千年前からやってきた見習い魔法使い、現代に生きる

桃月とと

文字の大きさ
14 / 35
第一章 千年後の世界へ

第14話 補助

しおりを挟む
 夕食をお腹いっぱい食べた後、メルディは自室のベッドに寝転がってオークションで競り落としたばかりの欠けた記録石を見つめていた。何度か魔力を込めてみたが、チラチラとほんの少しだけ光った後、すぐに反応しなくなる。

(やっぱ欠けてたらダメか~~~)

 当時からこの欠けやすさがこの記録石のいいところでもあり、ダメなところでもあった。
 魔力を通しやすい『ルミナ結晶』という素材から作られており、光に透かすと内部で淡い金色の輝きが小さく煌めく。録音以外の魔術もかけやすいため、一度再生した後に自壊させ記録を消すのにも都合がよかった。かつてはその仕組みを使って秘密のやり取りが多くおこなわれたのだ。

(それにしても、師匠が記録石って珍しい)

 レオナルド・マグヌスはあまり記録石を使わなかった。色々と理由はあるのだが、記録石を録音するためには録音用魔道具の事前準備が必要なため面倒くさがった、というのが大きい。

「何を記録してたんだろ~魔法薬のレシピ? 新しい魔術紋を考え付いたとか? そうするとわざわざ音声じゃなくていいか~」
「誰かへの連絡じゃないのかい?」

 アンティーク店のショーケースの品物を整理しながら、メルディとダルクは記録石の中身を想像していた。

「あの師匠がわざわざ誰かのために手のかかることするとは思えないですけどねぇ」

 何か連絡があれば代わりにメルディが相手先へ走って伝えたり、手紙を届けることは多々あったが、それに記録石を使ったことはなかった。

(私が居なくなった後はどうしてたかわかんないけど……)

 そう思うと急にこの記録石をことが悪いことに思えてきた。師匠が魔法について何かしているのだと思ったからこそ、メルディはその記録石の中身が知りたかったのだ。

(う~~~ん……)

 渋い顔をしてショーケースの中の懐中時計を磨いていると、

「何か修理できる方法ってないかな~」
「審査局に聞いてみるか?」
「えー! 取り上げられちゃったら嫌じゃん!」

 地下の書庫からユーリとエリオが出て来た。二人は――特にユーリはマグヌスの記録石の存在を知り、昨日からずっとそわそわと落ち着きがない。なんとか記録石を直す方法がないかと探しているのだ。なんせ魔力持ちがいるので、直りさえすれば再生できる。だからメルディは、

(今更中身に興味がなくなった~……とは言えなさそうねぇ)

 と、記録石の中身を諦めることを諦めたのだった。

 メルディがほんのり記録石の修復方法を考えてる間、ユーリ(とエリオ)は真剣にその方法を模索し、ある日ついに見つけてきた。

「大学が資料庫に補助機械が保管されてたんだ!!!」
「補助機械?」
「ちょっと欠けてる程度の記録石なら再生できる装置なんだって!!!」

 食堂に入ってきた瞬間、舞い上がらんばかりにユーリは喜びながらメルディに報告する。きっと彼女も大喜びするだろうと思ったのだ。その姿に、彼女はつられて笑っていたが、エリオの方はあまり積極的にその記録石の修復手段を探していなかったメルディには気が付いており、

「……いいのか?」

 素直に喜べず、少し心配そうな顔になっていた。

「別にいいよ。見られたら困るものを師匠が残してるわけないし」
「いや、そうじゃなくてその……そのマグヌスの声が……」

 もごもごと珍しく歯切れが悪くなっている。

「ああ……そっか。師匠の声が聴けるのか……うん。大丈夫だと思う」

 それからメルディはちょっとだけ考える素振りをして、

「一緒に聴いてくれるんでしょ?」
「そりゃもちろん」

 その答えを聞いて満足そうにニッコリと笑顔になった。

◇◇◇

 大学の構内に初めて入ったメルディは、キョロキョロと落ち着かない様子で周囲を見渡していた。いつも過ごしている歴史地区とはまた違った活気がそこにはある。

「メルディさん! ようこそキルケ大学へ!!」

 迎え出てくれたのはカミーユ・ロラン助教授。ユーリと同じく今日を待ちきれなかった男だ。そしてさらに、彼らの上を行く人物が資料室で待ち構えていた。

「よくぞいらしてくれました!!!」

 ロマンスグレーの年配の男性が、小さな教室の中でかなり古い機械と共にメルディを待っていた。感動のあまり声が震えている。彼はダグラス・ヴェルナー。このキルケ大学の教授で、レオナルド・マグヌスのだ。以前メルディが参加したマグヌス屋敷跡地の発掘調査の時は国際学会に出ていたせいで会うことができず、文字通り泣きを見ていた。

「レオナルド・マグヌスの、メルディでございます。本日はお忙しい中お時間いただきありがとうございます」

 この挨拶は今回の功労者相手に、ユーリにアドバイスされてあらかじめ考えていたものだ。今日使う補助機械の使用は、彼がもちいるあらゆる権力を全力で出して許可がおりたものだった。
 ヴェルナー教授の反応はユーリの期待通り。なんせ長年の研究対象の一番弟子が目の前におり、いい歳をした大人がハワハワと震えながら、少年のように目を煌めかせていた。

「あ、あ、あ、あああ、あの……あのメルディさん……あ……」
「教授! 色々お話があるかと思いますが、それは食事会で……!」
「ああ、もちろん。もちろんそうだとも……!」

 教授と助教授は喜びを抑えきれずやけてしまう顔をなんとか落ち着かそうとしていたが、どうにもならないようだった。

「じゃあさっそく! メルディお願い!」

 ユーリの表情も二人と同じだ。これは歴史的瞬間と言っても過言ではないと、カメラに加え、録音機も準備していた。
 小さく頷いたメルディはそっとその機械の丸い穴に欠けた記録石をはめ込んだ。カタンと音を立ててそれがピタリとはまる。

「じゃあいきま~す!」

 部屋の中にいる全員がゴクリと喉を鳴らしたと同時に、メルディはその機械に魔力を込めた。
 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

悪女として処刑されたはずが、処刑前に戻っていたので処刑を回避するために頑張ります!

ゆずこしょう
恋愛
「フランチェスカ。お前を処刑する。精々あの世で悔いるが良い。」 特に何かした記憶は無いのにいつの間にか悪女としてのレッテルを貼られ処刑されたフランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢(18) 最後に見た光景は自分の婚約者であったはずのオルテンシア・パネットーネ王太子(23)と親友だったはずのカルミア・パンナコッタ(19)が寄り添っている姿だった。 そしてカルミアの口が動く。 「サヨナラ。かわいそうなフランチェスカ。」 オルテンシア王太子に見えないように笑った顔はまさしく悪女のようだった。 「生まれ変わるなら、自由気ままな猫になりたいわ。」 この物語は猫になりたいと願ったフランチェスカが本当に猫になって戻ってきてしまった物語である。

【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!

花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】 《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》  天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。  キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。  一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。  キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。  辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。  辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。  国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。  リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。 ※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作    

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

【完結】濡れ衣聖女はもう戻らない 〜ホワイトな宮廷ギルドで努力の成果が実りました

冬月光輝
恋愛
代々魔術師の名家であるローエルシュタイン侯爵家は二人の聖女を輩出した。 一人は幼き頃より神童と呼ばれた天才で、史上最年少で聖女の称号を得たエキドナ。 もう一人はエキドナの姉で、妹に遅れをとること五年目にしてようやく聖女になれた努力家、ルシリア。 ルシリアは魔力の量も生まれつき、妹のエキドナの十分の一以下でローエルシュタインの落ちこぼれだと蔑まれていた。 しかし彼女は努力を惜しまず、魔力不足を補う方法をいくつも生み出し、教会から聖女だと認められるに至ったのである。 エキドナは目立ちたがりで、国に一人しかいなかった聖女に姉がなることを良しとしなかった。 そこで、自らの家宝の杖を壊し、その罪を姉になすりつけ、彼女を実家から追放させた。 「無駄な努力」だと勝ち誇った顔のエキドナに嘲り笑われたルシリアは失意のまま隣国へと足を運ぶ。 エキドナは知らなかった。魔物が増えた昨今、彼女の働きだけでは不足だと教会にみなされて、姉が聖女になったことを。 ルシリアは隣国で偶然再会した王太子、アークハルトにその力を認められ、宮廷ギルド入りを勧められ、宮仕えとしての第二の人生を送ることとなる。 ※旧タイトル『妹が神童だと呼ばれていた聖女、「無駄な努力」だと言われ追放される〜「努力は才能を凌駕する」と隣国の宮廷ギルドで証明したので、もう戻りません』

無能聖女の失敗ポーション〜働き口を探していたはずなのに、何故みんなに甘やかされているのでしょう?〜

矢口愛留
恋愛
クリスティーナは、初級ポーションすら満足に作れない無能聖女。 成人を迎えたことをきっかけに、これまでずっと暮らしていた神殿を出なくてはいけなくなった。 ポーションをどうにかお金に変えようと、冒険者ギルドに向かったクリスティーナは、自作ポーションだけでは生活できないことに気付く。 その時タイミングよく、住み込み可の依頼(ただしとても怪しい)を発見した彼女は、駆け出し冒険者のアンディと共に依頼を受ける。 依頼書に記載の館を訪れた二人を迎えるのは、正体不明の主人に仕える使用人、ジェーンだった。 そこでクリスティーナは、自作の失敗ポーションを飲んで体力を回復しながら仕事に励むのだが、どういうわけかアンディとジェーンにやたら甘やかされるように。 そして、クリスティーナの前に、館の主人、ギルバートが姿を現す。 ギルバートは、クリスティーナの失敗ポーションを必要としていて――。 「毎日、私にポーションを作ってくれないか。私には君が必要だ」 これは無能聖女として搾取され続けていたクリスティーナが、居場所を見つけ、自由を見つけ、ゆったりとした時間の中で輝いていくお話。 *カクヨム、小説家になろうにも投稿しています。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

経済的令嬢活動~金遣いの荒い女だという理由で婚約破棄して金も出してくれって、そんなの知りませんよ~

キョウキョウ
恋愛
 ロアリルダ王国の民から徴収した税金を無駄遣いしていると指摘されたミントン伯爵家の令嬢クリスティーナ。浪費する癖を持つお前は、王妃にふさわしくないという理由でアーヴァイン王子に婚約を破棄される。  婚約破棄を告げられたクリスティーナは、損得を勘定して婚約破棄を素直に受け入れた。王妃にならない方が、今後は立ち回りやすいと考えて。  アーヴァイン王子は、新たな婚約相手であるエステル嬢と一緒に王国の改革を始める。無駄遣いを無くして、可能な限り税金を引き下げることを新たな目標にする。王国民の負担を無くす、という方針を発表した。  今までとは真逆の方策を立てて、進んでいこうとするロアリルダ王国。彼の立てた新たな方針は、無事に成功するのだろうか。  一方、婚約破棄されたクリスティーナは商人の国と呼ばれているネバントラ共和国に移り住む計画を立て始める。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...