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AFTER DAYS 終わらない日常
267 草野君香の視点 6
しおりを挟む「夏合宿の晩飯のカレー。平気そうに食ってたよな……」
「な、なによその目っ! ちょっと辛かっただけでしょー? 苦情は勝手に激辛十倍のルー足したリカちゃんに言ってよ」
みんなの目が『ちょっと?』って。それを作ったのは私と妃和と、あとからやってきたリカちゃん。確かにちょっと、辛いって評判の草野家カレーと比べても、辛かったかもしれないけど、夏のカレーはアレくらい辛くないとキマらないでしょう!?
「そういえば、君香もガツガツ食ってたよな」
「外見だと甘口カレーを少ししか食わないみたいなのに、先生やコーチより食ってただろう、お前」
食べたって言ってもおかわり一回しただけでしょう? カレーはおかわりをするものでしょう? おかわりをするのはカレーくらいよ!! いつもいつもどんぶり三杯食べてるような言い方しないで。
「私ばっかり大食いみたいに言わないでよっ あの人たちのほうがたくさん食べてたもん」
「そりゃあ」
「でかいもん、あっちは。それで考えるとお前、燃費わるいなー」
燃費?
「高級車並み燃費の軽」
「あはは。ターボついてるもんな、お前。ムダに加速して、ぶつかりかけて急ブレーキ。間に合わなくて当たったら自分から突進してっても、止まってた相手のせいにするタイプだな」
「『なんでこんなところに壁があるの!?』とか『こんなところに車を止めている人が悪い!!』とかな」
なんなのー? 車のことなんかわからないけど、バカにされてることは分かるわ。言いたいこといってるわねー
「井名里先生はターボついた四駆動? 瞬発力も持続力もあるうえに、車体重いのに小回り効いててやたら燃費よさそうだよな……多少の事故じゃ壊れなさそうだし」
「さっき、弁慶打っても平気だった。声も出さなきゃさすりもしなかったよな」
そう言えば。みてた人間のほうが痛そうな声上げてたもんね、あの時。
「いなりんの神経ってやっぱりゾウ並み?」
「…………君香よりはよっぽど繊細だと思うよ」
「それってどういう意味?」
「そういう意味」
しれっと妃和がそう言い終わるのと同時に、ぱんぱんと手を打つ音。振り向いたら杉本前キャプテンがあきれたカオで立っている。
「差し入れ食ったら休憩終了。先生がまたここに来たらすぐ帰れるようにとっとと済ませろー 特に君香」
そう言って、お菓子の箱の角で私の頭をぱこぱこ叩く。あ、このチョコ好き。もらっていい? 独り占めするけど。
「特に私ってなんですかー?」
ちょうだいって出した手の上にチョコの箱。杉本前キャプテンありがとー。
「特に君香だよね」
「そう思ってなおかつ幼馴染なら……」
「自分でやりなさい」
けちーっ
「分かったって。数学以外なら教えてやるから座れ」
「キャプテーン……それが一番問題なんですぅ。見てくださいよこの問題」
ぺらりと、まだ何もできてない数学のプリントを見せたら、杉本前キャプテン無言のまま停止。やっぱり。三年生でもわからないんじゃない、この問題。
でも、いなりんが早目に帰れるようにってのは反対じゃないから、ちゃんとがんばろうっと。あと期末も。みんなから赤点が消えたら、やっぱりいなりんへの風当たりは弱くなるだろうし。
「…………って……分かっててもわからーんっ!!」
「やっぱり……キミちゃんが一番危ないよね。いろんな意味で」
シロちゃんのため息交じりのセリフに、みんながいっせいに頷いた。
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