ならば今、勇敢な恋のうたを歌おう

神室さち

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3 気づいたところで、もうどうしようもないのです。

色んな意味で誰しも、ままなりません。

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「でもごめん、しばらく仕事、やりづらいと思う」

「……いえ。それは元からなんで、気にしないでください」

 至極真面目に答えたつもりだったのに、何がおかしかったのか佐藤君が小さく噴き出した。


「そっか、俺のことなくても合わなさそうだもんね、内藤さんと君は。でも多分、あとひと月我慢したらいいと思うよ。おそらく彼女、春の移動で別の部署に飛ばされるから」

 え。なんで時々来るだけの他社の人間がそんなこと知ってるの!? 人事って、機密事項じゃないの? SEってそんなところまで見られるの?


「彼女、仕事あんまりしてないでしょ。なのに、よくソフトをフリーズさせてたんだ。街宮さんは初めに習わなかった? あのソフトは演算が複雑だから、一人のユーザがウインドウを何枚も出し過ぎたら開けてるだけでコードが重複して負荷がかかりすぎてフリーズしやすい、だから開くのは三枚まで、って」


「言われた気がします。新人研修の時」

 そこまで詳しく教えてもらわなかった気がするけど、確かに意味は分からなくてもできるだけあのソフトは、三枚どころか一枚ウインドウで仕上げろと言われた気がする。


 だから私はできるだけ一つずつ確実に仕上げて保存して、新しいものにかかるようにしていた。

 じゃあ複数枚出せないようにしたらいいだろうって話だけど、作業として三枚くらい出さないと進まなかったりする場合もあるので、そういった制限は加えられていないのだろう。


「それを逆手に取ったんだろうね。契約上SEの派遣は月に一度の定期点検プラス三回が上限って決まってて、それ以上呼ぶと追加料金が発生するんだ。

 僕らの方の会社としては些細なことで呼んでもらえて金になるけど、そっちの会社としてはあんまりガンガン呼ばれたらたまったもんじゃないだろうね。実は逆にソフトがおかしいんじゃないかってそっちからもクレームが来て、こっちの開発担当も頭抱えちゃって。

 実際、どうにか複数作業でもフリーズしないような方法を探してるんだけどうまくいってないのも事実だからねぇ だから俺が派遣されて、履歴を全部洗って、どうやら彼女が犯人らしいことを突き止めたってわけ。

 でも変な負荷をかけ過ぎたせいで、まだ何年も持つはずったハードに少しずつ傷が入ってて、それも取り替えるか新しいサーバマシンにしないといけない。会社にとっては大損失だよ」


 そう言えば……内藤さん、最近は佐藤君を呼ぶ為にわざとソフトを落としてたんだろうけど、なんか、それっていろいろ本末転倒だったのね……


 とりあえずの原因を探すためにやってくる佐藤君を呼ぶ為にソフトを落とす内藤さん。マイナスのスパイラルみたいだ。

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