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昨夜は婚約者であるとはいえ、あんなにも恥を晒してしまったわけだが、結論から言うとあれ以上のことはしなかった。
私が過度に動揺していたことと、お互いの気持ちを確認することができたので、心の準備ができるまで待ってくれることになったのだ。
(私が心の準備が……なんて言ってしまったからなのよね)
正直なところ、あのまま純潔を奪われても構わなかった。
けれど、いろいろな体験を一気にして、しかも殿下はいつも以上に意地悪で。
あのまま続けていたら、私はどうなってしまっていたのだろう。
そう思うと、猶予を与えてくれたことには素直に感謝するべきなのかもしれない。
朝食を終えると、私は殿下を呼び止めた。
昨日はあんなことがあり、ちゃんと話ができなかったので今日こそはその話をするために。
「あのっ、アンドレアス様……、このあと少しよろしいでしょうか?」
まだ名前で呼ぶことに慣れていないせいか、変に照れてしまう。
というか、昨日の今日なので、とてつもなく恥ずかしく感じる。
「構わないよ」
「それじゃあ、応接間に……」
「ああ、わかった」
「案内しますね」
そうして私たちは居間を出て、応接間に向けて歩き出した。
相変わらず殿下は落ち着いていて、動揺の顔色など全く表に出さない。
さすがと言うべきなのか、私も見習いたいくらいだ。
応接間は居間を出てすぐのところにあるため、あっという間に到着した。
部屋に入ると、私は中央にあるソファーへを誘導する。
彼が席についたので、対面するように座ろうとすると突然手首を掴まれた。
「どこに行くの?」
「どこって、そちらの席に……」
私は戸惑った声を出して、対面するように置かれたソファーへと視線を向ける。
「今は二人しかいないのだから、隣でもいいんじゃない?」
「……っ、でも、これからするのは大切なお話になるので……」
「だったら、なおさら隣に座って。話の邪魔はしないから」
「…………」
彼は私が隣に座るまで、手首を離す気はなさそうだ。
私は諦めて「わかりました」と答えると、殿下の隣へと腰を下ろした。
そして心を落ち着かせるために、深く息を吸い込む。
(大丈夫……。アンドレアス様は私の味方でいてくれる。信じるって決めたのだから……)
私は覚悟を決めると、彼の瞳をじっと見つめた。
「単刀直入に言います。実は私、前世の記憶を持っているんです」
「…………」
私が思いきって告げると、彼は僅かに目を細めた。
反応が薄いのはいつものことだけど、予想がつけられないので余計に緊張してしまう。
「あの……、アンドレアス様も転生者、ですよね?」
これはあくまで私の勘ではあるけど、多分間違っていない気がする。
直球すぎる質問だとは思うけど、腹の探り合いなんて最初からするつもりはなかったので、これでいい。
私の質問を聞いて、彼はなにかを考えているのか暫く黙っていた。
その間、私の心臓の音はバクバクと大きく脈を打っている。
(どうして、黙っているの……? もしかして、当てが外れた?)
「……おそらく、そういうことになるのかな」
「え……?」
漸く殿下は言葉を口にしたのだが、それは曖昧すぎる返答だった。
想定外な反応をされて、私は戸惑ってしまう。
私が過度に動揺していたことと、お互いの気持ちを確認することができたので、心の準備ができるまで待ってくれることになったのだ。
(私が心の準備が……なんて言ってしまったからなのよね)
正直なところ、あのまま純潔を奪われても構わなかった。
けれど、いろいろな体験を一気にして、しかも殿下はいつも以上に意地悪で。
あのまま続けていたら、私はどうなってしまっていたのだろう。
そう思うと、猶予を与えてくれたことには素直に感謝するべきなのかもしれない。
朝食を終えると、私は殿下を呼び止めた。
昨日はあんなことがあり、ちゃんと話ができなかったので今日こそはその話をするために。
「あのっ、アンドレアス様……、このあと少しよろしいでしょうか?」
まだ名前で呼ぶことに慣れていないせいか、変に照れてしまう。
というか、昨日の今日なので、とてつもなく恥ずかしく感じる。
「構わないよ」
「それじゃあ、応接間に……」
「ああ、わかった」
「案内しますね」
そうして私たちは居間を出て、応接間に向けて歩き出した。
相変わらず殿下は落ち着いていて、動揺の顔色など全く表に出さない。
さすがと言うべきなのか、私も見習いたいくらいだ。
応接間は居間を出てすぐのところにあるため、あっという間に到着した。
部屋に入ると、私は中央にあるソファーへを誘導する。
彼が席についたので、対面するように座ろうとすると突然手首を掴まれた。
「どこに行くの?」
「どこって、そちらの席に……」
私は戸惑った声を出して、対面するように置かれたソファーへと視線を向ける。
「今は二人しかいないのだから、隣でもいいんじゃない?」
「……っ、でも、これからするのは大切なお話になるので……」
「だったら、なおさら隣に座って。話の邪魔はしないから」
「…………」
彼は私が隣に座るまで、手首を離す気はなさそうだ。
私は諦めて「わかりました」と答えると、殿下の隣へと腰を下ろした。
そして心を落ち着かせるために、深く息を吸い込む。
(大丈夫……。アンドレアス様は私の味方でいてくれる。信じるって決めたのだから……)
私は覚悟を決めると、彼の瞳をじっと見つめた。
「単刀直入に言います。実は私、前世の記憶を持っているんです」
「…………」
私が思いきって告げると、彼は僅かに目を細めた。
反応が薄いのはいつものことだけど、予想がつけられないので余計に緊張してしまう。
「あの……、アンドレアス様も転生者、ですよね?」
これはあくまで私の勘ではあるけど、多分間違っていない気がする。
直球すぎる質問だとは思うけど、腹の探り合いなんて最初からするつもりはなかったので、これでいい。
私の質問を聞いて、彼はなにかを考えているのか暫く黙っていた。
その間、私の心臓の音はバクバクと大きく脈を打っている。
(どうして、黙っているの……? もしかして、当てが外れた?)
「……おそらく、そういうことになるのかな」
「え……?」
漸く殿下は言葉を口にしたのだが、それは曖昧すぎる返答だった。
想定外な反応をされて、私は戸惑ってしまう。
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