あい らぶ? こめ。

神室さち

文字の大きさ
73 / 129
嵐の前の静けさ

ウソ。ホントにマジで?

しおりを挟む


「おー いい音」

「しょーがないだろっ 腹減ってんだからっ」

 ずっと寝てて時間の感覚全然なかったけど、時計を見たらもう午後八時過ぎてる。

「歩けるか?」

「歩く!!」

 もう、これ以上抱えられてなるものか。よろよろ壁伝いだけど何とか歩いてダイニングテーブルにたどり着いたら、こんな一瞬で作ったとは思えないようなごちそう。フルじゃないけどコースっぽい料理が並んでた。

「え。藤也って料理できたの? お菓子だけじゃないの?」

「失敬だなお前は。とは言っても、コレ全部デリバリーの温め直しだけどな」

 そーっと椅子に座って、テーブルの上の料理を見て涎を垂らさんばかりの俺の皿に、藤也が色々よそってくれる。
「いただきます!」

 コースなら前菜からだけど、今は全部そろろってるから、好きなモノから。柔らかいのに噛んだらプリッとした食感のエビに、薄いピンクのトマトタルタルソース。あ、これ、よく連れて行ってもらってた店のだ。

「これって、エベールブランシュの?」

 濃厚なクリームが絡まったフィットチーネ。

 しゃきしゃきの水菜のサラダ。ポタージュスープは人参がベースなのか、オレンジ色。上にクリームとかぼちゃの種がトッピング。

 メインは鴨のグリルかな。外カリカリで中がきれいなお肉色。マスタードの効いたソースとの相性も抜群!

「そ。よくわかったな」

「んー なんとなく? よく行ってるし。お持ち帰りもしてるんだ?」

「ケーキ以外はフツーはしてない」

 順番無視で、四角いプレートにバランスよく盛られた目にもおいしいごちそうたち。

 好きなモノからばくばく食ってる俺と違って、柊也はきちんとルールを守っていつも通りの綺麗な食べ方。

 藤也は食べながら俺の皿が空になる前に、俺が次に食べたいモノが分かるみたいに追加してくれる。

「ケーキある?」

「あるある。季節のタルトと梨のミルクレープ、四種のベリーショート。あと、プリン。全部俺製」

「あ? そっか、そう言えば、あの店のデザート、藤也のなんだよな」

 藤也の行動や人格はともかく、作るお菓子はめちゃくちゃおいしい。食後のデザートに思いを馳せていたら、ワイングラスをことんとおいて、柊也が笑う。

「違いますよ、エベールブランシュも藤也の店です」

「へ!?」

 ウソ。ホントにマジで? 確かに、食べに行くたびにシェフっぽい人出てきて、藤也にあいさつと言うか、いろいろ喋ってたけど。

 藤也は、確かモンプティットローズって名前のパティスリーをやってる。このマンションからすぐ近くの駅前のが本店で、もっと都心に独立店舗の支店一つと、デパ地下にも販売のみの店がある。

 全部、藤也に連れて行ってもらったことあるからそれは知ってた。

 本店のほうは店のケーキとか軽食とか食べられるカフェも併設してるけど、ちゃんとした飲食店まで持ってるなんて聞いてねぇ!

「あー 言ってなかったっけ。もう一軒、藤屋ってのも俺の店ね」

 そっちもよく連れてってもらってる創作和食の店! っていうか店の名前!!

「俺の店っつっても、藤屋の方はコンセプトとメニューの方向性、店のデザインとかな、そういうのやってるだけで人任せだけど」



 コイツ、五軒も店持ってんのかよ!?

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...