ファットマンズアフタースクール

ぴえ

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第二章 あいまいみー

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「なぁ、スパーやってみようぜ、俺と」

 ジム内で広まったニュースだから、それに影響を受けるのも、関心を抱くのもジムの人間だ。
 そう話しかけてきたのは、二十代前後の、高校入学してすぐにこのジムに入会して、プロを目指しているのか既にプロなのか、よく解らない、というか興味のない、名前も覚えていない丸刈りの青年だ。
 名前は知らないけど、本格的にこのジムでキックボクシングに取り組んでいることぐらいは解る。その判別ができるのも、マイグローブ、マイシューズ、と本格的な装備が使い込まれているからだ。
 
 いきなり声をかけてきたのは想像がつく。
 きっと彼は吉見さんに憧れ、彼に本格的な指導を受けたいのだろう。そういう人がこのジムに多くいることは知っている。吉見さんは全体的な指導はするけど、マンツーマンで指導することはないらしいし、するつもりもなかったようだから。
 まぁ、つまり、そんな吉見さんが俺に興味を抱いたから面白くないのだ。

 これに対しての俺の内心は二つに分かれた。

 面倒だな、と、良い機会だな。

 というのも、俺は自分の能力がどれぐらい通じるのか試してみたかったんだ。
 素人同士のスパーリングで放たれたり、トレーナーのミット打ちの合間で避ける動作を練習させる攻撃ではなく、俺に対して本気で打ち込んでくる、本格的な攻撃に対して、この能力は使えて、俺自身が対処できるのかを。

「良い機会ですし、お願いしてもいいですか?」

 そう答えた俺に対して、スパーリングの話を提案した彼は少し驚いた表情を見せたあと、口元に隠しきれない笑みを浮かべて、

「じゃあ、リングに上がれよ」

 と言った。
 先にリングに上がろうとする彼の背中しか見えないけど、きっと今はさっき隠した笑みを抑えてはいないんだろうな。
 俺にとっても良い機会だけど、それは彼にとってもだ。

 調子に乗っている男を殴ることができる。
 自分の憧れているトレーナーに認められている俺がそれほどの選手ではないと解らせることができる。
 自分の方が優れているとアピールできる。

 まぁ、それぐらいは解る。ちょっと気に食わないのが、どれも自分が勝つことが前提で、それは約束されているかのように思っていることぐらいか。

「……よし」

 俺は深呼吸をし、気持ちを戦うことに切り替えて、呟く。
 さて、どこまでできるかな、と。
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