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後悔先に立たず
なんかもう、これだけでぐったりなんですけど。
しおりを挟む「ゆっくり入れてみなさい」
なんだか、耳に心地いいくらいに、柊也の言葉が優しくて、素直に頷いて言われた通りにしようと思ったのに、先に出ていたローションで手が滑って、シリンダー部分が支えられない。
押し込むとこの底が持てたらまた違うんだろうけど、焦れば焦るだけ手がにゅるにゅるになってしまう。
言われた通りしようと思って、気付いた。
注射器の中、結構たっぷり入ってて、押すところがかなり飛び出してる。すんごい前かがみになんないと、手を伸ばしても底のところまで届かない。でもそれって、結局拒否った四つんばいをあんまり変わんない気がする体勢。
「手が滑るから、むりっ」
「んじゃ、そのまま腰落としたら? あ、手では支えとけよ? 滑って注射器本体ずぶりっ! とかなったら困るから」
いつの間にか、ベッドにごろーっと転がっていた藤也が下から覗きこもうとしていた。見るなぁ!!
そして、とんでもないこと言い出した。
本体? こんなのいきなり刺さったら俺、死んじゃうかも。双子のより細いけど、こんなの入ったらイヤだ。
「できないのなら、今からでもお尻をこちらに出せば、代わってあげますよ? どうしますか?」
うううううーっ
ここまでしたのに、結局、やられちゃうのはなんか、負ける気がする。かと言って、藤也の言うとおり自分で腰を落とせば勝ちかって言うと、違う気もするけど。
柊也の申し出に、頭を左右に振って応える。自分でやるっ!!
にゅるにゅるする注射器を握ったまま、ゆっくり、腰を落とす。
押すとこの底がベッドの弾力にちょっと埋まる抵抗のあと、挿入が浅かった先っぽがぐりっと入ってきたのにちょっと怯んでから、それでもくいっとさらに腰を落とせば、ちゅるっと中に、中にっ!!!
「んやぁっ」
ちょっと冷たくなったローションが入ってきて、腰が跳ねた。
「ちゃんと、全部、入れて下さいね? 自分で」
ぜ、全部? 結構入ってたんだけど、全部?
「そ、ぜーんぶ。マコの中、狭いから漏れちゃうかもだけど気にせずにちゅーっと入れちゃって、全部。大丈夫、重力に従って行けば入るから」
あくまでもなんかもう、軽いノリの藤也。他人事だと思って適当なこと言うなぁ
「ほら、できないのなら手伝いますよ? 肩でも押さえてあげましょうか?」
怖い上機嫌な笑顔の柊也が手を差し伸べる。それをまた頭を横に振って拒否。なんでここまで意固地にとか、自分で思うけど、ここまで来たら中途半端に『やられる』のはやだ。
「やだっ んっでも、こ……なの、ぜんぶ、ぜったぃ、入んな……」
言いながら気を逸らしてちょっとずつ。
「んっ んむっ んんっ ぅん」
先に入って温くなったローションと、冷たいのが混ざって奥の方へ流れ込んでくるのが解る。
あんだけ熱い場所だったんだから、対比の冷たさが侵入をリアルに知覚させる。ちょっとずつ増えてく感触に、口閉じてても鼻から声が漏れてる感じ。
「おー 全部入った? おっと」
目を閉じたまま、食いしばった歯の間から息をしながら腰を落として、どこまでやればいいのかわからなくなった時、やっぱり見てたらしい藤也が、もう力も入らない俺の手から注射器を奪い取る。
俺の後ろから、脇の下に腕を入れて体を支えたのは多分柊也。やべぇ 俺、マジでつっこんじゃうとこだったとか?
最後の方、結局入りきらずにぷちゅぷちゅ縁からはみ出してきたけど、中身空っぽにしたらいいんだろって開き直ってしまった。
そのまま、柊也がゆっくりとベッドに寝かせてくれたけど、なんかもう、これだけでぐったりなんですけど。俺。
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