ずっと好きだった人が親友の婚約者になった。応援したら粘着されたので逃げることにした【R18】

Rila

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第一部

6.ご主人様と呼ばないで

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「アリア嬢…こんな所にいたんだな」
私が振り返るとにっこりと胡散臭い笑顔を纏いながら笑いかける男がいた。
その姿を見ると私は反射的に引きつった顔になる。

シリル・ディレイズ…伯爵令息と言う事になってるけど、彼の本名はシリル・フォン・ライラッド
隣国の第五王子と言う事を隠してこの学園に留学している。

漆黒の髪に、深紅の瞳。その上、やたらと色気を振りまいてる。
そのせいか令嬢達が常に彼の周りに群がってくる。
彼自体も女たらしで有名で婚約者も恋人も作っていない。来るもの拒まず、去る者追わずらしい。
第五王子なので継承権の順位も低く、自由気ままに活動している。

そして最大の問題が彼は変態だと言う事。気の強い女性に虐められるのが好きな変態。
自分の事を『犬』と言い、私を何故か崇拝してやたらと付き纏って来る。
以前の私は女王様気質があったので、シリルの事を犬の様にこき使って喜んでたけど…今は無理。


「そんな会って早々、嫌な顔されると傷つくだろ…ご主人様」
「ご主人様って言わないでくださいっ…」
寂しそうな顔をわざとらしく作りながらこっちを見るのは止めて欲しい。
私がドン引きしてるのにも気付いて欲しい。

「今日は不機嫌なのか?」
「それは…朝から変なものを見てしまったから…」
貴方の事ですよ!と視線で訴えた。

「そうなのか。それは残念だったな。これやるから機嫌なおしてくれ、ご主人様」
「だからっ…その呼び方やめてください…っ」
シリルは手に持っていた箱を私に手渡した。

「これは…?」
「怒ってる時は甘いものって言うだろ…。最近街で有名になってる焼き菓子らしいよ」

私は箱を開けると中には見た目がカラフルのマカロンの様なお菓子が綺麗に並んでいた。

「美味しそう…ってこれシリル様がもらったんじゃないの?」
「まぁそうだけど、俺そんな甘いもの沢山は食べれないから…」
困った様に話すシリルを見て、私はいくつか箱の中からお菓子を取り出した。

「半分貰っておきます。でもシリル様がもらったものなんだから、ちゃんと食べてあげてくださいね」
「遠慮しなくていいのに…」

私は手に持ったお菓子を口の中に入れると甘い風味が口いっぱいに広がり、笑顔になる。
ああ…美味しいっ!!
2個目もぱくっと食べてしまった。
そして3個目も…。
危険だわ…!これ食べ出したら止まらなくなるやつだ…。

私がお菓子に食べるのに夢中でいるとシリルは体を震わせていた。
どうしたんだろうと思い顔を上げると必死に笑いを耐えてるシリルがいた。

「な…何?」
「…くくっ…その食べっぷり良いな。どうせ足りないんだろ…?」
シリルは箱を再び私に差し出してきた。
受け取りたいけど、受け取てしまっていいものか悩んでると強引に私の手の中に持たせた。

「悩むくらいなら貰っとけ。それにしても令嬢たるものが廊下でお菓子を食べるとか…笑えるな…くくっ…」
「あっ…すっかり…忘れてた…」
私はここが廊下であることをすっかり忘れていた。
がーんと肩を落としていると、肩をぽんぽん叩かれた。

「大丈夫だよ、この廊下滅多に人通らないから…良かったな。ご主人様」
完全にからかい口調で言われて、恥ずかしくなった。

「またお菓子貰ったらやるよ」
「いいですよっ、人に貰ったものを貰うとか悪いし…」

「だけど普通に上手そうに食べてたのはどこの誰だろうな…」
「……っ!!!」
シリルは可笑しそうに笑っていた。
完全にからかわれている。


そんな時予鈴の音が響いた。

「もうこんな時間か、面白いもの見せてくれてありがとな。ご主人様。……じゃあな」
「……もうっ、からかいすぎっ!!」
シリルは笑いながら去って行った。


私ははぁっ…とため息を漏らし、貰った箱に視線を落とした。
人から貰ったものを勝手に食べてしまった…。
シリルにあげた人に申し訳ないなぁと思いながら教室に戻った。
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