49 / 63
49 飛竜
しおりを挟む
辺境領では無事に結界の代わりになる防御魔術を張り終えることができた。かなりの人数が辺境伯を頼って逃げてきたので、それなりの広さを必要としたが、大賢者とその弟子のファンからの貢物の魔石が潤沢にあってのでどうにか防御都市と呼べる空間を作り上げることができた。
「これでひとまず安心だな」
「本当に感謝申し上げます」
辺境伯は膝をつき頭を垂れた。
「しばらくは大丈夫だろうから、今のうちに体制を整えることをオススメするよ」
レミリアとアレンが防御魔法の壁を一生懸命作り上げてる最中、飛竜達が近くの森で多くの魔物を捉えたのだ。
「美味しい燻製肉をたくさん作っておきますわい!」
そうして辺境伯はガハハといつもの笑い声を上げたのだった。
辺境領では魔物を食べる文化があった。魔物の肉の臭みを抜く技術もあり、またそれを保存する術も持ち合わせていた。
突然、ボン! という爆発音が聞こえた。
「て、敵襲ー!!!」
見張り番達の声が響く。
(あの防御魔法が破られた!?)
アレンもレミリアも急いで口笛を吹き飛竜達を呼び寄せた。並みの魔物じゃあの防御魔法に傷をつけることすらできない。それを破壊できるということは、飛竜並みに上位の魔物以外ありえなかった。
急いで音の出所に向かうと、バリバリと敗れた防御魔法を腕を組んで見ているジークボルトが立っていた。
(……先生!?)
しかしレミリアは違和感を覚えた。姿はそっくりだが、どうも雰囲気が違うのだ。遠くからでもそう感じるほど、ジークボルトとは別のオーラを感じた。
隣に立つアレンが少しホッとした顔で、だがやれやれと額を抑えている。
「大丈夫だ」
ニコリとレミリアを安心させようと笑ったのがわかった。それからフロイドが口をあんぐりと開けていたので、そっと顎を上に押し上げていた。
「すまない皆。私の知り合いだ。防御魔法はすぐに直す」
「ふん! こんなのモノのどこが防御魔法だ」
不遜な態度のジークボルトの姿をしたナニカが、ブツブツと文句を吐きながらアレンの方へ近づいた。
「全くお前は! こんなくだらんことに時間を使うな!」
「まあそう言うなよ。俺が好きでしてるんだから」
アレンも苦笑いしながらその男に近づく。
「紹介する。これ、大賢者の飛竜、ヨルムだ」
「へ?」
飛竜と呼ばれたジークボルトは偉そうに腕を組みなおした。
「コイツが新しい窓口で、コッチが新しい弟子か」
値踏みするようにしげしげと見つめ、
「悪くないな。流石大賢者様」
アレンではなく、本物の自分の主人を恥ずかしげもなく褒め始めた。
「やはり見る目は本物だ。大賢者にわからぬことなどないのだろう。いやはや素晴らしいの一言に尽きる」
自分の言葉に納得するようにウンウンと頷いていた。
「そんでお前は何しにきたんだよ」
「む! なんだその態度は! 私は手伝いに行くよう言われたのだ!」
どうやら大賢者ジークボルトはマリロイド王国で何が起こっているのか把握しているようだった。
「……何かあるんだな」
「そうだ。まだこれから何かが起こるぞ」
「結界の完全な崩壊?」
「そんなモノは序の口だろう」
実際、結界はもう機能していないと言っていい。入れるところから魔物はじゃんじゃんと入ってきている。いい餌場だと認識されている。
「私がここにいてやろう」
ちょうどその時、飛竜達が上空からやってきた。
「リューク!?」
レミリアはリュークがこれほど警戒している姿を初めてみた。レミリアの盾になろうと急いで彼女の前に来て牙を剥き出しにして威嚇する。
だがアレンの飛竜は偽ジークボルトに頭を擦り付けていた。
「うんうん。なかなかいい関係が築けているようだな」
満足そうに微笑む姿は、ジークボルトの笑顔とまた違った。
「あの、その、飛竜って……人の姿になれるのね」
リュークをなだめながら、恐る恐る、確認するように尋ねる。
(この飛竜、アレンが前におっかない、っていってたやつよね……)
「なんだ聞いてないのか!」
そう言ってアレンの方を向き直した。兄弟子として何を教えているのだと言いたげな目を向ける。
「お前、なかなか帰ってこねぇんだもん」
「主人の命があったのだ! しかたなかろう!」
そうしてレミリアとリュークの方へ向き直った。
「まあ千年も生きれば体の形くらい変えられる。それが我々という種族だ」
得意気に答えた。
「じゃあこの子はまだ無理ねぇ」
「当たり前だ! まだ生まれたてではないか!」
(さっきまで魔物追いかけまわしてたんだけど……)
千年以上生きている竜から見ればまだまだ赤ん坊のように見えるらしかった。そうしてゆっくりリュークに近づくと、そっと首元を撫でた。
「うんうん。いい子だな」
リュークはまだ少し緊張していたが、ヨルムが敵ではないと理解したらしく大人しくなった。
「それで、ヨルムがここにいるって話だが」
アレンが途中になっていた話を戻した。
「ああ。お前達人間はすぐに死ぬからな。私がここにいれば魔物も近寄ってはこれまい」
自信満々に宣言する。
「別にそれは俺達の飛竜でも同じだろ」
「む! 失礼だな! 赤子と大人を一緒にするな!」
小物と一緒にされて不愉快だと言うばかりに口をへの字にした。
「結界が崩壊したらすぐにでも魔物の王都侵攻が始まるぞ」
そうして真面目な顔へと変わった。
「今までのものとは全くの別種と思っていい」
それはこの王国の崩壊宣言と同じだった。
「これでひとまず安心だな」
「本当に感謝申し上げます」
辺境伯は膝をつき頭を垂れた。
「しばらくは大丈夫だろうから、今のうちに体制を整えることをオススメするよ」
レミリアとアレンが防御魔法の壁を一生懸命作り上げてる最中、飛竜達が近くの森で多くの魔物を捉えたのだ。
「美味しい燻製肉をたくさん作っておきますわい!」
そうして辺境伯はガハハといつもの笑い声を上げたのだった。
辺境領では魔物を食べる文化があった。魔物の肉の臭みを抜く技術もあり、またそれを保存する術も持ち合わせていた。
突然、ボン! という爆発音が聞こえた。
「て、敵襲ー!!!」
見張り番達の声が響く。
(あの防御魔法が破られた!?)
アレンもレミリアも急いで口笛を吹き飛竜達を呼び寄せた。並みの魔物じゃあの防御魔法に傷をつけることすらできない。それを破壊できるということは、飛竜並みに上位の魔物以外ありえなかった。
急いで音の出所に向かうと、バリバリと敗れた防御魔法を腕を組んで見ているジークボルトが立っていた。
(……先生!?)
しかしレミリアは違和感を覚えた。姿はそっくりだが、どうも雰囲気が違うのだ。遠くからでもそう感じるほど、ジークボルトとは別のオーラを感じた。
隣に立つアレンが少しホッとした顔で、だがやれやれと額を抑えている。
「大丈夫だ」
ニコリとレミリアを安心させようと笑ったのがわかった。それからフロイドが口をあんぐりと開けていたので、そっと顎を上に押し上げていた。
「すまない皆。私の知り合いだ。防御魔法はすぐに直す」
「ふん! こんなのモノのどこが防御魔法だ」
不遜な態度のジークボルトの姿をしたナニカが、ブツブツと文句を吐きながらアレンの方へ近づいた。
「全くお前は! こんなくだらんことに時間を使うな!」
「まあそう言うなよ。俺が好きでしてるんだから」
アレンも苦笑いしながらその男に近づく。
「紹介する。これ、大賢者の飛竜、ヨルムだ」
「へ?」
飛竜と呼ばれたジークボルトは偉そうに腕を組みなおした。
「コイツが新しい窓口で、コッチが新しい弟子か」
値踏みするようにしげしげと見つめ、
「悪くないな。流石大賢者様」
アレンではなく、本物の自分の主人を恥ずかしげもなく褒め始めた。
「やはり見る目は本物だ。大賢者にわからぬことなどないのだろう。いやはや素晴らしいの一言に尽きる」
自分の言葉に納得するようにウンウンと頷いていた。
「そんでお前は何しにきたんだよ」
「む! なんだその態度は! 私は手伝いに行くよう言われたのだ!」
どうやら大賢者ジークボルトはマリロイド王国で何が起こっているのか把握しているようだった。
「……何かあるんだな」
「そうだ。まだこれから何かが起こるぞ」
「結界の完全な崩壊?」
「そんなモノは序の口だろう」
実際、結界はもう機能していないと言っていい。入れるところから魔物はじゃんじゃんと入ってきている。いい餌場だと認識されている。
「私がここにいてやろう」
ちょうどその時、飛竜達が上空からやってきた。
「リューク!?」
レミリアはリュークがこれほど警戒している姿を初めてみた。レミリアの盾になろうと急いで彼女の前に来て牙を剥き出しにして威嚇する。
だがアレンの飛竜は偽ジークボルトに頭を擦り付けていた。
「うんうん。なかなかいい関係が築けているようだな」
満足そうに微笑む姿は、ジークボルトの笑顔とまた違った。
「あの、その、飛竜って……人の姿になれるのね」
リュークをなだめながら、恐る恐る、確認するように尋ねる。
(この飛竜、アレンが前におっかない、っていってたやつよね……)
「なんだ聞いてないのか!」
そう言ってアレンの方を向き直した。兄弟子として何を教えているのだと言いたげな目を向ける。
「お前、なかなか帰ってこねぇんだもん」
「主人の命があったのだ! しかたなかろう!」
そうしてレミリアとリュークの方へ向き直った。
「まあ千年も生きれば体の形くらい変えられる。それが我々という種族だ」
得意気に答えた。
「じゃあこの子はまだ無理ねぇ」
「当たり前だ! まだ生まれたてではないか!」
(さっきまで魔物追いかけまわしてたんだけど……)
千年以上生きている竜から見ればまだまだ赤ん坊のように見えるらしかった。そうしてゆっくりリュークに近づくと、そっと首元を撫でた。
「うんうん。いい子だな」
リュークはまだ少し緊張していたが、ヨルムが敵ではないと理解したらしく大人しくなった。
「それで、ヨルムがここにいるって話だが」
アレンが途中になっていた話を戻した。
「ああ。お前達人間はすぐに死ぬからな。私がここにいれば魔物も近寄ってはこれまい」
自信満々に宣言する。
「別にそれは俺達の飛竜でも同じだろ」
「む! 失礼だな! 赤子と大人を一緒にするな!」
小物と一緒にされて不愉快だと言うばかりに口をへの字にした。
「結界が崩壊したらすぐにでも魔物の王都侵攻が始まるぞ」
そうして真面目な顔へと変わった。
「今までのものとは全くの別種と思っていい」
それはこの王国の崩壊宣言と同じだった。
33
あなたにおすすめの小説
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
追放された悪役令嬢は、辺境の谷で魔法農業始めました~気づけば作物が育ちすぎ、国までできてしまったので、今更後悔されても知りません~
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リーゼリット・フォン・アウグストは、婚約者であるエドワード王子と、彼に媚びるヒロイン・リリアーナの策略により、無実の罪で断罪される。「君を辺境の地『緑の谷』へ追放する!」――全てを失い、絶望の淵に立たされたリーゼリット。しかし、荒れ果てたその土地は、彼女に眠る真の力を目覚めさせる場所だった。
幼い頃から得意だった土と水の魔法を農業に応用し、無口で優しい猟師カイルや、谷の仲間たちと共に、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。やがて、その成功は私欲にまみれた王国を揺るがすほどの大きなうねりとなり……。
これは、絶望から立ち上がり、農業で成り上がり、やがては一国を築き上げるに至る、一人の令嬢の壮大な逆転物語。爽快なざまぁと、心温まるスローライフ、そして運命の恋の行方は――?
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる