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「⋯⋯⋯あのぅ」
「お前は何してるんだ!」
御者の格好の人が怒鳴る。
戸惑うライラはビクッと体が跳ねる。
どうやら馬車を間違えた上に勝手に中で泣き崩れていたようだった。
恥ずかしくなって顔を真っ赤にしながらもライラは兎に角謝罪だと謝った。
「ごめんなさい、私馬車を間違えたみたいです。ごめんなさい」
頭を下げるライラに金髪の男の人は呆れた顔から苛つく顔に変わった。
「あぁもうそういうのはいいよ、さっさと外に出て」
言われたライラは直ぐに馬車を降りた。
降りる時も「ごめんなさい」と繰り返したけれど、二人とも怒ったままでそれ以上は何も言わず、ライラが頭を下げてる間にサッサと馬車は立ち去っていった。
「お嬢様!」
ライラが立ち竦んでいるとジルの声が聞こえた。
そちらを見るともう一つ先の通りの角からジルが走ってこちらにやってくるのが見えた。
その場で待つライラにジルは追い付くと肩で息をしながら訊ねた。
「レオさんはどうされました?まさかお嬢様を置いていったのですか?それに⋯早かったですね」
思いもかけず早く店を出てきたライラに戸惑うジルは、ライラの蒼白の顔色と充血した赤い目に漸く気付いて言葉が途切れた。ライラはジルの質問には答えず「馬車は?」と聞いて明後日の方向に歩き始める。
「お嬢様、こっちです」
態度と顔色の悪いライラの手を引いてジルは馬車の方向へと向かった。
(お嬢様どうされたのかしら?)
つい30分程前までレオと一緒にいれて嬉しそうに頬を染めて馬車を降りていったのに、あり得ないほど早く店を出て角でぼーっと突っ立っていた。
ジルと御者は店先に馬車を停めておくわけにも行かず、角の所で停まっていようと思ったら先客がいたから、通りをぐるりとゆっくり回っていたところだった。
2周目に此方に戻ってきた所で御者がライラが立っているのに気付いてジルに声をかけたのだ。
馬車の中でも、平民にしては大きな家の自宅の屋敷に着いても、ライラは一言も口を開かなかった。
自室に入りやっと口を開いたのが「一人になりたい」とそれだけで、ジルは追い出されてしまった。
ジルは、二人に何があったのだろうとライラの部屋の前で、彼女から呼ばれるのを只管待つしかなかった。
一方、ジルに心配をかけている事は重々承知の上だが、浮かれた自分が恥ずかしすぎたのとその後の行動があまりにも間抜けだと、仔細をジルに何も話せなかったライラはベッドの上で仰向けで天井を睨んでいた。
意外にも涙はもう出なかった。
あの間違えた他人の馬車で声を上げて泣いた事ですっかりスッキリしていた。
今はレオの事を考えても怒りしか湧いてこない。
ジルにも早く伝えなきゃとは思う。
彼女もレオを好きだとライラは気付いていながら知らぬふりをしていた。
ライラは失恋したし、もうレオにはこれっぽっちも恋心は感じないけれど、あんな男の事は大事なジルも早く忘れさせなければ行けない。
ライラに持ちかけている偽装婚約の事を伝えて、サッサとレオを諦めて貰おう!
そう思っているがジルが傷つくのがわかるから直ぐには言い出せなかったのだ。
それに後妻の話も父に確かめないといけない。
正直レオに完全に失望したライラは、もうこの際、ふたまわりだろうが何だろうが、その伯爵に嫁いでもいいような気になってきた。
両親は露店の八百屋から始まり地道に努力を重ねて今は商会にまで発展させた。そんな大事な店を潰してたまるか!とライラは思っている。
父に結婚してもいいよと言ってみよう!
そう思いながらもライラは泣き疲れからか、いつの間にかそのまま眠ってしまっていた。
「お前は何してるんだ!」
御者の格好の人が怒鳴る。
戸惑うライラはビクッと体が跳ねる。
どうやら馬車を間違えた上に勝手に中で泣き崩れていたようだった。
恥ずかしくなって顔を真っ赤にしながらもライラは兎に角謝罪だと謝った。
「ごめんなさい、私馬車を間違えたみたいです。ごめんなさい」
頭を下げるライラに金髪の男の人は呆れた顔から苛つく顔に変わった。
「あぁもうそういうのはいいよ、さっさと外に出て」
言われたライラは直ぐに馬車を降りた。
降りる時も「ごめんなさい」と繰り返したけれど、二人とも怒ったままでそれ以上は何も言わず、ライラが頭を下げてる間にサッサと馬車は立ち去っていった。
「お嬢様!」
ライラが立ち竦んでいるとジルの声が聞こえた。
そちらを見るともう一つ先の通りの角からジルが走ってこちらにやってくるのが見えた。
その場で待つライラにジルは追い付くと肩で息をしながら訊ねた。
「レオさんはどうされました?まさかお嬢様を置いていったのですか?それに⋯早かったですね」
思いもかけず早く店を出てきたライラに戸惑うジルは、ライラの蒼白の顔色と充血した赤い目に漸く気付いて言葉が途切れた。ライラはジルの質問には答えず「馬車は?」と聞いて明後日の方向に歩き始める。
「お嬢様、こっちです」
態度と顔色の悪いライラの手を引いてジルは馬車の方向へと向かった。
(お嬢様どうされたのかしら?)
つい30分程前までレオと一緒にいれて嬉しそうに頬を染めて馬車を降りていったのに、あり得ないほど早く店を出て角でぼーっと突っ立っていた。
ジルと御者は店先に馬車を停めておくわけにも行かず、角の所で停まっていようと思ったら先客がいたから、通りをぐるりとゆっくり回っていたところだった。
2周目に此方に戻ってきた所で御者がライラが立っているのに気付いてジルに声をかけたのだ。
馬車の中でも、平民にしては大きな家の自宅の屋敷に着いても、ライラは一言も口を開かなかった。
自室に入りやっと口を開いたのが「一人になりたい」とそれだけで、ジルは追い出されてしまった。
ジルは、二人に何があったのだろうとライラの部屋の前で、彼女から呼ばれるのを只管待つしかなかった。
一方、ジルに心配をかけている事は重々承知の上だが、浮かれた自分が恥ずかしすぎたのとその後の行動があまりにも間抜けだと、仔細をジルに何も話せなかったライラはベッドの上で仰向けで天井を睨んでいた。
意外にも涙はもう出なかった。
あの間違えた他人の馬車で声を上げて泣いた事ですっかりスッキリしていた。
今はレオの事を考えても怒りしか湧いてこない。
ジルにも早く伝えなきゃとは思う。
彼女もレオを好きだとライラは気付いていながら知らぬふりをしていた。
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ライラに持ちかけている偽装婚約の事を伝えて、サッサとレオを諦めて貰おう!
そう思っているがジルが傷つくのがわかるから直ぐには言い出せなかったのだ。
それに後妻の話も父に確かめないといけない。
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両親は露店の八百屋から始まり地道に努力を重ねて今は商会にまで発展させた。そんな大事な店を潰してたまるか!とライラは思っている。
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