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第一章:取引

反保_1-3

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 反保は事前に写真で確認していたのに、それでも驚きを隠せなかった。写真では組長だけど若い、という印象でしかなかったが、それは見た目の話で相対すれば威圧されるようなものを感じるのだろうと彼は想像していた。
 しかし、現実はそのような印象は全く受けない。

 ――確か、事前の情報だと……

 反保は改めて、事前に京と佐倉から教えられた二人の情報を整理する。

 まずは久慈のこと。本名は久慈 真輔(くじ しんすけ)。高良組の若頭でナンバーツー。戦闘面も知識面も非常に優秀で先代の組長に拾われたことから恩義を感じ、それ以来、献身的に組を支えてきた。
 先代が引退したときも次期組長かと噂されたが本人はそのような野心はなく組を支えることを重要視している。

 次に高良刀義。先代が引退した際に次期組長の候補は先代の息子達となった。その息子達は三兄弟で刀義は末弟だった。
 そして、先代から、

「次期組長は息子達に試験を実施し、決める」

と伝えられ、そのときにも刀義の注目度は低かった。それは彼が悪いのではなく、長兄と次男が優秀で有名だったからだ。
 試験はそれぞれに高良組が扱っていた小さな事業を任せ、その売り上げを競うものだったそうだ。部下も当人の了承を得られるなら協力は可。それにより、長兄と次男を組長に押す者で部下は二分化した。なお、久慈は誰にもつかず静観していたらしい。
 そして、試験が行われた結果――刀義が圧勝した。誰の協力も得なかったにも関わらず。
 その結果に誰もが驚き、誰もが納得しなかった。そして、何度も刀義の暗殺計画も企てられることになる。
 しかし――その全ては失敗し、それに協力した者は全て殺された。その中には長兄と次男も含まれていたそうだ。
 多くの者がその出来事に戦慄し恐怖を刻みつけられた。それは、久慈にも。
 こうして刀義が高良組を継ぎ、組長となった。そして、この一件とそのあとの功績から彼は『鬼』と呼ばれている。これは知識面と戦闘面から、鬼才であり鬼神のようであることかららしい。事実、刀義と久慈が高良組をまとめるようになってから、その勢力を高め今や裏社会ではトップクラスである。

 ――その『鬼』と呼ばれたのが……この人?

 実際に刀義を見た反保は事前の情報を疑ってしまいそうになっていた。それぐらいに『鬼』と印象を受けるような要素が見当たらないし、感じない。
 そして、その刀義がコーラにもポテトチップスにも手をつけない反保達に対し、残念そうに肩を落としたあと口を開いた。

「まぁまぁ、それは気が向いたら召し上がってちょうだい。さて、まずは現状の整理から始めようか」
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