【完結】婚約者に振られた私に付け込むのはやめてください【R18】

Rila

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36.話して欲しい

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私はあの後、あまりの疲労で1日眠り続けた。
目が覚めると自分の部屋のベッドの上だった。

後から聞いたらサラの執事が家まで送り届けてくれたらしい。
私は学園の帰りにサラの家に遊びに行って眠ってしまい、起きなかったので翌日送ってもらったという事になっていた。
送ってくれたのがマティアスじゃないと知りほっとした。
そこは気遣ってくれたサラに感謝した。

もし元婚約者のマティアスに送ってもらっていたら、私の家は今大混乱していたかもしれない。
きっと両親からマティアスの事を聞かれ、私は嘘を付き通すなんて出来なかったと思う。
それにマティアスとの関係は誰にも知られたくなかった。

私は体をゆっくり起こすと、あの悪夢の出来事を思い出した。
あれは夢だったんじゃないかと思いたかった。
だけど体中に付けられた痕を見ると現実だと思い知らされる。

私はあの日マティアスに抱かれた。
何度も…何度も。


そしてあの後のマティアスとサラとの会話を寝たフリをしながら聞いてしまった。
マティアスをあそこまで追い込んだのは他でもない私だ。
全部私の所為だ。
そんな私が幸せになんてなれる訳がない。

もうこのままではいられないと思った。
だから私は決意してハーラルトに会いに行った。





「リリーから会いに来てくれるなんて…珍しいな。何かあったか?」
ハーラルトは私の突然の訪問に少し驚いている様だった。
だけどいつも通り優しい笑顔を私に向けていてくれて、今はそれを見るのが辛くて仕方なかった。

「……ハルに…話さないといけない事があるの…」
私は表情を強張らせながらハーラルトの事を見つめていた。
ハーラルトもいつもとは違う雰囲気の私に気付いている様だった。

「……私達の婚約…無かったことにして欲しいんです。簡単に出来ない事は分かってます。私は…どんな罰も覚悟してます…。だから…検討してもらえないでしょうか…」
私は真っすぐにハーラルトの目を見ながら、はっきりとした言葉で伝えた。

「どうして…?理由を聞かせて?」
ハーラルトはあまり表情を崩さないまま落ち着いた声で続けた。
ただ真っすぐに私を見つめていた。

「私……色んな人を傷付けて…私だけが幸せになるなんて…出来ないっ…です…。それに…私はもう…ハルの傍にいる資格なんて…無いから…」
震えた声を必死に抑えながら、ゆっくりと伝えていく。

今だけは泣きたくなかった。
だから溢れそうなる涙を必死に耐えた。

「それは…どういう意味…?」
「それは……私が…マティアスに……」
私は掌をぎゅっと握りしめながら声を震えさせて言おうとすると「言わなくていい」と止められた。
多分今の私の言葉でハーラルトは理解したんだと思った。

暫くハーラルトは何かを考えてる様で沈黙が続いた。
私は不安な顔でハーラルトの答えを静かに待っていた。
何を言われても覚悟は出来てる。


「リリーの言い分は分かった。こうなった以上リリーもただでは済まない事は覚悟しておいて」
「はい……」

「リリーには暫くの間、離宮の方で軟禁させてもらう。こちらにも色々手続きがあるから落ち着くまでは外に出られると困るんだ。これは命令だ。逆らう事は許さない」
「はい……」

「アーレンス伯爵には僕の方から伝えておく、勿論学園も暫くの間休学してもらう」
「はい……」

「リリーの処分は全てが終わったら連絡させてもらう」
「はい……」

ハーラルトはまるで業務連絡の様に淡々とした口調で話していく。
そこにハーラルトの感情を感じることが出来なかった。
何も感じないからこそ、怖かった。

私に幻滅したんだろうか。
そうされても仕方ない事を私はした。
覚悟していたはずなのに…、想像以上に辛かった。
涙が溢れそうになり、唇を噛み締めながら必死に我慢した。


暫くするとハーラルトは側近を呼んだ。
そして何やら暫く話している様子だった。
私は少し離れた所から話し終わるのを待っていた。

暫くすると話し終わったのか、側近が私の方に近づいて来た。

「リリー・アーレンス様、貴女を離宮にご案内します」
「はい…」
側近は丁寧な口調でそう言った。
私は奥で背を向けているハーラルトに深々と頭を下げて部屋を後にした。
ハーラルトは私が出て行く時も一切私の方を向くことは無かった。


ハーラルトを怒らせてしまった。
もう二度と前みたいに話してもらえないんだと思うと目からは涙が止めどなく溢れた。
私は一番大事なものを失ってしまったんだ…。

隣にいた側近は泣きながら歩く私には何も言わずに黙っていてくれた。





*****

「こちらが今日から貴女の部屋になります。室内にあるものはご自由にお使いください。何かあれば執事もしくはメイドをお呼びください。それからこの部屋から出ることはお控えください」
「はい……」
室内に入るとハーラルトの側近が色々説明をしてくれた。

「申し遅れましたが、私の名前はラエル・シュティードと申します。何かあれば私に言っていただいても構いませんので…。それでは私はこれで失礼します」
「ありがとうございます」
そう言うとラエルは丁寧に挨拶をして部屋を出て行った。


1人になると、私は部屋の奥へと入りベッドの上に腰掛けた。
部屋を見渡してみるととても広い部屋だった。
まるでハーラルトが使っていた部屋と同じ位の広さだった。
こんな広い部屋、私なんかには勿体なさ過ぎると思ってしまった。

ハーラルトが言っていた通り私はただでは済まない事は納得していた。
私の勝手な都合でこうなったのだから罰を受けるのは当然だと思う。

だけど家には迷惑を掛けたくない。
罰を受けるのは私だけにしてもらえるようにお願いしようと思っている。
きっと優しいハーラルトならその願いを聞き入れてくれると思う。

そして今は逆に誰とも合わずに一人になれる時間を与えられたことにほっとしていた。
もう色々考える事に私は疲れ切っていた。

私はただぼーっと一日を過ごしていた。
何もしないでいると時間が流れるのがとてもゆっくりで穏やかに感じる。


そんな時ガチャという音が響いて部屋の中に誰かが入って来た。
ベッドがある場所から入口は少し離れていて、誰が来たのかは分からない。
メイドかなと思っていると目の前に現れたのはハーラルトだった。


「リリー…少しは落ち着いたか?」
ハーラルトはいつもの優しい表情と口調で私に問いかけた。

「………どう…して…?」
突然目の前にハーラルトが現れ私は困惑していた。
私は幻を見ているのだろうか。

「ここは今日から僕の部屋でもあるからな」
「え……?」
私は理解できないという顔をしているとハーラルトは私の隣に腰掛けた。

「先に伝えておくけどリリーとの婚約を破棄つもりは無い」
ハーラルトははっきりと断言した。

「…でも…処分って…」
私は困惑した顔で問い返した。

「処分については今は言えない。だけどすべてが終わったら話すからそれまで待っていて欲しい」
「……でもっ……私は…ハル以外の人と…っ…」
私が泣きそうな声で言おうとするとハーラルトにそのまま抱きしめられた。

「もう二度とそんなことはさせない。守れなくて、ごめん…」
ハーラルトは声を押し殺す様に苦しそうな声で謝った。

「………っ」
その言葉を聞くと私の目からは涙が溢れた。

「僕は本当に駄目だな。大事な時にいつも傍に居てやれなくて、守る事すら出来ないのか…」
「そんなことっ……ないっ…。私がもっと警戒してればっ…」
ハーラルトの辛そうな声を聞いてると、私まで辛くなり涙が更に溢れてくる。
私の所為でハーラルトにまでこんな思いをさせてしまって辛くて仕方なかった。

「悪い、少し取り乱してしまったみたいだ。リリーの前では感情的にはならない様に努力はしてたんだが、無理だったみたいだ…すまないな」
ハーラルトは困った様に苦笑した。

「リリーの事を責めたい訳じゃないんだ。だから…そんなに泣かないで。僕はリリーの事を大切に想っているのに何も出来ない自分の無力さが悔しくて仕方がない。1度ならず2度目も止められなかったからな。リリーは悪くないし、僕に謝る必要も自分を責める必要なんて無いんだ。だからもう婚約を止めるなんて言わないでくれ。次は絶対に同じことはさせないから…」
ハーラルトは抱きしめる力を緩めると私の顔を優しい表情で見つめながら、涙を指で拭ってくれた。

「どう…して…?私は責められても仕方ない事…したんだよ…?」
私は声を震わせながら聞き返した。

私は責められることを覚悟していたはずなのに、ハーラルトは私に対して一切そんな言葉を言わなかった。
それどころか、逆に自分を責めて私に許しを請おうとしている様に見えた。

どうして……


「リリーの顔を見たらそれが合意の上ではない事位分かるよ。それでもリリーが自分の事を責めると言うのなら、僕がリリーの傍に居れなかったこと、守れなかった事を責めればいい。全部僕の所為にしてくれればいいんだ。僕はこれ以上リリーが辛そうにしている姿を見たくない」
「………っ……」
私はその言葉を聞くと胸の奥が熱くなり涙で視界が曇った。
ハーラルトはそんな私の事を泣き止むまで何も言わずにずっと抱きしめてくれた。


「ねぇ…リリー…辛いかもしれないけど、リリーが悩んでる事を僕に全て話して欲しい。リリーは僕にもっと頼るべきだ。僕はリリーの夫になるんだから遠慮なんて無用だろう?リリーが苦しんでるなら力になりたい、リリーが悩んでるなら一緒に悩みたい。もっと僕を信用して欲しい…。僕はリリーの味方なんだって事忘れないで…」
「……っ……ハルっ…ごめんなさいっ……私…」
ハーラルトの優しい言葉が私の今までもやもやしていた心を晴らしてくれるようだった。

どうしてもっと早く気付かなかったんだろう。
ハーラルトはいつだって私の事を一番に考えてくれていた。
最初から全部打ち明けていれば良かった。

私は馬鹿だ。
傍にいたのに…私はハーラルトの何を今まで見て来たんだろう。



「ゆっくりでいいから話して……リリーが考えてる事…」
ハーラルトは優しい声で言った。
私は小さく何度も頷いた。



もう一人で悩むことは止めよう。
私には悩みを聞いてくれて頼れる存在が傍にいるのだから。

心が落ち着いて来ると私は胸の内をゆっくりと一つづつ話始めた。

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