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48 地下牢
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カイルは今も地下牢で生きていた。食事は1日1食、牢の扉についている食事用の窓から投げ入れられるパンだけだった。日の光もしばらく浴びていない。最後に人に会ったのは、自分の耳が切り取られた時だ。
その人物はカイルも知っている男だった。父親の部下の1人だ。父親と騎士団長のポジションを争ったと聞いている。優秀な年下の騎士団長に唯一反抗的な男だった。
「……助けに来てくれたのか……!」
「ハハハ! 本当に滑稽だな! あの男から生まれたのがコレとは!」
それだけ言って、カイルの耳を刃物で切り取った。泣き叫ぶカイルを地面に叩きつけ、歪んだ笑みを浮かべながら牢から出て行った。
カイルは時間だけはあったので、どうしてこうなったのか頭を巡らせていた。幼い頃から両親に愛され幸せだった。勉強や魔術が出来なくても、剣術を頑張れば2人とも褒めてくれた。
学園に入ってからは毎日が幸せだった。愛する人に出会えたからだ。ユリアはいつも自分に欲しい言葉をくれた。
「勉強や魔術が不得意だからって貴方が頑張ってないことにはならないわ」
「1つのことを極めるってカッコイイじゃない!」
だからユリアが悲しそうにしていたら力になりたかった。だがカイルにとっても、最初はレミリアがユリアを虐めているなんて信じられなかった。レミリアはいつも公平だった。正しい行いをした。平民だからという理由で誰かを虐げるとは思えなかった。
「カイル様、バランスも大切です。勉強や魔術もきっと貴方の剣術を引き立たせると思いますよ」
レミリアはカイルの欲しい答えはくれなかった。
「カイルも信じてくれないのね……レミリア様は私がカイルや他の人と仲良くするのが気に食わないみたいなのよ……」
あのレミリアにも弱味がある、人間味があるのだと感じて彼は心底安心した。
(彼女の言葉がいつも正しいとは限らない)
そうやってカイルは自信をつけていった。ユリア以外からの評価なんてどうでも良くなっていった。
(ああ、この辺りからだ。この辺りからおかしくなった)
いつからか、カイルは他の学生達に煙たがれるようになっていた。
「皆カイルが強すぎて萎縮してるんだわ!」
ユリアに褒められて誇らしかった。だから調子に乗ってユリアを虐めるレミリアに剣を抜いた。
(一瞬であの剣が粉々にされたなぁ)
それはカイルが大事にしていた剣だった。毎日丁寧に磨け上げていたお気に入りだった。
(あの後魔法で腕ごと捻りあげられたっけ……)
ユリアは魔術を使うなんて卑怯だと怒ってくれた。それに便乗して、実践なら自分は即死だったという事実から目を逸らした。
「オレ、何をしていたんだろう」
ユリアの言葉を本気でそのまま信じていたのはこのカイルだけだった。他の3人はユリアの言葉に嘘が混じっている事には気が付いていた。だからこそカイルは、誰よりもユリアがアルベルトどころかこの国を裏切っている事実が辛くて仕方なかった。
自分はユリアに騙されてとんでもないことをしてしまった。
(オレがユリアを信じたせいで何もかもおかしくなったんだ……レミリア嬢は何も悪くなかった……)
グレンも言っていた。自分達のおこないは間違いだったと。きちんとレミリアに謝罪するべきだと。だがそう必死に説得するグレンを、カイルは剣を抜いて黙らせた。
グレンが言った通りにレミリアに謝罪していれば、大賢者や帝国からの支援を素早く受けることができて、騎士団長である父親の助けになったかもしれなかった。もしもあの日、ユリアの裏切りを知ったあの日、父親が王都にいれば何か変わっていたかもしれない。
だが、今更後悔しても、この地下牢からは出ることができなかった。
もう涙も枯れ果てたと思った時、またあの男がやってきた。カイルの耳を切り裂いた男だ。
「おい! お前の父親が死んだぞ! それも母親に殺されて! 傑作だぁ~!」
わざわざその息子を嘲笑いにきたのだ。カイルの顔はどんどん青ざめていった。
(嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ)
「お前の耳が役に立ったぞ! 母親は可愛い息子を助けようと必死だ!」
そう言ってもう片方の耳も切り落とそうと剣を取り出した。
「この耳を持っていったらあの男の妻も奪えるかもしれんなぁ」
男の下品な笑い声が耳の奥に張り付いてくる。
(オレのせいで母上が父上を殺した? オレがユリアを信じたから?)
「ウワァァァァァァ!!!」
カイルは精一杯力を振り絞った。男はまだカイルに力が残っていたことに驚いた。油断していたのだ。そうして奪った剣でカイルはその男の首を刎ねた。
この日、カイルは初めて人を殺した。
その人物はカイルも知っている男だった。父親の部下の1人だ。父親と騎士団長のポジションを争ったと聞いている。優秀な年下の騎士団長に唯一反抗的な男だった。
「……助けに来てくれたのか……!」
「ハハハ! 本当に滑稽だな! あの男から生まれたのがコレとは!」
それだけ言って、カイルの耳を刃物で切り取った。泣き叫ぶカイルを地面に叩きつけ、歪んだ笑みを浮かべながら牢から出て行った。
カイルは時間だけはあったので、どうしてこうなったのか頭を巡らせていた。幼い頃から両親に愛され幸せだった。勉強や魔術が出来なくても、剣術を頑張れば2人とも褒めてくれた。
学園に入ってからは毎日が幸せだった。愛する人に出会えたからだ。ユリアはいつも自分に欲しい言葉をくれた。
「勉強や魔術が不得意だからって貴方が頑張ってないことにはならないわ」
「1つのことを極めるってカッコイイじゃない!」
だからユリアが悲しそうにしていたら力になりたかった。だがカイルにとっても、最初はレミリアがユリアを虐めているなんて信じられなかった。レミリアはいつも公平だった。正しい行いをした。平民だからという理由で誰かを虐げるとは思えなかった。
「カイル様、バランスも大切です。勉強や魔術もきっと貴方の剣術を引き立たせると思いますよ」
レミリアはカイルの欲しい答えはくれなかった。
「カイルも信じてくれないのね……レミリア様は私がカイルや他の人と仲良くするのが気に食わないみたいなのよ……」
あのレミリアにも弱味がある、人間味があるのだと感じて彼は心底安心した。
(彼女の言葉がいつも正しいとは限らない)
そうやってカイルは自信をつけていった。ユリア以外からの評価なんてどうでも良くなっていった。
(ああ、この辺りからだ。この辺りからおかしくなった)
いつからか、カイルは他の学生達に煙たがれるようになっていた。
「皆カイルが強すぎて萎縮してるんだわ!」
ユリアに褒められて誇らしかった。だから調子に乗ってユリアを虐めるレミリアに剣を抜いた。
(一瞬であの剣が粉々にされたなぁ)
それはカイルが大事にしていた剣だった。毎日丁寧に磨け上げていたお気に入りだった。
(あの後魔法で腕ごと捻りあげられたっけ……)
ユリアは魔術を使うなんて卑怯だと怒ってくれた。それに便乗して、実践なら自分は即死だったという事実から目を逸らした。
「オレ、何をしていたんだろう」
ユリアの言葉を本気でそのまま信じていたのはこのカイルだけだった。他の3人はユリアの言葉に嘘が混じっている事には気が付いていた。だからこそカイルは、誰よりもユリアがアルベルトどころかこの国を裏切っている事実が辛くて仕方なかった。
自分はユリアに騙されてとんでもないことをしてしまった。
(オレがユリアを信じたせいで何もかもおかしくなったんだ……レミリア嬢は何も悪くなかった……)
グレンも言っていた。自分達のおこないは間違いだったと。きちんとレミリアに謝罪するべきだと。だがそう必死に説得するグレンを、カイルは剣を抜いて黙らせた。
グレンが言った通りにレミリアに謝罪していれば、大賢者や帝国からの支援を素早く受けることができて、騎士団長である父親の助けになったかもしれなかった。もしもあの日、ユリアの裏切りを知ったあの日、父親が王都にいれば何か変わっていたかもしれない。
だが、今更後悔しても、この地下牢からは出ることができなかった。
もう涙も枯れ果てたと思った時、またあの男がやってきた。カイルの耳を切り裂いた男だ。
「おい! お前の父親が死んだぞ! それも母親に殺されて! 傑作だぁ~!」
わざわざその息子を嘲笑いにきたのだ。カイルの顔はどんどん青ざめていった。
(嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ)
「お前の耳が役に立ったぞ! 母親は可愛い息子を助けようと必死だ!」
そう言ってもう片方の耳も切り落とそうと剣を取り出した。
「この耳を持っていったらあの男の妻も奪えるかもしれんなぁ」
男の下品な笑い声が耳の奥に張り付いてくる。
(オレのせいで母上が父上を殺した? オレがユリアを信じたから?)
「ウワァァァァァァ!!!」
カイルは精一杯力を振り絞った。男はまだカイルに力が残っていたことに驚いた。油断していたのだ。そうして奪った剣でカイルはその男の首を刎ねた。
この日、カイルは初めて人を殺した。
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