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22 従者
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一番最初に現実を理解したのはグレンだった。
アルベルトの従者グレンは元々頭のいい男だ。努力も怠らなかったので、貧乏子爵家の三男坊でありながら王太子の従者にまで上り詰めた。
最近、彼は悩んでいた。度々主人に対してある言葉が頭に浮かぶようになってしまったのだ。
(こいつは馬鹿か?)
学園を卒業後、薄っすらと脳裏をかすめていたものが、ベルーガ帝国訪問を機にそれはハッキリとしたものになっていった。
彼にとって他国の訪問は初めての刺激でいっぱいだった。そして自分がいかに狭い世界で生きているのかを知った。パーティで出会った、他国の高官達の度量の広さにも驚いた。彼らは誰一人、グレンの出身や年齢に言及しなかった。ただの従者である彼にも気さくに話をふってくれた。あの宝石店での出来事を除けば、とても有意義な時間だった。
目から鱗が落ちた気分だった。憑き物が取れたように体が軽くなった。だが同時に、グレンの過去のおこないが自分を追い詰め始めた瞬間だった。
彼は本当はわかっていた。アルベルトの評価は全て、彼の見た目の評価以外は全て、レミリアの功績からなるものだったことに。
「婚約者なら殿下を支えるのは当たり前のことです」
在学中、グレンは自分に言い聞かせるように言っていた。支えるどころか全てレミリアがやっていたようなものだったのに。アルベルトは元々能力が低いわけではない。自分でやって出来ないことなんてないはずなのだ。
「レミリアがいなくなった今、お前がやって当たり前だろ!?」
評価が下がり続けるアルベルトは怒りに任せてグレンに八つ当たりをした。つい先ほど、王からの叱責を受けたばかりで虫の居所が悪いらしい。
「申し訳ありません」
「フン! その程度だからユリアにも選ばれないんだ」
そしてこんなに頭の悪い男をユリアが愛し選んだのかと思うと、彼女を想っていた自分を恥ずかしく感じ始めていた。
(結局彼女も男を金と地位で見る令嬢達と何の変りもないじゃないか)
今となっては王国にとって聖女ユリアはただの金食い虫。近い未来、どれだけ聖女としての力を発揮できるのかもわからない。国王はひっそりとユリアに代わる聖女を探し始める始末だった。
「ねぇグレン……アルが最近冷たいの。この間もせっかく綺麗な石を見つけたのに話も聞いてくれなくって……」
そういってそっと体をグレンにくっつけた。
「王宮の人達……全然話しかけてもくれないし……皆厳しくて……やっぱり平民だからかな……」
(また平民出身の話か)
それを言えばユリアはこちらが同情すると知っている。
「私……寂しいの……」
今度はグレンの腕に胸を当て始めた。
以前なら嬉しくてたまらない彼女の行動が今では吐き毛を催すようになるとは。
「未来の王太子妃への当たり前の対応です」
そう言い放つと、急いで腕から抜け出した。誰かに見られたら一大事だ。そのようなこともわからない人間の側にいるのはリスクでしかない。
「急いでおりますので失礼」
アルベルトの評価が下がるのに比例して、グレンの評価も下がり始めていた。
「従者の出来が悪いから」
グレンのことをよく知らない人からの評価などそんなものだった。
(レミリア様は全てわかってらっしゃったのだ)
あの冷めたような瞳で見られたのは1度や2度ではない。グレンは過去の自分の言動を思い出して恥ずかしさのあまり叫びだしたくなった。
(ああ、馬鹿な奴だと思われていただろうな……)
実際レミリアは馬鹿な奴らだと思っていた。そしてそれはレミリアだけではない。王太子とその取り巻きは全員馬鹿だと思われていることにはまだ気づいていなかった。
グレンはレミリアに手紙を書いた。誠心誠意の謝罪文だった。彼女だけは自分の苦労を理解してくれるだろうと思ったからだった。
だがその手紙は読まれることすらなく手元に戻ってきた。
「悪いけど、読む気にならないわ」
フロイドから手紙の封筒を見せられただけで、レミリアは顔をしかめてそれに触りもしなかった。
自分のしてきたことを考えれば虫が良すぎる。その事に気が付いただけでも彼は成長した。
もう後の祭りだが。
アルベルトの従者グレンは元々頭のいい男だ。努力も怠らなかったので、貧乏子爵家の三男坊でありながら王太子の従者にまで上り詰めた。
最近、彼は悩んでいた。度々主人に対してある言葉が頭に浮かぶようになってしまったのだ。
(こいつは馬鹿か?)
学園を卒業後、薄っすらと脳裏をかすめていたものが、ベルーガ帝国訪問を機にそれはハッキリとしたものになっていった。
彼にとって他国の訪問は初めての刺激でいっぱいだった。そして自分がいかに狭い世界で生きているのかを知った。パーティで出会った、他国の高官達の度量の広さにも驚いた。彼らは誰一人、グレンの出身や年齢に言及しなかった。ただの従者である彼にも気さくに話をふってくれた。あの宝石店での出来事を除けば、とても有意義な時間だった。
目から鱗が落ちた気分だった。憑き物が取れたように体が軽くなった。だが同時に、グレンの過去のおこないが自分を追い詰め始めた瞬間だった。
彼は本当はわかっていた。アルベルトの評価は全て、彼の見た目の評価以外は全て、レミリアの功績からなるものだったことに。
「婚約者なら殿下を支えるのは当たり前のことです」
在学中、グレンは自分に言い聞かせるように言っていた。支えるどころか全てレミリアがやっていたようなものだったのに。アルベルトは元々能力が低いわけではない。自分でやって出来ないことなんてないはずなのだ。
「レミリアがいなくなった今、お前がやって当たり前だろ!?」
評価が下がり続けるアルベルトは怒りに任せてグレンに八つ当たりをした。つい先ほど、王からの叱責を受けたばかりで虫の居所が悪いらしい。
「申し訳ありません」
「フン! その程度だからユリアにも選ばれないんだ」
そしてこんなに頭の悪い男をユリアが愛し選んだのかと思うと、彼女を想っていた自分を恥ずかしく感じ始めていた。
(結局彼女も男を金と地位で見る令嬢達と何の変りもないじゃないか)
今となっては王国にとって聖女ユリアはただの金食い虫。近い未来、どれだけ聖女としての力を発揮できるのかもわからない。国王はひっそりとユリアに代わる聖女を探し始める始末だった。
「ねぇグレン……アルが最近冷たいの。この間もせっかく綺麗な石を見つけたのに話も聞いてくれなくって……」
そういってそっと体をグレンにくっつけた。
「王宮の人達……全然話しかけてもくれないし……皆厳しくて……やっぱり平民だからかな……」
(また平民出身の話か)
それを言えばユリアはこちらが同情すると知っている。
「私……寂しいの……」
今度はグレンの腕に胸を当て始めた。
以前なら嬉しくてたまらない彼女の行動が今では吐き毛を催すようになるとは。
「未来の王太子妃への当たり前の対応です」
そう言い放つと、急いで腕から抜け出した。誰かに見られたら一大事だ。そのようなこともわからない人間の側にいるのはリスクでしかない。
「急いでおりますので失礼」
アルベルトの評価が下がるのに比例して、グレンの評価も下がり始めていた。
「従者の出来が悪いから」
グレンのことをよく知らない人からの評価などそんなものだった。
(レミリア様は全てわかってらっしゃったのだ)
あの冷めたような瞳で見られたのは1度や2度ではない。グレンは過去の自分の言動を思い出して恥ずかしさのあまり叫びだしたくなった。
(ああ、馬鹿な奴だと思われていただろうな……)
実際レミリアは馬鹿な奴らだと思っていた。そしてそれはレミリアだけではない。王太子とその取り巻きは全員馬鹿だと思われていることにはまだ気づいていなかった。
グレンはレミリアに手紙を書いた。誠心誠意の謝罪文だった。彼女だけは自分の苦労を理解してくれるだろうと思ったからだった。
だがその手紙は読まれることすらなく手元に戻ってきた。
「悪いけど、読む気にならないわ」
フロイドから手紙の封筒を見せられただけで、レミリアは顔をしかめてそれに触りもしなかった。
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もう後の祭りだが。
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