2 / 13
第二話 ちょっと王様にケンカを売ってやろうと決めた日
しおりを挟む
「なるほどなぁ、この国の情勢はそういうもんなのか」
召喚されてから一週間。とりあえず、この世界の情勢について、この教会のやつらから教えてもらっている。まぁ、正直、教会というか宗教は怖かったからさ。俺、ビビッてたんだけど。まぁ、今んところ、悪いことはされてない。
「はい。この国は、ですので、世界で3番目の経済大国です。ですが、30年ほど、経済成長はしておりません」
「まぁ、でも、魔法工業国として栄えてて。人口も一億と。王様が治めてる」
まぁ、日本と近い国だなぁとかとか思いつつ、授業をしてくれている男をじっと見た。ちなみに、こいつは例のローブを差し出してくれた男だったりする。名前は、レインという。雨男だな、名前的に。
「ふーん。でも、王様以外にも、華族っつぅ貴族がいるんだな。こいつらは、どんな奴らだ?」
「彼らは、ミストタウンと呼ばれる政治関係の施設が集中する街に住んでいる貴族です。王様とは、彼らを最も上手くまとめられた王族の人物になります」
「王族? そんなにいるのか?」
「ええ、そうですね。以前あった戦争で負けた後、いくつかの家柄が『王族』として占領国から認められました。そのため『王族』というのは、誤解されやすいですが、この国『オコメランド国』では、いくつかの家柄が含まれています。また、彼らと結婚した家柄も『王族』として名乗ることが許されます」
つまり、『王族』って言いながら、別に血筋を大事にしてるわけでもないし、なんか、尊敬されるだけの意義がないっつーか。ハッキリ言って、それ、占領国の傀儡政治、操り人形っていうんじゃね?
「はーん、なぁ、おまえら国民って『王族』を尊敬してる?」
「これは、私の個人的な意見ですが・・尊敬してるとは言えません。尊敬する理由がありません。彼らこそが、国の腐敗だと思います」
「じゃぁ、華族は?」
「これも、私の個人的な意見ですが、華族とは、『王族』以上に頭に何も詰まっていない奴らです。まだ『王族』は一応国の運営に関わっていますので、能力が全くないわけではないと思います。華族も一枚岩ではありませんが。華族というのは『王族』になびくものもいますし。ただ、基本的には王族の恩恵に預かれない不満を持つ不穏分子とくっつく派閥と、まぁ、その他もろもろと分かれています。基本的に『王族』が失脚して自分たちが『王族』になれたらないいな、と思っている人たちが『華族』です」
難しいこと言ってるが、要は、『王族』にしても、『華族』にしても、国の政治にかかわっている奴に碌な奴がいねーと。どこでも、政治って腐ってるもんだなぁ。
「んじゃよ、教会はどうなんだ?」
「宗教は色々この国内でもありますが、つまり、この教会ですか?」
嬉しそうに眼を男が輝かせた。心の内で三歩後ずさりしながら、引き気味に男を見る。
「あのよ、俺は改宗しないからな。で、教会も腐ってたりしないのか?」
「少なくとも、術師としてトップにいる私は実力ですよ。それに、上に行けば行くほど、金も時間も吸い取られるものですから。多少、名誉はありますが、物質的には損の方が多いです。でも、宗教心を持ってれば、奉仕できてるのでこれ以上とない喜びですが」
かなり引き気味に、ウットリした眼をさせた男をみる。可哀想に。そういう洗脳なのか。
「なるほど。社畜を良しとする洗脳が見事に施されているな」
「聖女様だから、そう言われるのは困ります。単純に、勤勉に神に尽くしているだけですよ」
男は眉毛を八の字に寄せた。なんか、昔飼っていた犬とどことなく似てる気がする、コイツ。妙に、忠誠心が高くって頑張り屋なところとか。
「とにかく、俺を洗脳するな。で、教会は世間的にはどんな評価を受けてるんだ?」
「んー、一定の影響力は持っていますが。私たちは、この国の革命を狙っています。とはいっても、武力行使は考えてません。飽くまで民衆から支持されたいのですが。民衆も、神や聖女に信仰心は持っていても、教会に対して信仰をしてるわけではないので、なかなか我々教会には協力してくれるとも限らないんです」
ってことは、決して世間が味方に付いてるわけじゃなあそうだな。
「聖女も教会と似たり寄ったりの評価か?」
「聖女は、この国の伝説的な存在ですから。恐らく、教会を支持しない国民でも、聖女は支持すると思います」
そりゃ、有難い話だな。どんな伝説だか知らないが。ま、組織って怖ぇーよな。中がどうなってるかだなんて、よくわかんねぇし。俺も、今もこの教会に警戒してるし。
「でもよ、俺みたいな欲深いアホを奉っても、どうにもならねぇと思うぞ」
俺の卑屈染みた言葉に、男は意も介さずニコッと笑みを返した。
「そんなことはないですよ。話をしていて大変面白いです。賢明であられることもわかりましたから。期待しております」
ちょうどタイミングよく鐘の音が遠くから聞こえた。一旦、俺のこの世界の学習会は中断。さぁ、昼飯でも食いに行くか。
何人かの侍女服を着たシスターが掃除をしに入ってきた。そのうちの一人が、男に耳打ちをする。男は嬉しい知らせだったのか、顔をほころばせた。
「ああ、ところで聖女様」
「あん?」
「一月後に、議事堂で挨拶されることが決まりました。お昼の時にでも、ご説明いたしますね」
議事堂で挨拶? つまり、聖女披露宴みたいなものが行われるというのか? 俺、見ての通り口悪ぃし、挨拶なんてさせない方がいいと思うぞ。
「まぁ、説明は聞くけどな。思う通りに、俺が動くとは限らねぇぞ」
「そんなに緊張しないでくださいよ。教会側は聖女にお願いはされても、お願いはできませんから」
そんなに奉られる所以がわからねぇからこそ、俺は緊張しているんだが。
召喚されてから一週間。とりあえず、この世界の情勢について、この教会のやつらから教えてもらっている。まぁ、正直、教会というか宗教は怖かったからさ。俺、ビビッてたんだけど。まぁ、今んところ、悪いことはされてない。
「はい。この国は、ですので、世界で3番目の経済大国です。ですが、30年ほど、経済成長はしておりません」
「まぁ、でも、魔法工業国として栄えてて。人口も一億と。王様が治めてる」
まぁ、日本と近い国だなぁとかとか思いつつ、授業をしてくれている男をじっと見た。ちなみに、こいつは例のローブを差し出してくれた男だったりする。名前は、レインという。雨男だな、名前的に。
「ふーん。でも、王様以外にも、華族っつぅ貴族がいるんだな。こいつらは、どんな奴らだ?」
「彼らは、ミストタウンと呼ばれる政治関係の施設が集中する街に住んでいる貴族です。王様とは、彼らを最も上手くまとめられた王族の人物になります」
「王族? そんなにいるのか?」
「ええ、そうですね。以前あった戦争で負けた後、いくつかの家柄が『王族』として占領国から認められました。そのため『王族』というのは、誤解されやすいですが、この国『オコメランド国』では、いくつかの家柄が含まれています。また、彼らと結婚した家柄も『王族』として名乗ることが許されます」
つまり、『王族』って言いながら、別に血筋を大事にしてるわけでもないし、なんか、尊敬されるだけの意義がないっつーか。ハッキリ言って、それ、占領国の傀儡政治、操り人形っていうんじゃね?
「はーん、なぁ、おまえら国民って『王族』を尊敬してる?」
「これは、私の個人的な意見ですが・・尊敬してるとは言えません。尊敬する理由がありません。彼らこそが、国の腐敗だと思います」
「じゃぁ、華族は?」
「これも、私の個人的な意見ですが、華族とは、『王族』以上に頭に何も詰まっていない奴らです。まだ『王族』は一応国の運営に関わっていますので、能力が全くないわけではないと思います。華族も一枚岩ではありませんが。華族というのは『王族』になびくものもいますし。ただ、基本的には王族の恩恵に預かれない不満を持つ不穏分子とくっつく派閥と、まぁ、その他もろもろと分かれています。基本的に『王族』が失脚して自分たちが『王族』になれたらないいな、と思っている人たちが『華族』です」
難しいこと言ってるが、要は、『王族』にしても、『華族』にしても、国の政治にかかわっている奴に碌な奴がいねーと。どこでも、政治って腐ってるもんだなぁ。
「んじゃよ、教会はどうなんだ?」
「宗教は色々この国内でもありますが、つまり、この教会ですか?」
嬉しそうに眼を男が輝かせた。心の内で三歩後ずさりしながら、引き気味に男を見る。
「あのよ、俺は改宗しないからな。で、教会も腐ってたりしないのか?」
「少なくとも、術師としてトップにいる私は実力ですよ。それに、上に行けば行くほど、金も時間も吸い取られるものですから。多少、名誉はありますが、物質的には損の方が多いです。でも、宗教心を持ってれば、奉仕できてるのでこれ以上とない喜びですが」
かなり引き気味に、ウットリした眼をさせた男をみる。可哀想に。そういう洗脳なのか。
「なるほど。社畜を良しとする洗脳が見事に施されているな」
「聖女様だから、そう言われるのは困ります。単純に、勤勉に神に尽くしているだけですよ」
男は眉毛を八の字に寄せた。なんか、昔飼っていた犬とどことなく似てる気がする、コイツ。妙に、忠誠心が高くって頑張り屋なところとか。
「とにかく、俺を洗脳するな。で、教会は世間的にはどんな評価を受けてるんだ?」
「んー、一定の影響力は持っていますが。私たちは、この国の革命を狙っています。とはいっても、武力行使は考えてません。飽くまで民衆から支持されたいのですが。民衆も、神や聖女に信仰心は持っていても、教会に対して信仰をしてるわけではないので、なかなか我々教会には協力してくれるとも限らないんです」
ってことは、決して世間が味方に付いてるわけじゃなあそうだな。
「聖女も教会と似たり寄ったりの評価か?」
「聖女は、この国の伝説的な存在ですから。恐らく、教会を支持しない国民でも、聖女は支持すると思います」
そりゃ、有難い話だな。どんな伝説だか知らないが。ま、組織って怖ぇーよな。中がどうなってるかだなんて、よくわかんねぇし。俺も、今もこの教会に警戒してるし。
「でもよ、俺みたいな欲深いアホを奉っても、どうにもならねぇと思うぞ」
俺の卑屈染みた言葉に、男は意も介さずニコッと笑みを返した。
「そんなことはないですよ。話をしていて大変面白いです。賢明であられることもわかりましたから。期待しております」
ちょうどタイミングよく鐘の音が遠くから聞こえた。一旦、俺のこの世界の学習会は中断。さぁ、昼飯でも食いに行くか。
何人かの侍女服を着たシスターが掃除をしに入ってきた。そのうちの一人が、男に耳打ちをする。男は嬉しい知らせだったのか、顔をほころばせた。
「ああ、ところで聖女様」
「あん?」
「一月後に、議事堂で挨拶されることが決まりました。お昼の時にでも、ご説明いたしますね」
議事堂で挨拶? つまり、聖女披露宴みたいなものが行われるというのか? 俺、見ての通り口悪ぃし、挨拶なんてさせない方がいいと思うぞ。
「まぁ、説明は聞くけどな。思う通りに、俺が動くとは限らねぇぞ」
「そんなに緊張しないでくださいよ。教会側は聖女にお願いはされても、お願いはできませんから」
そんなに奉られる所以がわからねぇからこそ、俺は緊張しているんだが。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる