398 / 895
第六章
6-50
しおりを挟む
推しの作家を前にした、勇者組の女子達は有頂天。
男子に内緒の「女子の秘め事」、「女子の嗜み」と言う発想は何処へやら。
熱烈に握手を求めたり、手持ちの愛読書にサインを求めたりと、ラディッシュとターナップ、そして状況が理解出来ないチィックウィードを置き去りに。
そんな中、
『何をそんなに浮かれてるさぁねぇ~』
呆れ口調は、イリス。
本音は、推しの作家ユリユリであるリブロンを前に、
(アタシもぉユリユリ先生のサインが欲しいさぁねぇーーー!)
大絶叫していたが、斜に構えた自らのキャラを意識するあまり、
「もぅ少し大人になったらどぅさねぇ~」
ヤレヤレと言った口振りで、
「チィ坊を見ぃなやぁ、呆れてるさぁねぇ~」
半笑いを浮かべつつ、心では泣いていた。
そんな彼女を、
「「「「・・・・・・」」」」
見透かしたジト目で見据えるドロプウォート、パストリス、ニプルウォート、カドウィード。
見据えられ、
(!?)
内心でギクリとするイリス。
ユリユリ先生の作品の「隠れ大ファン」でありながらの背信行為に、バツが悪そうに眼を泳がせ、その後ろめたさを誤魔化す様に、
「なっ、何さぁねぇアンタ達ぃその眼はぁ?! いっ、言いたい事があるならぁハッキリとぉ、」
強がりを多分に交え「言ってみろ」と言おうとすると、女子四人は平静に、ともすれば冷淡に、
「「「「服の下に隠してるのは何(なんですのぉ・なのでぇす・なのさぁ・でありんすぅ)?」」」」
『のぉ!?』
あからさまな狼狽えを見せるイリス。
隠していたのは仲間たちから「胸やけしそう」と揶揄さ、隠れてコッソリ読み耽っていた、
≪ユリユリ先生の大作≫
(まっ、まさかコイツ等ぁ気付いてるっぅ?!)
反射的に胸元を押さえ、
『なっ、何を言ってるのさぁねぇ、アンタ達ぃぁ! こっ、ここには何もぉ、』
無いと言い張るより先、キラリと目を光らせたチィックウィードが彼女の背後から、
「いただきなぉ♪」
光の如き素早さで彼女の胸元から本を抜き取り、
『ちっ、チィ坊ぉお! 何するさねぇ!』
慌てて取り戻そうとした手を、彼女はスルリとかいくぐり、
「ここに「ユリユリ」ってぇ、かいあるなぉ♪」
皆に見えるよう本を高々掲げて、表紙に書かれた作家名を指差した。
『のぉはっうぅ!!!』
羞恥の赤面顔でフリーズするイリスと、
「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」
沈黙する大人たち。
同情するに値する「彼女の羞恥」を慮(おもんぱか)り。
意図せず秘め事を暴露された時の「恥ずかしさ」と言うモノを、イヤと言うほど理解出来たから。
「…………」
もはや言い逃れも出来ない様子で、石化したかの如く固まるイリス。
そんな彼女の様子を気マズそうに窺う大人たちの姿から、流石のチィックウィードもイタズラで済まされない行為であったと悟り、
「え、えぇ~と……なぉ……」
バツが悪そうに視線を泳がせていると、固まっていたイリスがやおら静かに歩き出し、イタズラっ子の手から「密かな愛読書」をゆっくり取り返すと、リブロンの下に静々と歩み寄り、
「さ……サイン……書いてもらってイイ……さぁね……」
「は……はい……」
重苦しい空気の中での、短い会話の数分後、
『いやぁ~ヤッパリ素直が一番さぁねぇ~♪』
ヤケクソと思えなく無い上機嫌の笑顔で、書いてもらったサインを見つめるイリス。
しかし、それから更にしばし後、
「はぁ~~~」
彼女は満面の笑顔から一転した、暗く深い、大きな、それはとても大きな球息を吐いていた。
茜色に染まった小川の土手に一人座り、落ち込んだ表情で佇みながら。
有頂天まで上り詰めた彼女が、何故に再びどん底へ落ちたのか。
その理由はサインをもらった後に遡る。
男子に内緒の「女子の秘め事」、「女子の嗜み」と言う発想は何処へやら。
熱烈に握手を求めたり、手持ちの愛読書にサインを求めたりと、ラディッシュとターナップ、そして状況が理解出来ないチィックウィードを置き去りに。
そんな中、
『何をそんなに浮かれてるさぁねぇ~』
呆れ口調は、イリス。
本音は、推しの作家ユリユリであるリブロンを前に、
(アタシもぉユリユリ先生のサインが欲しいさぁねぇーーー!)
大絶叫していたが、斜に構えた自らのキャラを意識するあまり、
「もぅ少し大人になったらどぅさねぇ~」
ヤレヤレと言った口振りで、
「チィ坊を見ぃなやぁ、呆れてるさぁねぇ~」
半笑いを浮かべつつ、心では泣いていた。
そんな彼女を、
「「「「・・・・・・」」」」
見透かしたジト目で見据えるドロプウォート、パストリス、ニプルウォート、カドウィード。
見据えられ、
(!?)
内心でギクリとするイリス。
ユリユリ先生の作品の「隠れ大ファン」でありながらの背信行為に、バツが悪そうに眼を泳がせ、その後ろめたさを誤魔化す様に、
「なっ、何さぁねぇアンタ達ぃその眼はぁ?! いっ、言いたい事があるならぁハッキリとぉ、」
強がりを多分に交え「言ってみろ」と言おうとすると、女子四人は平静に、ともすれば冷淡に、
「「「「服の下に隠してるのは何(なんですのぉ・なのでぇす・なのさぁ・でありんすぅ)?」」」」
『のぉ!?』
あからさまな狼狽えを見せるイリス。
隠していたのは仲間たちから「胸やけしそう」と揶揄さ、隠れてコッソリ読み耽っていた、
≪ユリユリ先生の大作≫
(まっ、まさかコイツ等ぁ気付いてるっぅ?!)
反射的に胸元を押さえ、
『なっ、何を言ってるのさぁねぇ、アンタ達ぃぁ! こっ、ここには何もぉ、』
無いと言い張るより先、キラリと目を光らせたチィックウィードが彼女の背後から、
「いただきなぉ♪」
光の如き素早さで彼女の胸元から本を抜き取り、
『ちっ、チィ坊ぉお! 何するさねぇ!』
慌てて取り戻そうとした手を、彼女はスルリとかいくぐり、
「ここに「ユリユリ」ってぇ、かいあるなぉ♪」
皆に見えるよう本を高々掲げて、表紙に書かれた作家名を指差した。
『のぉはっうぅ!!!』
羞恥の赤面顔でフリーズするイリスと、
「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」
沈黙する大人たち。
同情するに値する「彼女の羞恥」を慮(おもんぱか)り。
意図せず秘め事を暴露された時の「恥ずかしさ」と言うモノを、イヤと言うほど理解出来たから。
「…………」
もはや言い逃れも出来ない様子で、石化したかの如く固まるイリス。
そんな彼女の様子を気マズそうに窺う大人たちの姿から、流石のチィックウィードもイタズラで済まされない行為であったと悟り、
「え、えぇ~と……なぉ……」
バツが悪そうに視線を泳がせていると、固まっていたイリスがやおら静かに歩き出し、イタズラっ子の手から「密かな愛読書」をゆっくり取り返すと、リブロンの下に静々と歩み寄り、
「さ……サイン……書いてもらってイイ……さぁね……」
「は……はい……」
重苦しい空気の中での、短い会話の数分後、
『いやぁ~ヤッパリ素直が一番さぁねぇ~♪』
ヤケクソと思えなく無い上機嫌の笑顔で、書いてもらったサインを見つめるイリス。
しかし、それから更にしばし後、
「はぁ~~~」
彼女は満面の笑顔から一転した、暗く深い、大きな、それはとても大きな球息を吐いていた。
茜色に染まった小川の土手に一人座り、落ち込んだ表情で佇みながら。
有頂天まで上り詰めた彼女が、何故に再びどん底へ落ちたのか。
その理由はサインをもらった後に遡る。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜
あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。
その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!?
チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる