23 / 66
第一章:私の婚約者を奪おうとしないでくださいっ!
23.後悔①-sideロジェ-
しおりを挟む
突然シアが倒れた。
何度名前を呼んでも反応が無くて、目の前が真っ白になった。
だけど直ぐに我に返り、彼女を抱き上げて自室へと急いだ。
(シア、急に倒れるなんて……。一体どうしたんだ。頼む、無事でいてくれ)
彼女の部屋に向かっている途中、運良く使用人とすれ違った。
「すまない。彼女が、フェリシアが突然倒れたんだ。直ぐに伯爵と医師を呼びに行ってくれ。僕は彼女を部屋まで運ぶ。急いでくれ!」
「え?お、お嬢様!?は、はいっ!!」
僕の態度はかなり緊迫していた。
使用人は突然の事に最初はかなり動揺していたが、急を要していることに気付いたのか、直ぐに走って呼びに行ってくれた。
きっとすぐに来てくれるはずだ。
僕は足早にシアの部屋へと向かった。
***
本来であれば女性の部屋に勝手に入るのは良くない事だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
「シア、ごめんね。勝手に入らせてもらうよ」
意識のない彼女に向けて優しい声で呟くと、奥にあるベッドまで運んだ。
ベッドの上に寝かせると、心配そうな顔で彼女のことを見つめていた。
(相当具合が悪かったんだな。こんな時に来るなんて、本当に僕は最低だな)
今日急いでこの屋敷を訪れたのは、シアを手放したくなかったからだ。
王宮でエルネスト王子がシアに興味を持っていることを知った。
僕は彼女を奪われるのではないかと、恐れている。
またしても僕は自分の気持ちを優先して、勝手に行動に出てしまった。
彼女が僕の所為で心を痛めているのを知っていながら強行した。
その結果がこれだ。
(全て僕の所為だ……)
「シア、ごめん。本当に……、ごめん」
彼女の手をぎゅっと握り、無事でいて欲しいと祈っていると、バンッ!と勢いよく扉が開いた。
音に驚いて扉の方に視線を向けると、そこには息を切らしている伯爵の姿があった。
奥には父上と、医師の姿もある。
「ロジェ殿、一体何があったんだ。シアは……、娘は無事なのか!?」
伯爵は僕に気付くと、叫ぶように問いかけながらこちらに近づいてきた。
「部屋に向かっている途中、突然倒れたんです。それからいくら呼びかけても反応が無くて……」
「やっぱり、相当具合が悪かったんだな」
僕と伯爵が話していると、医師が「すみません」と声をかけてきた。
「今からフェリシア様の容態を見ます。フェリシア様のお付きの使用人以外、一度部屋から出て頂いても構わないでしょうか」
「ああ、頼む。早く娘を見てやってくれ」
医師と彼女の専属の使用人を残し、僕達は外へと出された。
その間、何があったのかを伯爵に説明していた。
待っている間、時間が止まったかのように長く感じた。
僕はシアの無事だけを祈り続けた。
シアがいない生活なんて考えられない。
自分にとって、彼女がどれだけ大きな存在になっていたのかを思い知らされる。
幼い頃からずっと傍にいて、それが当たり前のことだと思っていた。
その考えが前提にある所為で、彼女は絶対に自分の傍からは離れない、なんて思い込んでしまった。
僕達は強い絆で繋がっているから、何があっても切れることはないと本気で信じていた。
シアにだって心はある。
それは当たり前のことなのに、彼女ならきっと分かってくれると都合の良い解釈をしてしまった。
ミレーユの狙いは、最初から彼女を貶めることだと分かっていた。
だから王女の前ではなるべく忠誠を誓うふりをして、変に刺激を与えないように様子を伺っていた。
僕がシアに興味が無いように振る舞えば、ミレーユも直ぐに諦めてくれると思ったからだ。
しかしそれは間違いだった。
ミレーユは我慢をし続ける彼女を見て、どうにかして平伏させたいと強く思うようになっていった。
僕は結果的にシアを追い詰める手助けをしてしまったのだ。
何度名前を呼んでも反応が無くて、目の前が真っ白になった。
だけど直ぐに我に返り、彼女を抱き上げて自室へと急いだ。
(シア、急に倒れるなんて……。一体どうしたんだ。頼む、無事でいてくれ)
彼女の部屋に向かっている途中、運良く使用人とすれ違った。
「すまない。彼女が、フェリシアが突然倒れたんだ。直ぐに伯爵と医師を呼びに行ってくれ。僕は彼女を部屋まで運ぶ。急いでくれ!」
「え?お、お嬢様!?は、はいっ!!」
僕の態度はかなり緊迫していた。
使用人は突然の事に最初はかなり動揺していたが、急を要していることに気付いたのか、直ぐに走って呼びに行ってくれた。
きっとすぐに来てくれるはずだ。
僕は足早にシアの部屋へと向かった。
***
本来であれば女性の部屋に勝手に入るのは良くない事だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
「シア、ごめんね。勝手に入らせてもらうよ」
意識のない彼女に向けて優しい声で呟くと、奥にあるベッドまで運んだ。
ベッドの上に寝かせると、心配そうな顔で彼女のことを見つめていた。
(相当具合が悪かったんだな。こんな時に来るなんて、本当に僕は最低だな)
今日急いでこの屋敷を訪れたのは、シアを手放したくなかったからだ。
王宮でエルネスト王子がシアに興味を持っていることを知った。
僕は彼女を奪われるのではないかと、恐れている。
またしても僕は自分の気持ちを優先して、勝手に行動に出てしまった。
彼女が僕の所為で心を痛めているのを知っていながら強行した。
その結果がこれだ。
(全て僕の所為だ……)
「シア、ごめん。本当に……、ごめん」
彼女の手をぎゅっと握り、無事でいて欲しいと祈っていると、バンッ!と勢いよく扉が開いた。
音に驚いて扉の方に視線を向けると、そこには息を切らしている伯爵の姿があった。
奥には父上と、医師の姿もある。
「ロジェ殿、一体何があったんだ。シアは……、娘は無事なのか!?」
伯爵は僕に気付くと、叫ぶように問いかけながらこちらに近づいてきた。
「部屋に向かっている途中、突然倒れたんです。それからいくら呼びかけても反応が無くて……」
「やっぱり、相当具合が悪かったんだな」
僕と伯爵が話していると、医師が「すみません」と声をかけてきた。
「今からフェリシア様の容態を見ます。フェリシア様のお付きの使用人以外、一度部屋から出て頂いても構わないでしょうか」
「ああ、頼む。早く娘を見てやってくれ」
医師と彼女の専属の使用人を残し、僕達は外へと出された。
その間、何があったのかを伯爵に説明していた。
待っている間、時間が止まったかのように長く感じた。
僕はシアの無事だけを祈り続けた。
シアがいない生活なんて考えられない。
自分にとって、彼女がどれだけ大きな存在になっていたのかを思い知らされる。
幼い頃からずっと傍にいて、それが当たり前のことだと思っていた。
その考えが前提にある所為で、彼女は絶対に自分の傍からは離れない、なんて思い込んでしまった。
僕達は強い絆で繋がっているから、何があっても切れることはないと本気で信じていた。
シアにだって心はある。
それは当たり前のことなのに、彼女ならきっと分かってくれると都合の良い解釈をしてしまった。
ミレーユの狙いは、最初から彼女を貶めることだと分かっていた。
だから王女の前ではなるべく忠誠を誓うふりをして、変に刺激を与えないように様子を伺っていた。
僕がシアに興味が無いように振る舞えば、ミレーユも直ぐに諦めてくれると思ったからだ。
しかしそれは間違いだった。
ミレーユは我慢をし続ける彼女を見て、どうにかして平伏させたいと強く思うようになっていった。
僕は結果的にシアを追い詰める手助けをしてしまったのだ。
2
あなたにおすすめの小説
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる