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後悔先に立たず
うるさいな。気持ちの問題なんだよ。
しおりを挟むんんんんー?
何か、物音がしたような気がして、重たい瞼を上げる。ベランダに出られる大きな四枚窓にかかってるちょっと濃いめのベージュのカーテンは、半分ほど開いていて、ベッドから逆さまに見上げたら全部青空だった。
今何時かなんて、時計を見なくてもわかる。お日様は中天。
「んぐあー」
ぐぐーっと伸びをして、ちょっと肌蹴ていた肌触りのいいタオルケットを手繰り寄せる。んー 気持ちいい。
「……って、お前、見といてシカトかい」
「うわぁああああッ」
せっかくぐいーっと頭まで被ったタオルケットが、ぺりっと引っぺがされる。
「ぬぁにすんだよ!?」
「おー いい眺めだな」
いきなり被ってたものを取られて、いつも通りな感じでガバっと起きたら、ニヤニヤ笑ってる藤也一人。ハッ!?
しまった。俺、全裸ッ!!
「返せー!」
「だーめ。ほれ、メシ持ってきてやったからコレ着て食え」
タオルケット取り返そうと手を伸ばしたら、ばさっと飛んできたのは昨日着てたブルーのネコ耳の服。
ちょっとしか着てなかったけど、どうやら一回洗濯されてていい匂いがしてふっかふかだ。
……これが洗濯終わってるってことは。
「藤也ッ 俺のトランクスも洗濯終わってるよな!?」
「あー 乾いてるけど、履くの?」
「履くに決まってんだろ!? 普通履かなきゃスースーするだろっ」
「履いてもスースーすると思うんだけどな、こんなの。あと、履いてもこの長さだと裾からチラチラ出てくるぞ? すっげぇカッコ悪いと思うけど」
うるさいな。気持ちの問題なんだよ。気持ちの。履いてるか履いてないかで全然違うんだよ。
でも、文句言いながらも藤也はちゃんとトランクス持ってきてくれた。これが柊也だったら……ダメだっただろうな、多分。
「家の中なら別にいい。って言うか、フツーの服出せよ」
「ねぇよ。昨日柊也が行ったけど、鍵変わってて入れねぇらしいの。取ってきてほしいんなら鍵貸せ、鍵」
そういえばそんなこと言ってたな。なんで双子に新しくした鍵渡してないんだよ、彰一郎さん……鍵換えたの、再婚した時だからもうかなり前だぞ。
俺がゴソゴソ着替えてる間に、他に乾いた洗濯物を藤也がクローゼットに片付けていく。なんだかんだって言いながら、コイツら一人暮らしだし、こういうことはちゃんとしてんだな。
「俺のカバンどこ?」
「は?」
「だからッ 鍵、カバンの中なの。俺のカバン、ドコ?」
「……え。気づいてない? めっちゃ見えるとこにあるぜ? ヒントはこのうちの中」
「ウソだ! どこにもなかったっ!!」
って、反論したけど、確かに俺、そう言えばこの家のなか、よく見てないかも。
「さぁーて。どこにあるでしょう、か」
誰かのお父さんみたいな口調でそう言い置いて、サクサク作業を終えて、さっさと藤也が寝室から出ていく。絶対、見つけ出してやるッ!!
うん、もう何回も失敗してるから、とりあえずそーっと立ってみる。大丈夫だ。よし。
立てたー!
……とか、こんなことで喜んでどうする、俺。
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