【完結】勇者の幼馴染ですがパーティーを勝手に抜けたら、ヤンデレ化してどこまでも追いかけて来た【R18】

24.罪

「ラナ、体は大丈夫…？」
　ルイスは私の頭を優しく撫でながら心配そうに聞いて来た。

「……っ……っ…」
　声を出そうとしているのに、声が出ない。
　私は目で訴える様にルイスの顔を見つめた。

「声が…出ないのかな？そんな不安そうな顔をしなくても平気だよ。ラナの可愛い声は直に戻るから安心して」
「……？」
　ルイスは何かを知っている様な物言いをしていた。
　私の体の異変について何か知っているのだろうか。

「今はラナの体が適合出来る様に調整されている最中だから少し苦しいかもしれないけど我慢してね」
　その言葉でルイスには、私に今何が起こっているのか、分かっているのだと知った。
　私は喋れないので教えて欲しいと一生懸命目で訴えた。

「ラナの体に異変が起きている理由、知りたいのかな？」
　その言葉に私は小さく何度も頷いた。
　するとルイスは口端を釣り上げ不敵な笑みを見せた。

「今ラナの体は作り変えられてる最中なんだ。これから永遠に僕と生きていくための準備をしているんだよ」
「……？」

「ラナに良いことを教えてあげるね。ラナが適合した時点で、僕達は共存する為にこのままの姿で止まるんだ。簡単に言えば不老不死って事かな。お互い自害は出来ない。命を絶つ方法は一つだけ、僕がラナを殺すか、ラナに僕が殺されるか…そのどちらかしかないんだ。もちろん僕は絶対にラナを傷つけるつもりはないよ、だからラナは何も心配しないで」

「僕の命はラナの手の中にあるんだ。ああ…愛しいラナに僕の命を預けているのかと思うと嬉し過ぎて興奮が止まらないよ」
「………」

　ルイスが何を言っているのか良くわからない。
　適合…？共存…？
　それに私達が殺し合うって…なに…？

　歪み切った表情で笑うルイスの顔に恐怖を感じていた。
　完全にルイスは狂っている様に見えた。
　私が眠っている間に…一体何があったの？
　魔王に何かされたの…？
　頭の中は混乱で今にもパンクしそうだった。


「ラナはね、もうすぐ魔王になるんだよ」
　混乱している私の表情を読み取る様に突然ルイスは私の耳元でそう囁いた。

「ラナの体はその準備を今しているんだよ。そんな泣きそうな顔しないで…？何も怖がる事なんて無いよ。僕が一生ラナの事守ってあげるからね。ラナの事を傷つけようとする者は全て僕が排除してあげる。ラナが生きていける最低限の保証はするから安心して？もちろんこの城からは出れないように、ラナの魔力は僕が管理させてもらうけどね」
　ルイスの言葉が徐々に理解出来てくると私は絶望を感じて、恐怖から涙が溢れていた。
　怯える様に震える私をルイスは優しく抱きしめた。

「愛してるよ…ラナ」
　ルイスの言葉が重く私の心にのしかかる。

「こんなに震えて、僕の事怖い？…ふふっ、だけど怖がっても絶対に離してあげないよ」
「………っ…」

「ラナだって気づいているんでしょ？僕の心を壊したのはラナだってこと…」
　ルイスの言葉に胸の奥が痛くなった。
　私はどこかで気付いていた。
　何度もルイスの心を傷つけていたことを。

「……っ……っ…」
　何度言葉に出そうとしても声にならない。

　私は『ごめんね、ルイス』と何度も心の中で叫んでいた。
　ルイスを壊してしまったのは私だから。
　謝った所で今更どうにもできない事は分かっているけど、そうする事しか私には出来なかった。

「そんなに泣く位…僕の事が怖い？」
　ルイスは悲しそうな顔で私の顔を見つめた。
　私は必死に出来る限りの力を使って首を横に振ろうとした。
　だけどそれはルイスには届かなかった。


「ラナの泣き顔は可愛いけど、その顔を見ていると胸の奥が痛くなる。ラナの声が戻るまで…このままラナの事抱かせて…」
　ルイスはとても傷ついた様に悲しそうな顔をしていて、その目からは涙が零れ落ちた。


「ラナの事、本当に愛しているんだ…。だから泣かないで…。泣くのを忘れる位愛してあげるから…」