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28.二人で散策⑤
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暫く歩いていると開けた場所に出た。
色とりどりの薔薇に囲まれていて、中央には丸いテーブルと椅子が置かれている。
晴れた日はここでお茶なんてしたら、きっと最高な気分なのだろう。
そしてその手前にはベンチがあり、アレクシスはゆっくりと椅子の上に私を下ろしてくれた。
「ありがとうございます」
「暫くここで休んでいこうか」
私はその言葉に小さく頷いた。
今はアレクシスの顔を見るだけで照れてしまいそうで、奥に広がるバラ園へと視線を向けていた。
これだけ沢山咲いていると薔薇の香りも強く感じる。
私は深く息を吸い込んで、ゆっくりと吐いた。
心を落ち着かせようとしていたのだが、不意にアレクシスは掌を重ねるように乗せてきて、私の心は再び乱される。
そして先程から痛い程に視線を感じている。
私は彼と視線を合わせないように、気付かないフリを続けていた。
(お願い、そんなに見ないで……)
「今度ここでのんびりお茶会でもしようか」
「そ、そうですね」
きっと二人でのお茶会は楽しいものになるだろう。
しかし今の私は返事をすることでさえ緊張してしまい、気の利いた言葉を返すことが出来なかった。
アレクシスはそんな私の反応を見てクスッと小さく笑うと、私の手を優しく撫でてきた。
(……っ)
「まだ照れているの? そんな顔をされてしまうと、また意地悪したくなるな」
「えっ!?」
アレクシスの言葉を聞いて、過剰に反応してしまう。
驚いた勢いで彼の方に視線を移動させてしまうと、アレクシスは優しい顔で微笑んでいた。
「リリアといると楽しくて退屈とは無縁だな。それに、そんなに可愛い反応ばかりされると、ますます独り占めしたくなる。私は欲張りだからね」
「独り占めって……」
「リリア、先程の話に戻るけど……」
アレクシスが話し始めようとした時だった。
「アレクシス殿下。リリア様とお過ごしのところ、申し訳ありません」
「……どうした?」
私達が歩いて来た方向から声が響いた。
そこにいたのはマリーだった。
アレクシスの顔からは先程の穏やかな表情は消え、厳しい視線を彼女に向けている。
恐らく王太子としての顔に戻ったのだろう。
「それが、王宮から使いの者が来まして……」
マリーの言葉を聞くとアレクシスは深くため息を漏らした。
そして私の方に視線を向けた。
「リリア、すまない。私は一度王宮に戻らなくてはならないようだ」
「大丈夫です。私のことはお気になさらず行ってきてください」
「折角リリアと楽しい時間を過ごしていたのに。なるべく早く戻るから」
「王宮からの呼び出しなら仕方のないことです。私はその間、王都にでも行ってみようかと思います」
残念だが、これは仕方が無いことだ。
アレクシスは王太子であるのだから、色々と忙しいに違いない。
私がこんなことになってしまい、気を遣ってきっと無理に時間を空けてくれたのだろう。
「王都に? 何をしに行くのか聞いてもいい?」
「色々と売りたい物があって。手持ちの資金がどれくらいになるのか、早めに把握しておいた方が今後のためにも良いと思うので」
「それって前に言ってた護符のこと?」
「はい、そうです」
「その護符は全て私が買い取るよ」
「……は?」
「優秀なリリアが作った物だ。それだけで価値がある。定価の2倍で買い取らせて」
「え、ちょっと待ってください」
話を勝手に進められ私は戸惑ってしまう。
お世話になっている身だというのに、定価の2倍の価格で売るなんてことは到底出来ない。
「リリア、悪い。今は時間があまりないんだ。この話はまた後でゆっくりでも構わないだろうか?」
「……はい、分かりました」
今はこんな話で呼び止めても悪いと思い、それ以上反論はしなかった。
「マリー、私はリリアを部屋まで送って行く。少し遅れると伝えといてくれ」
「かしこまりました」
「私なら一人で戻れますっ!」
「遠慮しなくていい。急に来たのは向こうなのだから、少しくらい待たせておいても構わないだろう」
アレクシスは当然の様に答えていて、私は思わず苦笑してしまう。
マリーは一礼すると、私達を残して先に戻っていった。
「リリア、本当にすまない。邪魔をしないよう、釘を打っておいたのだけどな」
「そのお気持ちだけで十分です」
私のことを気に掛けてくれて、それだけで十分嬉しかった。
するとアレクシスは不満そうな顔を向けてきた。
「なんですか?」
「リリアは欲がないね。ここで引き留めてくれたら、使いを追い返してでもリリアの傍にいるのに」
「そんなこと出来ませんっ。アレクシス様は立場のある方ですし。多忙であることは理解しています」
「リリアは真面目だな。だけど君らしい答えだね。それじゃあ残念だけど、戻ろうか」
アレクシスは小さくため息を漏らすと立ち上がる。
そして私の前に手を差し出してくれたので、その手を取った。
「アレクシス様、さっきからため息ばかり漏らしてますよ」
「だって本当に残念でならないからね。リリアとの楽しい時間を邪魔されたんだ。父上にはウンザリするくらい嫌味でも伝えて来るよ」
アレクシスは冗談ぽく話すと、小さく笑っていた。
こんな話をしていると、アレクシスが特別な人間なんだと思い知らされる。
そして、どうして私がなんかに興味を持っているのか不思議に思ってしまう。
(私って同情されているだけなのかな)
私はアレクシスの横顔を眺めながら、不意にそんなことを考えていた。
一度はそれでも構わないと思ってしまったけど、距離が縮んで来るとそれだけでは満足出来なくなっているのかもしれない。
そんな事を考えながら、私は繋がれたアレクシスの手をぎゅっと握っていた。
色とりどりの薔薇に囲まれていて、中央には丸いテーブルと椅子が置かれている。
晴れた日はここでお茶なんてしたら、きっと最高な気分なのだろう。
そしてその手前にはベンチがあり、アレクシスはゆっくりと椅子の上に私を下ろしてくれた。
「ありがとうございます」
「暫くここで休んでいこうか」
私はその言葉に小さく頷いた。
今はアレクシスの顔を見るだけで照れてしまいそうで、奥に広がるバラ園へと視線を向けていた。
これだけ沢山咲いていると薔薇の香りも強く感じる。
私は深く息を吸い込んで、ゆっくりと吐いた。
心を落ち着かせようとしていたのだが、不意にアレクシスは掌を重ねるように乗せてきて、私の心は再び乱される。
そして先程から痛い程に視線を感じている。
私は彼と視線を合わせないように、気付かないフリを続けていた。
(お願い、そんなに見ないで……)
「今度ここでのんびりお茶会でもしようか」
「そ、そうですね」
きっと二人でのお茶会は楽しいものになるだろう。
しかし今の私は返事をすることでさえ緊張してしまい、気の利いた言葉を返すことが出来なかった。
アレクシスはそんな私の反応を見てクスッと小さく笑うと、私の手を優しく撫でてきた。
(……っ)
「まだ照れているの? そんな顔をされてしまうと、また意地悪したくなるな」
「えっ!?」
アレクシスの言葉を聞いて、過剰に反応してしまう。
驚いた勢いで彼の方に視線を移動させてしまうと、アレクシスは優しい顔で微笑んでいた。
「リリアといると楽しくて退屈とは無縁だな。それに、そんなに可愛い反応ばかりされると、ますます独り占めしたくなる。私は欲張りだからね」
「独り占めって……」
「リリア、先程の話に戻るけど……」
アレクシスが話し始めようとした時だった。
「アレクシス殿下。リリア様とお過ごしのところ、申し訳ありません」
「……どうした?」
私達が歩いて来た方向から声が響いた。
そこにいたのはマリーだった。
アレクシスの顔からは先程の穏やかな表情は消え、厳しい視線を彼女に向けている。
恐らく王太子としての顔に戻ったのだろう。
「それが、王宮から使いの者が来まして……」
マリーの言葉を聞くとアレクシスは深くため息を漏らした。
そして私の方に視線を向けた。
「リリア、すまない。私は一度王宮に戻らなくてはならないようだ」
「大丈夫です。私のことはお気になさらず行ってきてください」
「折角リリアと楽しい時間を過ごしていたのに。なるべく早く戻るから」
「王宮からの呼び出しなら仕方のないことです。私はその間、王都にでも行ってみようかと思います」
残念だが、これは仕方が無いことだ。
アレクシスは王太子であるのだから、色々と忙しいに違いない。
私がこんなことになってしまい、気を遣ってきっと無理に時間を空けてくれたのだろう。
「王都に? 何をしに行くのか聞いてもいい?」
「色々と売りたい物があって。手持ちの資金がどれくらいになるのか、早めに把握しておいた方が今後のためにも良いと思うので」
「それって前に言ってた護符のこと?」
「はい、そうです」
「その護符は全て私が買い取るよ」
「……は?」
「優秀なリリアが作った物だ。それだけで価値がある。定価の2倍で買い取らせて」
「え、ちょっと待ってください」
話を勝手に進められ私は戸惑ってしまう。
お世話になっている身だというのに、定価の2倍の価格で売るなんてことは到底出来ない。
「リリア、悪い。今は時間があまりないんだ。この話はまた後でゆっくりでも構わないだろうか?」
「……はい、分かりました」
今はこんな話で呼び止めても悪いと思い、それ以上反論はしなかった。
「マリー、私はリリアを部屋まで送って行く。少し遅れると伝えといてくれ」
「かしこまりました」
「私なら一人で戻れますっ!」
「遠慮しなくていい。急に来たのは向こうなのだから、少しくらい待たせておいても構わないだろう」
アレクシスは当然の様に答えていて、私は思わず苦笑してしまう。
マリーは一礼すると、私達を残して先に戻っていった。
「リリア、本当にすまない。邪魔をしないよう、釘を打っておいたのだけどな」
「そのお気持ちだけで十分です」
私のことを気に掛けてくれて、それだけで十分嬉しかった。
するとアレクシスは不満そうな顔を向けてきた。
「なんですか?」
「リリアは欲がないね。ここで引き留めてくれたら、使いを追い返してでもリリアの傍にいるのに」
「そんなこと出来ませんっ。アレクシス様は立場のある方ですし。多忙であることは理解しています」
「リリアは真面目だな。だけど君らしい答えだね。それじゃあ残念だけど、戻ろうか」
アレクシスは小さくため息を漏らすと立ち上がる。
そして私の前に手を差し出してくれたので、その手を取った。
「アレクシス様、さっきからため息ばかり漏らしてますよ」
「だって本当に残念でならないからね。リリアとの楽しい時間を邪魔されたんだ。父上にはウンザリするくらい嫌味でも伝えて来るよ」
アレクシスは冗談ぽく話すと、小さく笑っていた。
こんな話をしていると、アレクシスが特別な人間なんだと思い知らされる。
そして、どうして私がなんかに興味を持っているのか不思議に思ってしまう。
(私って同情されているだけなのかな)
私はアレクシスの横顔を眺めながら、不意にそんなことを考えていた。
一度はそれでも構わないと思ってしまったけど、距離が縮んで来るとそれだけでは満足出来なくなっているのかもしれない。
そんな事を考えながら、私は繋がれたアレクシスの手をぎゅっと握っていた。
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