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「いや、違うな。転生というよりは、同じ記憶を何度も繰り返していると言ったほうが正しいのかもしれない」
「……? それはどういう意味ですか?」
今の殿下の態度を見る限り、彼自身も自分の身に起こっていることを全て把握できてないように感じた。
転生なんてこの世界でも、ものすごく稀なことであり、すぐに受け入れられなくても当然だと思う。
私も前世の記憶を取り戻したときは、ひどく混乱したものだ。
(アンドレアス様は、最近前世の記憶を思い出したのかしら……?)
「リゼもあの夢を見ているのか?」
「夢、ですか……?」
私が不思議そうに問いかけると、彼は静かに話し始めた。
「私がその夢を初めて見たのは、魔法学園に入学した日のことだった。最初のうちは週に一度程度であったが、日に日にその頻度は増えていったんだ」
「その夢というのが、前世の記憶だと……?」
「いや、最初は予知夢かなにかだと思っていたよ。夢の内容はいつも学園での出来事だったからね」
「え……」
「だけど、不思議なんだ。私は間違いなく自分の体の中にいるのに、まるで誰かに操られるように発言し行動していた。自分の意思を完全に無視されるのだから、当然気持ちのいいものではない」
彼は嫌悪するかのように表情を歪め、困ったようにため息を漏らす。
「しかも、何度も何度も同じ場面を見せられる。その度に私は同じ言動をして、周りも同じ反応をする。ただ違うのは……ロナ嬢だけ。どういうわけか、ロナ嬢は毎回雰囲気が違うように感じた。容姿は同じなんだけど、中身が全く別人のようなんだ。そして、彼女は夢の中ではいつも中心にいる」
彼の話をすぐには理解することができなかった。
私が予想していたものとは全くの別物であったからだ。
「これはなにかの警告なのではないかと考えた。これが予知夢なのか、時間を巻き戻されているのか、それとも全く別のなにかなのかは分からない。だけど、状況からして、ロナ嬢が関わっていることには違いないだろう」
殿下は誰かに操られているようだと話していた。
考えたくはないけど、今の話を聞いてある一つの仮説が頭の中に思い浮かんだ。
「あのっ、……その夢の中でロナさんは、なにか気になることを言ったりしていませんでしたか?」
「気になること?」
「はい。……例えば、乙女ゲームとか、自分はヒロインだとか……」
「ああ、言っていた。聞き慣れない言葉だったから、意味は良く分からなかったが……」
「やっぱり……。他にも聞きなれなかった言葉で、気になったものはありませんか?」
「たしか……、自分はプレイヤーだと発言していたな」
間違いない。
ロナは転生者で確定だ。
そして、殿下が見せられている夢というのは、プレイヤーであるヒロインロナの記憶。
毎回人格が違うのはプレイしている中身の人間が違うから。
(ってことは、アンドレアス様はループさせられているってこと? それって私もってことよね?)
だけど、私にはそんな記憶は残っていない。
ゲームに登場する他のメンバーがどうなのかは分からないけど、私に過去の記憶が残っていない以上、エンド後にリセットされてスタート地点に戻されている可能性もある。
(嘘でしょ……)
まさか、こんなにも面倒な状況になっているなんて予想もしなかった。
彼と話さなければ、そんな状況にさえ気づけなかった。
断罪さえ回避できれば、楽しいスローライフが待っていると安易に考えていたが、今の殿下の話が本当だとすれば、ロナがゲームをクリアしてしまえば再びリセットされることになる。
私はスローライフを味わうことなく、また悪夢の悪役令嬢に戻されるということだ。
(冗談じゃないわ……! こんな運命酷すぎる!)
「リゼ、君も私と同じ夢を見ているのか?」
私が理不尽さに怒りを感じていると、殿下は心配そうな顔で問いかけてきた。
「いえ、私はそのような夢はみていません」
「そうか……」
その返答を聞くと、彼は安堵したような表情を見せた。
きっと、私にとっては良くないことが彼の夢の中では起こっていたのだろう。
私のことを気遣ってくれる彼の気持ちに嬉しくなり、込み上げてくる怒りも少しだけ治まった。
私はロナの恋に火をつけるために用意された、ただの当て馬。
役割を果たせば物語から強制的に退場させられる存在。
(もし、本当にループしているのだとしたら、なんとか抜け出す方法を見つけないと……!)
「……? それはどういう意味ですか?」
今の殿下の態度を見る限り、彼自身も自分の身に起こっていることを全て把握できてないように感じた。
転生なんてこの世界でも、ものすごく稀なことであり、すぐに受け入れられなくても当然だと思う。
私も前世の記憶を取り戻したときは、ひどく混乱したものだ。
(アンドレアス様は、最近前世の記憶を思い出したのかしら……?)
「リゼもあの夢を見ているのか?」
「夢、ですか……?」
私が不思議そうに問いかけると、彼は静かに話し始めた。
「私がその夢を初めて見たのは、魔法学園に入学した日のことだった。最初のうちは週に一度程度であったが、日に日にその頻度は増えていったんだ」
「その夢というのが、前世の記憶だと……?」
「いや、最初は予知夢かなにかだと思っていたよ。夢の内容はいつも学園での出来事だったからね」
「え……」
「だけど、不思議なんだ。私は間違いなく自分の体の中にいるのに、まるで誰かに操られるように発言し行動していた。自分の意思を完全に無視されるのだから、当然気持ちのいいものではない」
彼は嫌悪するかのように表情を歪め、困ったようにため息を漏らす。
「しかも、何度も何度も同じ場面を見せられる。その度に私は同じ言動をして、周りも同じ反応をする。ただ違うのは……ロナ嬢だけ。どういうわけか、ロナ嬢は毎回雰囲気が違うように感じた。容姿は同じなんだけど、中身が全く別人のようなんだ。そして、彼女は夢の中ではいつも中心にいる」
彼の話をすぐには理解することができなかった。
私が予想していたものとは全くの別物であったからだ。
「これはなにかの警告なのではないかと考えた。これが予知夢なのか、時間を巻き戻されているのか、それとも全く別のなにかなのかは分からない。だけど、状況からして、ロナ嬢が関わっていることには違いないだろう」
殿下は誰かに操られているようだと話していた。
考えたくはないけど、今の話を聞いてある一つの仮説が頭の中に思い浮かんだ。
「あのっ、……その夢の中でロナさんは、なにか気になることを言ったりしていませんでしたか?」
「気になること?」
「はい。……例えば、乙女ゲームとか、自分はヒロインだとか……」
「ああ、言っていた。聞き慣れない言葉だったから、意味は良く分からなかったが……」
「やっぱり……。他にも聞きなれなかった言葉で、気になったものはありませんか?」
「たしか……、自分はプレイヤーだと発言していたな」
間違いない。
ロナは転生者で確定だ。
そして、殿下が見せられている夢というのは、プレイヤーであるヒロインロナの記憶。
毎回人格が違うのはプレイしている中身の人間が違うから。
(ってことは、アンドレアス様はループさせられているってこと? それって私もってことよね?)
だけど、私にはそんな記憶は残っていない。
ゲームに登場する他のメンバーがどうなのかは分からないけど、私に過去の記憶が残っていない以上、エンド後にリセットされてスタート地点に戻されている可能性もある。
(嘘でしょ……)
まさか、こんなにも面倒な状況になっているなんて予想もしなかった。
彼と話さなければ、そんな状況にさえ気づけなかった。
断罪さえ回避できれば、楽しいスローライフが待っていると安易に考えていたが、今の殿下の話が本当だとすれば、ロナがゲームをクリアしてしまえば再びリセットされることになる。
私はスローライフを味わうことなく、また悪夢の悪役令嬢に戻されるということだ。
(冗談じゃないわ……! こんな運命酷すぎる!)
「リゼ、君も私と同じ夢を見ているのか?」
私が理不尽さに怒りを感じていると、殿下は心配そうな顔で問いかけてきた。
「いえ、私はそのような夢はみていません」
「そうか……」
その返答を聞くと、彼は安堵したような表情を見せた。
きっと、私にとっては良くないことが彼の夢の中では起こっていたのだろう。
私のことを気遣ってくれる彼の気持ちに嬉しくなり、込み上げてくる怒りも少しだけ治まった。
私はロナの恋に火をつけるために用意された、ただの当て馬。
役割を果たせば物語から強制的に退場させられる存在。
(もし、本当にループしているのだとしたら、なんとか抜け出す方法を見つけないと……!)
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