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ANOTHER DAYS
9 side夏清
しおりを挟む「仕事、すごく忙しいみたいなの。今度の出張もギリギリまで他の人が行くか、氷川さんが行くか調整してたんだって。結局前後の休日に出勤して日常業務……こなして、自分の目で見たいからって無理して行ってるの」
「土日も出てるの!?」
「うん。九月からはずっと、休みなし」
うひゃー。ちょっとちょっと。隣の部屋にいる人に聞かせたいよ。定時出勤、定時帰宅。土曜の休日補講だって、午前中だけなのに文句ダラダラ言いながら行くんだよ。十一月に入ったら大学進学者用の夕方補講も入るから、もう今から『なんで俺が』って。余分の仕事でちょっとかわいそうかもとか思ってたけど、甘いよ!! 氷川さんの話聞いたらもっと働ける。
「でもそれは……働きすぎじゃないの? 労働ナントカ法にひっかかってるって」
「ああ、氷川さん、管理職だからそう言うの対象外なんだって」
………過労死するよ、それ。
「移動のときとか、空いてる時間に寝たりしてるらしいんだけど、やっぱり、ゆっくり一人で寝たほうが、疲れとか取れるよね?」
そうかな。そうかもしれないけど。
「どうなのかなぁ例えばね、死ぬほど疲れてたりすると、人が居ようが居まいが、結局熟睡しちゃうと思う。だから逆に、寝て、起きたとき一番に、一番好きな人が見えたら……見えるほうが、私はいいな。
一緒に暮らしてたらね、いやでも朝、顔は合わせるけど、目が覚めて、何にもしないでもそこに、目を開けただけで一番見たいものがあるのって、きっとすごく、安心するよ」
うつぶせになって、枕を抱えるようにしながらまだふとんに入らないで座り込んだままの樹理ちゃんを見上げる。
「そう、かな」
「うん」
「……夏清ちゃんたちは……その、どっちが……」
ちっちゃい声でぼそぼそ。口の中で噛んでるみたいな樹理ちゃんの言葉。どっちがですかー……うーん。
「んーどうかな。もう寝ようっていくこともあるし、もう寝るぞ、って呼ばれることもあるよ」
どっちが多いかなぁ。半々?
「樹理ちゃんは………」
「え?」
「受身でしょ? 言われないと行かない?」
「えっ……だっ……て、そんなの、言えません」
どうしていきなり敬語……
「私から………なんて、そんな。なんか…………さそっ………………ってる、みたいじゃないですか」
みたいじゃなくて、誘ってるの。
体中の血が集まっちゃったみたいに真っ赤な顔で樹理ちゃんが微妙に動いてるの。もじもじというか、くねくねっていうか。うわーその動きを擬音出すとやらしくなるね。恥ずかしがってるだけなのに。
「誘ったらダメかな?」
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