あい らぶ? こめ。

神室さち

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一難去ってまた一難

頭とか撫でなくていいから!

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 藤也が戯言言ってる間にも、どんどんお腹が痛くなる。きゅるきゅる音がする。一個でこんな痛いのに、追加で入れられるとか絶対無理!! 痛い。トイレ行きたい。出したい。出せない!!

 多分、これまでの人生で一番長い三分だったと思う。体感的に。

 俺が呻きながら、時折体をくねらせながら耐えた三分。砂時計の砂が全部、落ち切るまで。

「よくがんばりましたね」

 頭とか撫でなくていいから! トイレ!! トイレ行かせて!!

 そんな懇願も、口に出せない。今体の力を抜いたら、全部出る。

 ぼろぼろ泣きながら唇を震わせる俺に、それはもうやさしい笑みで答えて、柊也が俺を引っ張り上げ、そっと抱き上げてくれた。ぎゅっとお尻に力を入れていないと今にも零れそうで、強張る体で柊也にしがみつく。

 トイレは、すぐ隣。風呂場とも、脱衣所とも、ガラスで仕切られているだけ。

 便座の蓋を抱くような形……普通とは逆の姿勢になるよう、そっと降ろされた。

「まだですよ? いいと言うまでは出してはいけません」

 トイレに座れて、ほっと気が緩みかけた俺に、さっきと打って変わって、冷たい声音で柊也が言う。

 その言葉に従順を示すため、小刻みに頷く。

 拘束された手で便器の蓋にしがみついてた時間も、すっげー長かった気がする。移動と、待たされた時間。合わせて一時間以上そうしているような気がする。

 声さえ出せない。口から出てくるのは、犬みたいな呼吸音。


 も、出るッ


「いいですよ」

 出したのと、柊也の許可と、どっちが早かっただろう? 若干フライング気味だったかもしれないけれど、出始めたものはもう止まらない。水を流したくても、手を戒められて、使い慣れないタイプのトイレで、どこがレバーかもわからない。

「やっ! やだぁ! あっちいって! 聞くなぁ! 見るなぁぁあッ」

 一緒にギュッと閉じてた上の口も全開。

 俺の叫び声もむなしく、最初から最後まで、全部。すぐ後ろに立ってた双子に見られてた。
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