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第二章:ファイティングプロレス

有栖_2-9

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「海野さんは海外の言葉も話せるんですね」

 ミサゴ選手が出ていったロッカールームで有栖は、それを当然のように話した彼に驚きと尊敬の気持ちから口にした。

「中島も話せますよ。この団体は海外で興業する為に遠征が多いので自然に覚えましたね」

 そう話す海野の横で中島も頷く。

「海外でも人気なんですよね?」

 反保も会話に混ざると、その言葉が嬉しかったのか中島は笑顔を見せた。

「そうなんですよ! 海外でもウチの団体はウチの団体らしい試合を見せていますからね。魅了されている人も多いんです。業績では遅れを取りますが、選手個人の人気ランキングでは一位を取ることもありますし、全体的に上位を占めるのはウチの選手なんですよ」
「引き抜きを含むオファーもたくさんきてるらしいです」

 中島は得意げに、海野は少し困った顔で話すがどちらもそこには誇らしげにしている様子が垣間見える。ファイティングプロレス、という団体に対する愛がそこにはあった。

「えっと、以上で主な選手紹介は終わりです。他にもたくさん選手はいるんですが、現在のトップ戦線の選手、という意味ですけど」
「棚神選手を含めて、先程の四人が旗揚げ記念日の興業では主軸になるのですか?」
「そうですね。メインはチャンピオンの藤内さんと棚神さん。セミファイナルはハルカさんとミサゴさんになります。どちらも過去に深い縁のある選手同士の試合なので、注目度も高く、チケットも既にソールドアウトなんですよ」

 有栖の質問は彼女自身が既に知っていながら聞いた内容でもあった。対戦カードは事前に発表されており、SNS上でも盛り上がっている様子は確認していた。それでも聞いたのは海野や中島が先程の四人がプッシュされている現状に不服を抱いている様子がないかを確認する為だったが……回答した海野も中島もそのような様子は全く見せない。寧ろ、彼ら自身も楽しみだ、といった様子だ。

「ありがとうございます。自分達は……」

 有栖は反保を一瞥する。すると、彼は察してスマホで現在の時間を見せてくれた。表示された時間は『予定されていた時間』の三十分前だ。少し持て余すかもしれないが、これ以上何か予定を詰め込むには短い。余裕を持って行動できる時間、と考えるのが妥当だった。

「自分達はこのあと、ここのオフィスの会議室の一室で打ち合わせがあるのでそちらに向かいます」
「そうなんですね。ウチの団体の会場管理をしている社員さんとですかね?」

 有栖は海野の質問に対して、意識して笑顔を貼り付けて答えた。

「えぇ、そうです。あと、警察の代表の方も一緒に」
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