺うようにして接するようになった。

 ⋯⋯どうやら俺様は、凄いらしい。

 





 7歳になった。
 この頃、俺様は一番の転機を迎える事になる。

 というのも。

 「若様、こちらが」
 「若様」

 どいつもこいつも。
 よくわからねぇ術式ばっかり教えてきやがって。

 「「⋯⋯っ!?」」

 "自分で作った方が早えだろ"。
 
 なんだか周囲がうるさい。
 みんなそれぞれなんか言っているが、俺が作ったほうが早い。

 戦い方もそうだ。
 血統のせいか知らんが、何回もやったかの様に思い出す。

 既知感ってヤツが俺様に語りかけているように感じる。

 「ハァッ!」

 初めて徒手格闘の訓練をやった時もそう。

 ⋯⋯おそ。
 やる気あんのかよ。

 染み付いた動き。
 五感の全てがまるで何百万回もやったように動く。

 だからなのか。

 「若様!?」

 普通という枠が──俺様には枷だった。

 上体をこう反らして、首の後ろっ側をクッション代わりについてそのまま全身でピョンってやれば蹴りが目の前の教師にクリーンヒット。

 「そ、そのような動きは流派にはありませんが!?」

 どいつもこいつもなんで普通が好きなんだか。

 「あァ?
 俺様が強いんだからそれで良いだろ」

 結局、こいつらは何をやっても俺には敵わない。

 勉強は何をやっても解けるし、考えなくても分かる。

 ⋯⋯まぁ、非常に退屈ってやつだ。

 それからしばらくしない内に交流会ってのがあるらしい。
 
 俺様は毎日暇で、暇でしかなかった。
 俺様の顔色を伺う両親と周囲の人間ども。

 何をやっても出来るし、誰もが俺様を何か⋯⋯別の生き物みたいに見てる視線を感じる。

 ガキながらによく分かる。

 「⋯⋯⋯⋯」

 同年代の奴らもそうだった。
 相対すると、誰もが戦意を喪失して、同じになっていく。

 だが、一人だけ。
 眼光が違う奴がいた。

 その視線は今まで感じたことの無い──得体のしれない感情。

 それが後の親友になりたかった男。

 "伊崎吉伸"だった。






 初めはその感情を理解できなかったが、気になった。

 「よぉ!お前が伊崎だな!」

 「え?う、うん」

 うん。良い返しだな。
 今までは若様しか言われたことがないからな。

 「いつも何して遊んでるんだ?」

 「特にないよ。
 あ、でも河原で小石を使って遊ぶ事くらいはする」

 ほぉ。同年代はそうやって遊ぶのか。

 「なんだこれ!めちゃくちゃ面白いな!」

 退屈だ。
 今までなんてつまらん日々だったのだろう。

 毎日が。

 ーー若様!

 毎日が、誰かが俺に知識を植え付けようとしてくる大人ばかりで、誰も彼も⋯⋯俺様と遊ぼうなどとは思ってはくれまい。

 「す、すげぇ」

 「おいよし!!」

 確かに見かけ上は喪失している。
 だが、次に会ったときには少し伸びている。

 ⋯⋯そんな風に戦意を喪失せず、俺様を見てむしろ戦おうとする人間を初めてみた。

 自分の中でそれが、吉伸への興味と関心。
 そして、初めて人と仲良くなりたいと思うようになった些細なキッカケになった。







 「なぁー!なんでお前は」

 美しい。
 目の前で隠さず俺様に対して羨ましいと。
 何で出来るんだと何も隠さずして暴言を吐く光景。

 俺様には何もかもが新鮮で、退屈な日々がちょっとマシになっていく。

 「だからこうだって」

 「──分かるか!」

 本来のよしはこんなにも喋り、感情を前に出す人間なのだと学んだ。

 「こう」

 「知らん!」

 「え?」

 「お前は天才過ぎるんだって!
 ムズ過ぎ!!」

 「ぷっ!もっと頑張れよ」

 「くっ⋯⋯ムキー!!!」

 近くの文房具を投げつけられる。
 
 「天才は黙ってろ!!」

 これが友達ってやつなのか。
 弄りながらも自分も暴言を吐かれる事がこんなにも気持ちいいなんて。

 なんて楽しい日々なんだ。
 
 「分かったわかった。
 じゃあこうしてみろって」

 "正しい教え方"

 "記憶の欠如"

 周りも知らない、俺様の変な浮かぶ文字と能力みたいなの。

 昔からどうやら意図的に使っていたのかもしれない。

 親にも聞けないが、昔、この俺様の家には予知ができたり、異常な頭脳を持つ天才が生まれたりとかなり異質な家系らしいのだが、初代の神功星羅という人間はどうやら俺と同じ能力の内容を使えていたということが分かった。

 相応の代償を払う事で、現実にそのやりたいことを叶える。

 所謂"異能"ってやつだな。
 
 「なんだよ。
 覇旬お前、教えるの上手いんだったら最初からそうやってくれよ!虐めるな!弱者を!」

 「なんだ。
 折角人が苦労して教えてやってんのに酷い言い草だな」

 「天才なんだから本当は笑ってたんだろ」

 誰かの為に能力を使うってのはこんなにも気持ちが良いものなんだな。

 ⋯⋯人生で初めて知ったよ。

 





 それから数年。
 俺とよしの楽しみは、夜に行われる裏の宴。

 「ねぇお姉さんって、彼氏何人いたの?」

 「3人!」

 「うわー嘘つきだー!
 本当はもっと遊んでる癖にー!」
 
 当たり前だが、俺とよしは公の場所には行けん。

 かと言って配慮と言っても限度がある。

 そもそも俺達は金はあるが表に出てはいけない存在だから。

 その為、裏が存在する。
 アングラ系でよく見るタイプのやつって言えばいいか?

 跡がない奴ら、ってやつ。

 まぁとりあえず分からん。
 産まれてから俺は多分、女の癖が悪いのだと思う。

 自己肯定感ってヤツが高いのか、実際に自己が高すぎるから感が付いてるのかも分からんが、とにかく女が好きだ。

 触りたくなるし、同性にはないドキドキがある。

 というよりも多分、非日常が女にはあるからだろうけど。

 よしも最初はいいよと拒否ってたけど、いざ行ったら行ったでドハマリ。

 この俺様の友達だ。 
 コイツがそう思ってなくても、俺様の周りにいる人間は⋯⋯死んでも幸せにするのが俺様の人生観。

 極上の女を連れて、毎日術式の反復をしながら精進すると言い放つこいつを見て、俺に出来ることをやってるつもり。

 「あぁー!
 マジ最高だったわー」

 「なぁ覇旬」

 「⋯⋯ん?」

 「お前やっぱり最強だろ」

 「何だ突然」

 「この間も対抗戦でボッコボコにしてたし、会話も回せるわ、本分もこなす。

 出来ないことはなんだよ」

 「友達が出来ない」
 
 これでも一応本音のつもりだ。

 「ぷっ!そんなわけ無いだろ。
 お前が出来ない未来が想像できねぇよ」

 「イテッ!」

 よしに腰を叩かれる。

 「最強くん、俺の代わりに日本の未来を頼んだぞ」

 「お前も出来んだろ。
 その為の宴だろ」

 「「⋯⋯ぷっ!」」

 楽しかった。
 そう。 
 
 俺様の人生って⋯⋯けっこー順調だったんだよな。

─────
────
───


 「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」

 懐かしい昔話だ。

 「やはり強いな。神功覇旬」

 コイツ、俺様と同じタイプだ。
 
 「オイ、イケ好かねぇ騎士野郎」

 黄金に輝く奴の霊力。
 だが。

 「なんの為にそこにいんだ?」

 「⋯⋯何?」

 光のねぇ瞳だ。
 コイツは俺様と同じ。

 「産まれてきて生きる目的が無かったクチか?」

 ピクッとしやがった。
 俺様と一緒だ。

 毎日が退屈で、刺激はなくて、でもやらないといけない大義のようなものは漠然とある。

 ⋯⋯そんな人生。

 「何がしたくてそこにいんだ?
 俺様は少なくともお前とは違うぜ?」

 いいや?
 まさに逆だったかもしれねぇ。

 お前みてぇに光がこもらん日々を送ってた人生だってあるだろう。

 「貴様こそ。
 なぜそうまでして戦う。

 確かに私が見てきた中では一位二位を争う実力を持っているのは確かだ」

 「⋯⋯ふっ」

 





























 ーーお前ぇぇぇ!!

 「お前は天才で最強と⋯⋯親友に言われたからな。

 最強ってのは倒れねぇだろうがよ」

 こんな時にお前の顔が浮かぶなんてよ。
 いや。こんな時だからこそだろうな。
 
 「まだやる気があるようだな」

 剣が振り上がる。
 浮かぶグニャグニャとした文字が俺様に要求する。

 "味覚"

 「⋯⋯捨てる」

 「ッ!?なんだ」

 俺様の肉体スペックはどうやら地球では最強っぽいが、この男には勝てそうにもない。

 万に一つも勝ち筋があるとすれば⋯⋯この眼だ。

 「やはり初代と貴様は似ているな」

 "聴覚"

 「ふざけんな。
 ⋯⋯捨てる」

 「速い!」
 
 "河原の匂い"

 「⋯⋯捨てる」

 「何故貴様戦えるのだ?
 そんなにボロボロになっているのに」

 「言ったろ?
 親友が"お前は世界で一番強い"って言ったからだよ」

 "最も大事な者の笑顔"

 ーー覇旬!

 「⋯⋯捨てる」

 コイツに勝たなければ。

 「ハァァァァァァア!!!!!」

 吉伸アイツの人生を。

 「ハァアアアアアアア!!!!!」

 "嗅覚"
 "触覚"
 "痛覚"


































 「捨てる!!!!!
 だから──このイケ好かねぇ野郎をぶちのめせってんだよ!!!」

 「ぐっ⋯⋯きっ、貴様!!」

 後⋯⋯もう少しなんだ。

 "代償の天秤に載るモノがない"

 「貴様⋯⋯その状態でまだ歩こうとしているのか?」

 「あァ?」

 「私もここまでのようだ」

 すると、視界には突然よしが映る。

 「おい!何やってんだよ!!」

 なんか騒いでんな。
 
 「随分元気になったな」

 「お前のおかげだ!
 お前のおかげで⋯⋯雑魚は片付けた!!」

 ーーなぁ覇旬

 「⋯⋯そうか」

 「静音!」

 "代償の天秤に載るものがない"

 「大丈夫だ」

 「何が大丈夫なんだ!?
 あぁ⋯⋯クソッ!何でこんなことに!」

 「問題⋯⋯ねぇ」

 「ハァ!?」

 "最も大事な記憶"

 そうすれば⋯⋯イケるのか?

 "最も大事な記憶"

 「そうか⋯⋯」

 「玄華もいるんだぞ!?
 そうだぞ⋯⋯出産日は今日だぞ!」

 「あぁ」

 「オイ覇旬!!」

 ーー貴方、女をなんだと思ってるの?
 ーー人ではないわ
 ーーあなたに常識は期待していないけれど、子供は頼むわよ

 アイツは無駄に一途だったな。
 浮気しても、アイツは何故かそこにいる。
 アイツなら⋯⋯なんて言っただろうな。

 「俺に⋯⋯人の親は向いてねぇだろ」

 息子が出来たとして。
 最初に教えるのは女の快楽くらいしか思いつかねぇ父親が、人の親に向いてるわけがねぇ。

 「⋯⋯はは」

 それから何を話しているのか。
 ただ、俺様に言えるのは。

 「この身体はもう無理だ。
 俺が一番分かってる」

 泣いてるな。
 よし、たった一人の親友。

 そう思ってたが。

 「もし」

 「⋯⋯?」

 「もし次が⋯⋯あれば⋯⋯」

 「あぁ」

 「俺と親友になって⋯⋯くれないか?」

 「あぁ!!もちろんだ!!
 何でもしてやる!!だから⋯⋯!!」

 「ふっ、ありがとう」

 お前の事はきっと⋯⋯もう二度と思い出せないだろう。

 しかし、俺様は順風満帆な人生だった。

 日本ここの事は、コイツに任せて。
 俺様は別のことをしねぇといけないんだから。






































 「⋯⋯?」

 何処だ?ここは。

 見上げれば森。
 聞いたこともない鳥のさえずりが何処からともなく聞こえてくる。

 「んん~!」

 上半身を起こす。

 「俺の無茶は通ったみたいだな」

 要求したのは別の身体に飛ぶ事。
 人格や記憶。
 
 元のそれらを残した前提で。

 「⋯⋯ふぅ」

 深呼吸すると、頭がスッキリすんな。
 てかこの森どこだ?

 要求したのは身体だし、異世界かどっかか?
 流石に俺様の思考回路を読んでるだろうから、無茶苦茶なことをしでかさねぇだろうけどよ。

 すると気配が一つ。

 「おや?君は誰だい?」

 「⋯⋯そちらこそだが?」

 エルフ?
 しかも、突然大量の気配がブワーッと増えやがった。

 「貴様!
 ここはエルフォリア管轄31層だぞ!!
 名を名乗れ!!」

 「⋯⋯はぁ?何だそれ?」

 思わず予想していた物ではなかったせいで本音をぶちまけてしまった。

 ヤバッ。

 「やはり不審者か」

 一斉に脅威が無限に増えやがる。

 しかもやべぇ。
 コイツら──霊力が桁違いだ。

 「待ちなさい。
 攻略している32層だけど、他の選別者が入ってきてる。

 こんなところで一人に構ってる時間はない」

 ⋯⋯異世界?なのか?
 読唇術でなんとなく言ってることは分かるが、内容を理解するまでに時間がかかる。

 まだ代償を払う程ではない。

 「すまない。正直に話す」

 「さっさと話しなさい」

 「本当に記憶喪失で、ここが何処なのかもさっぱりだ!」

 訝しんでくる奴らだが、しばらくすると構える弓が下ろされていく。

 「エルフの看破が正常に起動している。
 ならば本当だろう」

 「あぁ、どうすればいい?」

 ていうか。
 アイツらさっきからどこ見てやがる?

 「ん?貴様⋯⋯非選別者か?」

 「なんだ?それは?」

 「何?そんな事も知らないのか?」

 「あぁ。マジで何も知らん!」

 全員が一人の女に集中する。
 
 「はぁ」

 掌で顔を覆っている。
 なぜだか知らんが呆れられているようだ。

 「非選別者で間違いない。
 ウインドウが見えていないな?」

 「ウインドウ?」

 「なら確定だ。
 そのまま私らについて来い」

 





 それからというもの。
 
 「とりあえずお前はそこで本でも読め」

 そう。
 普通なら嫌になるような時間。

 だが俺にはどれも知らない知識や謎の製法が書かれた本の山。

 全て真新しくて、すぐに言語を覚える所から始めた。

 するとどうやら、このエルフたちの正体やこの本の詳細がどんどん分かっていく。

 5年程した後の事だ。

 「なぁライナ」

 「なんだ?レグルス」
  
 「これってさ⋯⋯」

 エルフたちと交流は順調に上手く行き、2年目であるある時、族長であるライナとひょんな事から子を成しちゃった事で、俺に人生の選択肢がなくなった。

 というか、コイツら全員。
 "強過ぎる"。

 なんなんだ?
 怪力なんてもんじゃねぇぞ?

 「はぁ。
 言っただろ?あまり錬金術にハマるな」

 「なんでだ?」

 「私達は星のエルフ。
 森と共に生き、星から賜ったこの力はいざと言うときの為に使うものだ。

 常用するものではないし、禁止事項も多い。
 研究するのはいいが私達はもう10人も子供が⋯⋯」

 そう言いかけた時、ライナが目を見開く。

 「レグルス」

 その言葉はドスの効いた今までで聞いたことのない声だった。

 「これ、創ったのか?」

 「あぁ、この苗か?世界樹だ。
 試しにつく──」

 「あぁなんてことを⋯⋯!!」

 その場で崩れ、ライナは拳を地面に叩きつけてる。

 「なんだよ、どういう事だ?」

 「言っただろ?
 エルフにとって世界樹は神そのものだと。
 それを創るなど⋯⋯一族として罰さないといけない」

 「そんなこと一度も言ってなかったじゃないか」

 「当たり前過ぎて言ってない。
 まさかそこまで上達するとは思わなかったのだ!

 人間ではそもそも錬金術と我々星のエルフの魔力に耐えられる器がないのだ」
 
 やらかした。

 そう思った頃には既に遅く、結局俺はなんか次元のなんちゃらという事実上の死刑宣告を喰らって、捨てられる。

 まぁどの道最初から勝てない相手だった。
 仕方ないだろう。

 ライナ自ら俺は処分され、どこかの空間に落とされた。

 何故か不思議と、死ぬ気がしなかったから。









 「と、そう思っていたんだが」

 まさか本当に生きてるなんてな。
 どこだ?ここは?

 また森だ。

 「おぉ。
 錬金出来るやん」

 右手には世界樹の苗があった。

 「まぁ冷静に考えれば俺が悪いわな。
 神同然の存在を創っちまったんだからよ」

 とりあえず苗を埋め、俺は水をやる。

 「まぁ俺としては、縛りがなくなったから問題ねぇ」

 そこから時間掛けて、俺はドンドンこの世界を知っていくことになる。

 どうやら自分は異世界に何故か転移していた事だったり、俺が知っている事よりも遥かに低レベルの人間たちが多かった。
 
 元いた場所よりも治安は酷く、しかし同時に楽でもあった。

 「お前ら、俺の実験に付き合え」

 この世界に倫理はない。
 俺のやりたいようにやり、やりたいように過ごす。

 弱肉強食の世界。
 泣き叫ぼうと何をしようと。

 俺はこの世界で名を残す事になっていく。

 ライナに名付けてもらったレグルスという名前。

 散々世話になったのに、多少の錬金術でしか返せてないのだから、評判はあった方が良いだろう。

 レグルスと自ら名乗り、今もどこかに存在している彼女に届くように。

 その偉業と同じくして、俺の錬金術のレベルも上がっていく。

 創れるものが増え、応用が効き、気付けば寿命という概念がなくなった。

 体の構造を把握し、寿命に耐えられるよう構造を書き換えたからだ。

 そうやって色々やっていた膨大な時間が過ぎ去った時の事だった。


 「レグルス様、何卒!」

 「俺はこの世界樹の下で生きるって決めてんだ。

 悪いが移住は出来ない」

 引っ越せだなんて図々しい奴らだ。
 武力行使しねぇだけでもありがたいと思えよ。

 「分かったらさっさといけ」

 ガチャンと締めようと。
 
 「今日もライナの為に色々やるかぁー。
 ここのエルフたちに何をあげようかなー⋯⋯」

 「すみません!!」

 ⋯⋯あ?

 開ける。
 そこに居たのは、知らんガキ。

 「なんだ」

 何だこの服装?
 この辺のやつ⋯⋯

 ーー■■■■!?■■!!!
 ーー息子だろ?

 頭がいてぇな。
 幻聴が聞こえてくる。

 「とりあえずお前これ探してこい」

 「え?ちょ、ちょ!」

 「分かったな?」

 なんだ?
 止まっていた時間が動き出したように。

 あのよくわからんやつが探している間に、最近の研究について調べる。

 「⋯⋯っ、」

 "帰還方法について"

 そうだ。過去の情報。
 俺にはやるべき事がある。

 アレイスターを倒す事。
 その為には誰かが言っていた俺の息子を使うということ。

 そしてその息子を呼ぶ為の代償を既に払っているということ。

 どれくらいで反映されるかはわからないが、因果の計算的に絶妙なタイミングで行われる事というのが条件。

 「もしかして⋯⋯」

 "あのよくわからん湿っぽい奴が?"

 






 どうやらこの変な湿っぽいやつは才能がある。

 配合、素材に対しての正確な理解。
 まるで俺だ。

 いや、半分くらいもう息子だと思っているのだからまぁいいのか。

 「⋯⋯⋯⋯」

 コイツは全く喋らん。
 なんなんだ?
 本当に俺の息子なのか?

 「おい、どうしたんだよ」

 「⋯⋯何がですか?」

 目に光がない。
 死人みたいで嫌になる。

 「いいから黙って飯を食え」
  
 数分の静寂。
 聞こえるのは器がスプーンに当たる音だけ。

 「なんでそんなに黙る」

 「だって⋯⋯なんで俺みたいなのが生きてて良いんだろうって」

 なんだ?
 いくら因果の計算とはいえ、こんな事になんのか?

 「話してみろ」

 「良いです。
 どうせイケメンの人でお金があって才能がある人には分からないと思います」

 「詩人見てぇにハキハキスラスラ言葉は出てくんのな」

 「だって本当の事じゃないですか」

 「はぁ?」

 「師匠は頭も良くて力もあって、お金もあって、女性もいっぱい。

 そもそも顔がいいだけで既に良い事ずくめなのに」

 「はぁ⋯⋯なんでそんな後ろ向きなんだよ。
 今からでも頑張りゃイイじゃんかよ」

 飯が不味くなりそうだ。

 「だって」

 「ガキか。
 ここじゃ10歳の子供ですらお前見てぇに文句も言わず働いてるんだぞー?

 だってなんて言うなよ」

 「じゃあ殺してください」

 「何?」

 過去の情報からほぼ確実に俺の息子だということは確定しているんだが、これでは俺の息子とはとてもとても思えん。

 一体何があったんだ?

 「殺せってなぁ⋯⋯寝覚め悪いだろうが」

 「俺は何もできなかったんです」

 聞けば女を救えなかったのだとか。
 友を救えなかったのだとか。

 「だからどうした?」

 「え?」

 「お前が悪いわけじゃない」

 なんでてめぇが全部悪いことになってんだよ。

 そいつらの人生だろうが。

 「お前は絵本の主役じゃねぇんだよ。
 お前が悪い訳ではなくて、色んな要素が複雑に絡み合ってる⋯⋯それが人の生だ。

 お前一人で世界が回ってるわけじゃない」

 「⋯⋯⋯⋯」

 黙ってスープを飲みだしちまった。
 やばい。言い過ぎたかも。

 「名前は」

 「伊崎」

 「伊崎な?
 じゃあ伊崎。

 お前の言う別の世界の常識は知らんが、この世界の遊び方を教えてやる」




 それから毎日教えてやった。
 毎日うめぇ飯を食わせて、良い女を抱かせてやった。

 反応はなかったが、段々と馴染もうとしたのか顔色が良くなっていく。

 俺は、親なんて向いてねぇ。
 人に何かを教えるのには全く向いてねぇ。

 だが、人生の。
 男としての先輩として、大事なことは教えてやれる。

 「いいか?
 女ってのはとりあえず理不尽だ」

 とりあえず女の話が俺の中心だった。

 「いいか?
 お前の世界ではよくわからん。
 だが少なくともこの世界で女に権力を持たせたら破滅する。

 俺が見てきた国で女に権力を与えた国は例外なくすぐに破綻する。

 そんで女は責任を放棄して逃げて亡命した国で呑気に過ごすくらいには面の皮が厚い!

 この大陸ではそういう歴史があるから女の扱いがだいぶ酷いんだよ」

 「でもそれって差別では?」

 「かもな。
 それがなんだ?」

 「⋯⋯へ?」

 「そうやって最初は女たちも逃げ出したさ。
 だが結局戻ってきた。
 なぜだか分かるか?」

 「⋯⋯なんでだろう」

 「生きていく能力がないからだよ」

 「っ、そんな事あるの?」

 「生憎。
 公人や軍人、男の花形の職務にいた女ですら、泣いて戻ってきたくらいだ。

 耐えられないんだよ。
 だから、イイ感じに男と女は上手い具合に力を分けてやる必要がある。

 だが現実、男が大部分をやっちまってるからこんな事になってる」

 「んん。俺には理解できない」

 「誰も言わない本当の事ってやつだ」
  
 「アンタやっぱ極端だよ。
 いい女もいっぱいいるだろ」

 時間が過ぎる度。
 俺の情も少し積もる。

 「ケルビン。
 お前には女を泣かせる才能があることがわかった」

 俺と一緒だな。
 やっぱり時間が経てば、コイツは俺の息子だということがなんとなく分かってくる。

 「レグルス様よりも弟子の方に私嫁ぎたーい」

 「駄目だ。アイツは一途らしいからな」

 うちにやってくる女達も、ケルビンアイツの良さに気づいてる。

 女の扱いが上手い上に、男としての矜持を内に秘めながら雄を出せている。

 おうおう。
 俺の息子じゃねぇか。

 「やっぱ弟子は豪快だな」

 「アンタがそうしたんだろ」

 「何?」

 「アンタ、火の月だけで50回だぞ!?
 50回!!」

 「それがどうした?」
 
 「俺の世界で言うとありえねぇの!
 1ヶ月31日だとして、毎日5人以上女がいる生活なんて過ごしたことねぇ!!」

 「イイじゃねぇか。
 別に女も嫌がってるわけじゃねぇ。

 強要してんならまだしも、全員お前のとこで子供育てるくらい構わんって言ってるんだぞ?」

 コイツは変に義理堅くて、女みたいな事を言う。

 例え体を重ねても、子供だけは作ろうとしない。

 俺なんて何人作ったのか記憶すらねぇ。
 快楽が良すぎてそれどころではない。

 「昔の女が忘れらんないからか?
 そんなにエロいのか?」

 「ちげぇよ。
 ただ──」

 「ただ?」

 「生涯を一緒に歩みたいと思う女が見つかっただけ。

 看取りたいと思った女がその人なだけ。
 そりゃ、時間が経った今では悪くないなって思ってる部分は確かにある。

 そこは嘘つけない。
 けど、それよりも先に、その女と子供を作って幸せに最期を迎えてたら、こんな俺も拗らせてない」

 どうやら⋯⋯俺の息子は、中々粋な息子に育ってたらしい。

 「ふんっ。最初の時が可愛く見えてきたな」

 「⋯⋯か、感謝してるよ」

 「そうかぁ?
 でもお前、全然研究進まねぇじゃんかよ」

 「それはそれでしょ!?」

 「あーあー⋯⋯天才の俺に付いてきてくれる素敵な弟子はいねぇかなぁ!?」

 「ハイハイわかりましたー!」

 「ゆっくりでいい」

 ■■■■■■。

 「え?」

 「いつか──俺を。
 俺様を超えてくれたら」

































 俺の頭を駆け抜けた記憶。
 こんな時に昔を思い出すなんてな。
 
 「お前の両親に渡せ」

 多分。
 俺の目的はコイツを育ててここに帰すことだったのだろう。

 生き生きとしたコイツを見てると、なんだか嬉しい気持ちになる。

 「ケルビン」

 振り返る。
 そこには泣きじゃくっている子供がいる。

 「ポンポンすんな」

 ーー殺してよ

 「バーカ。言ったろ?
 いつまでも、俺の中では──俺の子供だ」
 
 ーーねぇ師匠!!
 ーー出来た!凄いでしょ!
 ちょっとは褒めろよ!!

 「親はいつまでも親。
 子供はいつまでも子供だ。

 ⋯⋯いつか分かる」

 こんな親に言われたところで、なんも説得力はねぇな。

 ──笑っちまうな。

 「ケルビン」

 あまり長居すると、俺も面倒なことになるな。

 俺が与える事ができるのは、人の道ではない。

 女のみだ。

 「理解することを恐れるな」

 なんて。
 俺もできなかった事を託すなんてな。

 「託したあとでも良い。
 あの世で仲良く酒でも飲もう。
 あん時みてぇに女侍らして、笑いながらよ」

 「⋯⋯はい!!」

 こんな時も馬鹿真面目に泣いて笑ってやがる。

 どこまでも変わらんな。根っこは。

 背を向ける俺の視線の先にも。

 「人の事は言えねぇな」

 湿ったコンクリート。

 「ふっ」

 ーー息子の名前は湊翔だったな

 「じゃあな、湊翔」

 俺の息子は、割とまともに育っちまったよ。
 親にはあまり似なかったっぽいな。
 俺が父だとすれば、母親か。

 じゃあコイツは母親似だな。
 




 "湊翔の両親へ。

 なんとなく初めまして⋯⋯ではないと思うのだが、もし違ったら悪い。

 俺は王族みたいなものでな。
 言葉遣いは直せそうにない。

 結論から言う。
 能力で先を視たんでな。
 簡潔にアレイスターの時期と特徴を書いておく。

 それと、息子だが、色々不可解な事があるだろう。

 その間、師として親らしい事はしてやれなかったが、俺自身を反面教師に上手い事やれているはずだ。

 ⋯⋯立派な男だった。
 自分の道を突き進み、魂を燃やすその姿は、紛れもなく師である俺を超えている。

 いくつもの人間を救い、抗い、悩み、怒り、悲しみ、時には爆発していたが。

 まだまだ未完成ではあるが、師としては⋯⋯これ以上ないほどの弟子だ。

 師として誇りに思っている。
 あとの人生で何をやるのかはまだ分からないが、あとは親である二人に任せようと思う。

 正直、少し寂しい。
 だが、あの世に来るまで待っているのも親として、師として必要な事だろう。

 だから弟子を見習って、耐える事にした。

 あとは頼む。

 "レグルス・シルフィール・デ・アストレオルム"
 
 
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 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

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鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

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復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

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