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第二章:ファイティングプロレス
有栖_2-10
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「では、俺達はここで失礼します」
「旗揚げ記念日の当日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、ありがとうございました」
打合せが行われる会議室まで丁寧に案内してくれた海野と中島に有栖は礼を述べて、エレベーターまで乗り込んでいく彼等を見送った。
「良い人達ですね」
「そうね、疑いたくなくなるぐらいに」
反保の言葉に有栖は小さく息を吐き、答える。今回の案件においては彼等も容疑者になりえる。棚神選手の付き人をしているからこそ、名誉な肩書が不名誉なリストに掲載される手形となった。
「さて……」
有栖は案内された会議室のドアへと振り返る。時刻は定刻の十五分前だ。
「いきましょうか」
反保も同様に振り返ったが、その声色には固さが窺えた。緊張、と表現するのが正しいのだろうがそれを詳細に分析した際にどのような感情が起点になっているかは不明だ。それほどまでに、複雑――彼がそのようになってしまうことは有栖も理解していた。
「彼と連絡は?」
「……全くしてません」
今回の警備はユースティティアと警察の協力体制で行うことになっている。より正確にいえば、警察が行う予定だったところに団体側からの希望、という形でユースティティアもねじ込んでもらったのだ。これは高良組による力が働いたのだろうが、どのように働いたかまでは有栖達も意図的に調べてはいない。
とはいえ、警察がこのような警備の形に良い感情を抱いていないのは覚悟の上なので、そんなことは緊張をもたらす要因にはなり得ない。
要因になったのは事前に知らされた本日の打合せで対応することになった相手の名前だ。
「行くよ」
「……はい」
有栖がノックすると聞き覚えのない声が返ってきた。定刻には余裕があるが既に誰かがいるようだ。
二人はドアを開け、
「失礼します」
そう言って中に入る。
先程、林と話をした場所と広さも机や椅子の数もほぼ同じである会議室には本日の打合せを行うメンバーが既に揃っていた。
一人はファイティングプロレス株式会社の会場の管理業務を行う男性社員。彼は立って資料を机に置くなどの準備をしていた。
そして、その他に着席している警察側の代表メンバーが二人。
その内の一人が――飛田だった。
「旗揚げ記念日の当日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、ありがとうございました」
打合せが行われる会議室まで丁寧に案内してくれた海野と中島に有栖は礼を述べて、エレベーターまで乗り込んでいく彼等を見送った。
「良い人達ですね」
「そうね、疑いたくなくなるぐらいに」
反保の言葉に有栖は小さく息を吐き、答える。今回の案件においては彼等も容疑者になりえる。棚神選手の付き人をしているからこそ、名誉な肩書が不名誉なリストに掲載される手形となった。
「さて……」
有栖は案内された会議室のドアへと振り返る。時刻は定刻の十五分前だ。
「いきましょうか」
反保も同様に振り返ったが、その声色には固さが窺えた。緊張、と表現するのが正しいのだろうがそれを詳細に分析した際にどのような感情が起点になっているかは不明だ。それほどまでに、複雑――彼がそのようになってしまうことは有栖も理解していた。
「彼と連絡は?」
「……全くしてません」
今回の警備はユースティティアと警察の協力体制で行うことになっている。より正確にいえば、警察が行う予定だったところに団体側からの希望、という形でユースティティアもねじ込んでもらったのだ。これは高良組による力が働いたのだろうが、どのように働いたかまでは有栖達も意図的に調べてはいない。
とはいえ、警察がこのような警備の形に良い感情を抱いていないのは覚悟の上なので、そんなことは緊張をもたらす要因にはなり得ない。
要因になったのは事前に知らされた本日の打合せで対応することになった相手の名前だ。
「行くよ」
「……はい」
有栖がノックすると聞き覚えのない声が返ってきた。定刻には余裕があるが既に誰かがいるようだ。
二人はドアを開け、
「失礼します」
そう言って中に入る。
先程、林と話をした場所と広さも机や椅子の数もほぼ同じである会議室には本日の打合せを行うメンバーが既に揃っていた。
一人はファイティングプロレス株式会社の会場の管理業務を行う男性社員。彼は立って資料を机に置くなどの準備をしていた。
そして、その他に着席している警察側の代表メンバーが二人。
その内の一人が――飛田だった。
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