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第二章:私の心を掻き乱さないでくださいっ!
53.見つからない答え
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教室に戻ってくると、皆の視線が一斉に私の方に集まりドキッとして、一瞬足を止めてしまう。
私が固まっていると「フェリシア」とイリアに名前を呼ばれ、慌てるようにして自分の席へと移動した。
「おはよう」
「イリア、おはよう」
刺さるような視線と、こちらを見てヒソヒソと話す周囲の姿が気になって仕方ない。
だけど私は気にしない振りをして、イリアに笑顔で挨拶をした。
「やっぱりフェリシアって、殿下とそういう関係なの?」
「え? ち、違うよ」
どうやらイリアもそのことが気になっている様子だった。
私は動揺して咄嗟に否定してしまう。
今の私達はそういった関係ではない。
だから間違った返答ではないはずだ。
私は自分の気持ちがまだはっきりと分かっていないし、エルネストは思わせぶりな態度をみせてくるが、直接的に気持ちを伝えられたわけでもない。
私が勝手に思い込んでいる場合だってあるのだから。
イリアは「そっか」と口では納得していたが、その表情は信じていないようにも窺えた。
これ以上この話を長引かせたくなくて顔を隠すように俯いていると、授業を知らせる鐘の音が響き、間もなくして先生が教室に入ってきた。
とりあえず今はこれ以上聞かれることは無くなったので、私は一人安心していた。
(はぁ……。なんて答えた良かったんだろう)
その答えを知りたいのは私も同じだ。
朝からエルネストに会えて嬉しかったが、人前であんな態度を取るのは少し控えて欲しい。
漸く私の周りは落ち着いてきたというのに、これではまた平穏が遠ざかっていってしまう。
(だけど、元はと言えば私の所為だよね……)
ロジェとのことで悩んでいた時、私はエルネストにとんでもないお願いをしてしまった。
今思うと、あの時の私はどうかしていた。
後先考えずに王子であるエルネストに、恋人のフリを頼んでしまうなんて。
だけどそのおかげでロジェへの気持ちを吹っ切ることが出来た。
私は前に進めて良かったけど、エルネストはどう感じていたのだろう。
恋人のフリについては、ロジェやミレーユの前という制限があった。
だけど、学内でもエルネストは私に声をかけてきてくれた。
二人で一緒にいるところを、他の生徒に見られていたなんてこともあったのかもしれない。
その時は友人として会っていたので、周囲については気にしていなかった。
それを見た生徒が誤解をして……ということも無いとは言い切れない。
私は婚約者の存在がありながら、別の男性、しかも王子とそういった関係だと思われていたことになる。
それについては全て私が招いたことなので、どう思われても仕方が無いことだと思っている。
しかし、その事でエルネストに迷惑を掛けているのだとしたら、本当に申し訳なく思う。
(そうだったら、どうしよう。ここはもう、相談に乗って貰っていただけだって言い張るしかないよね。これ以上エルネスト様に迷惑はかけられないし)
もし、周囲が私達の関係を疑っていたとしたら。
こんな短期間で別れたとなれば、それはそれで悪い噂が立ってしまうのではないだろうか。
卒業までは残り数ヶ月だし、その間はこのまま恋人のフリを続けた方が無難だと思ってあんな態度をとった――。
(……なんてことはないよね。さすがに)
私は一人で色々な理由を思い浮かべては、ため息を漏らしていた。
授業そっちのけでエルネストが私の傍にいる理由を考えていたが、しっくりくる答えなんて簡単には見つからなかった。
放課後までに答えを出さなければならないのに。
エルネストが私のことを好きだなんていうのは都合の良すぎる解釈だし、もし違っていた場合かなり恥ずかしいことになってしまう。
それこそ今後顔を合わせられなくなる。
(それは絶対に嫌!……どうしよう、余計にわけわかんなくなってきた)
私の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
***
休み時間になるとイリアが心配そうな顔で「大丈夫?」と訪ねてきた。
どうやら私はずっと眉間に皺を寄せて、険しい表情をしていたようだ。
そして何度もため息を繰り返していた。
「相談くらいなら乗れるよ?折角友達になったのだし」
「ありがとう」
私は乾いた笑みを漏らしながら答えた。
誰かに話を聞いて貰えれば、このもやもやとした気持ちが晴れるかも知れない。
だけど間違ったことを言って変な噂にでもなってしまえば、エルネストに迷惑をかけることになってしまう。
それだけは何としても避けたい。
イリアはいい人だと思う。
ロジェから守ってくれたし、今も私の心配をしてくれている。
でも、全てを信じているわけではない。
まだ友達になって一日しか経っていないし、全てを打ち明けるほど親しい関係でもない。
だけど、嫌われたくもない。
初めて出来た同性の友達だから。
私が言葉に困っていると、前方から近づいてくる令嬢と目が合った。
それは朝エルネストに声をかけていた、イルメラだった。
彼女は真っ直ぐに私のことを見つめて近づいてくる。
イリアもイルメラの存在に気付いている様子だった。
「フェリシア・アルシェさん、であっているかしら」
「は、はい……」
突然声を掛けられて、私の心拍はバクバクと上がっていた。
今朝、エルネストに向けられた彼女の表情が脳裏に浮かぶ。
エルネストは婚約者はいないとはっきりと言っていた。
だけど、イルメラのあの瞳はエルネストを慕っているように思えた。
だからこそ、私の心はこんなにも動揺しているのだろう。
私が固まっていると「フェリシア」とイリアに名前を呼ばれ、慌てるようにして自分の席へと移動した。
「おはよう」
「イリア、おはよう」
刺さるような視線と、こちらを見てヒソヒソと話す周囲の姿が気になって仕方ない。
だけど私は気にしない振りをして、イリアに笑顔で挨拶をした。
「やっぱりフェリシアって、殿下とそういう関係なの?」
「え? ち、違うよ」
どうやらイリアもそのことが気になっている様子だった。
私は動揺して咄嗟に否定してしまう。
今の私達はそういった関係ではない。
だから間違った返答ではないはずだ。
私は自分の気持ちがまだはっきりと分かっていないし、エルネストは思わせぶりな態度をみせてくるが、直接的に気持ちを伝えられたわけでもない。
私が勝手に思い込んでいる場合だってあるのだから。
イリアは「そっか」と口では納得していたが、その表情は信じていないようにも窺えた。
これ以上この話を長引かせたくなくて顔を隠すように俯いていると、授業を知らせる鐘の音が響き、間もなくして先生が教室に入ってきた。
とりあえず今はこれ以上聞かれることは無くなったので、私は一人安心していた。
(はぁ……。なんて答えた良かったんだろう)
その答えを知りたいのは私も同じだ。
朝からエルネストに会えて嬉しかったが、人前であんな態度を取るのは少し控えて欲しい。
漸く私の周りは落ち着いてきたというのに、これではまた平穏が遠ざかっていってしまう。
(だけど、元はと言えば私の所為だよね……)
ロジェとのことで悩んでいた時、私はエルネストにとんでもないお願いをしてしまった。
今思うと、あの時の私はどうかしていた。
後先考えずに王子であるエルネストに、恋人のフリを頼んでしまうなんて。
だけどそのおかげでロジェへの気持ちを吹っ切ることが出来た。
私は前に進めて良かったけど、エルネストはどう感じていたのだろう。
恋人のフリについては、ロジェやミレーユの前という制限があった。
だけど、学内でもエルネストは私に声をかけてきてくれた。
二人で一緒にいるところを、他の生徒に見られていたなんてこともあったのかもしれない。
その時は友人として会っていたので、周囲については気にしていなかった。
それを見た生徒が誤解をして……ということも無いとは言い切れない。
私は婚約者の存在がありながら、別の男性、しかも王子とそういった関係だと思われていたことになる。
それについては全て私が招いたことなので、どう思われても仕方が無いことだと思っている。
しかし、その事でエルネストに迷惑を掛けているのだとしたら、本当に申し訳なく思う。
(そうだったら、どうしよう。ここはもう、相談に乗って貰っていただけだって言い張るしかないよね。これ以上エルネスト様に迷惑はかけられないし)
もし、周囲が私達の関係を疑っていたとしたら。
こんな短期間で別れたとなれば、それはそれで悪い噂が立ってしまうのではないだろうか。
卒業までは残り数ヶ月だし、その間はこのまま恋人のフリを続けた方が無難だと思ってあんな態度をとった――。
(……なんてことはないよね。さすがに)
私は一人で色々な理由を思い浮かべては、ため息を漏らしていた。
授業そっちのけでエルネストが私の傍にいる理由を考えていたが、しっくりくる答えなんて簡単には見つからなかった。
放課後までに答えを出さなければならないのに。
エルネストが私のことを好きだなんていうのは都合の良すぎる解釈だし、もし違っていた場合かなり恥ずかしいことになってしまう。
それこそ今後顔を合わせられなくなる。
(それは絶対に嫌!……どうしよう、余計にわけわかんなくなってきた)
私の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
***
休み時間になるとイリアが心配そうな顔で「大丈夫?」と訪ねてきた。
どうやら私はずっと眉間に皺を寄せて、険しい表情をしていたようだ。
そして何度もため息を繰り返していた。
「相談くらいなら乗れるよ?折角友達になったのだし」
「ありがとう」
私は乾いた笑みを漏らしながら答えた。
誰かに話を聞いて貰えれば、このもやもやとした気持ちが晴れるかも知れない。
だけど間違ったことを言って変な噂にでもなってしまえば、エルネストに迷惑をかけることになってしまう。
それだけは何としても避けたい。
イリアはいい人だと思う。
ロジェから守ってくれたし、今も私の心配をしてくれている。
でも、全てを信じているわけではない。
まだ友達になって一日しか経っていないし、全てを打ち明けるほど親しい関係でもない。
だけど、嫌われたくもない。
初めて出来た同性の友達だから。
私が言葉に困っていると、前方から近づいてくる令嬢と目が合った。
それは朝エルネストに声をかけていた、イルメラだった。
彼女は真っ直ぐに私のことを見つめて近づいてくる。
イリアもイルメラの存在に気付いている様子だった。
「フェリシア・アルシェさん、であっているかしら」
「は、はい……」
突然声を掛けられて、私の心拍はバクバクと上がっていた。
今朝、エルネストに向けられた彼女の表情が脳裏に浮かぶ。
エルネストは婚約者はいないとはっきりと言っていた。
だけど、イルメラのあの瞳はエルネストを慕っているように思えた。
だからこそ、私の心はこんなにも動揺しているのだろう。
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