【本編完結】 婚約破棄された令嬢は自由に生きたい!(R18)

Rila

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71.信じたくない現実①

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(一体、何が起こっているの……?)

 間違いなく私はここにいるのに、視線の奥に見えるのも私で……。
 一瞬、自分が幽霊にでもなってしまったのではないかと疑った。
 しかし、そんな事を考えている間も、体中から打撲した後のような鈍い痛みを感じている。
 痛みを感じる神経が通っているということは、これは夢でもないし、きっと私が幽霊だという説も違う気がする。

 それならば、一体何がどうなっているのだろう。 
 私は動揺しながらも掌を広げて、自分の胸の前に移動させた。
 視線を手の方へと向けた瞬間、私は目を見張り、息をするのも忘れてしまいそうになった。

 左手の掌は血に染まり、深く切り裂かれた傷が視界に飛び込んできたからだ。

(うそ……、なんで……!?)

 傷を見ることで、切り口からの痛みを強く感じ始める。
 だけど私が驚いているのは、そんなことではなかった。
 先程サリーが自身で付けた傷と同じ場所だったからだ。
 私はそれを目の前で見せられていたのだから、直ぐに気付いた。

 慌てるように、もう片方の手で自分の頬に触れてみる。
 そして首元に触れるとすぐに違和感に気付く。

(髪が……)

 髪の丈の長さが明らかに違う。
 私の髪は腰近くまであったはずなのに、今は肩口くらいまでしかない。
 そして確認してみると髪の色は艶やかな赤色をしていた。
 その時に漸く、私の身に起こっている事実が見え初めてくる。

 視界の先に私の姿をした別の人間が映っているのも、私の髪が黒から赤に変化したのも、この推測が正しければ全て合点がいく。
 
(うそ、でしょ……? でも、どうしてこんなことになったの……? あ……、そういえばあの時……)

 私は不意にハッと何かを思い出した。
 あの時、サリーは魔方陣のようなものが書かれた紙を出していた。
 そしてその上に、私の血と彼女の血を一滴づつ垂らした。
 もしあれが何かの魔術の類だったとすれば……。
 
(まさか、血の契約……?)

 詳しいことは何も分からない。
 だけど昔何かの本で、そんなような記述を読んだことがあった。

(それじゃあ、私は今はリリアではなく、サリーの体に入っているってこと……?)

 信じられないが、私の仮説は恐らく間違ってはいないだろう。
 これだけの変化を突き付けられているのだから。
 勿論、これが夢であって欲しいと望んでいるし、受け入れたくもなかった。

 私は自分の世界に入り、周囲の存在を忘れかけいたが、目の前に気配を感じてハッと我に戻り顔を上げた。
 すると目の前にはアレクシスが立っていた。
 彼の瞳は真っ直ぐに私のことを捉えている。
 だけどその瞳に映っているのは私では無く、サリーの姿をした私なのだろう。
 そう思うと、胸の奥がぎゅっと鷲掴みにされたように苦しくなり、思わず顔を歪めてしまう。

「リリアを守るために、怪我をしたと聞いた。彼女を守ってくれたこと、感謝する。怖い思いをさせてしまったな。すまない……」

 彼は感謝すると口に出すも、苦しそうな表情を浮かべ、私に謝り頭まで下げてきた。
 その事に私は戸惑ってしまい、何も返すことが出来なかった。

 一瞬彼に真実を告げようかとも思ったが、何から話していいのか言葉が纏まらなかったし、第一こんなことを簡単に信じて貰えるかも分からない。
 きっとサリーはこの後のことも考えて、この計画を実行したに違いない。
 もし私が迂闊うかつにそんなことを口にしてしまえば、アレクシスに信じて貰えない所か、あらぬ疑いを掛けられて逆効果になってしまう可能性だってある。
 そもそもこの計画を実行したのはサリーなので、彼女の体に入ってしまった私が不利な状況であるのは変わらない筈だろう。
 だったら今は慎重に動くべきだ。

 勘が良いアレクシスなら、中身が違う事にいつか気付いてくれるかもしれない。
 
(今は落ち着かないと……。私はこんなところで絶対に終わりたくないっ!!)

「私はリリアをこれから別室へと運ぶ。この後グレインがここに来るはずだ。その後は彼の指示に従ってくれ。傷の手当てもしてくれるだろう」
 
 アレクシスの言葉に私は小さく頷いた。
 声を出さなかったのは、まだ自分がサリーの体に入っていることを認めたくなかったのかもしれない。

 そして騒がしかった父の姿が見当たらないが、恐らく私が意識を失くしている間にどこかに連れて行かれたのだろう。
 今の私には人の心配をする余裕なんて持ち合わせていなかった。
 それよりも、これから私はどうなってしまうんだろうという不安で頭がおかしくなってしまいそうだった。
 
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