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14.庭園でのティータイム①
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私がこの世界に来てから1週間が過ぎて、なんとなくだけどこの生活にも少しずつ慣れ始めて来ていた。
ここでの暮らしは私のいた世界とは色々と違う所も多い。
私が着て来た服はバルに処分されてしまった。
恐らく私が異世界から来たことを隠す為なのだろう。
新しい服はバルが沢山用意してくれて、そのどれもが素敵なものばかりだった。
この世界での貴族の服装はドレスが一般的らしく、普段着としてのドレスも存在している。
最初袖を通した時は少し小恥ずかしかったが、1週間も着ていればそれも感じなくなっていった。
そしてこの離宮から私は出られない為、昼間は図書室で時間を過ごしていることが多い。
今は本を読む為に文字の読み方を必死に覚えている最中だった。
当然だと言えば当然だが、私はこの世界の文字が一切読めない。
なので本を読む為にはそこから始めなくてはならなかった。
だけど時間ならたっぷりある。
何もしてないよりかは、こうやって何かに没頭している方が余計な事を考えなくて済むので気が楽だった。
***
今日もいつもの様に図書室に来ていた。
机の上にいくつもの本を開き、私はじっとそれを眺めている。
周りから見たら熱心に勉強をしている様に見えるかもしれないが、実際は違う事を考えていた。
私は夢だと勘違いして、ここに来た日にバルに抱かれてしまった。
それを思い出すと今でも恥ずかしくてたまらないし、時間を戻せるなら戻してしまいたくなる。
バルも私が夢だと勘違いしていた事を知っているので、あれ以来私には手を出してくることは無かった。
それでも抱かれたことは事実であり、私は一人で意識して反応してしまう。
バルは私の事をどう思っているのだろう…。
私の事を『運命の番』だと言っていた。
それは私が選ばれた聖女だからそういう言い方をしているのだろうか…?
あの時バルは私の事を好きだと言ってくれたし、私のお願いにも嫌がらずに答えてくれた。
今も何かと私に気を掛けてくれているし…、大事に扱ってくれているのは分かる。
(バルが…本当の恋人だったら…いいのにな…)
私はそんな事を考えていた。
バルはすごく優しいし素敵だし…多分私の理想…?そのものなんだと思う。
あんなことがあったから余計にドキドキしているのもあるとは思うけど、私は多分バルの事が好き。
(恋人になってって言った事も、無かったことに…されてるよね…)
「はぁっ……」
考え事に夢中になっていたら、背後に気配がある事には全く気付かなかった。
「ため息なんてついてどうしたの…?シロは随分と勉強熱心だね…」
「……ひぁっ…、バ…バル…」
突然耳元で囁かれ私は思わず変な声を上げてしまった。
慌てて振り返ると、すぐ傍にバルの顔があり私の顔は赤く染まっていく。
バルの事を考えてたら、突然本人が現れたから私の驚きも一際大きかった。
(び…びっくりした…。いきなり驚かせないで……)
「本当にシロは耳が弱いね…。不意打ち成功かな…」
「……っ…意地悪…」
バルは悪戯そうに笑って来たので、私は不満そうにむっとした顔を向けた。
(ドキドキしちゃうから…止めて欲しい…)
「怒らないで…。今日は天気も良いし庭で一緒にお茶でもしない…?」
「したいですっ…」
バルの言葉を聞くと私の表情は明るくなっていく。
「じゃあ決まりだね。また戻って来るだろうか、そのままでいいよ。行こうか…」
「はいっ…」
私が椅子から立ち上がろうとすると、バルはスッと私の前に手を差し出してくれた。
「あ…ありがとう…」
私はドキドキしながらバルの手を取って立ち上がった。
バルは細かな気遣いをしてくれる。
そういう所にも慣れてない私は一々ドキドキしてしまう様だ。
(優しいな…)
立ち上がると直ぐにバルの手を離そうとしたが、私が離そうとした瞬間ぎゅっと握られてしまった。
私は戸惑った顔をバルに向けると、バルは柔らかく微笑んでいた。
その笑顔を見ていたら顔の奥に熱が籠っていくのを感じた。
結局…、手の事は言えなくなり、そのまま手を握られたまま図書室を後にする事となった。
ここでの暮らしは私のいた世界とは色々と違う所も多い。
私が着て来た服はバルに処分されてしまった。
恐らく私が異世界から来たことを隠す為なのだろう。
新しい服はバルが沢山用意してくれて、そのどれもが素敵なものばかりだった。
この世界での貴族の服装はドレスが一般的らしく、普段着としてのドレスも存在している。
最初袖を通した時は少し小恥ずかしかったが、1週間も着ていればそれも感じなくなっていった。
そしてこの離宮から私は出られない為、昼間は図書室で時間を過ごしていることが多い。
今は本を読む為に文字の読み方を必死に覚えている最中だった。
当然だと言えば当然だが、私はこの世界の文字が一切読めない。
なので本を読む為にはそこから始めなくてはならなかった。
だけど時間ならたっぷりある。
何もしてないよりかは、こうやって何かに没頭している方が余計な事を考えなくて済むので気が楽だった。
***
今日もいつもの様に図書室に来ていた。
机の上にいくつもの本を開き、私はじっとそれを眺めている。
周りから見たら熱心に勉強をしている様に見えるかもしれないが、実際は違う事を考えていた。
私は夢だと勘違いして、ここに来た日にバルに抱かれてしまった。
それを思い出すと今でも恥ずかしくてたまらないし、時間を戻せるなら戻してしまいたくなる。
バルも私が夢だと勘違いしていた事を知っているので、あれ以来私には手を出してくることは無かった。
それでも抱かれたことは事実であり、私は一人で意識して反応してしまう。
バルは私の事をどう思っているのだろう…。
私の事を『運命の番』だと言っていた。
それは私が選ばれた聖女だからそういう言い方をしているのだろうか…?
あの時バルは私の事を好きだと言ってくれたし、私のお願いにも嫌がらずに答えてくれた。
今も何かと私に気を掛けてくれているし…、大事に扱ってくれているのは分かる。
(バルが…本当の恋人だったら…いいのにな…)
私はそんな事を考えていた。
バルはすごく優しいし素敵だし…多分私の理想…?そのものなんだと思う。
あんなことがあったから余計にドキドキしているのもあるとは思うけど、私は多分バルの事が好き。
(恋人になってって言った事も、無かったことに…されてるよね…)
「はぁっ……」
考え事に夢中になっていたら、背後に気配がある事には全く気付かなかった。
「ため息なんてついてどうしたの…?シロは随分と勉強熱心だね…」
「……ひぁっ…、バ…バル…」
突然耳元で囁かれ私は思わず変な声を上げてしまった。
慌てて振り返ると、すぐ傍にバルの顔があり私の顔は赤く染まっていく。
バルの事を考えてたら、突然本人が現れたから私の驚きも一際大きかった。
(び…びっくりした…。いきなり驚かせないで……)
「本当にシロは耳が弱いね…。不意打ち成功かな…」
「……っ…意地悪…」
バルは悪戯そうに笑って来たので、私は不満そうにむっとした顔を向けた。
(ドキドキしちゃうから…止めて欲しい…)
「怒らないで…。今日は天気も良いし庭で一緒にお茶でもしない…?」
「したいですっ…」
バルの言葉を聞くと私の表情は明るくなっていく。
「じゃあ決まりだね。また戻って来るだろうか、そのままでいいよ。行こうか…」
「はいっ…」
私が椅子から立ち上がろうとすると、バルはスッと私の前に手を差し出してくれた。
「あ…ありがとう…」
私はドキドキしながらバルの手を取って立ち上がった。
バルは細かな気遣いをしてくれる。
そういう所にも慣れてない私は一々ドキドキしてしまう様だ。
(優しいな…)
立ち上がると直ぐにバルの手を離そうとしたが、私が離そうとした瞬間ぎゅっと握られてしまった。
私は戸惑った顔をバルに向けると、バルは柔らかく微笑んでいた。
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結局…、手の事は言えなくなり、そのまま手を握られたまま図書室を後にする事となった。
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