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第二章:ファイティングプロレス

有栖_2-11

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 会議室に座っている飛田は有栖達を一瞥すると、視線を逸らした後、席から立ち上がった。その横にいるもう一人の警察――飛田と同年代ぐらいの中肉中背の青年で、ぴっちりとした七三に分けた黒髪。一重の切れ長の目は終始、彼女達を睨んでおり、そのまま飛田に釣られるように立ち上がる。

「ユースティティア側の代表の有栖と反保です」

 有栖達がテーブルを挟んで飛田達の向かいに立ち、自己紹介をした。

「警察側、代表の飛田だ」
「ユースティティアなんぞに名乗る名前は――」
「挨拶ぐらいしろ」
「はい! 石橋だ」

 飛田の挨拶に続いて食ってかかるような態度を見せた石橋、という男は、飛田に指摘され、結局名乗る。その様子から、飛田の方が立場は上のようだ。

「あの、打ち合わせをさせていただきたいのですが……」

 気まずそうに間に割って入ったのはファイティングプロレスの社員だった。気弱そうな中堅の男性である。今の挨拶だけでユースティティアと警察の仲が良好でないことを実感したのだろう。

「打ち合わせなんて、本来は我々だけで充分なんですよ。ユースティティアと共同です行う意味が解らない。そもそも、こちらはお前等のところの隊員のせいで――」
「石橋。黙れ」

 それは、恐ろしく冷たく、言葉で刺すかのように飛田の口から発せられた。無表情で睨むその視線を受け、石橋は顔を真っ青にして竦み上がってしまった。

「は、はい……すみませんでした」

 声まで震えてしまっている石橋を見て、飛田は無表情のまま有栖達に視線を向ける。

「無駄話は必要ない。早く打ち合わせを始めよう」
「あぁ、解った」

 これまでの快活な様子とは真逆の飛田の姿に違和感はあるけれど、何が彼を変えてしまったのかが解るからこそ有栖の胸は締め付けられた。しかし、こちら側から彼にかける言葉なんて存在しないことも解っていた。
 隣にいる反保も口を閉じながらも歯を食いしばっているのが、はっきりと解る。彼もまた飛田に対して何も言うことは出来なかった。
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