13 / 16
13 新たな予言
しおりを挟む
最近、王宮内でレティシアの霊を見たというものが相次いでいた。しかも夜中ではない、日中に頻発したのだ。パミラの側仕えをしていた者もレティシアがいたと青ざめた顔で騒ぎ、仕事に出てこなくなった。
「死人にビビってどうするのよ!」
どうせ罪悪感から見た幻に違いない。パミラは怒りを露わにした。
一向にライルの新たな婚約者になる許可も下おりず、肝心のライルも全く頼りにならなかった。王から信用が皆無の為、最近は会ってももらえないと聞いて周囲に当たり散らしていた。
だから初めて大神官に呼び出されたパミラは少し気持ちが高揚していた。
「ついに私を認めることにしたのね!」
彼が自分を疎んでいることはわかっていた。いつも見透かしたような目をしているのも気に入らなかったが、彼が自分を認めれば、王妃の座にずっと近ずくことは理解していた。
「それで。次の予言はいつかね」
祭壇がある大広間の大神官の椅子に座りパミラを見据え、挨拶もなくただ尋ねられた。そこに敬意など何もない。
「ご存知ないかもしれませんが、聖アルテニアからの啓示はいつも突然なのです」
「そうか。次の予言は対策が間に合う時期に頼むと聖アルテニアに伝えてくれ」
(こいつ! 馬鹿にしやがって!!!)
パミラは不快感を隠すことはしなかった。鼻息も荒く、こめかみに青筋を立てた。
(私は聖女よ!!! 今やあんたなんかよりよっぽど平民から人気があるんだから!!!)
大広間の中にはパミラに与している神官が大勢いた。彼らがきっと自分の味方をするだろう。
「今予言が降りてまいりました。大神官、貴方の首はギロチンによって落ちるでしょう! 聖アルテニアはお怒りです! 聖女の美しい心を疑った罰が下るのです!!!」
唾を撒き散らしながらこの大広間中に広がる声で叫んだ。だがこの広間の中に木霊する彼女の絶叫は、ただその石壁に吸い込まれていくだけだった。彼女の味方は誰も呼応することなかった。
(なんで!? どうして!!?)
キョロキョロとレティシアを一緒に陥れた神官達を見回すも、誰も彼もが目をそらした。
「そうか。その予言が現実になるのを楽しみに待っておこう」
パミラは大神官が笑ったところを初めて見た。
「ここにいる神官全員が今の予言の証人だ。確か予言はいつも1ヶ月以内に起こるのだったな」
「左様にございます」
彼の若い側近がすかさず答える。
「ではそれまでに私の首がギロチンで落ちなければ、聖女パミラは聖アルテニアの名を語り偽の予言を吐く悪魔だということだ」
「なっ!? なにを!!?」
今何が起こっているのか理解できなかった。なぜ急にこんな話になっているのだ。
「ねぇちょっと!!!」
「や、やめろ!」
かつて大神官の側近であった神官に縋るが、その手を払われてしまった。その行動もパミラは理解できなかった。
(どうして!? 私のことがバレたら、あんただって道ずれなのよ!?)
「ああ。その者はもう私の側近でない。自ら告白したのだ。レティシア嬢を陥れたいきさつをな」
「ッ!!?」
元側近は顔面蒼白のまま急に泣きながら喚き始めた。
「この悪魔め!!! お、お前のせいで私、私は……!!!」
それに呼応するように、かつてパミラに与していた者たちが泣き始める。大神官が手を挙げると、聖騎士達が彼らの手を縛り、どこかへと連れて行った。
「彼らの死罪は決まっている。全ての罪を告白することで死後の祈りだけは捧げると約束した」
「はあっ!? それだけで!!?」
「どうやら彼らは奇跡を……聖アルテニアの存在を心から信じているようだ」
少し遠くを見ながら恍惚の表情を浮かべる大神官の顔を見て、パミラは背筋が凍った。
罪を告白した神官達は全員レティシアと対面していた。元々神官を目指すほど信心深い者達だ。彼女の繋がった首と聖アルテニアの使い鳥を見て、己の罪を全てを認めるしかなかった。そして激しく後悔するのだった。
「やめて!!!」
パミラの手首にも乱暴に縄がかけられた。
「連れていけ」
大神官はもうパミラに目を向けることすらなかった。
「死人にビビってどうするのよ!」
どうせ罪悪感から見た幻に違いない。パミラは怒りを露わにした。
一向にライルの新たな婚約者になる許可も下おりず、肝心のライルも全く頼りにならなかった。王から信用が皆無の為、最近は会ってももらえないと聞いて周囲に当たり散らしていた。
だから初めて大神官に呼び出されたパミラは少し気持ちが高揚していた。
「ついに私を認めることにしたのね!」
彼が自分を疎んでいることはわかっていた。いつも見透かしたような目をしているのも気に入らなかったが、彼が自分を認めれば、王妃の座にずっと近ずくことは理解していた。
「それで。次の予言はいつかね」
祭壇がある大広間の大神官の椅子に座りパミラを見据え、挨拶もなくただ尋ねられた。そこに敬意など何もない。
「ご存知ないかもしれませんが、聖アルテニアからの啓示はいつも突然なのです」
「そうか。次の予言は対策が間に合う時期に頼むと聖アルテニアに伝えてくれ」
(こいつ! 馬鹿にしやがって!!!)
パミラは不快感を隠すことはしなかった。鼻息も荒く、こめかみに青筋を立てた。
(私は聖女よ!!! 今やあんたなんかよりよっぽど平民から人気があるんだから!!!)
大広間の中にはパミラに与している神官が大勢いた。彼らがきっと自分の味方をするだろう。
「今予言が降りてまいりました。大神官、貴方の首はギロチンによって落ちるでしょう! 聖アルテニアはお怒りです! 聖女の美しい心を疑った罰が下るのです!!!」
唾を撒き散らしながらこの大広間中に広がる声で叫んだ。だがこの広間の中に木霊する彼女の絶叫は、ただその石壁に吸い込まれていくだけだった。彼女の味方は誰も呼応することなかった。
(なんで!? どうして!!?)
キョロキョロとレティシアを一緒に陥れた神官達を見回すも、誰も彼もが目をそらした。
「そうか。その予言が現実になるのを楽しみに待っておこう」
パミラは大神官が笑ったところを初めて見た。
「ここにいる神官全員が今の予言の証人だ。確か予言はいつも1ヶ月以内に起こるのだったな」
「左様にございます」
彼の若い側近がすかさず答える。
「ではそれまでに私の首がギロチンで落ちなければ、聖女パミラは聖アルテニアの名を語り偽の予言を吐く悪魔だということだ」
「なっ!? なにを!!?」
今何が起こっているのか理解できなかった。なぜ急にこんな話になっているのだ。
「ねぇちょっと!!!」
「や、やめろ!」
かつて大神官の側近であった神官に縋るが、その手を払われてしまった。その行動もパミラは理解できなかった。
(どうして!? 私のことがバレたら、あんただって道ずれなのよ!?)
「ああ。その者はもう私の側近でない。自ら告白したのだ。レティシア嬢を陥れたいきさつをな」
「ッ!!?」
元側近は顔面蒼白のまま急に泣きながら喚き始めた。
「この悪魔め!!! お、お前のせいで私、私は……!!!」
それに呼応するように、かつてパミラに与していた者たちが泣き始める。大神官が手を挙げると、聖騎士達が彼らの手を縛り、どこかへと連れて行った。
「彼らの死罪は決まっている。全ての罪を告白することで死後の祈りだけは捧げると約束した」
「はあっ!? それだけで!!?」
「どうやら彼らは奇跡を……聖アルテニアの存在を心から信じているようだ」
少し遠くを見ながら恍惚の表情を浮かべる大神官の顔を見て、パミラは背筋が凍った。
罪を告白した神官達は全員レティシアと対面していた。元々神官を目指すほど信心深い者達だ。彼女の繋がった首と聖アルテニアの使い鳥を見て、己の罪を全てを認めるしかなかった。そして激しく後悔するのだった。
「やめて!!!」
パミラの手首にも乱暴に縄がかけられた。
「連れていけ」
大神官はもうパミラに目を向けることすらなかった。
72
あなたにおすすめの小説
魔法学園の悪役令嬢、破局の未来を知って推し変したら捨てた王子が溺愛に目覚めたようで!?
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
『完璧な王太子』アトレインの婚約者パメラは、自分が小説の悪役令嬢に転生していると気づく。
このままでは破滅まっしぐら。アトレインとは破局する。でも最推しは別にいる!
それは、悪役教授ネクロセフ。
顔が良くて、知性紳士で、献身的で愛情深い人物だ。
「アトレイン殿下とは円満に別れて、推し活して幸せになります!」
……のはずが。
「夢小説とは何だ?」
「殿下、私の夢小説を読まないでください!」
完璧を演じ続けてきた王太子×悪役を押し付けられた推し活令嬢。
破滅回避から始まる、魔法学園・溺愛・逆転ラブコメディ!
小説家になろうでも同時更新しています(https://ncode.syosetu.com/n5963lh/)。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
全ルートで破滅予定の侯爵令嬢ですが、王子を好きになってもいいですか?
紅茶ガイデン
恋愛
「ライラ=コンスティ。貴様は許されざる大罪を犯した。聖女候補及び私の婚約者候補から除名され、重刑が下されるだろう」
……カッコイイ。
画面の中で冷ややかに断罪している第一王子、ルーク=ヴァレンタインに見惚れる石上佳奈。
彼女は乙女ゲーム『ガイディングガーディアン』のメインヒーローにリア恋している、ちょっと残念なアラサー会社員だ。
仕事の帰り道で不慮の事故に巻き込まれ、気が付けば乙女ゲームの悪役令嬢ライラとして生きていた。
十二歳のある朝、佳奈の記憶を取り戻したライラは自分の運命を思い出す。ヒロインが全てのどのエンディングを迎えても、必ずライラは悲惨な末路を辿るということを。
当然破滅の道の回避をしたいけれど、それにはルークの抱える秘密も関わってきてライラは頭を悩ませる。
十五歳を迎え、ゲームの舞台であるミリシア学園に通うことになったライラは、まずは自分の体制を整えることを目標にする。
そして二年目に転入してくるヒロインの登場におびえつつ、やがて起きるであろう全ての問題を解決するために、一つの決断を下すことになる。
※小説家になろう様にも掲載しています。
大好きな第一王子様、私の正体を知りたいですか? 本当に知りたいんですか?
サイコちゃん
恋愛
第一王子クライドは聖女アレクサンドラに婚約破棄を言い渡す。すると彼女はお腹にあなたの子がいると訴えた。しかしクライドは彼女と寝た覚えはない。狂言だと断じて、妹のカサンドラとの婚約を告げた。ショックを受けたアレクサンドラは消えてしまい、そのまま行方知れずとなる。その頃、クライドは我が儘なカサンドラを重たく感じていた。やがて新しい聖女レイラと恋に落ちた彼はカサンドラと別れることにする。その時、カサンドラが言った。「私……あなたに隠していたことがあるの……! 実は私の正体は……――」
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
王太子に愛する人との婚約を破棄させられたので、国を滅ぼします。
克全
恋愛
題名を「聖女の男爵令嬢と辺境伯公子は、色魔の王太子にむりやり婚約破棄させられた。」から変更しました。
聖魔法の使い手である男爵令嬢・エマ・バーブランドは、寄親であるジェダ辺境伯家のレアラ公子と婚約していた。
幸せの絶頂だったエマだが、その可憐な容姿と聖女だと言う評判が、色魔の王太子の眼にとまってしまった。
実家を取り潰すとまで脅かされたエマだったが、頑として王太子の誘いを断っていた。
焦れた王太子は、とうとう王家の権力を使って、エマとレアラの婚約を解消させるのだった。
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる