4 / 12
4 男爵退場
しおりを挟む
王子レオンとリーシャの出会いは、リーシャの父が働く城下町にある飲み屋だった。
レオンは社会勉強の一環だと度々城下へ遊びに出かけていた。それはまあいい。彼もそれなりに勉学には励んでいたからだ。小国を守る次期王としてのプレッシャーもあっただろう。
彼はその飲み屋で出会ったリーシャの虜になった。彼の知るどの女性より奔放で開放的な彼女にあっと言うまに夢中になった。リーシャの方はレオンの身なりの良さや振る舞いから、金持ちの息子だと当てを付け必要以上にサービスをしていた。そうして2人はあっという間に恋仲になった。それもまあいい。人の気持ちはどうしようもない。
これを3日で調べ上げてきた従者達に感謝だ。
何が良くないって、誠実な愛を誓ったその日、初夜に、私がいるはずのベッドの中で、私を馬鹿にしたことだ。
(いや、それは少し違うか)
結局、いつやられても関係ない。裏切られた、尊厳を傷つけられたことが悔しくて仕方ないのだ。まあタイミングで言えば最も私がショックを受ける時を狙ったのだろうからタチが悪いのは確かだ。
(私が何をしたって言うの?)
これは政略結婚だ。愛がなくても仕方がない。それは承知の上だ。だからと言って、惨めな気持ちになるために祖国を離れたわけではない。私だってそれなりの覚悟と意欲を持って嫁いできたのだから。
(あんまりじゃない!)
この話し合いは余計な馬鹿のせいで進まない。あの男爵は本気で自分が何を言ったかわかっていないのだ。
「そ、その者を地下牢へ入れておけ!!!」
王が震える声で怒鳴った。もちろんこちらは誰が誰に暴言を吐いたかわかっている。王妃なんて顔面蒼白だ。
「な、なぜですか!?」
「ねぇどうして!? レオン! レオン!?」
リーシャも同じく、男爵の罪の重さがわかっていないようだ。と言うか、もしかしたら私が誰なのかちゃんと理解できていないのかもしれない。
レオンの方は悔しそうに唇を噛み締めている。
(そりゃ初夜に他の女と寝るくらいだもんな。私への暴言くらいで牢なんて……って思うのかしら)
いやいやまさか。大国の姫で王子の妻へのあの暴言、簡単に許される者じゃないってわかるよね? ……ね?
この場の雰囲気に、こちらの家臣どころかあちらの家臣達も表情が凍ってしまっている。
とりあえず男爵は退場してくれた。これで少しは話が進むだろう。
「やっとですか」
「いや……本当に申し訳ない……」
王は消え入りそうな声で搾り出すように呟いた。本当に気の毒だ。まあ私が言わせてるんだけど。
「それで、そこの男爵令嬢は何か言うことがあるのではなくて?」
「はぁ!? 何言ってんのこの……!」
「リーシャ!!!」
あと少しのところで、レオンがリーシャの声を遮った。
(チッ!)
思わず舌打ちしそうになったが、心の中でとどめておく。牢に入れてしまえば後は煮ようが焼こうがゆっくりできる。
この女とはまだ一度もまともに会話していない。が、特に勉強や教養を身につけるタイプでないことは聞いているので、話を続ければ簡単にボロを出してくれそうだ。
「殿下、今はこの方にお伺いしているのです。殿下の妻として」
「き、貴様の狙いはわかっている! この性悪女め!」
「レオン!!!」
こちらがビックリするくらいの大声が響き渡る。この王様、そろそろ血圧大丈夫?
「アイリス様!!! 度重なる失礼申し訳ございません! 今しばしお時間をいただきたいのですが!」
血管が切れそうな王を見て一瞬こちらが怯みかかる。流石に一国の王となると威厳……というか迫力が違う。
そりゃあこれだけ失言が続けば、いよいよ王子と私の婚姻関係は修復不可能になると思ったのだろう。いや、もう終わってるんですけどね。
「先程から申し訳ないと何度もおっしゃられておりますが、このわずかな間にどれだけ無礼を重ねるのでしょうか?」
ユリウスがゆっくりと、しかし王に負けないほどの威圧感を持って発言した。
「……言い訳のしようもない」
「それではしばらくアイリス様のお話を聞いていただきたい」
大国の王の側近だと、王相手にこれだけ強気に出れるのか。いやはや頼もしい。
「ユリウスありがとう」
私はあくまで余裕がある風に振る舞う。それがかえって彼らには不気味に見えたようだった。
レオンは社会勉強の一環だと度々城下へ遊びに出かけていた。それはまあいい。彼もそれなりに勉学には励んでいたからだ。小国を守る次期王としてのプレッシャーもあっただろう。
彼はその飲み屋で出会ったリーシャの虜になった。彼の知るどの女性より奔放で開放的な彼女にあっと言うまに夢中になった。リーシャの方はレオンの身なりの良さや振る舞いから、金持ちの息子だと当てを付け必要以上にサービスをしていた。そうして2人はあっという間に恋仲になった。それもまあいい。人の気持ちはどうしようもない。
これを3日で調べ上げてきた従者達に感謝だ。
何が良くないって、誠実な愛を誓ったその日、初夜に、私がいるはずのベッドの中で、私を馬鹿にしたことだ。
(いや、それは少し違うか)
結局、いつやられても関係ない。裏切られた、尊厳を傷つけられたことが悔しくて仕方ないのだ。まあタイミングで言えば最も私がショックを受ける時を狙ったのだろうからタチが悪いのは確かだ。
(私が何をしたって言うの?)
これは政略結婚だ。愛がなくても仕方がない。それは承知の上だ。だからと言って、惨めな気持ちになるために祖国を離れたわけではない。私だってそれなりの覚悟と意欲を持って嫁いできたのだから。
(あんまりじゃない!)
この話し合いは余計な馬鹿のせいで進まない。あの男爵は本気で自分が何を言ったかわかっていないのだ。
「そ、その者を地下牢へ入れておけ!!!」
王が震える声で怒鳴った。もちろんこちらは誰が誰に暴言を吐いたかわかっている。王妃なんて顔面蒼白だ。
「な、なぜですか!?」
「ねぇどうして!? レオン! レオン!?」
リーシャも同じく、男爵の罪の重さがわかっていないようだ。と言うか、もしかしたら私が誰なのかちゃんと理解できていないのかもしれない。
レオンの方は悔しそうに唇を噛み締めている。
(そりゃ初夜に他の女と寝るくらいだもんな。私への暴言くらいで牢なんて……って思うのかしら)
いやいやまさか。大国の姫で王子の妻へのあの暴言、簡単に許される者じゃないってわかるよね? ……ね?
この場の雰囲気に、こちらの家臣どころかあちらの家臣達も表情が凍ってしまっている。
とりあえず男爵は退場してくれた。これで少しは話が進むだろう。
「やっとですか」
「いや……本当に申し訳ない……」
王は消え入りそうな声で搾り出すように呟いた。本当に気の毒だ。まあ私が言わせてるんだけど。
「それで、そこの男爵令嬢は何か言うことがあるのではなくて?」
「はぁ!? 何言ってんのこの……!」
「リーシャ!!!」
あと少しのところで、レオンがリーシャの声を遮った。
(チッ!)
思わず舌打ちしそうになったが、心の中でとどめておく。牢に入れてしまえば後は煮ようが焼こうがゆっくりできる。
この女とはまだ一度もまともに会話していない。が、特に勉強や教養を身につけるタイプでないことは聞いているので、話を続ければ簡単にボロを出してくれそうだ。
「殿下、今はこの方にお伺いしているのです。殿下の妻として」
「き、貴様の狙いはわかっている! この性悪女め!」
「レオン!!!」
こちらがビックリするくらいの大声が響き渡る。この王様、そろそろ血圧大丈夫?
「アイリス様!!! 度重なる失礼申し訳ございません! 今しばしお時間をいただきたいのですが!」
血管が切れそうな王を見て一瞬こちらが怯みかかる。流石に一国の王となると威厳……というか迫力が違う。
そりゃあこれだけ失言が続けば、いよいよ王子と私の婚姻関係は修復不可能になると思ったのだろう。いや、もう終わってるんですけどね。
「先程から申し訳ないと何度もおっしゃられておりますが、このわずかな間にどれだけ無礼を重ねるのでしょうか?」
ユリウスがゆっくりと、しかし王に負けないほどの威圧感を持って発言した。
「……言い訳のしようもない」
「それではしばらくアイリス様のお話を聞いていただきたい」
大国の王の側近だと、王相手にこれだけ強気に出れるのか。いやはや頼もしい。
「ユリウスありがとう」
私はあくまで余裕がある風に振る舞う。それがかえって彼らには不気味に見えたようだった。
77
あなたにおすすめの小説
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
従姉の子を義母から守るために婚約しました。
しゃーりん
恋愛
ジェットには6歳年上の従姉チェルシーがいた。
しかし、彼女は事故で亡くなってしまった。まだ小さい娘を残して。
再婚した従姉の夫ウォルトは娘シャルロッテの立場が不安になり、娘をジェットの家に預けてきた。婚約者として。
シャルロッテが15歳になるまでは、婚約者でいる必要があるらしい。
ところが、シャルロッテが13歳の時、公爵家に帰ることになった。
当然、婚約は白紙に戻ると思っていたジェットだが、シャルロッテの気持ち次第となって…
歳の差13歳のジェットとシャルロッテのお話です。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
エメラインの結婚紋
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢エメラインと侯爵ブッチャーの婚儀にて結婚紋が光った。この国では結婚をすると重婚などを防ぐために結婚紋が刻まれるのだ。それが婚儀で光るということは重婚の証だと人々は騒ぐ。ブッチャーに夫は誰だと問われたエメラインは「夫は三十分後に来る」と言う。さら問い詰められて結婚の経緯を語るエメラインだったが、手を上げられそうになる。その時、駆けつけたのは一団を率いたこの国の第一王子ライオネスだった――
居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる