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第一章 千年後の世界へ
第3話 千年後
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呆然としているメルディの前で、青年達は心配そうに目を見合わせていた。
「……大丈夫?」
「おい……」
気の毒そうな視線がメルディに向かう。
(大丈夫? 何が? 私が?)
混乱した頭を必死で元に戻そうと、止まっていた呼吸を再開し、目をぱちぱちとさせる。どんなこともなんとかなる。そうやって彼女は修行を乗り越えてきた。
(なんのこれしき……だわ!)
これも師匠の滅茶苦茶な修行の一つだと思えばなんのその。というか、本当にその可能性だってあるとさえメルディは考え始めていた。
(だってあの師匠のことだもん)
それが意外ではないほど、とんでもない修行はこれまでも散々あった。
「ご親切にありがとう。……実は少し困ったことになっちゃってて、いくつか教えてもらいたいことがあるんだけど」
「もちろん!」
そう言いながらも茶髪の青年は、彼女が質問するより先に自分の疑問を投げかけてきた。なにやらワクワクしているのが伝わってくる。
「あ! オレ、ユーリ。こっちのちょっと愛想の悪い金髪はエリオ。この街で大学生とトレハンやってるの。おねーさんのお名前は? なんでココに?」
そう言えばまだ自己紹介もしていなかったとお互い少し慌てた気持ちになっていた。
(ダイガクセイ? トレハン? この国の何かの役職名かな?)
人懐こそうなユーリと少し気難しそうなエリオの視線を受け、メルディは姿勢をただし礼儀正しく答えようと務めた。
「私はメルディ。大魔法使いレオナルド・マグヌスの弟子をしています。転移災害にあっちゃってココに……」
「え……?」
二人の声色が曇り、困惑と驚きと気にかけるような視線に変わっていった。自分のことを心配してくれる人がいるという状況に慣れないせいか、メルディは別に大したことではないですよ、と余裕ぶった手振りになる。
「ココってどこかしら? キルケの街からは遠い? セレスタ王国にあるんだけど」
彼女の師匠であるレオナルドは魔法使い業界では超が付くほど有名人。実力も、そして変わり者具合も。セレスタ王国も半世紀前から戦争すれば負けなしでブイブイいわせていた。ここが小国であっても名前くらいは聞いたことがあるだろうと思いつつ、二人の答えをドキドキと待っている。
「……!!!」
「うわぁぁぁ! すごい! すごい! あの手紙は本物だったんだ!!!」
驚いて声もでないエリオと興奮して手を横にブンブン振っているユーリ。そしてまたしてもわけがわからない状況になっているメルディはまたも口がポカンと開いている。
「ああ! ごめんね! 勝手に盛り上がっちゃって……えーっとお答えします!」
ウォホン! ともったいつけたように咳払いをした後、ユーリがハッキリとした声で信じられないことを言った。
「ココはセレスタの街の一つ、名前はキルケ。だけどもう王国じゃないんだ。随分前に共和制に移行してて。名前だけは残ってるけど」
「え? ……それってどういう……」
呼吸が早くなる。だけど二人には決してバレないように注意した。他人に弱い自分を見せることは彼女にとってかなりリスクが高い行為だ。とはいえ、流石に表情が引き攣っている。
答えを知りたいような知りたくないような……けど今のメルディは知るしかない。
「メルディ、君は千年後の世界にやってきたんだ!」
どうだ! っと、なぜか嬉しそうなユーリが満面の笑みを向けた。その隣にいるエリオは眉を顰めているが。
(ああ、なんてこと)
メルディの胃の中に重いものがのしかかってくる。ズンと体に響き渡ったようだった。
「時空転移……」
ポソリとエリオが呟いた。その言葉に彼女の思考も引っ張られる。
(ただの転移じゃなかったんだ……時空を超えたなんて……)
転移災害という稀な出来事に遭遇したと思ったら、実はさらにレアな事象に巻き込まれていたとは。
「どうやって帰ろう……」
呆然としたまま、完全に中に閉じ込めておけなくなった不安が声となって外へ出てしまっていた。
「あ……ごめんオレ……君にとっては大変なことなのに浮かれちゃって……」
自分はなんて不謹慎で心無い反応をしていたのだろうと、ユーリは大慌てになった後、申し訳さそうにしょぼんと肩を落とした。
「ううん。教えてくれてありがとう。状況が理解できてよかった」
メルディはそんなこと少しも気にしていなかったが、ユーリはそうはいかない。彼女の言葉が気遣いに感じられさらに落ち込んでいく。
「あ、でもなんで私が来たのが千年前ってわかるの?」
その疑問には落ち込んでいるユーリに変わってエリオが答えることにしたようだ。
「俺達はこいつん家の書庫でレオナルド・マグヌスの手紙と思われるものを見つけたんだ。今日、この時間にこの場所に来るよう書かれてた。まあ俺は全然信じてなかったんだが……結果はこうだ」
これまでユーリの一歩後ろにいたエリオだったが、今はメルディを気遣っているようだった。まだ自己嫌悪で落ち込んでいるユーリに関しては、お前が悪いと特にフォローはしない。
「これなんだけど」
ごそごそとユーリが鞄からビニール袋に入れられた古い手紙を取り出し、メルディに手渡す。
「うん。これは師匠が書いた手紙だ」
やっぱり! と、また少し興奮を見せたユーリだったが、反省が続いているのかそれ以上騒ぎはしない。
手紙の文字に目を走らせて、メルディは何か探しているようだった。内容はエリオが言った通り、この手紙を見つけた者へのお願いとして書かれていた。
「あとこれも。封筒の中に入ってたんだ」
手渡された銀のプレートの表面には『メルディへ』と文字が彫られている。少し錆びていたが年数のわりにはかなり綺麗だ。
(……まあ何か仕込んでるんでしょうけど)
指先でにぎりメルディはそのプレートに魔力を込める。
(こういう演出が好きな人だったな~)
それはみるみる形を変えて、小さな鍵へと姿を変えた。
「うわぁ! て、手紙が……!」
今度は手紙か……忙しいな、とメルディは特に驚くでもなく声の方を向く。手紙の文字が浮かび上がりぐにょぐにょと形を変え、どんどん新しい文章が出来上がっていく。
『やあメルディ! 君にとってはさっきぶりかな? 時空転移に巻き込まれるなんてドジを踏んだね! あ、僕は関係ないよ? 僕を疑ったでしょ? 僕はやってないからね! さて本題だ。君はまだ修行途中の身。つまり見習い魔法使い。と言うことで、引き続き修行を続けてもらうよ! それは何かって? それを簡単に教える僕じゃないって君も知っているよね! じゃあまた!』
(ご丁寧なことですこと!)
大魔法使いレオナルド・マグヌスがもしかしたら千年の時を超えて助けに来てくれるかも! とは彼女は全く期待していなかった。彼がこの手紙で言いたかったのは、時空移動は自分のせいじゃないということだ。
「マグヌスってこんな感じなんだ……!」
この手紙に目を輝かせ感動できるユーリの純粋さがメルディは眩しい。どうやら彼は自分の師匠を好いているようだと、物珍しいものを見つけた気分になっている。一方、エリオの方はちょっとひいているのが見て取れた。
(とりあえず、この鍵にあう何かを探せってことね)
ふよふよ浮かばせた鍵を空中でクルクル回しながらメルディはため息をつかずにはいられない。
「ねぇメルディ。これからどうするの?」
「え?」
彼女のため息をこれからの不安から出たものだとユーリは思ったのだ。
「もう君の家はないんだろう?」
「千年も前だもんな」
そう言えばそうだな、とエリオがユーリに相槌をうっている。そしてメルディもその通りだなと思っていた。血の気が引いていくのを感じながら。
「マグヌス屋敷の跡地ならあるけどね」
「跡地か……住めないな。そもそも居住権あんのか? どうなんだそういうの」
「う~~~ん……」
どうにかいい方法はないかとエリオとユーリは真剣に考えていた。千年前からきた人間より、現代人の方がそれを考えるのに適しているだろうとああでもないこうでもない、と。だが表情は険しいままだ。
(そうだ……まずはここで生きていく方法考えなきゃ……)
メルディは孤児だ。弟子入り前はそれは悲惨な生活をしていた。またその生活なんてまっぴらごめんだった。
(い、今鞄に入っている魔獣の素材を売ったらいくらぐらいになるんだろ!? ま、まままずはそれを売って……)
今更パニックになりかけている彼女の表情を見て、また二人は心配そうな顔になっている。そしてメルディを安心させるよう目線を合わせ、
「よければオレらの家にくる? 落ち着くまで居てくれてかまわないよ。どうせ今、オレらくらいしか住んでないし……」
「え!? ……えっ!!?」
だ、男性の家に……!? と、メルディは転移して初めて挙動不審になっていた。大変ありがたい申し出であることはわかっているのだが、
(今の時代ってそれは問題ないことなの!?)
千年経てば価値観も変わるであろうことはメルディにも想像がついた。だがこの驚きを隠すのは難しい。千年前の世界ではマグヌスの屋敷の中で人間は二人だけだったというのに。同世代の男性からの純粋な親切への反応方法が彼女にはわからなかった。
「あ! オレん家は下宿と民泊やってて。まあご時世柄下宿してるのはエリオだけなんだけど、部屋なら他にもあるからさ」
「ミンパク……?」
「宿屋だ」
「ああ!」
エリオの補足でメルディはポンッと手を打った。
こうしてメルディは結局この二人のお世話になることにしたのだった。
(それにしても出来過ぎね)
時空転移は彼女の師匠のせいではないにしろ、このありがたい巡りあわせは師匠が仕組んだものかもしれないなんて考えが頭に浮かぶも……、
(な~んて……師匠が私にこんな気の利いたサービスするわけないか!)
さて、なんとか寝床が確保できたメルディ。次は自活の道を探すことになる。
「……大丈夫?」
「おい……」
気の毒そうな視線がメルディに向かう。
(大丈夫? 何が? 私が?)
混乱した頭を必死で元に戻そうと、止まっていた呼吸を再開し、目をぱちぱちとさせる。どんなこともなんとかなる。そうやって彼女は修行を乗り越えてきた。
(なんのこれしき……だわ!)
これも師匠の滅茶苦茶な修行の一つだと思えばなんのその。というか、本当にその可能性だってあるとさえメルディは考え始めていた。
(だってあの師匠のことだもん)
それが意外ではないほど、とんでもない修行はこれまでも散々あった。
「ご親切にありがとう。……実は少し困ったことになっちゃってて、いくつか教えてもらいたいことがあるんだけど」
「もちろん!」
そう言いながらも茶髪の青年は、彼女が質問するより先に自分の疑問を投げかけてきた。なにやらワクワクしているのが伝わってくる。
「あ! オレ、ユーリ。こっちのちょっと愛想の悪い金髪はエリオ。この街で大学生とトレハンやってるの。おねーさんのお名前は? なんでココに?」
そう言えばまだ自己紹介もしていなかったとお互い少し慌てた気持ちになっていた。
(ダイガクセイ? トレハン? この国の何かの役職名かな?)
人懐こそうなユーリと少し気難しそうなエリオの視線を受け、メルディは姿勢をただし礼儀正しく答えようと務めた。
「私はメルディ。大魔法使いレオナルド・マグヌスの弟子をしています。転移災害にあっちゃってココに……」
「え……?」
二人の声色が曇り、困惑と驚きと気にかけるような視線に変わっていった。自分のことを心配してくれる人がいるという状況に慣れないせいか、メルディは別に大したことではないですよ、と余裕ぶった手振りになる。
「ココってどこかしら? キルケの街からは遠い? セレスタ王国にあるんだけど」
彼女の師匠であるレオナルドは魔法使い業界では超が付くほど有名人。実力も、そして変わり者具合も。セレスタ王国も半世紀前から戦争すれば負けなしでブイブイいわせていた。ここが小国であっても名前くらいは聞いたことがあるだろうと思いつつ、二人の答えをドキドキと待っている。
「……!!!」
「うわぁぁぁ! すごい! すごい! あの手紙は本物だったんだ!!!」
驚いて声もでないエリオと興奮して手を横にブンブン振っているユーリ。そしてまたしてもわけがわからない状況になっているメルディはまたも口がポカンと開いている。
「ああ! ごめんね! 勝手に盛り上がっちゃって……えーっとお答えします!」
ウォホン! ともったいつけたように咳払いをした後、ユーリがハッキリとした声で信じられないことを言った。
「ココはセレスタの街の一つ、名前はキルケ。だけどもう王国じゃないんだ。随分前に共和制に移行してて。名前だけは残ってるけど」
「え? ……それってどういう……」
呼吸が早くなる。だけど二人には決してバレないように注意した。他人に弱い自分を見せることは彼女にとってかなりリスクが高い行為だ。とはいえ、流石に表情が引き攣っている。
答えを知りたいような知りたくないような……けど今のメルディは知るしかない。
「メルディ、君は千年後の世界にやってきたんだ!」
どうだ! っと、なぜか嬉しそうなユーリが満面の笑みを向けた。その隣にいるエリオは眉を顰めているが。
(ああ、なんてこと)
メルディの胃の中に重いものがのしかかってくる。ズンと体に響き渡ったようだった。
「時空転移……」
ポソリとエリオが呟いた。その言葉に彼女の思考も引っ張られる。
(ただの転移じゃなかったんだ……時空を超えたなんて……)
転移災害という稀な出来事に遭遇したと思ったら、実はさらにレアな事象に巻き込まれていたとは。
「どうやって帰ろう……」
呆然としたまま、完全に中に閉じ込めておけなくなった不安が声となって外へ出てしまっていた。
「あ……ごめんオレ……君にとっては大変なことなのに浮かれちゃって……」
自分はなんて不謹慎で心無い反応をしていたのだろうと、ユーリは大慌てになった後、申し訳さそうにしょぼんと肩を落とした。
「ううん。教えてくれてありがとう。状況が理解できてよかった」
メルディはそんなこと少しも気にしていなかったが、ユーリはそうはいかない。彼女の言葉が気遣いに感じられさらに落ち込んでいく。
「あ、でもなんで私が来たのが千年前ってわかるの?」
その疑問には落ち込んでいるユーリに変わってエリオが答えることにしたようだ。
「俺達はこいつん家の書庫でレオナルド・マグヌスの手紙と思われるものを見つけたんだ。今日、この時間にこの場所に来るよう書かれてた。まあ俺は全然信じてなかったんだが……結果はこうだ」
これまでユーリの一歩後ろにいたエリオだったが、今はメルディを気遣っているようだった。まだ自己嫌悪で落ち込んでいるユーリに関しては、お前が悪いと特にフォローはしない。
「これなんだけど」
ごそごそとユーリが鞄からビニール袋に入れられた古い手紙を取り出し、メルディに手渡す。
「うん。これは師匠が書いた手紙だ」
やっぱり! と、また少し興奮を見せたユーリだったが、反省が続いているのかそれ以上騒ぎはしない。
手紙の文字に目を走らせて、メルディは何か探しているようだった。内容はエリオが言った通り、この手紙を見つけた者へのお願いとして書かれていた。
「あとこれも。封筒の中に入ってたんだ」
手渡された銀のプレートの表面には『メルディへ』と文字が彫られている。少し錆びていたが年数のわりにはかなり綺麗だ。
(……まあ何か仕込んでるんでしょうけど)
指先でにぎりメルディはそのプレートに魔力を込める。
(こういう演出が好きな人だったな~)
それはみるみる形を変えて、小さな鍵へと姿を変えた。
「うわぁ! て、手紙が……!」
今度は手紙か……忙しいな、とメルディは特に驚くでもなく声の方を向く。手紙の文字が浮かび上がりぐにょぐにょと形を変え、どんどん新しい文章が出来上がっていく。
『やあメルディ! 君にとってはさっきぶりかな? 時空転移に巻き込まれるなんてドジを踏んだね! あ、僕は関係ないよ? 僕を疑ったでしょ? 僕はやってないからね! さて本題だ。君はまだ修行途中の身。つまり見習い魔法使い。と言うことで、引き続き修行を続けてもらうよ! それは何かって? それを簡単に教える僕じゃないって君も知っているよね! じゃあまた!』
(ご丁寧なことですこと!)
大魔法使いレオナルド・マグヌスがもしかしたら千年の時を超えて助けに来てくれるかも! とは彼女は全く期待していなかった。彼がこの手紙で言いたかったのは、時空移動は自分のせいじゃないということだ。
「マグヌスってこんな感じなんだ……!」
この手紙に目を輝かせ感動できるユーリの純粋さがメルディは眩しい。どうやら彼は自分の師匠を好いているようだと、物珍しいものを見つけた気分になっている。一方、エリオの方はちょっとひいているのが見て取れた。
(とりあえず、この鍵にあう何かを探せってことね)
ふよふよ浮かばせた鍵を空中でクルクル回しながらメルディはため息をつかずにはいられない。
「ねぇメルディ。これからどうするの?」
「え?」
彼女のため息をこれからの不安から出たものだとユーリは思ったのだ。
「もう君の家はないんだろう?」
「千年も前だもんな」
そう言えばそうだな、とエリオがユーリに相槌をうっている。そしてメルディもその通りだなと思っていた。血の気が引いていくのを感じながら。
「マグヌス屋敷の跡地ならあるけどね」
「跡地か……住めないな。そもそも居住権あんのか? どうなんだそういうの」
「う~~~ん……」
どうにかいい方法はないかとエリオとユーリは真剣に考えていた。千年前からきた人間より、現代人の方がそれを考えるのに適しているだろうとああでもないこうでもない、と。だが表情は険しいままだ。
(そうだ……まずはここで生きていく方法考えなきゃ……)
メルディは孤児だ。弟子入り前はそれは悲惨な生活をしていた。またその生活なんてまっぴらごめんだった。
(い、今鞄に入っている魔獣の素材を売ったらいくらぐらいになるんだろ!? ま、まままずはそれを売って……)
今更パニックになりかけている彼女の表情を見て、また二人は心配そうな顔になっている。そしてメルディを安心させるよう目線を合わせ、
「よければオレらの家にくる? 落ち着くまで居てくれてかまわないよ。どうせ今、オレらくらいしか住んでないし……」
「え!? ……えっ!!?」
だ、男性の家に……!? と、メルディは転移して初めて挙動不審になっていた。大変ありがたい申し出であることはわかっているのだが、
(今の時代ってそれは問題ないことなの!?)
千年経てば価値観も変わるであろうことはメルディにも想像がついた。だがこの驚きを隠すのは難しい。千年前の世界ではマグヌスの屋敷の中で人間は二人だけだったというのに。同世代の男性からの純粋な親切への反応方法が彼女にはわからなかった。
「あ! オレん家は下宿と民泊やってて。まあご時世柄下宿してるのはエリオだけなんだけど、部屋なら他にもあるからさ」
「ミンパク……?」
「宿屋だ」
「ああ!」
エリオの補足でメルディはポンッと手を打った。
こうしてメルディは結局この二人のお世話になることにしたのだった。
(それにしても出来過ぎね)
時空転移は彼女の師匠のせいではないにしろ、このありがたい巡りあわせは師匠が仕組んだものかもしれないなんて考えが頭に浮かぶも……、
(な~んて……師匠が私にこんな気の利いたサービスするわけないか!)
さて、なんとか寝床が確保できたメルディ。次は自活の道を探すことになる。
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