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第一章:私の婚約者を奪おうとしないでくださいっ!
4.一時の幸せな時間
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「王女殿下が学内で何度も騒ぎを起こしていることは、シアも知っているよね?」
「噂でなら少しだけ聞いたことがあるかな。注意した令嬢を退学に追いやったとか、歯向かう者は絶対に許さない人だってことも」
「間違ってはいないな。傍にいて分かった事だけど、王女殿下は何においても自分が中心でなければ許せない人間の様だ。圧倒的な権力を持ち、歯向かう者はねじ伏せる。だけどそれだけではない。本当の理由は自分の嗜虐心を満たすために行っているようなんだ」
「嗜虐、心?」
ロジェの表情は次第に険しくなっていく。
しかし聞き慣れない言葉に私は顔を傾げた。
「嗜虐心というのは残虐なことを好む性質を持っている人の事だよ。もっと簡単に言えば、人を痛めつけて傷付ける事に快楽を覚える人間」
その言葉を聞いて背筋に寒気が走った。
表情も次第に青ざめていく。
「ど、どうして、そんな人に私達が目を付けられたの?私、王女殿下と話したことなんて今まで一度も無いし、近づいた事すらないのに……」
「噂だよ」
「噂?」
「僕達は仲が良い婚約者同士だと周りからは言われていただろう。その噂を聞きつけたようだ」
「は?そんなことで?」
「ああ、そんなことで。きっと幸せそうに見えた僕達が許せなかったんだろう。本当に理解に苦しむよ。そして本当に狙われているのはきっと僕では無い」
ロジェは目を細めて、私の事をじっと見つめた。
嫌な予感をひしひしと感じて、体が震え始める。
(もしかして……私?)
「な、なんで!?私、何もしてないのにっ……」
「そうだな。シアは何もしていない。だからこれから先も何もしないで大人しくしていて欲しい。こんな言い方をしたら軽蔑されるかもしれないけど、新たなターゲットが見つかるまでの辛抱だ。僕も今は極力王女殿下の逆鱗に触れないように、大人しく従ってる。シアだけは絶対に守りたいからね」
ロジェは話しながら、とても苦しそうな表情を浮かべていた。
きっとこんなことは言いたくは無かったのだと思う。
だけど王女であるミレーユには逆らえないし、大人しくして様子を見守る以外に方法が見つからなかったのだろう。
(私を守るために……)
「…………」
私は返す言葉が見つからず、そのまま黙り込んでしまった。
「シア、もう少しだけ我慢して貰えないか?そうしたらきっと全て上手くいくと思うから。父上にも事情を話してそれで納得して貰った。婚約については表向きだけ保留ということにさせてもらっているけど、僕の心はいつだってシアだけのものだ。だから、信じて待っていて欲しい」
「……分かったわ。今はそうするしかないし、仕方ないよね」
それにロジェは私を守るために耐えてくれている。
私が勝手なことをすれば、ロジェにも被害が及ぶかもしれない。
そんなことは絶対に嫌だ。
「シア、分かってくれたんだね。本当にありがとう。また暫くは会うことが出来なくなるけど、我慢出来そうか?」
「寂しいけど、我慢する。でも……、少しだけ充電しときたい」
私は恥ずかしそうに顔を染めて小さく呟いた。
するとロジェは柔らかく微笑み「おいで」と言ってくれた。
先程までの絶望しきった表情は一瞬にして明るくなり、そのままロジェに抱きついた。
「ロジェ、好き。大好き……」
「うん、僕もシアの事が大好きだよ。誰よりも、ね」
私は久しぶりに訪れた一時の幸せを噛み締めた。
そして忘れない様に自分の体に、ロジェの温もりを刻み込んだ。
「噂でなら少しだけ聞いたことがあるかな。注意した令嬢を退学に追いやったとか、歯向かう者は絶対に許さない人だってことも」
「間違ってはいないな。傍にいて分かった事だけど、王女殿下は何においても自分が中心でなければ許せない人間の様だ。圧倒的な権力を持ち、歯向かう者はねじ伏せる。だけどそれだけではない。本当の理由は自分の嗜虐心を満たすために行っているようなんだ」
「嗜虐、心?」
ロジェの表情は次第に険しくなっていく。
しかし聞き慣れない言葉に私は顔を傾げた。
「嗜虐心というのは残虐なことを好む性質を持っている人の事だよ。もっと簡単に言えば、人を痛めつけて傷付ける事に快楽を覚える人間」
その言葉を聞いて背筋に寒気が走った。
表情も次第に青ざめていく。
「ど、どうして、そんな人に私達が目を付けられたの?私、王女殿下と話したことなんて今まで一度も無いし、近づいた事すらないのに……」
「噂だよ」
「噂?」
「僕達は仲が良い婚約者同士だと周りからは言われていただろう。その噂を聞きつけたようだ」
「は?そんなことで?」
「ああ、そんなことで。きっと幸せそうに見えた僕達が許せなかったんだろう。本当に理解に苦しむよ。そして本当に狙われているのはきっと僕では無い」
ロジェは目を細めて、私の事をじっと見つめた。
嫌な予感をひしひしと感じて、体が震え始める。
(もしかして……私?)
「な、なんで!?私、何もしてないのにっ……」
「そうだな。シアは何もしていない。だからこれから先も何もしないで大人しくしていて欲しい。こんな言い方をしたら軽蔑されるかもしれないけど、新たなターゲットが見つかるまでの辛抱だ。僕も今は極力王女殿下の逆鱗に触れないように、大人しく従ってる。シアだけは絶対に守りたいからね」
ロジェは話しながら、とても苦しそうな表情を浮かべていた。
きっとこんなことは言いたくは無かったのだと思う。
だけど王女であるミレーユには逆らえないし、大人しくして様子を見守る以外に方法が見つからなかったのだろう。
(私を守るために……)
「…………」
私は返す言葉が見つからず、そのまま黙り込んでしまった。
「シア、もう少しだけ我慢して貰えないか?そうしたらきっと全て上手くいくと思うから。父上にも事情を話してそれで納得して貰った。婚約については表向きだけ保留ということにさせてもらっているけど、僕の心はいつだってシアだけのものだ。だから、信じて待っていて欲しい」
「……分かったわ。今はそうするしかないし、仕方ないよね」
それにロジェは私を守るために耐えてくれている。
私が勝手なことをすれば、ロジェにも被害が及ぶかもしれない。
そんなことは絶対に嫌だ。
「シア、分かってくれたんだね。本当にありがとう。また暫くは会うことが出来なくなるけど、我慢出来そうか?」
「寂しいけど、我慢する。でも……、少しだけ充電しときたい」
私は恥ずかしそうに顔を染めて小さく呟いた。
するとロジェは柔らかく微笑み「おいで」と言ってくれた。
先程までの絶望しきった表情は一瞬にして明るくなり、そのままロジェに抱きついた。
「ロジェ、好き。大好き……」
「うん、僕もシアの事が大好きだよ。誰よりも、ね」
私は久しぶりに訪れた一時の幸せを噛み締めた。
そして忘れない様に自分の体に、ロジェの温もりを刻み込んだ。
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