【完結】予定通り婚約破棄され追放です!~せっかく最強賢者に弟子入りしたのに復讐する前に自滅しないで!?~

桃月とと

文字の大きさ
22 / 63

22 従者

しおりを挟む
 一番最初に現実を理解したのはグレンだった。

 アルベルトの従者グレンは元々頭のいい男だ。努力も怠らなかったので、貧乏子爵家の三男坊でありながら王太子の従者にまで上り詰めた。
 最近、彼は悩んでいた。度々主人に対してある言葉が頭に浮かぶようになってしまったのだ。

(こいつは馬鹿か?)

 学園を卒業後、薄っすらと脳裏をかすめていたものが、ベルーガ帝国訪問を機にそれはハッキリとしたものになっていった。
 彼にとって他国の訪問は初めての刺激でいっぱいだった。そして自分がいかに狭い世界で生きているのかを知った。パーティで出会った、他国の高官達の度量の広さにも驚いた。彼らは誰一人、グレンの出身や年齢に言及しなかった。ただの従者である彼にも気さくに話をふってくれた。あの宝石店での出来事を除けば、とても有意義な時間だった。

 目から鱗が落ちた気分だった。憑き物が取れたように体が軽くなった。だが同時に、グレンの過去のおこないが自分を追い詰め始めた瞬間だった。
 彼は本当はわかっていた。アルベルトの評価は全て、彼の見た目の評価以外は全て、レミリアの功績からなるものだったことに。

「婚約者なら殿下を支えるのは当たり前のことです」

 在学中、グレンは自分に言い聞かせるように言っていた。支えるどころか全てレミリアがやっていたようなものだったのに。アルベルトは元々能力が低いわけではない。自分でやって出来ないことなんてないはずなのだ。

「レミリアがいなくなった今、お前がやって当たり前だろ!?」

 評価が下がり続けるアルベルトは怒りに任せてグレンに八つ当たりをした。つい先ほど、王からの叱責を受けたばかりで虫の居所が悪いらしい。

「申し訳ありません」
「フン! その程度だからユリアにも選ばれないんだ」

 そしてこんなに頭の悪い男をユリアが愛し選んだのかと思うと、彼女を想っていた自分を恥ずかしく感じ始めていた。

(結局彼女も男を金と地位で見る令嬢達と何の変りもないじゃないか)

 今となっては王国にとって聖女ユリアはただの金食い虫。近い未来、どれだけ聖女としての力を発揮できるのかもわからない。国王はひっそりとユリアに代わる聖女を探し始める始末だった。

「ねぇグレン……アルが最近冷たいの。この間もせっかく綺麗な石を見つけたのに話も聞いてくれなくって……」

 そういってそっと体をグレンにくっつけた。

「王宮の人達……全然話しかけてもくれないし……皆厳しくて……やっぱり平民だからかな……」

(また平民出身の話か)

 それを言えばユリアはこちらが同情すると知っている。

「私……寂しいの……」

 今度はグレンの腕に胸を当て始めた。

 以前なら嬉しくてたまらない彼女の行動が今では吐き毛を催すようになるとは。

「未来の王太子妃への当たり前の対応です」 

 そう言い放つと、急いで腕から抜け出した。誰かに見られたら一大事だ。そのようなこともわからない人間の側にいるのはリスクでしかない。
 
「急いでおりますので失礼」

 アルベルトの評価が下がるのに比例して、グレンの評価も下がり始めていた。

「従者の出来が悪いから」

 グレンのことをよく知らない人からの評価などそんなものだった。

(レミリア様は全てわかってらっしゃったのだ)

 あの冷めたような瞳で見られたのは1度や2度ではない。グレンは過去の自分の言動を思い出して恥ずかしさのあまり叫びだしたくなった。

(ああ、馬鹿な奴だと思われていただろうな……)

 実際レミリアは馬鹿なだと思っていた。そしてそれはレミリアだけではない。王太子とその取り巻きは全員馬鹿だと思われていることにはまだ気づいていなかった。

 グレンはレミリアに手紙を書いた。誠心誠意の謝罪文だった。彼女だけは自分の苦労を理解してくれるだろうと思ったからだった。

 だがその手紙は読まれることすらなく手元に戻ってきた。

「悪いけど、読む気にならないわ」

 フロイドから手紙の封筒を見せられただけで、レミリアは顔をしかめてそれに触りもしなかった。

 自分のしてきたことを考えれば虫が良すぎる。その事に気が付いただけでも彼は成長した。

 もう後の祭りだが。

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

婚約破棄されたので、慰謝料で「国」を買うことにしました。~知識ゼロの私ですが、謎の魔導書(AI)に従ったら、いつの間にか王家のオーナーに~

ジョウジ
ファンタジー
「セレスティア、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーで王子に断罪された公爵令嬢セレスティア。 慰謝料も貰えず、腹いせに立ち寄った古道具屋のワゴンセール。 そこでたった銅貨数枚(100円)で買った「黒い手鏡(スマホ)」を起動した瞬間、運命が変わる。 『警告。3年後の国家破綻およびマスターの処刑確率は99.9%です』 「はあ!? 死ぬのは嫌! それに、戦争が起きたら推し(アルド様)が死んじゃうじゃない!」 知識ゼロ、あるのは魔力と行動力、そして推しへの愛だけ。 パニックになった彼女は、スマホに宿るAI(ジェミニ)の極悪な経済作戦を、自分に都合よく「超訳」して実行に移す。 「敵対的買収……? 要するに、お店の借金を肩代わりして『オーナー』になれば、商品は全部タダ(私のもの)ってことね!?」 これは、内心ガクブルの悪役令嬢が、AIの指示を「素敵なお買い物」と勘違いしたまま国を経済支配し、 結果的に「慈悲深い聖女」「経営の天才」と崇められていく、痛快・勘違い無双コメディ! ※全10話の短期集中連載です。お正月のお供にどうぞ! ※テンポを重視してダイジェスト10話版となります。反響があれば長編の執筆を開始します! ※本作は、物語の構想・執筆補助にAI技術を活用し制作されました。 ※小説家になろう・カクヨムにも投稿

王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした

由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。 無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。 再び招かれたのは、かつて母を追放した国。 礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。 これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

婚約破棄されたので隣国で働きます ~追放侯爵令嬢、才覚だけで王妃候補に成り上がる~

鷹 綾
恋愛
内容紹介 王宮改革は、英雄の一声では成し遂げられない。 王太子に招かれ、王宮顧問として改革に携わることになった ルビー・エルヴェール。 彼女が選んだ道は、力で押し切る改革でも、敵を断罪する粛清でもなかった。 評価制度の刷新、情報公開、説明責任、緊急時の判断、責任の分配―― 一つひとつの制度は正しくても、人の恐れや保身が、改革を歪めていく。 噂に揺れ、信頼が試され、 「正しさ」と「速さ」、 「個人の覚悟」と「組織の持続性」が、幾度も衝突する。 それでもルビーは、問い続ける。 ――制度は、誰のためにあるのか。 ――信頼とは、守るものか、耐えるものか。 ――改革者は、いつ去るべきなのか。 やがて彼女は、自らが築いた制度が 自分なしでも動き始めたことを確かめ、静かに王宮を去る。 残されたのは、名前の残らない改革。 英雄のいない成功。 だが確かに「生き続ける仕組み」。 これは、 誰かが称えられるための物語ではない。 考えることを許し、責任を分かち合う―― その文化を残すための、40話の改革譚。 静かで、重く、そして誠実な “大人のための王宮改革ファンタジー”。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

処理中です...