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2 前世
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私は前世で付き合っていた男からこっぴどい仕打ちを受けた。結婚まで考えて同棲していたにも関わらず、ある日仕事が予定より早く終わり家に帰ると、知らない女が私のベッドで彼と寝ていたのだ。裸で。
(いや~ある意味やり直しのチャンスだな~)
それはそれは辛い日々を送った。人間不信になり、酒に溺れて仕事はうまくいかなくなり、惨めな思いをした。辛抱強く私を支えてくれた家族と友人のおかげで持ち直したが、あの浮気野郎どもが幸せだと思うと悔しかった。
あまりの衝撃で動けなくなっていたのだ。仕返しなんかせずに終わった。ただ辛い悲しい酷いと泣き寝入りしただけだった。
それが前世の心残りとしてまさか今世にまで引きずることになるとは。
「お父様、私は政略結婚でかまいません。どうぞ国のためにお使いください」
大国の姫として生まれ変わり、小さな頃から前世の記憶があった私は、なんとも可愛げのない発言をした。
前世の記憶は勉強面では大変助かったが、恋愛のトラウマは消えず、この世界では珍しい恋愛優位の母国で、唯一政略結婚する姫となった。
「嫌だったら帰ってきていいのよ」
「そんな母上! 何事も自分でなんとかできる年ですわ」
そう言って18歳でこの国の王子と結婚した。
今回、愛がないからダメージも少ないが、まさか前世のあの忌々しい記憶がフラッシュバックするとは思わなかった。
(結局、ムカつくことはムカつくのね)
愛の有無に関わらず、尊厳を傷つけられたことには変わりがない。
(馬鹿にされたら怒るのは当たり前なのに)
けどそのおかげで何度も前世でシミュレーションしていたことを実行できた。本当は王子もぶん殴りたかったのだが、戦争になっても困るので我慢した。
(だけど王と王妃のあの感じだと大丈夫だったな~次に機会があったら殴ろう)
「アイリス様、ユリウス様がおいでにございます」
「通してちょうだい」
一夜経ってもまだ眉間に皺を寄せているユリウスは、私を見て泣きそうな顔になっていた。
「アイリス様! お可哀想に……! もう国に帰りましょう! 後のことはお任せください!」
「まさか! 自分でやり返さないと気が済まないわ!」
「ええ!?」
私の反応が思ってたのと違って驚いたようだ。ユリウスは昔から私を可愛がってくれていた。身内のおじさんのような存在だ。彼を悲しませることになって申し訳ない。
「タダで帰ってあげたらそれこそあのクソ王子とクソ女がほくそ笑むわよ」
真実の愛が勝った~! なんて言ってね。1番ムカつくパターンのやつ。
「もちろんこの国にはそれなりの報いを受けてもらいます! それは私が!」
「そうね~でもこの国の国民が可哀想でしょ。国民は王子を選べないし」
王はまともそうだったのになぁ。小国といえどもしっかり家臣達を束ね、国民を愛し、外交にも力を入れていた。だから両親はこの国を私の嫁ぎ先として選んだのだろう。少しでも私が幸せに暮らせるように。
「まあ少し私にやらせてよ」
「……それでアイリス様の気持ちがおさまるのなら」
「ありがと」
再び侍女が私に告げる。
「王がお話がしたいと」
(いや~ある意味やり直しのチャンスだな~)
それはそれは辛い日々を送った。人間不信になり、酒に溺れて仕事はうまくいかなくなり、惨めな思いをした。辛抱強く私を支えてくれた家族と友人のおかげで持ち直したが、あの浮気野郎どもが幸せだと思うと悔しかった。
あまりの衝撃で動けなくなっていたのだ。仕返しなんかせずに終わった。ただ辛い悲しい酷いと泣き寝入りしただけだった。
それが前世の心残りとしてまさか今世にまで引きずることになるとは。
「お父様、私は政略結婚でかまいません。どうぞ国のためにお使いください」
大国の姫として生まれ変わり、小さな頃から前世の記憶があった私は、なんとも可愛げのない発言をした。
前世の記憶は勉強面では大変助かったが、恋愛のトラウマは消えず、この世界では珍しい恋愛優位の母国で、唯一政略結婚する姫となった。
「嫌だったら帰ってきていいのよ」
「そんな母上! 何事も自分でなんとかできる年ですわ」
そう言って18歳でこの国の王子と結婚した。
今回、愛がないからダメージも少ないが、まさか前世のあの忌々しい記憶がフラッシュバックするとは思わなかった。
(結局、ムカつくことはムカつくのね)
愛の有無に関わらず、尊厳を傷つけられたことには変わりがない。
(馬鹿にされたら怒るのは当たり前なのに)
けどそのおかげで何度も前世でシミュレーションしていたことを実行できた。本当は王子もぶん殴りたかったのだが、戦争になっても困るので我慢した。
(だけど王と王妃のあの感じだと大丈夫だったな~次に機会があったら殴ろう)
「アイリス様、ユリウス様がおいでにございます」
「通してちょうだい」
一夜経ってもまだ眉間に皺を寄せているユリウスは、私を見て泣きそうな顔になっていた。
「アイリス様! お可哀想に……! もう国に帰りましょう! 後のことはお任せください!」
「まさか! 自分でやり返さないと気が済まないわ!」
「ええ!?」
私の反応が思ってたのと違って驚いたようだ。ユリウスは昔から私を可愛がってくれていた。身内のおじさんのような存在だ。彼を悲しませることになって申し訳ない。
「タダで帰ってあげたらそれこそあのクソ王子とクソ女がほくそ笑むわよ」
真実の愛が勝った~! なんて言ってね。1番ムカつくパターンのやつ。
「もちろんこの国にはそれなりの報いを受けてもらいます! それは私が!」
「そうね~でもこの国の国民が可哀想でしょ。国民は王子を選べないし」
王はまともそうだったのになぁ。小国といえどもしっかり家臣達を束ね、国民を愛し、外交にも力を入れていた。だから両親はこの国を私の嫁ぎ先として選んだのだろう。少しでも私が幸せに暮らせるように。
「まあ少し私にやらせてよ」
「……それでアイリス様の気持ちがおさまるのなら」
「ありがと」
再び侍女が私に告げる。
「王がお話がしたいと」
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