3 / 29
3.優遇される夢の世界
しおりを挟む
私は部屋を出ると、バルの隣に並ぶ様にして廊下を歩いていた。
夢の中で見ていたバルと、こうやって並んで歩いていると不思議な気分でもあるし、なんだか緊張してしまう。
そんな事を考えているとバルは私の方に顔を傾け、視線が絡むと思わずドキッとしてしまう。
「シロは…黒い髪も似合っていたけど、その色も可愛らしいね…」
「え…?……ありがとうっ…」
突然髪の事を褒められて私は照れてしまった。
夢の中に出て来た私の髪色は確かに黒かった。
しかし今の私は、数日前に生まれて初めて髪の色を染めたので、黒では無くオレンジベージュ色になっている。
髪色を明るくさせたおかげで友達からは表情が明るくなったと褒めてもらえた。
それに私自身もこの色を気に入っている。
私は自分の髪の方に視線を向けると、確かにオレンジベージュ色であることに気付いた。
今回の夢は少しいつもと違うんだなと思ってはいたけど、大して気にはしていなかった。
「ふふっ、シロは可愛いから何色でも似合いそうだね…」
「……っ…」
きっとお世辞で言っているんだとは思うけど、そんな事を急に言われると照れてしまうから止めて欲しい。
照れている私を見てバルは「可愛いな」と呟やき、更に私の顔は熱くなる。
(バルは可愛いって言い過ぎだからっ…なんか…恥ずかしいよ…)
私は今まで誰とも付き合ったことも無いし、中学高校と女子校だったせいか異性と話したことも殆ど無かった。
だからこんな風にいきなり二人で話すことなって、戸惑いを隠せないでいた。
「こ、ここってすごく広い建物なんだねっ…!」
私は早くこの話題を変えたくて、慌てて話を切り替えた。
「そうかな…?ここは僕の住んでいる宮だよ。これからはシロの住居にもなるから…落ち着いたら色々部屋を案内するね…」
「王子って言ってたけど…、ここは王宮ってことですか?」
私が問いかけるとバルは僅かに表情を曇らせた。
(私…なにかまずい事聞いちゃった…?)
「ここは王宮ではないかな…。王宮から少し離れた場所にある離宮だね」
「離宮…?」
「うん。簡単に言えば王宮とは違う建物って事だね。シロの事は大事な客人って事で話は通してあるから、ここでは何も気を遣う必要はないよ…。あと必要なものがあれば言ってくれたら直ぐに手配するからね。…何かあったら気軽に言ってくれたら嬉しいかな…」
「……ありがとうっ」
(さすが夢の中…。優遇されてるな…私…)
そんな話をしていると目的の部屋まで到着した様だった。
***
バルは部屋の扉を開くと、中はとても広く豪華な部屋になっていた。
まるで雑誌とかに載っている豪華なスイートルームの様な光景が広がっていて、私は目を輝かせるように眺めていた。
「ここが今日からシロに使ってもらう部屋になるよ。……その表情だと気に入ってもらえたかな?」
「こんな良い部屋を使って…本当に良いんですか?」
「ふふっ、当然だよ。シロは僕が呼んだ大事な客人だからね…。それなりに振る舞うのは当然の事だよ…」
部屋の中まで入ると中央には大きなソファーとテーブルと置かれていた。
奥には天蓋付きの大きなキングサイズのベッドが見えるし、窓もとても大きくバルコニーまで着いている様だ。
そして奥には広々とした化粧室や、トイレやお風呂まで完備してある。
(す、すごい…!夢って…最高ね…)
私は部屋中をバタバタと歩き回り、全てを一通り見終えるとバルの傍へと戻って来た。
バルはそんなはしゃぐ姿の私を見て楽しそうな表情をしていた。
「ふふっ、はしゃいでるシロはとても可愛いな…」
「……っ…」
また可愛いと言われて私は照れてしまう。
「また照れてるの…?すぐに顔を真っ赤にさせて…本当にシロは素直に反応するね…」
「……そう…かな…」
私が恥ずかしそうに答えると、バルの手が私の顔の方へと伸びて来て頬へと触れた。
夢のはずなのに触れられた場所が温かく感じて、まるで本当に触れらているかのような錯覚に陥った。
「やっぱり頬は少し熱を持っている様だね…。もしかして喉が渇いた…?今すぐに使用人を呼んで用意させるから、少し待っていて…」
近距離で、しかも頬に触れられた状態で見つめられると私は再びドキドキしてしまう。
これは夢だと分かっているのに、一々反応してしまう自分が嫌になる。
だけどそれだけ異性に耐性がないということなのだろう。
そんな時に私はあることを思いついた。
ここは夢の世界だ。
しかも何度も見ている夢の世界…。
そして目の前にいるのは、現実ではきっと巡り合えない程の美貌を持った王子だ。
もしかしたらバルこそが私の理想の恋人の姿なのかもしれない…。
そう考えると私って恐ろしいくらい面食いなのだと思うけど。
夢の中でもし耐性を付けられたら、現実世界でも多少は影響しないだろうか。
そうなればきっと私にも恋人が作れるかもしれない…と安易な考えを持ってしまった。
(これって…私の妄想が詰まった夢なんだし…だったら使わない手は…ないよね?)
私は思い切ってバルの胸の中に飛び込んでみた。
自分でした事なのに、とてつもなく恥ずかしくてたまらない。
だけどそれでいて、とても温かくて気持ちが良い。
(まるで本当に抱き付いているみたい…)
「シロ…?」
突然抱き着いた私に驚いたのか、バルは私に呼び掛けてきた。
「わ、私…バルとなら…いいよ!」
私は恥ずかしさから顔を真っ赤に染め、ぎゅっとバルの胸に顔を押し付けた。
その声は余りにも小さく、バルの耳に届いていたのかどうかは分からない。
だけど自分が言った事に少し後悔し始めていた。
(こんな事を言って、拒否られたらこの先どうやって顔を合わせたら良いんだろう…。何も考えずにこんなことをするなんてっ…私…ばかだ…)
しかもあれからバルは何も言って来ない。
私の声が小さ過ぎて届かなかったのだろうか…?
この沈黙がとても気まずいが、これ以上私に何かを言う勇気なんて無かった。
「シロは…随分と積極的だね。僕となら良いって…何が良いの?」
「……っ…」
バルは私の耳元で突然囁き、息が吹きかかると私はびくっと体を震わせてしまう。
私の反応を見てバルはクスッと小さく笑った。
「答えないのなら……そうだね、少し悪戯でもしてみようかな…」
バルは意地悪そうな声で囁くと、私の耳朶をぺろっと舌で舐め始めた。
夢の中で見ていたバルと、こうやって並んで歩いていると不思議な気分でもあるし、なんだか緊張してしまう。
そんな事を考えているとバルは私の方に顔を傾け、視線が絡むと思わずドキッとしてしまう。
「シロは…黒い髪も似合っていたけど、その色も可愛らしいね…」
「え…?……ありがとうっ…」
突然髪の事を褒められて私は照れてしまった。
夢の中に出て来た私の髪色は確かに黒かった。
しかし今の私は、数日前に生まれて初めて髪の色を染めたので、黒では無くオレンジベージュ色になっている。
髪色を明るくさせたおかげで友達からは表情が明るくなったと褒めてもらえた。
それに私自身もこの色を気に入っている。
私は自分の髪の方に視線を向けると、確かにオレンジベージュ色であることに気付いた。
今回の夢は少しいつもと違うんだなと思ってはいたけど、大して気にはしていなかった。
「ふふっ、シロは可愛いから何色でも似合いそうだね…」
「……っ…」
きっとお世辞で言っているんだとは思うけど、そんな事を急に言われると照れてしまうから止めて欲しい。
照れている私を見てバルは「可愛いな」と呟やき、更に私の顔は熱くなる。
(バルは可愛いって言い過ぎだからっ…なんか…恥ずかしいよ…)
私は今まで誰とも付き合ったことも無いし、中学高校と女子校だったせいか異性と話したことも殆ど無かった。
だからこんな風にいきなり二人で話すことなって、戸惑いを隠せないでいた。
「こ、ここってすごく広い建物なんだねっ…!」
私は早くこの話題を変えたくて、慌てて話を切り替えた。
「そうかな…?ここは僕の住んでいる宮だよ。これからはシロの住居にもなるから…落ち着いたら色々部屋を案内するね…」
「王子って言ってたけど…、ここは王宮ってことですか?」
私が問いかけるとバルは僅かに表情を曇らせた。
(私…なにかまずい事聞いちゃった…?)
「ここは王宮ではないかな…。王宮から少し離れた場所にある離宮だね」
「離宮…?」
「うん。簡単に言えば王宮とは違う建物って事だね。シロの事は大事な客人って事で話は通してあるから、ここでは何も気を遣う必要はないよ…。あと必要なものがあれば言ってくれたら直ぐに手配するからね。…何かあったら気軽に言ってくれたら嬉しいかな…」
「……ありがとうっ」
(さすが夢の中…。優遇されてるな…私…)
そんな話をしていると目的の部屋まで到着した様だった。
***
バルは部屋の扉を開くと、中はとても広く豪華な部屋になっていた。
まるで雑誌とかに載っている豪華なスイートルームの様な光景が広がっていて、私は目を輝かせるように眺めていた。
「ここが今日からシロに使ってもらう部屋になるよ。……その表情だと気に入ってもらえたかな?」
「こんな良い部屋を使って…本当に良いんですか?」
「ふふっ、当然だよ。シロは僕が呼んだ大事な客人だからね…。それなりに振る舞うのは当然の事だよ…」
部屋の中まで入ると中央には大きなソファーとテーブルと置かれていた。
奥には天蓋付きの大きなキングサイズのベッドが見えるし、窓もとても大きくバルコニーまで着いている様だ。
そして奥には広々とした化粧室や、トイレやお風呂まで完備してある。
(す、すごい…!夢って…最高ね…)
私は部屋中をバタバタと歩き回り、全てを一通り見終えるとバルの傍へと戻って来た。
バルはそんなはしゃぐ姿の私を見て楽しそうな表情をしていた。
「ふふっ、はしゃいでるシロはとても可愛いな…」
「……っ…」
また可愛いと言われて私は照れてしまう。
「また照れてるの…?すぐに顔を真っ赤にさせて…本当にシロは素直に反応するね…」
「……そう…かな…」
私が恥ずかしそうに答えると、バルの手が私の顔の方へと伸びて来て頬へと触れた。
夢のはずなのに触れられた場所が温かく感じて、まるで本当に触れらているかのような錯覚に陥った。
「やっぱり頬は少し熱を持っている様だね…。もしかして喉が渇いた…?今すぐに使用人を呼んで用意させるから、少し待っていて…」
近距離で、しかも頬に触れられた状態で見つめられると私は再びドキドキしてしまう。
これは夢だと分かっているのに、一々反応してしまう自分が嫌になる。
だけどそれだけ異性に耐性がないということなのだろう。
そんな時に私はあることを思いついた。
ここは夢の世界だ。
しかも何度も見ている夢の世界…。
そして目の前にいるのは、現実ではきっと巡り合えない程の美貌を持った王子だ。
もしかしたらバルこそが私の理想の恋人の姿なのかもしれない…。
そう考えると私って恐ろしいくらい面食いなのだと思うけど。
夢の中でもし耐性を付けられたら、現実世界でも多少は影響しないだろうか。
そうなればきっと私にも恋人が作れるかもしれない…と安易な考えを持ってしまった。
(これって…私の妄想が詰まった夢なんだし…だったら使わない手は…ないよね?)
私は思い切ってバルの胸の中に飛び込んでみた。
自分でした事なのに、とてつもなく恥ずかしくてたまらない。
だけどそれでいて、とても温かくて気持ちが良い。
(まるで本当に抱き付いているみたい…)
「シロ…?」
突然抱き着いた私に驚いたのか、バルは私に呼び掛けてきた。
「わ、私…バルとなら…いいよ!」
私は恥ずかしさから顔を真っ赤に染め、ぎゅっとバルの胸に顔を押し付けた。
その声は余りにも小さく、バルの耳に届いていたのかどうかは分からない。
だけど自分が言った事に少し後悔し始めていた。
(こんな事を言って、拒否られたらこの先どうやって顔を合わせたら良いんだろう…。何も考えずにこんなことをするなんてっ…私…ばかだ…)
しかもあれからバルは何も言って来ない。
私の声が小さ過ぎて届かなかったのだろうか…?
この沈黙がとても気まずいが、これ以上私に何かを言う勇気なんて無かった。
「シロは…随分と積極的だね。僕となら良いって…何が良いの?」
「……っ…」
バルは私の耳元で突然囁き、息が吹きかかると私はびくっと体を震わせてしまう。
私の反応を見てバルはクスッと小さく笑った。
「答えないのなら……そうだね、少し悪戯でもしてみようかな…」
バルは意地悪そうな声で囁くと、私の耳朶をぺろっと舌で舐め始めた。
5
あなたにおすすめの小説
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
最高魔導師の重すぎる愛の結末
甘寧
恋愛
私、ステフィ・フェルスターの仕事は街の中央にある魔術協会の事務員。
いつもの様に出勤すると、私の席がなかった。
呆然とする私に上司であるジンドルフに尋ねると私は昇進し自分の直属の部下になったと言う。
このジンドルフと言う男は、結婚したい男不動のNO.1。
銀色の長髪を後ろに縛り、黒のローブを纏ったその男は微笑むだけで女性を虜にするほど色気がある。
ジンドルフに会いたいが為に、用もないのに魔術協会に来る女性多数。
でも、皆は気づいて無いみたいだけど、あの男、なんか闇を秘めている気がする……
その感は残念ならが当たることになる。
何十年にも渡りストーカーしていた最高魔導師と捕まってしまった可哀想な部下のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる