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第一章:幼少期(1)初めての友達と伝説の薬草

6.初めて出来た友達②

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 私がラフィーに手紙を書いてから数日が経ち、今日は再び王宮へと来ていた。
 つい先日ラフィーからの手紙が届き、短い時間なら会っても構わないと書かれてあったからだ。
 私は緊張しながら、廊下をゆっくりと歩いていた。

 これからラフィーに会えるのが楽しみでもある反面、怖くもあった。
 真実を知った私はラフィーの顔を見て笑顔で話す事が出来るのだろうか。
 もし私が悲しい顔を少しでも見せたら、きっとラフィーは心配するだろう。
 だから絶対にラフィーの前では悲しそうな顔を見せてはだめと心の中で誓った。

(ここまで来たらもう考えても仕方が無いわ。それにずっとこの日を楽しみにしてたんだから。今は余計な事は考えないようにしよう!)

 自分にそう言い聞かせると、トントンと目の前の扉を軽くノックした。

「ルティナです。ラフィー王女に会いに来ました」

 私が明るい声で扉に向かい話すと、ゆっくりと扉が開かれた。

「ルティおねえちゃん! 今日は来てくれてありがとぉ」

 窓際に置かれているベッドの上に座るラフィーと目が合った。
 その時のラフィーの顔は、以前会った時と変わらず笑顔だった。
 私はそれを見た瞬間胸の奥が熱くなり、笑顔が壊れそうになったが必死に耐えた。

「急に来てしまってごめんなさい」
「ううんっ、来てくれてわたしすごく嬉しいっ! 本当はまた外で一緒に遊びたかったけど、最近少し体調が良く無くて。ベッドから出られないんだ。折角来てくれたのにごめんね」

 ラフィーはすまなさそうに表情を曇らせていたので、私は首を大きく横に振った。

「そんな、謝らないでっ! 私はラフィーちゃんの顔を見れたらそれで満足だからっ! 初めて出来た友達だし、本当にそれだけで十分で……」
「とも、だち……?」

 私の言葉を聞いたラフィーは驚いた顔で小さく呟いた。

「……っ! 勝手に友達なんて言ってしまってごめんなさい。私なんかが王女であるラフィーちゃんと友達だなんて図々しいよね」

 その時、勝手に友達だと思い込んでいたことに気付き慌てて謝った。

(ラフィーちゃんは友達だなんて一言も言ってなかった。遊んだのも一回だけだし。それなのに嬉しくて勝手に舞い上がって、友達だなんてなんで思っちゃったんだろう。相手は王女様なのに)

「友達……、わたしとルティおねえちゃんは友達!」

 ラフィーは嬉しそうに繰り返していた。

「え……っと、私と友達になってくれるの?」
「うんっ!」

 私が戸惑いながら聞き返すとラフィーは笑顔で答えた。

「や、やったぁ! 友達第一号が出来ちゃった」
「わたしもね、友達って初めてなのっ! だからすごく嬉しいっ」

 僅かに頬を染めて嬉しそうに話すラフィーは、本当に可愛らしくて天使のように見えた。

 ラフィーは私にとって初めての友達だった。
 だから失いたくは無いと思った。
 どうにかして、救える方法は無いのだろうか。

 今私に出来ることは、ラフィーに会いに来て一緒に楽しい時間を過ごす事だろう。
 私と一緒に話している時間だけでも不安を取り除いてあげたい。
 今の私に出来ることは恐らくそれくらいしかないだろう。

 1時間程ラフィーと他愛もないお喋りを楽しんだ。
 今のラフィーの体力だと、1日1時間程度が限度らしい。
 だけど1時間なら毎日来ても大丈夫と言われたので、私は出来る限り毎日ラフィーに会いに来ることに決めた。

「今日はありがとうっ! ルティおねえちゃんと話せてすごく楽しかったよっ」
「私もだよっ! 明日もまた来るね!」

「うんっ、楽しみに待ってるねっ!」
「それじゃあ、またね」

 私達は笑顔で分かれた。


***


 ラフィーと別れて廊下を歩いていると、不意にある一文が頭の中を過った。
 そういえば、ラインハルトの紹介分の中に妹に関しての記載があったのを思い出した。
 それは信じたくない内容だった。
 だけど思い返すと、やっぱりそう書かれていた様な気がする。

『幼い頃に妹を失くす』……と。


 目の前が真っ暗になった。
 この妹というのは間違いなくラフィーの事だろう。
 何故ならラインハルトには妹は一人しか存在しないからだ。
 シナリオ通りに進めば、早くはない未来に起こると言う事。

 こんなの残酷過ぎる。
 どうして、あんなに小さいラフィーが死ななくてはならないんだろう。 これをシナリオとして書いた人間を恨んだ。

(こんなことってあんまりだ。ラフィーちゃんがいなくなるなんて、そんなの絶対に嫌っ!!)

 私の目からは大粒の涙が溢れていた。
 泣きながら必死に助ける方法を考えてみたが、直ぐには思い浮かばない。

「どうされましたか?」

 そんな時、突然背後から声が響いた。
 私は思わず振り返ってみるも涙で視界が曇っているせいで、そこに居るのが誰だか直ぐには分からなかった。

「あの、大丈夫ですか?」

 私が泣いている事に気付くと、その声の主は戸惑っている様に見えた。

「あ、ごめんなさいっ。私なら大丈夫です」

 私は慌てて指で涙を拭うと再び目線を上に向けた。
 そして目の前にいた人物が誰だか分かると、私は驚いて固まってしまった。
 何故ならそこに居たのはラインハルトだったからだ。

「もしかして、妹のラフィーと仲良くしてくださっているルティナ・グレイス嬢ですか?」

 ラインハルト名前を呼ばれドキドキしながらも、私は小さく頷いた。

「やっぱり。少し貴女とお話をしてみたいと思っていました。ここで話すのも何ですし、場所を変えませんか?」

 ラインハルトの口調は柔らかくて優しかった。
 本当におとぎ話に出てくる王子様のようだった。
 場所を変えようと言ってくれたのは、きっと私がこんなにも泣いているからだろう。
 ラインハルトの心遣いに感謝した。
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